森重里奈の日課
私の名前は森重里奈。お父さんとお母さんと1つ年上の兄を持つ高校1年生。
小学校に入ってすぐ少し重めの病気をして、入院していたこともあるんだけど、今ではこの通り元気いっぱいなのだ。そのときの経験から看護師を目指して、今は看護科のある学校に通っています。
今日も普通の生徒より早起きしているけど、頭の中はすっきりしています。お布団の魔力にあらがえないかおるにぃとは全然違うのです!
そんな私の一日は家族全員のお弁当を作るところから始まります。美味しい美味しいお弁当をみんなに届けるために今日もがんばるんだ。
「りなー、こっちも見てないと焦げちゃうよー」
「はーい、お母さん」
とは言っても、今はまだ一人で全部こなしているわけではなく、朝ご飯を作るお母さんと共同作業。まだまだ、お嫁さん修行の道半ばなのです。
出来上がった具材を詰めるために、棚に並べられている弁当箱に手を伸ばすが途中で止める。私の視線の先にある青色の弁当箱は兄のものだ。
今日はこれを使う必要はない。別に今もぐっすり眠っているであろうかおるにぃへの嫌がらせとかではないから!
実は昨日びっくりするような事件が起きた。家に帰るとへたれのかおるにぃと私も大好きなひいろちゃんが抱き合っていたのだ。
二人には中学生になる頃から距離ができていたと思う。詳しい事情は私には分からないから、何か諦めているような兄には少し言いたいこともあったけど、ひいろちゃんが納得しているというので私に出来ることはなかった。
そんなことがあっても私はひいろちゃんと仲良くしていたし、かわいいかわいい彼女と遊べなくて悔しがるがいい!とか思いながら過ごしていた。
けど、3人で昔のようになりたかったし、何よりどう見ても好き同士な二人がすれ違うのは辛かった…
でも、でも!それも昨日でおしまいかな。昔のように引っ付くひいろちゃんとそれを少し恥ずかしそうに受け入れるかおるにぃ。冷静さを保とうとしているのかもしれないけど、嬉しそうなのがバレバレ、兄よ。
そして、このお話がどう兄の弁当を手に取らなかったことに繋がるかというと、何とひいろちゃんがお弁当を作ってあげたいと言うのだ。
昨晩メッセージアプリでそういうやり取りをしてある。私がスマホをゲットしてから、家族以外で最初に追加したのはひいろちゃんの連絡先だ。
昨晩メッセージアプリで、かおるにぃと何があったのか問いただしているときに、明日の弁当を作らせてほしいと言われたのだ。ひいろちゃんには前に私がみんなの弁当を作っているとこを伝えてある。そして、もちろん快諾である。
ついでに、朝私の家に来るように伝えておいた。
かおるにぃと朝登校の約束をしていたみたいだが、私に弁当のことを伝えに来たとでも言えばごまかせるだろう。
大好きなくせに何年も放置するような兄はだらしないその寝顔をひいろちゃんに見られてしまえばいいのだ!
自分とお父さんの弁当箱に具材を詰めていると、玄関の呼び鈴が鳴った。きっとひいろちゃんが来たのだろう。
兄よ、私はひいろちゃんの味方につく。ヘタれるすきもないくらい追い込んで見せよう。
 




