第49話・責任者の馬鹿馬鹿しい悩みー後編ー
『どうしてじゃないだろう
私はこのギルドの責任者だ
そして、何よりも…飛竜とミミの仲間だ
この私が、私こそ追いかけなければならないだろう』
私はそう言いながら、荒い息を整えつつ、誤魔化した。
本当はもっと言いたいことが有った筈なのだが、それが喉につっかえて言えなかった。
それもその筈、ギルドの責任者という立場にありながら、感情に任せて、つい、追いかけてしまっただなんて、彼に言える訳もなかった。
責任者としてあるまじき行為だったと、恥じているから言えないのだ。
何故だが最近、彼に嫌われてしまう事が怖くて仕方がない。
それもあって、言えないのかもしれない。
考え過ぎて、空回り過ぎて、正直、自分自身でさえ今何を思ってこの様な行動に出たのか、今となっては分からなくなってきてしまっていた。
(取り敢えず、誤魔化せたのなら良いのだが…)
私は恐る恐る、彼と目を合わせるのが怖くてうつむいてしまっていた、顔を上げた。
『…』
しかし、誤魔化せていなかった様で、彼は私に疑いの視線を向ける。
『いや、今のは嘘だな
気づいたら追いかけていたんだ
なんでだろうな…馬鹿馬鹿しい…こんな私で、申し訳な
『あんたは俺にとって…
あんたは立派なリーダーだ
あんたは立派なギルドマスターだ
あんたは立派な仲間だ
あんたは立派な大切な人だ』
『でも、飛竜…私は
『スカーレット…あんたは勘違いしてる…』
『え?』
疑問でしかなかった。
只の感情だけで咄嗟に動いてしまった事。
ろくに計算もせずに、リーダーとしての責任も考えずに動いた事、他にも悪い事ばかりなのに…
何故、彼はこんなにも優しく、それでいてはっきりと否定をするのか。
私にはそれが分からなかった。
何だか、又、彼の考えが分からない事が悔しくなってきて、何故だが辛い気持ちにもなってきた。
そんな時、彼は私に向かってこう言った。
『あんたは咄嗟に感情で動いてしまった…
けど、俺はそれを駄目とは思わない…
その感情は正しいモノで…それで…
仲間を想う本心が表れてるからだ
だから…その…ほら、行くぞ…』
そう言いながらくるりと回り、私に背を向け歩き出した彼の耳は、少しだけ赤く…
不意に、素直じゃなくて、とても不器用で優しい彼に、何処か喜びと幸福を感じていたのだった…
そしてはっきりと分かった。
私は只仲間を守りたいだけだったんだと。
(なんだ、案外単純じゃないか)
と、納得してきた。
それと同時に、数分前の私は何を難しく考えていたんだと、馬鹿馬鹿しくさえ思えてきた。
こうなれば道は一つ。
彼と共に、仲間と共に、仲間の捜索へと進むだけ。
私は、その一歩を踏み出したのだった…
近い内、新キャラを追加します。
その説明となりそうな小説を、オマケとして置いておきます。
ー新キャラ予告ミニ小説
(『吸血鬼少女は黒い傘の下で』に引き続き第二弾)ー
ー鈍感でアホな主と敏腕な従者ー
彼は黒縁の四角い眼鏡のレンズを妖しく光らせながら、僕にこう言った。
『ですから、私は常々申しているではありませんか
デザートの取り過ぎは禁物です
一日一回にしてくださいませ
さもなくば…次は、デザート一ヶ月禁止にしますよ?』
意地悪な瞳と、端の釣り上がった口の付いた顔を、覗き込むようにして見せつけてくる辺り、この従者には、従者たる心構えというものが足りていない。
(そういう時こそ、この僕が直々に叱ってあげなくちゃね!)
『コホンッ!
我が従者よ!』
『……何ですか?』
わざとらしく言葉の前に間を空けてから、彼は応答した。
『なによ!なによ!なによ!
な!に!よ!その、“又性懲りも無く…”って目付きは!!』
と、僕は全力でキレる。
『あらあら、我が主様、そんなに顔をしかめてしまうと、折角の若々しくも美しいお顔が台無しですよ?』
と、首を傾げてきた。
『ありがと!そんなに良いかなぁ?…
って、それにはもう騙されないもん!
影で従者仲間と僕の童顔いじりしてるの知ってるもん!
ばーかばーか!』
僕はそう言いながら、全力で自分より大きな大きな…多分、180cmは有る従者の体を両手をグーにしてぽかぽかと殴る。
『ふんっ!
今のはどーだー!
必殺連続打撲攻撃!』
僕はえっへんと胸を張りつつそう言う。
『サッスガワガアルジデスー』
『もー!何よその棒読みは!
むー…』
僕は落ち込みつつも唸る。
すると…
『おっと、こんな所に甘ぁ〜いチョコレートが!
でも、俺は甘いのは食べないんだよなぁ〜
あ〜、こんな時に代わりに食べてくれる女の子が居たらなぁ…』
わざとらしく、彼は執事らしい服のポケットから、一口サイズの甘そうなチョコを取り出す。
『そこの従者…そう言う時こそこの僕じゃん!
ね、頂戴!頂戴っ!』
僕は必死にチョコを貰おうとする。
すると…
『御主人様、又、勝手に食べたりしませんか?』
『…うー…うん…食べ…ない…』
『聞こえないなぁ』
そう言いながら、意地悪な従者は僕の手の届かない程高い位置へと、チョコを持った手を上げる。
『もう、勝手に一日分以上のデザート食べたりしないから…その…
チョコ頂戴っ!』
『…はぁ…仕方のない御主人様ですね…
はい、どうぞ』
僕は、チョコを渡された瞬間、思わず従者に抱きつきながらも…
『ありがと! っ!』
と、笑う。
『ご、御主人様…何さらっと抱き着いて…
はぁ…もう…
ゲフンゲフン…っ
いえいえ、どういたしまして…
我が主、 様
って、抱き着いたまま食べないで下さいっ!
御主人様の服が汚れてしまいますっ!』
『ひひひゃん、おいひーんふぁふぉんっ!
(いいじゃん、美味しいーんだもんっ!)』
『もう、御主人様ってば…』
『?』
『それ以上我儘言うなら明日のデザートは抜きです』
『えぇ!?
そ、そんなぁー!!!!』




