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 大精霊4人による千奈津への感謝が一通り終わった頃、緑神楽が樹玉くんに視線を向け近寄る。


「アナタのその手に持つ人形、面白いことをしてますね」


「ホントだ! 死霊だな! (バシッ) へぇ! 面白い! どうやってこんな人形の中に入れたんだ?」

 

 あーちゃんも緑神楽の背中からひょいっと顔を出したのち、一瞬で樹玉くんが抱えるエリザベスを奪い取った。


 あーちゃんによって奪い取られたエリザベスは両手足をバタつかせ、全力で抵抗しているように見えるけど、手足が短くあーちゃんの手に届いていないので逃れるのは不可能だろう。


 ……というか、エリザベス、人形なのに普通に動いて――、これも樹玉くんの能力スキル


「エリッ、ザベーーースゥ!!」


 うぇ!? 


 眠れるロボット兵こと樹玉くんが、これまで決して見た事ないレベルの怒りと速さで近くにいた緑神楽ごとあーちゃんに襲い掛かる――が、あーちゃん、緑神楽共に楽々と避ける。


「あーちゃん! 今すぐ返して!」


「……え? ……あ」


 わたしの言葉が耳に入ったあーちゃんは、すぐに何のことだか察して、再び自身に殴りかかってきた樹玉くんの拳をエリザベスを鷲掴みしていない左手で受け止め、「ごめんな」と一言呟きエリザベスを返す。


「エリザベス! エリザベスッ!! ううっ……」


 取り戻したエリザベスを大事そうに両手で抱え込む樹玉くん。ガチ泣きしてる。


 わたしはドン引きしていたけど、わたしに怒られたあーちゃんは、わたしと樹玉くんを交互に見て顔を青くしている。

 どうやらちゃんと悪いことをしたとわかっているらしい。

 

 わたしはあーちゃんの傍によって「ごめんね、だけじゃダメ。もっとちゃんと謝って」と教え、素直に従ったあーちゃんがボロ泣きする樹玉くんの傍によってしっかり謝る。残念ながら樹玉くんにその謝罪を受け入れる余裕はないらしく返事はなかった。


「……返事、なかった」


「見てた。ちゃんと許して貰えるまでMPご飯抜きね?」


「がーん!」


 がーん、って。そんな漫画みたいな……。


 完璧超人であった三條目万里は、あらゆる分野の知識を求める気質があった為、普段の勉学の他にも王道と言われる漫画、アニメ、小説など一通り網羅している。

 だからこそ、わたしの記憶を覗いたあーちゃんはこの世界にない言動をモノにしていた。

 

 見た目がこれだけ美人なのにこの言動は残念過ぎる。早く何とかしないと。

 ……そういえば、あーちゃんエリザベスに何か言ってたよね? ……死霊? ん? わたしの記憶じゃ樹玉くんの能力スキルって『人形使い』って名前だったような? あれ?


 そんなことを考えていると、スッと緑神楽がわたしの傍に寄ってきた。


「――我が主。そろそろ精霊交代を始めて宜しいですか?」



 精霊王との連絡が取れたらしく、各地で囚われている上位精霊たちの救出が精霊王によって始められたらしい。


「――火の上位精霊が解放。暗くなる」


 わたしのすぐ傍でくっついていたくーちゃんがそう告げ、その言葉通り時刻は昼過ぎだったにも関わらず、辺り一帯が完全に闇に包まれた。


 そんな中、たった1つだけ光を灯す存在がある。

 あーちゃんだ。

 

「お? アタシからか! よーし見てろバンリ! いっくぞぉぉぉ……―― 『世界にぃ! 火をぉぉ!!』」


 あーちゃんが「いっくぞぉ」という言葉と共に空高く跳び上がり、上空で大声で叫ぶ。ここまで聞こえるのだから余程の大声だったと思う。同時に、彼女の周囲に眩い炎が舞い起こり、それを起点として円状に闇が晴れていき世界に色が戻った。


「目、が」


 千奈津がボソっとそんな事を言った。

 わたしにはすぐ、彼女の言葉の続きを察することができた。


 目が良くなった、だ。

 どうしてそれがすぐわかったか?


 わかるよ。だって、世界が美しいから。


 地面の色が違う。空の色が違う。

 今目に映る光景と比べ、直前までの景色が如何に色褪せていたことか。

 

 そう。この瞬間。文字通り。


 世界は、生まれ変わったのだ。

 

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