1
梅の木の周りは梅の香りが漂っている。その匂いに惹かれるのは、人間だけじゃない。花の蜜を食料としている、鳥――特にメジロ達が梅の木に群がっている。
(うわっ、今日もいっぱいいる)
食料として梅の花の蜜を頂いているメジロ達は、お腹を満たすために、梅の木がある所を目指して飛んでいき、その木になっている梅の花の蜜を吸っている。そして、そこに次々とメジロがやってきても、蜜を夢中になって吸っているメジロ達はそれに気が付かない。
(アイツはいるかな?)
自分の事を〝アニキ〟と慕ってくれるメジロを、空中から探すと、そのメジロは美味しそうに梅の蜜を吸っているがなんだか物足りなさそうな表情をしていた。空中から見ると、梅の木が植わっている地面には梅の花があちらこちらに散らばっている。
(これじゃあ、仕方ないか……)
アニキと慕われているメジロはアニキと慕ってくれるメジロのそばにある梅の木の枝に止まり、とりあえず梅の花の蜜を吸った。
今日初めて口にする梅の蜜。
「やっぱり、美味いな! 幸せだ」
すると、自分の事をアニキと慕ってくれるメジロが自分の事に気が付いてくれ、挨拶してきた。
「あっ、アニキ、おはようございます。やっぱり、ここの梅の花の蜜は美味しいッスよね」
そう言って、少しの間があり「だから……」と言い難そうにしている。自分の事をアニキと慕ってくれるメジロが言おうとしてることがわかったメジロは声を潜めて、そのメジロだけにこう告げた。
「梅の花の蜜より美味しい蜜がある所を知っているんだ。そこに行かないか?」
それを聞いたメジロは目を輝かせ「それは何処にあるンスか」と嬉しそうに聞いてきた。
「それは、着いてからのお楽しみだ」
2羽のメジロが梅の木から飛び立っても、他のメジロ達は見向きもしない。きっと、梅の花の蜜に夢中で今の会話が聞こえていなかったんだろう。
「アニキ、早く早く!」
自分の事をアニキと慕ってくるメジロが自分の事をせかしてくる。余程楽しみで、たらふく蜜を吸えることが嬉しいんだろう。
「そんな慌てなくても、逃げないよ」
自分の事をアニキと慕ってくれるメジロは、その場所に向かうまで、どんな花の蜜なのか詳しく聞きたくてウズウズしているようで、その様子が微笑ましく感じた。
読んで頂きありがとうございました。