第41話・吸血鬼の少女のお出まし
俺は、その話を彼女にそっくりそのまま話すとなると、流石にこの気持ちまで気付かれかねないと不安になったが、彼女の鈍感さはそれどころではなかった。
『確かに、それ程嫌いなやつに、飛竜が“あんた”なんて呼ぶ所は想像できないな』
『一番よく近くに居る異性である、私が気に入らないんだな』
『飛竜も困ったやつに好かれたな』
もう、これ以上は俺のHPが尽きかねないと危惧したエリーゼにフォローを入れられるまで、スカーレットは俺の想像を越える鈍感さを発揮した。
なんとか、精神的なHPを保ちつつも、俺は報告を済ませ、色々と済ませた後、眠りについた。
そして、次の日の昼の事だった。
俺は、どうしても市街地に行かなければならなかった。
そう、武器の修繕担当である俺は、自分で修繕するだけでなく、武器を修繕してくれる店に、武器を修繕してもらったり、その武器を取りに行くのも又、仕事の内なのだ。
しかし、普通なら有事と言うか、この様な事態の場合は、ひとまず誰かに任せる、等といった対応をするのだが…
一つだけ、問題かあったのだ。
それは…
『…その店は…武器は…預けた人しか…返してもらえないんだ…』
そりゃそうだと言えばそりゃそうだ。
考えてみれば当たり前の事である。
武器を預けた本人ではない、別人が受け取れてしまったら、誰かと交換することが出来ない特別な武器が結果的に交換できてしまうし、なんなら他人の武器を結果的に奪うことだって出来てしまうのだ。
というか、他人が受け取れるようなシステムがあったとして、利点ゼロである。
暗証番号等を発行するにせよ、そう言うものを毎回作るとなると、サーバーへの負荷は酷くなるだろう。
かといって鍵やカード、チケット等のアイテムを発行するにせよ、プレイヤーがそれを奪われたりしたら元もこもない。
かといってそこの対策を練ったり、そのためのシステムを導入するとして、そこまでして、プレイヤーがそんなに増えるかと言われればそうではない。
だったら新しいイベントやマップ、地域等を作った方が、プレイヤーからしても、運営からしても、断然プレイヤーお得と言う訳である。
昨日の事を考え、一人で出掛けるのは不味いので…と、いつもの俺ならスカーレットを連れて行ってしまいそうだが、今回の相手は俺に近付く異性に牙を剥く。
結局、誰と現在市街地に買い物に出掛けているかというと、ヴァインなのだ。
(異性でもないし…こいつには相手が居るし……)
つまり、一番そういう路線に走りにくいと、はたから見ても言えるであろう相手と出掛けているのだ。
やたらと俺と俺の回りとの、関係性に詳しそうだったので、詳しければ詳しい程、そういう事に成り得ないと、ハッキリと分かるだろうと思ったのだ。
と言う事で俺達二人は用事を済ませ、そそくさと帰ろうとした、その時だった。
『ねぇ、飛竜君?
そのオトコノコは誰かなぁ?』
『っ…!』
『…!?』
俺が驚くのとほぼ同時に、誰だとヴァインも驚く。
そう…あの、吸血鬼の少女のお出ましだった。




