第50話・手紙の正解と問
『…これで最後の文字だな…』
そう言いながら、私が口頭で伝えたデジタル化された最後の一文字を、飛竜が日本語に直して書き表していき…
『ああ、読み上げてくれないか?』
ついに完成した。
私は飛竜に読み上げをお願いする。
『…分かった…』
飛竜は一度深呼吸をし、読み上げ始めた。
『誇り高き善を突き通せしギルドマスター、
スカーレット様へ
こちらの事情で貴方様の班員を勝手に奪ってしまい、申し訳御座いませんでした
しかし、返す気等は有りません
何せ、彼女は私のものなのですから
では、御機嫌よう
チャンスではなく意志と捉えし執事より』
飛竜が言い終わると同時に、私は隠しきれない怒りと、やはりかという気持ちに囚われた。
『あの執事…
ミミの勘違いじゃなくて、本当に…!?』
私はそう、思わず口走りながらも、ミミの見間違いかと思っていた自分を恨んだ。
『…婚約者…ってやつの話か…?
…そう言えばそんな話があったな…』
『今度こそ、まだ何処かにいるのなら探さないと…!』
私はまた、ドアに手を掛けて外に行こうとする。
すると…
『待て』
と、飛竜の声が響き渡った。
『…飛竜?』
私は思わず問いかけた。
すると…
『…当てずっぽうで行くよりかは…的を絞って向かったほうが良い…
…こんな手紙を送りつけるぐらいなら…
…普通に考えて…送らずに逃げたほうが…ミミを確実に俺達とは関係のない所へ連れて行ける…
…なのにしない…
…それには裏があると思う…』
私はその考えにはっとした。
かと言って、宛が全く持ってないのに、どうすれば良いのか。
取り敢えず、私は飛竜の話の続きを聞くことにした。
『…それって…?』
『…多分、俺達を試しているんだ…
…本当に…辿り着けるのか…
…あの婚約者の所まで辿り着けたら…
…ミミの仲間として認められて…返してもらえるかもしれない…』
そこでやっと理解した。
確かに、こんな手紙を送りつけるぐらいなら、遠くへと離れて、私達に捕まらないように逃げていくべきだ。
なのにそれをしないという事は、裏があると考えるのも自然であり、それが私達を試しているという結論に行き着くのも、何ら不思議ではなかった。
『という事は…この言葉の何処かに、ヒントがあるという事か』
『…多分そうなる…』
納得した私と飛竜の二人で、手紙からヒントが得られないかと、色々と探ってみるが、残念な事に検討もつかなかった。
『縦読みにするわけでもなさそうだな…』
『…確かに読めない…』
『じゃあ、この本文の何処かにあるのか…?』
『…確かに普通に考えて…一番手紙の中で重要なのは本文だからな…有り得るかもしれない…
…かと言って…何処にそんな謎があるのか分からない…』
『問題も無いのに答えを解くのは難しいな…』
『…あぁ…』
と、話を進めていくが、全くもって分からない。
そのまま、そんな二人を嘲笑う様な月に、夜に、ギルドは呑まれていくのだった…




