第28話・雫と成りて流れ落ちる不安と明かされる真実
それからと言うものの、そんな朝が数日続き、流石の私も違和感を感じるように成ってきた。
そんなある日の事、私はトイレから教室に戻ろうとしていた。
すると、教室での会話が少し漏れ聞こえてきて…
『と言うか山波さんは、何処のご令嬢だか…
聞いたことも無いわよね』
『そうよねぇ
女で一人っ子とか、跡取りとして相応しく無いから、恥ずかしくて本当の名字を言えないとかじゃないかしらぁ』
そこで、ふと私は気付いてしまった。
(私は頼りにされてない
頼りにならないから
だから、お見合いとか仕事もなくなった
私を跡継ぎとして育てるのを諦めた
私じゃなくて養子縁組とかで私以外の男を跡継ぎとして受け入れるんだ)
いつもおどおどとした態度の私にしては、珍しくはっきりとそう思った。
そこで信じていた物が崩れたような気に成ってしまった。
私は授業が頭にあまり入らぬまま帰りの会まで終え、いつものお迎えの車で家に帰った。
私は夜ご飯をテーブルマナーを気にしつつもそそくさと食べ終え、自室へと向かった。
そう、夜ご飯の前に今日の習い事は終えたからだ。
他に頼まれた仕事は今日もない。
着替え等を済ませると、月曜日の予習をする気も起きず、ベッドに身を投げた。
明日から土日だ。
その間に新しい息子の紹介でもされるのだろうか。
私はそう思うと何故か頬に雫が伝っている事に気が付いた。
だが、それを止める術も知らずに、私はそのまま静かに、只静かに、涙を流して泣きはらして眠りについたのだった…
そして次の日の朝…
『あの…みみ』
『何ですか?御父様』
私はいつものように、朝御飯を両親と共に食べていた。
そこで、御父様は私に話し掛けてきた。
(きっと…今から話されるんだ…)
私はそう思うと泣きそうになったが、最後の意地でぐっと堪えた。
すると、御父様の口から出た言葉は、予想もしていなかった言葉だった。
『みみの事を気に入りそうな、お見合い相手が今日来るんだ
身分等も申し分無い、が、婚約するかを決めるのはみみ…そう、次期跡取りとして認められるべき一人娘のお前だ
今日はいつも以上に気を引き締めて見合いをしなさい』
『…え?』
私は思わずきょとんとした顔をした。
まさに、鳩が豆鉄砲をなんとやらと言った顔である。
『あら、やっぱり何かあったのかしら…』
御母様は私の目とその回りを見る。
昨日の夜に泣きはらしたせいか、少しばかり腫れていた。
『…っ…』
私は思わず目を潤ませた。
色んな感情が込み上げて何と言えば良いか分からなくなった。
『『…』』
二人はじっと、私の言葉を待ってくれた。
私は二人に促されるように言葉を口にした。
『私…御父様にも…御母様にも…
一人っ子だけれど…娘だから…見捨てられてしまうとばかり…
跡継ぎが娘だなんて…女だなんて…回りに言えないから…
だから…今日…新しい息子を…養子縁組とかで得た…息子を…紹介されるとばかり…思っていました……』
私は泣きそうなのをぐっと堪えながら、辿々しくもそう言いきった。
『まぁ…』
『コホンっ…
俺達は一切そんな事を考えては居ない
断言しよう』
御父様が御母様の言おうとした事を咳払いで遮りつつもそう口にした。
『本当…ですか…?』
私は不安に成りながらも、御父様を見上げた。
『あぁ、お前はきちんと跡取りとして相応しい勉強をしてきた
お前が女だろうがなんだろうが、俺達の子供である事は間違いない
なら、女だろうが努力してきたお前を跡取りにしない訳にはいかない
お前は努力で性別を越える力をもっている筈だ
俺達はそれを信じている』
御父様はらしくもなく真剣にそう口にした。
『だってこの人、今日大切なお見合いがあるからって、いつも忙しくしていて疲れているだろうからって習い事以外何もさせないようにしたのよ?
私は、あれだけいつも通りじゃないと逆に落ち着かない人だって居るのよって教えたっていうのに…本当、親バカよねぇ…』
『コホンっ…!』
御母様のとんでもない真実の暴露に、思わず御父様が盛大に咳払いをする。
『なんだ…そっか…
そうだったのですね…!
有難う御座います!
御父様!御母様!』
私は、感動やら喜びやらで涙が出そうなのを堪えながら、笑顔で、はっきりと、二人の顔を見ながら口にした。
…結局、そのお見合い相手に気に入られ、婚約し、その相手こそがエリーゼさん達に話した相手だったりするのだが、それはまた別の話である。
ー番外編の代わりのちょっとした設定⑧ー
NO,8
名前:アンネ
職業:???
サブ職業:???
身長:155cm
武器:武器?うーん、なんか地味に職業のネタバレってやつになるんでしょー?じゃ、秘密だよ!(by,アンネ)
ー備考ー
ヴァインに告白されるまで、絶対気持ちなんて明かさないつもりなのに、私が一度喜んだからって、毎回動物召喚してきて、二人っきりにしてくれないヴァインに、焦れったさを感じていて、うっかり口を滑らせそうで怖いのが、最近の悩みらしい。




