第18話・怪物と私と。
『だけど本当は…ただ!寂しかっただけなんだ!
親友が…親友が欲しかっただけなんだ!
この気持ちを分かってくれる人が欲しかっただけなんだ!
だから…だから!…
俺は、久しぶりに人に会って、思わず、こんな事をしてしまった…
許してくれなんて言わないし…言えない…だけど…
これだけは…言わせてもらう…』
『お前らが怪物だって言う奴等だって、意思とか心は有るんだからな!』
その言葉は、スカーレットの心の奥深くに届いた。
そして、響いた。
こんなにも響く言葉は…飛竜の言葉と…あの人の約束の言葉だけだった。
(泣いちゃダメだ…今泣きたいのは彼だ…)
そう思っても、涙が止まらない。
『ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…』
私は謝る事と泣く事しか出来ない。
(何て私は非力なんだ。
何て私は無力なんだ。
何で私は想像力に欠けるんだ。
考えれば分かった事だろうが…
この世界は、私達以外も皆意思と心が有るなんて…)
彼女は涙を流した。
それは、自分の弱さへの苦しみと…
もう一つが分からなかった。
もしかしたら、それが分からない苦しみによる涙かもしれない。
この二人はまだ気付かない。
仲間の苦しみに気付けなかった。
それだけの理由の涙かもしれない可能性に。
素直じゃない彼らは気付かない。
まだ、気付かない。
すると…不意にあの懐かしい仲間の声がした。
『吸血鬼…居るんだろ?…出てこいよ!!
スカーレットの仇…とってやる!!』
(飛竜…やっぱり…飛竜と話がしたい)
その声に思わず反応する。
(飛竜ならきっと、分かってくれる)
(だから、敵だって辛い事を…)
(話したい!)
しかし、その想いはそう簡単には、今の彼には届かない事を彼女は知らない。
『スカーレット…生きてる!!…て、お前…泣いて…』
スカーレットは予想に反して生きていた。
(良かった…生きてて…)
しかし、同時に怒りがこみ上げてきた。
(あの、様々な意味で強いスカーレット泣いてる…
こいつ…そこまで卑劣な事をスカーレットに…)
俺は、様々な卑劣な行為を想像した。
(許さない…許さない…許さない…)
『俺は!お前を絶対に許さない!!スカーレットを泣かせた責任は取ってもらう!』
『待て!止めろ!飛竜!』
(何でスカーレットが俺を止めるんだよ!)
『クソッ…』
(まるでそれじゃあ…俺が悪いみたいじゃねーか!)
(まるでそれじゃあ…
スカーレットが怪物の仲間みてーじゃねーか!!)
信じていた物が崩れると、案外人間とは、容易く壊れる物なのだ。




