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異世界でツンデレちゃんは恋に落ちた。~unstable・story~  作者: 十六夜零
4章ーSometimes this may be goodー
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第29話・若きキューピッドの精霊の行進

とにかく、私は過去の経験を越えて、もしかして…スカーレットさんは中学生の頃の私のような、大きな勘違いをしているんじゃないかと思ったのだ。

多分、私の話で言うところの、私がスカーレットさん、御父様が飛竜さん、御母様がエリーゼさんと言った所だろうか。

そう気付くと、つくづく二人は不器用だなと思った。

誰がとは言わないが。

でも、そんな二人が私は大好きだった。

だからこそ、その間違った考えを正して、スカーレットさんには、本当の飛竜さんの優しさに気付いて欲しいと思った。


そして、私は真実を伝える相手の元へと駆け出した。


不器用な優しさに恋する、不器用かつ鈍感なギルトマスターの元へと。


その、ギルトマスターが言う最善のために、若きキューピッドは走る。






ミミを置いてスカーレットが出掛けて十数分経った頃に時間は巻き戻り、場所も変わって此処は…

『アトランデ第十七洞窟…ここか』

いよいよ着いたなと言うような声を発するのは、言わずもがなスカーレットである。


私は、飛竜に頼られないと言う事を怖いと思った。

ギルドマスターとして。

一人の友人として。

彼に頼られないなら…

いっそ、頼られるためなら何でもしたくなってしまう。

結局、私は彼に甘えるばかりで、彼に何も返せていなかったのだと、思い知らされたのだ。

そして、私は洞窟内へと足を踏み入れた。


ちなみにこの洞窟、第17なんて所は、100Lvの猛者達が二桁は集まらないとクリア出来ない様な場所である。

しかし、彼女は敢えて此処を選んだ。

『人並みの定義に当てはまるような強さでは、飛竜には頼られるわけもなかった』

なんて、阿保みたいな勘違いをしたからだ。


そして、それに少々御立腹(ごりっぷく)気味の誰かさんが、洞窟へと向かっているとも知らずに…






私はドルイド。

サモナーと似たような感じに、従者のように操れる植物に関する精霊やらを召喚できる。

後、ちょっとばかし木々等を操る呪術も。

なので、鼻の効くタイプの、動物っぽい花の精霊を呼び出した。

いくら私のレベルが低かろうが、臭いを辿るなんて簡単な行動はドルイドやサモナーからしたら、お手のものである。

朝飯前(どころ)か起床前レベルだ。

そんなこんなで、私は小さな狼のような精霊にお願いして、スカーレットさんの部屋から押収した、ゴミ箱に捨てられていた使用済みのメモの臭いを嗅がせた。

人の部屋に侵入して、ゴミ箱を漁るなんて、色々と道徳に反してはいるが、今は非常事態。

仕方無い事だ。

そんなことを考えていると…

『…』

無言で精霊が私の足に顔をすり付けてきた。

そう、これは此処から強い臭いがするという合図。

『有難う』

私は小さな花の狼の精霊に御礼として、そう言いながらこの子の大好物の肉を与えた。

そして、洞窟の入り口に枝を刺して、それにロープを巻き付けて精霊の首輪に繋げる。


『大人しく待っててね』


そう言い切る彼女は、いつものおどおどとした雰囲気はなく、怒りと優しさに満ち溢れていた。


そして、私は洞窟に入った。

『スカーレットさん…!』

入るとそこでは、闇属性の職業ではない私でさえ分かるほどの多くのコウモリが飛び交い、彼女を足止めしていた。

『くっ…!』

彼女は真剣そのもので気付いていなかった。

そこで、私は…

Ability(能力)Release(解放)Spirit(精霊)()March(行進)!!』


私は驚いた。

聞き覚えのある声が、やけに発音の良い技名を叫んだからだ。

すると、様々な種類の精霊が洞窟内を飛び交い、私を綺麗に避けて、モンスターを始末していく。

私はその光景に唖然としていた。

先程の技は…確か、ドルイドの最上級の技で、10Lv位から使えるが、レベルが上がるごとに地味に強くなっていく凄い技だったような…

なんて、現実逃避を始める程に唖然としていた。

すると…

Spirit(精霊)Bring(彼女を)Her(此方へ)Here(連れてきなさい)

私はそのまま、その声に反応した数人の精霊に優しく、そして速く運ばれ、洞窟の外へと出された…

ーミミが召喚した狼くんの1日ー

僕、ご主人(ミミ)に召喚してもらった狼!

こう見えて精霊なんだ!

ほら、耳とかにお花付いてるでしょ?可愛いでしょ?

むー、でも、格好いい姿にだって成れるもんっ!

ま、そんな事はいーや!

とりあえず、今日はご主人がご主人の、お(エリーゼ)さんと一緒に出掛けてるから、暇なんだー

あ、良い臭いがするっ!

と、僕は椅子に座っていた、飛竜(あにき)の膝の上に飛び乗る。

『どうかしたのか…?

…あ、欲しいのか…?』

流石ご主人のお仲間!

僕の事よく分かってるね!

頂戴!ね、ね!それ頂戴!

僕は目一杯尻尾を振っておねだりをする。

『あんた…本当に犬みたいな狼だな…ほら…』

わぁい、お肉美味しい!

兄貴ありがとー!

美味しくて、お礼に兄貴の指に頬擦りをする。

『…まぁ…また食べたくなったら…来いよ…』

兄貴!そう遠くない内にまた来るよ!

僕はそう思いながら、兄貴の膝の上から飛び降りた。

はぁ…腹ごしらえも終わったし…

よし、アンネの所いこーっと!

ヴァインも喜ぶしっ!

狼くんの1日は、まだ始まったばかり…

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