第7話・指輪と誤魔化し
『『一体どうすれば』…』
私達は、同時に溜め息を吐いた。
『あ、そうだ!』
『ん?…どうかしたのか?…』
『ヴァインのサブ職業って、確か、鑑定士だったよな?』
そう、ワルマスというゲームにはアサシンやエクソシスト等の普通の職業の他に、サブ職業と言うものがあるのだ。
まぁ、その説明は後日するとして…
『あぁ、そうだな…』
『この指輪を鑑定してもらえば良いんじゃないか?』
彼女の言葉に、俺は、確かにと頷いた。
アプレイザーとは、その名の通り、道具等を鑑定する力を持つサブ職業だ。
『よし…じゃあ…此処に来たら頼もう…』
俺は、そう言いながらまた頷いた。
しかし、何だかこの指輪はどうも恥ずかしい。
何故かと言われれば勿論…
この指輪が“左手の薬指”にはめられているからだ。
そう、はめる指が選べないなんて、ゲームなら当たり前だが、左手の薬指何て言うのは驚くしかない。
いや、間違えた。
照れるしかないというかにやけるしかないというか…
(いっそ、外れなければ良いのに)
とか、思ってしまうわけで。
(女々しいかよ…)
と、自分でも情けなくなってしまう。
と言うかこれは不可抗力だ。
そうだ、これは俺が仕組んだわけでもなく、偶然左手の薬指だっただけである。
…今現在下心しかないのは否定できないが。
(あぁもう…そんな事を考えてるだけで…緊張してきた…)
こんな事態になれば、流石に意識してしまう物も有ると言うものだ。
(別に、け、結婚なんか…想像なんか…してはいない…と、思いたい…。)
とか思ってる時点で想像してしまったのだが。
『お帰り』
とか言うスカーレットを想像してしまったのだが。
なんならそのスカーレットは部屋着にエプロン姿であり、俺の荷物を持ってリビングに行ったかと思いきや…
『夜ご飯、もうすぐできるから待ってくれ』
とか言いながらキッチンへと消えてきて、手料理振る舞ってくれてるのだが。
『はぁ…』
思わず、何やってるんだとか、可愛いとかなんとか、色んな意味のこもった溜め息が出るのは仕方のない事である。
『どうかしたのか?』
すると、心配するような瞳で、彼女が俺の顔を覗き混んできた。
彼女に此処まで近付かれるまで気付かないとは…と、もう一度溜め息が出そうになったが、それは流石にグッとこらえて…
『ちょっと考え事をしていただけだ…』
と、誤魔化すのだった…