第11話・最善に専念する力
俺達は難なくシストラスティー村付近の寂れた今で言う所のビルのような物まで近寄れた。
(此処からだな…最善までの難関は)
俺は目でそう伝える。
エリーゼは俺に静かにうなずいて反応した。
作戦だとどうやら村の端の方…ちょうどこの辺りの端にアンネは身を潜めているらしい。
この俺達の居る建物も目印の一つだった。
シストラスティー村の周りにはこの建物以外、大きな建物は無いので目印には最適だった。
そして、今の時間は夜。
エクソシストの一番得意な時間だ。
『…Dark・…Melt・Person…』
小声で俺は技の名前を呟く。
すると、望んだ通りの技が成される。
この技は一定時間、暗闇に身を潜められる技だ。
そして、装備の効果(昨日、作動実験済み)により、少しだけこの技を使うと速く動ける。
『Endless・Heal…』
小声で隣に居たエリーゼが魔法を俺にかける。
この魔法はカンナギ独自の技で、一定時間、定期的かつ持続的に減ったHPを回復してくれる効果を持つ。
注ぐMPにより、持続時間は伸びるので、MP回復のアイテムは大量に持ってきたようだ。
トランクバックと呼ばれる魔法で重さも大きさも感じない状態でしまえるバックにギルドハウスで入れていたのを思い出した。
勿論、そんなに急にギルドハウスの倉庫から荷物が減っていたら、救出する前にバレてしまうので、俺達第一班の倉庫から荷物を出した。
俺は小声で同時にかけられる魔法を残りのMPとアイテムを考えながら放つ。
(なるべくアイテムはエリーゼ用に残したいから…)
と、俺は瞬時に消費MPの少ない、敵等にバレにくく速く動ける技を放つ。
『…Dark・Step…』
あそこの低めの建物を使って間を回転して…
『…Dark・CircleStep…』
そして、着地音を消すために…
『…Secret・Step…』
そして、音も立てずに俺は闇の中をエリーゼの魔法の届く範囲に有るアンネの居る建物へと近付いて行く。
そして…
『…秘密の…一歩…』
目的の建物の屋上に着地した。
そして、屋上のすぐ下の屋根裏部屋に住むと言うアンネの元へと向かう。
俺達が来る事は連絡済み。
手早く済ませようとした…
その、矢先だった。
『おうおう、ホントに来るとはなぁ…へへっ!丁度良い獲物だなぁ…レアそうな装備着てるしよぉ~ははっ!』
背中に嫌な汗が蔦る。
やはりか…
そう、脳話は電話のように実際に喋らないと使えない。
その際、他の人に聞かれる可能性が有ったのだ。
それはこの世界…
WORLD MASTERの世界でも起こりうる事だった。
そう、作戦はもう、筒抜けだったのだ。
しかし、それさえ俺達の予想の範囲内だった。
背中の嫌な汗だって演技だ。
どうやら敵は気付いていない…
アサシンの“彼女”が背後に迫っている事に。
彼女…彼女とは勿論、スカーレットだ。
あり得ない?そう思う人が多数だろう。
しかし、それがあり得るのだ。
彼女は頭脳も長けていた。
彼女は今、この世界に二人居る。
敵の後ろで敵のがら空きの首にギリギリの所まで刃を向けているスカーレット。
それと、今頃恐らくギルドハウスのスカーレットの部屋にミミと一緒に居るスカーレット。
彼女は二人居るのだ。
話は意外と簡単な物だった。
敵が待ち伏せをしているかを先に確認する役とそれを何も知らないふりをして正面突破をする役。
どちらもを回復する上級な回復役。
もしくはその代わりとなる数人の中級や初級の回復役。
全てが揃うには俺達三人がするのが効率的だった。
しかし、俺は出来ないと分かっていた。
しかし、彼女はその時こう言った。
『誰が出来ないと決めた?
出来るだろうが』
その言葉に最初は自分も耳を疑った。
しかし、彼女の話を聞いて俺は納得した。
使うアイテムは一つ。
『Doppel・Copy・Mirror』
使い道は名前そのまま、自分を鏡の部分に映す。
すると、自分を丸々写したようなドッペルゲンガーが出来る。
欠点は人数を多くすればする程に全員のレベルが落ちる事。
もう少し分かりやすく言うと、写した元の人も含めたドッペルゲンガーの人数で元の人のレベルを割られてしまい、ドッペルゲンガーもその元の人も、そのレベルに成ってしまうのだ。
その代わり、どれ程離れても大丈夫だ。
しかし、一定時間、離れ続けると本当にそのレベルに下がってしまうのだ。
しかし、時間さえ守れば最高の戦力だった。
今回の場合、スカーレットは一人ドッペルゲンガーを作ったので、合計二人。
スカーレットのレベルは100。
なので、50にスカーレットのレベルは下がったのだ。
しかし、距離と言い、人数と言い、相手のレベルと言い、時間内に確実に戻れる。
予想通り馬鹿みたいに自分が強いと思い込んでいた男は一瞬で俺達に負け、無事、アンネも救出し、取り敢えず、俺達のギルドハウスで少しだけ休ませる事にしたのだった…
そして、勿論、スカーレットは一人に無事、戻れたのだった…




