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前編

この作品は黒森冬炎様の主催企画『ライドオン・テイクオフ~移動企画~』参加作品です。

それは、音もなく私の目の前に突然舞い降りた。

天からの使いである白馬に翼が生えた、つまりペガサス。

私は突然の事に声も出ず、その美しさにただただ見とれていた。

そんな私に、ペガサスは自分の背に乗るようにと「ブルル」と息を吐き、首を向ける。

ここで状況を整理すると、私は平凡な普通の家庭の少女。天からの使いであるペガサスが突然舞い降りてくる理由など全く見当たらない。

だって、父さんも母さんも平民。当然、私も平民の娘。

至って、本当に普通、だ。

「リィアーラ」

そんな私の頭の中に、突如声が響いた。

「え、だ、誰?」

私は驚いた。

だって、リィアーラとは私の名だからだ。

この地域には、リリアーラという花がある。白くて大きな大輪の花だ。

この国の、女王様が誕生した時に特別に交配して作られた花だ。

もちろん、女王様の名はリリアーラ。

私はそんな花の名からもらった名だ。

と、そんな説明をしている場合ではない。

「もしかして、あなたなの……?」

リィアーラの言葉にペガサスは頷く。

また頭の中に声が響いた。

「この国は今、戦争を始めようとしています」

「……知ってるわ、そんな事」

リィアーラはうつむく。

最近、国中がその話で持ちきりだ。

生活だって、段々苦しくなってきている。

王族が悪い訳ではない。この国は、立地的に大国と大国の間にある小国だ。

どちらかに属国すれば、国境との競り合いは必須だった。

そこで王は、無謀な賭けに挑んだ。

すなわち、大国と大国に戦争を布告したのだ。

孤高の戦い。馬鹿な戦い。愚かな戦い。

下馬評は散々だ。

あの聡明な王が何故そんな戦いを持ち掛けたのか、全く不明だった。

一説では、悪魔に憑かれたとさえ噂された。

リィアーラの兄も、戦地へと赴いて行った。

従兄弟も、隣の家の幼なじみクオフでさえ。

暗い表情のリィアーラに、ペガサスは言った。

「リィアーラ。貴女は、この国の聖女です」

「私が!?」

リィアーラは弾かれたように顔をあげた。

「そうです」

ペガサスは尚も言う。

聖女なんて、おとぎ話でしか聞かない存在だ。

しかもこの自分が、そんな存在な訳がない。

真っ直ぐに、ペガサスはリィアーラの目を見た。

「さあ、乗ってください。わたしと戦いを止めに行くのです」

「い、嫌よ!」

ペガサスの言葉にリィアーラは叫んだ。

リィアーラはガクガクと震えた。

だって、自分にそんな大層な役目が務まるとは思えない。

戦争の真っ只中に飛び込むなんて、とてもじゃないが無理だ。

「リィアーラ」

頭の中の声、ペガサスは困った様に瞼をしばたかせた。そして哀しげにその瞳を伏せる。

「リィアーラ、貴女しかいないのです。どうか……」

そうペガサスは言うと、長い前足を曲げて跪くように頭を下げた。

「リィアーラ、これは神の御意思。どうか、どうか受け取ってください」

「……」

リィアーラは一生懸命考えた。

自分が聖女となり、戦いを止めることでたくさんの命が失われずに済む。

ならば……。

でも、本当にやるしかないの? これは、神様の御意思なのに?

逡巡しながら、リィアーラは尚も躊躇っていた。

その時だった。

「リィアーラ、勇気を出すのです……!」

頭の中にペガサスとは違う声が響いた。

あたたかく、優しい、それでいて荘厳なこの声は。

「神様‼」

直感だった。

リィアーラは思わずその場に頭を下げて伏せた。

そしてもう悟った。

これは、夢物語じゃなくて本当に、神様の御意思。

リィアーラは決意する。

立ち上がり、真っ直ぐにペガサスの瞳を見る。

「私、聖女になります」

そっと手を伸ばして、リィアーラはペガサスの頭を撫でる。

ペガサスのオーロラ色の瞳が煌めく。

その背に乗ると、リィアーラは戦地の方へと真っ直ぐに向き直る。

羽ばたくペガサスは、そして戦地へとリィアーラを乗せて赴いたのだった。






後編も、是非ともお読みください。


ここまで、お読み下さり、本当にありがとうございます。

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