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 さて、どうしようかな。


 20万MPを使い召喚したロリ声の黒龍によってボロ雑巾と化してしまったクラスメイトたちを、地上へ続く転移門に投げ飛ばして貰った後、助けたかった1人と、気まぐれで助けた4人に向き直る。


 5人は、手足にあるであろう凍傷などが一切ないことに疑問を持ちつつ、わたしと向き合っている。

 

 クラスメイトに切り捨てられた5人。


 (くろがね)(けい)

 誰にでも明るく接する天真爛漫さが女子に非常に人気が高かったけど、ここに来て刃物愛に目覚めてしまい、一転危なっかしいヤツ、というイメージを持たれてしまった。

 女神から与えられた能力スキルは、『鍛冶』。

 その能力スキル名の通り、武具を作ることを得意とするが、戦闘面では当然役に立たず切り捨て。


 樹玉(こだま)朔也(さくや)

 胸に抱くグレープフルーツ大の頭かつ二頭身の人形を、何よりも優先し、それ以外には無頓着な変態。

 クラス1の長身で優に180センチオーバー。たまに鳥が止まってる。

 女神から与えらえた能力スキルは、『人形士』

 そのまんま過ぎてみんなで引いた。ちなみに能力スキルを使うことでエリザベスを動かすことができるが、彼の確固たる意思で戦闘参加はNG。たまにエリザベスが、樹玉の意思と関係ない動きをし、生きてるんじゃないか?とクラスメイトの間で噂。当然切り捨て。


 十文字(じゅうもんじ)大五郎(だいごろう)

 古風な名前とは裏腹にかなりのチャラ男。自分の名前も相当嫌悪感があるらしく、苗字、名前問わず呼ばれることを嫌い、誰彼構わず、自身で付けたあだ名〝クロス〟と呼ぶことを義務付けてくる。

 女神から与えられた能力スキルは『幻覚』。

 人間、魔物を問わず虚実を交えた映像を見せ、惑わす。

 強力な力ながら、発動が範囲タイプなので、敵味方関係なく幻覚を見せてしまい邪魔扱い。切り捨て。


 鏑木(かぶらぎ)詩織(しおり)

 現実に存在しているボクっ子。身体が小さく何を着ても袖から完全に手が出ない。

 その仕草が可愛いと男子の間で噂だけど、女子の一部はそれが敢えてだということを知ってる。

 女神から与えられた能力スキルは、『窃盗』。

 名前通りイメージの悪い効果で、他人の持ち物を問答無用に奪う。

 対人では強力だが、持ち物を持たない対魔物戦では役立たず。

 男子人気は高かったが女子から嫌われ気味の為切り捨て。


 北大路(きたおおじ)千奈津(ちなつ)

 思ったことをそのまま口にしてしまう上に、そのほとんどが毒舌という歩く凶器、というか狂気。

 自分の性格を理解して、自分から他人にほとんど近付かないが、完璧超人、三條目万里が攻略し、以降、万里にベッタリくっついていた。

 女神から与えられた能力スキルは、『血界』。

 己の血を武器とし戦うことができるが、戦う為に傷口が必要で、更に一度出した血は戻らない為、一度の戦闘が終わった後、血液量が回復する数日間は貧血状態になってしまう。切り捨て。


 この5人に、わたし。そして既に死んでしまった木南美香、あと本人は知らされてなかったみたいだけど、『乾坤一擲』という自分が追い込まれた時だけ力を発揮するっていう馬鹿能力スキルを与えられた櫟原龍馬を加えた8人が今回の処分対象だった。


「万里!」


 そんなことを考えてると、わたしが口を開くのを待てなかった鉄圭が、噛みつくように問いかけてくる。


「なんでっ! どうしてっ! そんな力があったのにミカちゃんを見殺しにした!?」


 ……ホント、どうしよっかな。


「万里。答える必要、ない」


 わたしがどう答えようか悩んでいると、北大路千奈津が立ち上がって、わたしと鉄圭の間に入った。


 この子がわたしに今回の処分計画を前もってリークしてくれ、()()()()()()()()とわたしが選択した後も、迷いなくわたしに付き合ってくれた唯一の友達だ。


「チナツちゃん! どうしてキミが邪魔をする!? その女――三條目万里は、人殺しなんだよ!?」


 わたしに対し背中を向いている北大路千奈津から放たれる雰囲気が変わる。

 後ろからでも彼女が怒っているのがよくわかる。


「――人殺し? 何それ。千奈津のこと?」


 その空気を感じ取った鉄圭は、慌てて弁明をする。


「どうしてチナツちゃんのことになるんだ!? そうじゃない! キミの後ろにいる――」


「なるよ? 今からお前、殺す」


 既に怒りの臨界を越えていた北大路千奈津は、装備していた短刀で自分の腕を斬り付けようとする、が、それは叶わない。瞬時に持っていた短刀が消え失せてしまったから。


「知らなかった。ボクっ子。お前、こんな現実見ない馬鹿が好きなの?」


 千奈津はギロっと鉄の斜め後ろを見る。

 そこには狼狽えた表情のまま、五十嵐が手にしていた短刀を持つ鏑木詩織がいた。


「……好きとかそういうコトじゃない。今のは圭クンが悪い。でも、いきなり殺そうとするのは間違ってる。てか訳わかんないよ。北大路さんは三條目さんの強さ、知ってたの?」


 知る訳ない。『召喚』という能力スキルを持っていたのは、千奈津を含めクラスメイト全員知ってたはずだけど、『魔導死霊の頭飾り(リッチ・ティアラ)』を被らされ、300年もの間、強制気絶によるMP強化に努め、ようやく手にした力だ。


「なに? 相手のすべてを知らないと気が済まないの? 聞いたら全部教えてくれると思ってるの? そんなのお前が拐かしてた男にしか通じないよ?」


「は、はぁ!? なんでそういう事言うの!? 命を支え合う仲なんだよ? そんなの教えて当然でしょ!?」


「支え合う……。そう。ゴメン。千奈津が知らなかっただけかも。千奈津が見た限り、お前、男の影に隠れてばっかだった気がするけど誤解だったみたい。……覚悟して答えろ。お前、この世界に来た後、万里の何を支えた? 鉄。お前も答えろ」


 溢れんばかりの殺気を放つ北大路千奈津。

 鏑木詩織はその問い答えようと一旦は声を出そうとするけどすぐに口を噤む。


 それはそうだ。

 そんなもの、1つもなかったのだから。

 

「……っ! でも! 三條目だってまるで魂が抜けたようになって、わたしたちをまるで支えようとしてくれなかった! それなのにどうしてこっちが支える必要があるの!?」


「っ! ホントに救えない。最後に答えてあげる。一体誰が――」


「千奈津。話長い」


 長くなりそうだったので、止める。

 別にわたしは、この異世界に来てから行った行動を自慢したい訳でも自慢して貰いたい訳でもないからだ。

 わたしに止められた千奈津は、ぎゅっと唇を噛み締めて、一歩下がる。


「ゴメンだけど、今はそっちの質問に答える気はないの。ホントはわたしに着いてくるか、来ないかの二択を迫りたかったんだけど、その必要もないみたいだね」


 鉄と鏑木が厳しい顔をする。

 現実では理解している。殺されかけた自分たちに帰る場所なんてない。

 だけど、わたしに不満をぶつけてしまった今、一緒に行くとは口が裂けても言えないだろう。


「さっきのドラゴンのお陰で、外にいる彼らもしばらくはアナタたちの事を追いかける余裕はない。行くならすぐ行った方がいい。千奈津は来る……よね。じゃぁ、わたしたちはもう行く――」


「俺も行くよ。エリザベスたんもそう言ってる」


 一番存在感ある見た目をしてるのに、今、殺されかけたショックからか心身喪失状態となっている十文字大五郎と並んで、最も存在感がなかった樹玉朔也が、突如名乗り出た。

 見ると、彼の腕の中にあるエリザベスの片手を持ち上げ、まるでエリザベスが挙手したような姿だ。


 できれば千奈津だけ連れて行きたかったけど……。


「……いいの? アナタ、千奈津にも、そしてわたしにもあまり接点ないでしょ」


「いい」


「――っ! 朔也が行くなら俺も!」


「――それが、許されるとでも?」


「っ!?」


 迷いのない樹玉朔也の言葉に、鉄圭が呼応したように声を発する。が、北大路千奈津がそれを許さない。

 地面を見つめながら、悔しがる鉄圭と鏑木詩織。それにずっと地面に目線を落としてブツブツ喋っていた十文字大五郎をダンジョン内に残し、わたしたちは転移門に進んだ。


面白い。先の展開が気になる、と思ってくれた方、ブックマークをお願い致します。

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