第14話・可愛い自主練習のお誘い
『『いただきます』…』
俺達は同時に朝ごはんのシチューを食べ始めた。
『旨い…』
俺は思わず声を漏らす。
『あぁ』
と、旨さに軽くとろけた顔で、隣の椅子に座るスカーレットが反応する。
すると、俺はある事に気が付いた。
『そう言えば…エリーゼは何処に行ったんだ?…』
いつもなら俺達と仲も良く、同じ班なので、一緒に行動する事が多く、こんな風にスカーレットと二人で居ると、高確率で姿を現すのだが、起きてから一度も見かけていない。
ミミも同じく、見かけていない。
二人は姉妹のように仲良しなので、二人で行動する事が多いが、何処かに出掛けたのだろうか?
何て、考えていると、スカーレットが返事をして来た。
『あぁ、エリーゼはミミの自主練習に同行した。
ちなみにエリーゼとミミは、私はお腹があまり空かなかったから食べなかったが、朝ごはんは早めに済ませているから大丈夫だ。
今頃スーマント平野にでも行って、狩ってる頃だろう』
スーマント平野、このギルドハウス近隣の低レベル向けの訓練場所に最適な低レベルモンスターが多く出現する平野である。
しかし、ごく稀に中堅モンスターが現れる事があるので、エリーゼもミミから見て、師匠的な立ち位置だし、同行したのだろう。
(あの二人は、本当に仲良しだな…)
と、少し感心してしまう。
実際、俺は現実ではこの無愛想ぶりで嫌われがちで、あまり友人はできなかった。
もしかしたら、だから余計に、このゲームに入り込んだのかも知れない。
おかげで、様々な友人や弟のような存在、仲間を作る事が出来た。
(ゲームも…まぁ、悪くない…)
ちょっとニヤついてしまった俺に気付いて、スカーレットが微笑んだのを、俺はまだ知らない…
『あ、そうだ…その…二人も自主練習に励んでいるから…その…だな…』
私は言いたい事を上手く言えない上に、素直に甘えたり頼むのが、下手な人間だ。
おかげで今は、話をしている相手…飛竜を戸惑わせてしまっている。
『何だ?落ち着いて言え…』
そう、優しく声をかけられると、何故か心拍数が少し上がったのを感じる。
そして、何故か言いたい事がさらっと出てくる。
『私達も何処かに練習に行かないか?…』
緊張で、何とか軽くうずくまってしまった体をそれ以上うずくまらないようにしつつも、顔をあげて何とか目を見て言えた。
だけど、緊張で声が掠れた上に、軽く上擦ってしまった…
でも、きちんと言えたのは、彼のおかげかも知れない…
彼はエクソシストとしての能力とは別に、私を笑顔にさせて、落ち着かせたりする、魔法が使えるのかもとも思ってしまう。
そんな事を考えてしまったのは、私だけの秘密だけど…
俺は、その無意識であろう上目使いと、上擦った声に心を打たれてしまった。
(か…可愛い…)
瞬時にそう思ってしまったのは仕方なく思える。
『そ、それは良い考えだな。何処に行くんだ?…』
何とか平静を装って返事をする。
(流石に好意がバレるのは、俺の心の準備が出来てない…て言うか、恥ずい…)
『アトランデ第一洞窟とかはどうだ?』
『あぁ、そうしよう…』
アトランデ第一洞窟。
それは、エリーゼとミミが今居るであろうスーマント平野と反対方向に、スーマント平野へと向かう距離と同じ位の距離の道を進むと出てくる。
第一と付くので、分かる人は多いだろうが、洞窟の入口は何ヵ所か有る。
アトランデ洞窟は、第一から順番に第十七まで有るのだが、その名称の、番号が少ない程、攻略に必要な所要時間は少なくなる。
そして、俺達のような闇での活動を得意とする職業の人には、うってつけの練習場所である。
しかも、アトランデ洞窟は、高レベルプレイヤー向けの練習場所なので、俺達にはまさに最適と言える。
一人でも100Lvなら第一から第三位までは、クリアできるのだが、二人でも日帰りが確実に出来るのは、第一と第二だ。
なので、そこは安全にと考え、スカーレットは、第一を選んだのだろう。
俺もその考えには大いに納得できる。
という事で、俺達はアトランデ第一洞窟で練習をする事に成ったのだった…




