第3話・イベント後の飲み会とその帰り
こうして、大会もイベントも無事(?)終了した。
結果は飛竜と私的には散々。
しかし、そんな私達そっちのけで、エリーゼは近くの飲み屋へと、なんとそのままの格好で引きずり込んだ。
流石にこの格好では恥ずかしい…とか思っていたのだが…
意外にもその店には、コスプレをしているイベントに来ていた人が、何人も来店していた。
なので不自然どころか、自然な感じでお酒を飲み始められた。
そして、大会で優勝し、顔が少しばかり知れてしまった二人は、お酒を数杯、知らない人に奢られてしまう始末だった。
エリーゼも完全にイベントテンションでゴクゴクと飲み進め、お酒を私達に勧めてくる。
『うぇーい!!…飲むぞー!!…』
と、おかしなテンションでミミにもどんどん飲ませようとしたが、ミミは極端なレベルにお酒に弱く、数杯で『お願いです!…エリーゼさん!…私!…お酒が!…』と、断っていた。
流石に、イベントテンションで頭等が少々おかしくなっていても、無理にそんな人に勧めるような人間ではなかったエリーゼだったが、代わりにと言わんばかりに、私と飛竜にお酒を勧めてきたのだった…
すると、でろでろに酔っぱらってしまうのは致し方ないわけで…
『ひりゅうも家、こっちなのかぁ?』
『…ぁあ、そうだ……』
現在、私達…つまり、私と飛竜は、家が同じ方向だということを確認したわけだが…
互いにふらふらとしていて、肩を組んで支え合って、やっと帰れる程だった。
ちなみにエリーゼとミミは…
『私、方向逆だし、友達が車出迎えに来てくれるらしいから、それで帰るわー』
『わ…私も…その…御迎えが来ますので…そち…そちらで…』
と、言っていた。
こんだけべろべろに酔わせておきながら、わりとけろっとしているエリーゼがどうも憎たらしく感じる…べきなのだろうが、生憎、今はそんな思考回路が働く程、シラフに近い訳じゃない。
むしろ真逆であり、思考はどこかふわふわとしている。
とにかく、そのままエリーゼは駅前へ、ミミはその場で待機となった。
俺は先程、やはりスカーレットは酔ってもスカーレットだなと思った。
何故かと言えば、エリーゼの言葉への返事の内容が鈍感さが全開だったからである。
『じゃ、若いモンの邪魔はしないようにさっさと駅行くわ~』
と、エリーゼがわざとらしくにやにやと俺を見た。
要するに、彼女と俺をくっつけようという事なのだろう。
まぁ、別に嫌われてはないようだが、この調子じゃ、普通に考えて家に帰るのが精一杯であり、頑張ってアプローチなんて余力は生憎残っちゃいない。
とかなんとか思っていると…
『いや、このなかでいちばんわかいのはみみだぞぉ?
ていうかじゃまってなんだぁ?』
とかなんとか、ふわふわとした喋りではあったが、スカーレットはハッキリと言った。
いや、酔っててもスカーレットはスカーレットなんだな。
なんて、頭の隅の方でうっすらと変に感心してしまった。
まぁ、そんな所も好きなのだが。
『…なんか…ごめんね、うん』
と、エリーゼが俺に合掌してきて逆に落ち込んだのは無かったことにしよう。
さてさて、そんなわけで、いつの間にか俺の家の前に着いていた。
『ここがひりゅーのうちなのかぁ?』
と、ふわふわとした口調でスカーレットが問いかけてきた。
『あぁ…そうだぞぉ…』
『じゃあ、また…にゃっ!?』
『うぉっ!?』
スカーレットが俺の肩に回していた手を外しながら、別れの挨拶を告げようとした瞬間、スカーレットは大きく転んだ。
俺が咄嗟に手を差し出し、抱き締めてなんとか防いだのだが。
『あ、あり、が、と…』
ちょっと彼女の顔が先程より赤かった気がしたが、彼女の可愛さに免じて、酒がちょっと今更回ったという事にしてあげよう。
『いや…気にするな…』
本当の所、互いに驚いて一瞬酔いが覚めたのだが…
『じゃあ、こんどこしょ、こんどこそ、かえりゅ…るな…』
酒で舌が回らず、噛みまくったおかげで更に彼女は照れたのだが…
俺は、良いことを思い付いてしまった。
『なぁ…おれのいえにとまれよ』
『えっ…いい…のかぁ?…』
と言うことで、彼女を家に招き入れ、今晩だけ泊めることにしたのだった…