2
2羽のメジロがその場所――桜の木が満開に咲き誇っている所に近づいて行くと自分の事をアニキと慕ってくれるメジロがため息をつくような感じで「桜がキレイッスね」と言ってきた。
「そうだな」
2羽のメジロが桜を見入っていると、そこから「オレの縄張りなんだから、お前は出ていけー!」という叫び声が聞こえてきた。
「この声は……」
自分の事をアニキと慕ってくれるメジロの声がだんだんとおびえる様な声になってきた。それを感じとれたメジロはそれを慰めることもなく平然と「ヒヨドリだな」と言った。
「アニキは怖くないんスか?」
自分の事をアニキの様に慕ってくれるメジロが目を見開き、自分に聞いてくる。
「最初の内は怖かったが、最近は……なれた」
「さすが……アニキ!」
自分の事をアニキの様に慕ってくれるメジロは、尊敬のまなざしを向けてきている。そのまなざしに対して、少しだけ居心地の悪さを感じ始めた頃、雨の匂いを感じとった。
「雨が降ってくるな。ここで雨宿りをしよう」
2羽のメジロが桜の木の枝の根元――幹に近い辺りに止まり、雨が止むのを待っていると、辺りから甘くて美味しい匂いが漂ってきた。
(気がついてくれるか?)
「この匂い……。美味しそう……」
その言葉を聞けて少しは安心できたがまだ蜜を吸ってはいない。
「近くの桜の花びらに雨水と桜の蜜が混ざり合って甘い水が飲めるんだ。飲んでみないか? 美味しいぞ」
「アニキが言うんなら……」
自分の事をアニキの様に慕ってくれるメジロが、ゆっくりと甘い水を飲んでいる様子を見ているとなんだかドキドキしたが、すぐに勢いよくその甘い水を求めて周りを移動し始めた。
(気に入ってくれて、よかった……)
「アニキ! 美味しいッス」
一通り満足するまでその甘い水を飲んだ様で、満足そうな表情だ。
「これから、ここにきて桜の蜜やこの甘い水を飲もう」
「はい! アニキ。あっ、虹が出てるっスよ」
メジロが空を見上げると、虹が空に出ていた。
「キレイだな」
それを、見ながらある事を思い出した。
(確か、人間が雨粒のことレインドロップとか言ってた。それから、道端に落ちてた何かの入れ物にドロップって書いてあってそれからはすごく甘い匂いがした)
「どうしたんスか、アニキ」
「いや、まさしくレインドロップだと思ってな」
自分の事を慕ってくれるメジロは意味が解らないと言いたそうな表情をしている。だが、それが妙なツボに入ったメジロは小さな笑い声を出してしばらく笑っていた。
読んで頂きありがとうございました。