14 side――櫟原龍馬――
「……?」
クラスメイトの1人である、俺、櫟原龍馬は戸惑いを隠し切れなかった。
魔法や魔物が当たり前のように存在するこの世界に於いて、とある機関、とある特別な方法でパーティー申請することで、魔物を倒す際一定の範囲内に居てさえすれば、完全均等までとはいかないまでも、パーティー全員に経験値が入る仕組みになっていた。
この仕組みをクラスメイトが知った際、全員でパーティーを組むべきだ! 或いは戦える者だけがパーティーを組むべきだ! という2つの意見に割れたが、仲間割れを嫌う者たちと、直接の戦闘能力が低い者たちが団結し、最終的に全員でパーティーを組む形に収まった。
その結果、当たり前の事ながら、クラスメイトの成長は彼らが思った以上に遅れたことに加え、ならばと改めて非戦闘員を外したパーティー編成を行おうとクラスメイトで話し合いが持たれたが、既に甘い汁を吸う事を覚えてしまった非戦闘員がそれを全力で拒否。
結局、戦闘に役立たないメンバーを切り捨てるという無慈悲な決定が、クラスメイトを召喚した教会、そして一部のクラスメイトたちによって勝手に決められた。
そして現在。教会がグルになった計画を実行しようと、教会から借り受けた呪われた魔道具、『魔導死霊の頭飾り』を処分対象の1人である木南美香に被らせ殺し、次のターゲットである、パーティー内の調和を乱しまくった三條目万里にも被せた。そう。被せたのだ。
おかしい。木南は被せた直後に髪全部白髪に変わって死んだっつぅのに、コイツは何一つ変わりや……いや、なんか知らねえがコイツ……可愛く? バカが。あり得ねぇ! つーかこれ、もう死ん「――『召喚』」「――は?」
突然。身動き一つしてなかった三條目の口元が微かに動き、声が漏れた。
――今、何て? 召喚? そう口走ったのか!? ――有り得、ねぇ! お前のMPじゃ何も喚べず、気絶すんのが関の――――……
――――絶句。
まるで言葉を封じられてしまったが如く、一切喉から声が出てこない。
その場に出現した〝ソレ〟の恐ろしさを本質的に理解できてしまったからだ。
なんだこれなんだこれなんだこれなんだこれ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死――
銀色の長い髪。血のような深い赤色の目。
身長150センチほどの美少女にしか見えない〝ソレ〟は、如何にも〝今起きたばかり〟と言わんばかりに、目元を擦っている。
ちなみに、彼女の容姿とは似つかわしくもない、継ぎ接ぎだらけのパジャマのようなものを着ていた。
一瞬で異常な量の汗を顔中――いや、全身から流しつつ、自分でも笑ってしまう可笑しな呼吸音を伴ってしまっている俺に限らず、計画を担当し、未だダンジョン内に残っていた一部のクラスメイトたちの呼吸も止まり、恐らく三條目によって喚び出されてしまった〝ソレ〟の一挙手一投足を固唾を飲んで見守る。
きょろきょろと周りを伺ったソレは、召喚主である三條目を見つけるや否や、胸元を隠すように両腕をクロスさせ、顔を真っ赤に染め上げながらこう懇願した。
「や、やり直しを要求しマス!」




