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第3話

 旦那様と奥様がそろって出掛けたのは少し前のこと。

 おふたりが夜をともにされてから数日が経過していた。

 あの旦那様がまさか結婚するだなんて。

 今朝のおふたりも幸せオーラに包まれていたように思う。

 私が磨き上げたんですもの。今頃。デュへへヘヘ。

「顔が汚いですよメアリー」

 冷淡な声に思考を現実に戻し口元を拭うと髪を後ろへ撫でつけた男がこちらを見下ろしていた。

「なによスペンス。あんたこそ気になってるくせに」

 スペンスと呼ばれた男は眼鏡を押し上げて呆れたようにため息をついた。

「あなたとちがって私は公私はわけていますので」

 無駄に高い位置にある顔が冷たく見下ろし「あの旦那様が休日に出かけるだなんて。しかも奥様を伴って」「下世話です」ぴしゃりと声がかかる。

「あなただって気にならない?」

「べつに。私は仕事をするだけですから。あなたも仕事に戻りなさい」

 なによこの三白眼。

 べーっだ。

 背を向けて去っていく背中に舌を出してやったところでスペンスが足を止めて振り返った。

「メアリー」

「は、はいっ」

「あなたは人の背中に舌を向けるのですか?」

「……へ?」

「花瓶に、反射して映ってましたよ」

 指差した花瓶にはメイド服の女の子が映っていた。その顔は次第に青ざめていく。

 あああぁ。なんてことなの。

 自身の日頃の行いの良さを呪った。

「ち、ちがうの、いまのは」

「なにがちがうと言うんです?」

「い、いまのは」

 詰め寄られ言い訳を探しまわっている間にいとも簡単に肩に担がれる。

「どうやらあなたはまだ主人に仕える心構えがわかっていないようですね」

 業務中に解かれることのない彼の首元を装飾するタイが緩められ「それにほら今は就業時間でしょう? だから、ね?」「休息も必要でしょう。それにこのまま給仕をされるのも公爵家の名に関わる問題となりましたら困りますので」許しを乞うメイドの声はさらさら届くことはない。

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