表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/20

13


「しーちゃん。あと何分?」


「……は、はい。……えーと。……あと、10分32秒です」


「ありがと。それにしても、まさか精霊王の言ってた『魔導死霊の頭飾り(リッチ・ティアラ)』の終了時間から、更に200年も閉じ込められるとは思ってなかったよ」


「……っ!! ほ、本当にごめんなさい! わ、わたしの加護のせいで……」


 わたしの言葉を重く受け止めてしまった白苑(しーちゃん)が泣き出してしまった。

 しまった。そういう意味で話した訳じゃないのに。


「気にしないで。200年と言っても、50回ちょっと気絶回数が増えただけだし。それに増えたMP分、しっかりみんなにご飯上げれたしね。わたしも加護の説明を聞いた時に気付くべきだったよ。まさか、魔道具性能強化の加護が、こんな形で現れるなんてね」


「……はい。……すみませんでした」


 自覚は薄いけど、約200年前。精霊王が示した残り時間が、月単位といういい加減なモノだったので、気絶で微調整を繰り返し、残り1月を切った時点で、通常睡眠に切り替えて日々を過ごしていた。

 そんな最中、朱莉(あーちゃん)が突然「しーちゃん、残り時間わからないの?」と無茶振りをしだした。

 初めの内はしーちゃんも狼狽えてたけど、元々そういう素質があったのか、案外アッサリと空間崩壊までの残り時間を導き出したのだ。


 あの時は開いた口が塞がらなかったなぁ。なんせただでさえ白い肌のしーちゃんが顔面蒼白しながら、あと200年16日なんて言うんだもん。


 その後の考察で、しーちゃんの加護が原因でわたしの本体が触れている魔道具の性能が上がってしまった可能性が極めて高いことがわかり、一旦しーちゃんからの加護を取り消して貰ったけど、残り時間は変わらず。

 緑神楽(みかぐら)による成長の加護のお陰で気絶時間は減ったにしろ、同じく加護の効果によって、一度の気絶で1%しか上がらなかったMP量が10%に跳ね上がってしまった結果、あっという間に気絶時間は1年を突破。


 そのくらいの頃かな? 4人から気絶から回復する度に召喚し直して欲しいって、神妙な顔付きでお願いされたのって。はぁ。今思い出しても気が回らなかったなぁ、わたし。


 わたしにとっては、ほとんど時間の感覚があってないようなものだけど、4人にとってはわたしが1年以上眠り続けている間、相当心細い思いをしていたらしい。

 特に大精霊となって、これまで以上に喜怒哀楽の感情が表に出せるようになってしまった今、その精神的不安は計り知れないほど増してしまったらしく、特にあーちゃんなどは、ずっと起きないわたしを揺すり続け、何日間も泣き続けていたらしい。

 気絶から目覚めたわたしに、涙ながらに懇願する姿は、本当にショックで、わたし自身の愚かしさを思わず呪ってしまった程だった。


 以降、気絶の直前に4人を送還。起きる度に召喚し直す、という行動を付け加えた。

 送還された4人は、時間の流れがある外の世界に戻っているらしいので、彼女らの感覚では、送還された直後に喚び戻される、という感覚らしく尋常じゃない程喜ばれた。


「うん。じゃあ、まずは無事にダンジョンを脱出して、そのあとすぐ召喚し直すよ。だから心配しないで待っててね」


 わたしの言葉に4人が黙る。

 どうやら精霊とダンジョンは非常に相性が悪いらしく、ダンジョン内で召喚しようとしても、まず喚び出すことができない。そう言われてしまった。


 計300年もの時間の中で、4人はわたしの生い立ちから、三條目万里というキャラクターの件、更には、外に出た瞬間に待ち受けている試練のこともすべて理解している。

 その上で、自分たちが何一つ手助けできないという不甲斐なさを静かに噛み締めていた。


「我が主。改めて〝約束〟をお願い致します。10日。10日間主からの召喚がない場合、僕たち4人は、この世界に顕現し、主がいるダンジョンを外から破壊して救出に向かいます。構いませんね?」


 緑神楽が4人を代表して、以前わたしと交わした約束を口にする。

 常日頃から膨大なMPご飯を与え続けられた4人は、わたしという媒介が存在しなくても、数日程度なら顕現し続けることができてしまう程に力を得たらしい。

 

 正直、絶対とって欲しくない手段だ。

 不老不死や無敵というとんでも加護を得たわたしはともかく、偶然その場に居合わせた冒険者たちは確実に命を落としてしまう。

 実際ダンジョンを抜け出せないことなんてあるの? とくーちゃんに相談すると、何かしらの手段を用いた上の〝拘束〟状態になって身動きが取れなくなる場合が有り得る、と真剣な表情で語ってくれた。

 

 そうなんだよね。氷の能力スキルを使われて身動き取れない状態なんだよね。……はぁ。アレを10日以内に何とかしないと……。


「わかった。その時はお願い。でも、無理はしないで」


 それに、わたしには手足を縛る氷より優先するべきことがある。

 

 被さられている『魔導死霊の頭飾り(リッチ・ティアラ)』を改めて使用されないこと……。まぁ、最悪被らされてもまた300年ここで過ごせばいいだけなんだけど……。……あれ? よく考えてみれば、気絶時間は延び続けているし、大した回数気絶しなくても300年過ごせるはずだよね? 4人もすぐさま召喚できるから、寂しさとかそういうのもないし……。じゃあ、大丈夫かな?


 そんなことを考えている内に残り時間が近付き、何かを確認しながらしーちゃんがカウントを初めてくれる。


「じゅ、十秒前です! 7、6……」


「じゃ、いってきます」


「いってらっしゃーい!」「早く喚んで」「健闘をお祈りしております」「あ、……えーと! 2、じゃなくて――」



 ――そうしてわたしは、外の世界に戻った。



 ===========


 バンリ・サンジョウメ 

 LV18

 HP45/45

 MP18956788/18956788(+1723344)


 ===========

 

面白い。先の展開が気になる、と思ってくれた方、ブックマークをお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ