第30話・強気な小動物の愛の鉄槌
洞窟の外では、やはり、ドルイドのミミが待ち伏せをしていた。
その表情はいつものような小動物のような物ではなく、それはとても深い怒りを感じた。
『…』
私はミミが怖いと思った。
何を言われるのかと怯え、言葉が出なかった。
私はひたすら震えてミミの言葉を待った。
すると…
『スカーレットさんは馬鹿です!!
阿保過ぎます!
飛竜さんとあんだけ仲良くしてたくせして、何も分かってません!!』
突然の話題に私は更に固まった。
しかし、彼女はそれすらお構い無しという具合に話を続ける。
『そもそも勘違いも甚だしいんですよ!
普通に考えてなんであの飛竜さんに頼られてないなんておかしな勘違いをするんですか!
勘違いをしたとしても、頼られるために無謀な事をするぐらいなら、私も何かするとか、いつもみたく飛竜さんの話しかければ済む話です!
それなのにスカーレットさんと言ったら…!
もう馬鹿馬鹿しくて何も言いたくありません!
飛竜さんがスカーレットさんを休ませるために、エリーゼさんに頼んだのは一目瞭然です!
馬鹿でも!いや、野良の猿でも分かります!
スカーレットさんは馬鹿すぎて野良の猿以下です!
何にも分かってないです!
鈍感馬鹿も程々にしてください!
て言うか力だけが頼られる素質と思ってるとか脳筋馬鹿ですか!?
飛竜さんも飛竜さんで回りくどすぎますが!
だからって脳筋です!
スカーレットさんは脳みそまで筋肉です!
そんな人が最善だのなんだの言ってたとか呆れます!
それこそ頼られるのはいつも最善な行動をする人です!
それを一番分かってる筈のスカーレットさんが、何でこんな事に成るんですか!
阿保過ぎます!
そろそろ気付いてあげてください!
気付かないのは飛竜さんに失礼すぎます!
失礼極まります!
分かったらさっさと向かってください!
向かうところも分からぬ馬鹿ではないでしょう!!』
彼女らしからぬ長文&罵倒は、私の心に良い意味で響いた。
そして…
『本当に自分は馬鹿だったな…
今、痛感した
ミミのおかげだ、礼を言う』
私がそう、土下座をすると…
『わわっ!私なんて事を!
ご、ご免なさい…
お命だけは…ご勘弁を…!』
私の土下座と謝罪で我に返ったのか、ミミはいつものおどおどとした、小動物のようなミミに戻っていた。
『いいや、ミミは私に大切な事を教えてくれた
それこそ今、私を叱るのは最善だ
むしろ殴らなかっただけ、怒りを堪えた方だ
本当に悪かった…
…今から向かう、彼等の所へ』
私は彼女の頭を撫でながらそう言った。
彼女は限界というように泣き出した。
私は彼女を抱き締め、『有難う』と、何度も口にした。
そして…
『スカーレットさん…うぅ…
これを…うぅ…』
彼女は少し泣きすぎて、喋りが危うくなりつつも、洞窟の入り口に刺さっていた枝にくくりつけられたロープに繋がれた、狼のような容姿の精霊に
『この臭いの人を…見つけてください…』
と、道具の修繕担当の飛竜によって直された道具の臭いを嗅がせた。
そして、彼女が枝からロープを外すと…
『アォーン!』
狼のような精霊は、遠吠えをしながら走り出した。
『あれ…?
相当近くに…居るような反応です…』
彼女はきょとんとしながらそう言った。
私もその言葉を聞いてきょとんとする。
とにかく、私達は精霊を追いかける事にしたのだった…
ーヴァインに召喚される動物達の抗議ー
『今日という今日は訴えるんだ!』
『そうだそうだ!』』』』
『てことで、今日は全力でご主人様に飛び掛かるぞー!』
『おー!』』』』
その抗議したい内容とは…そう、ご主人様が最近、やたらと俺達を召喚するからである。
召喚される側としては、出し入れされまくると、どうも疲れてしまうのである。
ポケ○ンで言うところの、モン○ターボ○ルから、毎日のように出し入れされている状況だ。
流石にそんな事をされては、こっちが疲れてしまう。
せめて、シフト制にしてほしいのだ。
だから、今日は召喚された瞬間、一斉にご主人様に飛び掛かるのである。
動物なりの全力抗議だ。
そんな事を知らず、ヴァインはアンネに見せるために、また動物を召喚した。
すると…
『ドタドタドタ!!』』』』』
『うわぁーっ!?』
ヴァインは大声をあげて驚いた。
なぜならば、いつもはアンネに大人しく撫でられている動物達が、こっちに向かって飛び掛かってきたのだ。
そして次の瞬間、ヴァインはこう言った。
『なんだ、俺にも撫でられたかったのか
そうかそうか』
そして、ヴァインは周りの動物達を順番に撫でた。
違う、そうじゃない。
それを求めてるんじゃない。
と、ツッコミをするべきなのだが…
(なでなで気持ちいぃ…)
(もっとぉ)
という心の声が動物の中でそこら中から聞こえる。
そして、しまわれた後に…
『あ!作戦!!』
と、忘れていることに気付くも、幸せだからいっかぁ…と、抗議への熱を完全に忘れてしまうのであった…




