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異世界でツンデレちゃんは恋に落ちた。~unstable・story~  作者: 十六夜零
2章ーThe little bird didn't flyー
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第9話・何度も彼に、助けられる。

集まったギルドメンバー達はこの世界に閉じ込められた事に、悲しむ者、喜ぶ者、戸惑う者、苦しむ者…等々、様々だったが、どうやら、元気なギルドの仲間達を見てほんの少しだけ気持ちが落ち着いたようだった。

その姿を見て、私も少しだけ内心ほっとしていた。

すると…


『~♪』


私の頭の辺りから、テレパシーの着信音が鳴る。

しかも、ギルドマスター限定の着信音。

ギルドマスターだけは判別できるように、運営側が昔、追加したらしい。

とにかく、私はテレパシーに出た。

すると…


夜月(やづき)だ』


そう、夜月と言う知り合いの声が聞こえた。

夜月とは、同じギルドマスターで、此処、unstable・storyにもよく顔を出すような仲の良い同年代の、戦闘家(モンク)の男だった。


『どうかしたのか?』


私がそう、聞き返すと…

『いや、そっちのギルドが大丈夫か聞いただけだ

その声は…大丈夫そうだな』

そう、彼も又、飛竜のように優しい男なのだ。

ただ、少しだけ違う。

夜月と言う男は、男気が少しどころか物凄く強い。

凄腕ベテラン漁師かと、心の中で何度も思う程だ。

この、WORLD MASTERの世界には、アサシンや、エクソシスト、モンクの他にも、様々な職業が存在する。

しかし、職業はそれだけではない。

そう、ヴァインで言うところのアプレイザーの様に、サブ職業が存在するのだが、彼のサブ職業はやはり…漁師なのだ。

特技はリアルでもそうらしいが、魚釣りとなる。

魚に関するアイテムが手に入りやすくなり、魚に関する敵に攻撃をする時の攻撃力が、少しだけ上がる。

それが、サブ職業、漁師に付与される力だ。

『そうか、そっちは大丈夫そう…ではなさそうだな?』と、男気が有り余るような夜月に返事をする。


『あぁ、ほぼ全員集まった…』


『ほぼって、大丈夫なのか?』

と、私はぶっきらぼうな彼に問う。

『大丈夫…じゃないかもな。

実は、最後の一人が…


シストラスティー村に居るらしい』


『シストラスティー村か…』

私は、その名前を聞き、少し、考え込んだ。

シストラスティー村とは、リアルで言うところの渋谷のようなイメージの見た目の、ビルや店の立ち並ぶ場所であり、まるでハロウィンかと言うレベルよりも遥かに酷いレベルに、治安の悪いプレイヤータウンだ。

プレイヤータウンとは、プレイヤーが死んで、生き返る時に転送される場所でもあり、買い物や武器の修繕に、ギルドホーム等々…要するに、プレイヤーのタウン(拠点)となる場所なのだ。

そして、最大のプレイヤータウンは、此処…そう、unstable・storyのギルドホームの有る、秋葉原(アストラミックシティ)なのだが、その次に人気の有るプレイヤータウンなのが、シストラスティー村だ。

しかし、そんなシストラスティー村には、1つだけ、問題が有った。


それは、治安の悪さだ。


何故か、シストラスティー村に集まるのは、性格の悪いプレイヤーばかりだった。

そんな彼らの餌食になっていないかが、私は物凄く心配だった。

『夜月…ちなみにその、シストラスティー村に居るのは…?』

私は、そこが気がかりだった。

初心者等だったら、ひとたまりもない。

と言うか、即、奴隷やらなんやらにさせられるだろう。

だから…せめて…ベテランであってくれ…と、願ったのだが…


『アンネだ』


その言葉に私は固まった。

アンネとは、修行中の初心者プレイヤーの名前だった。

アンネとは、それこそ、ヴァインと仲が良く、よく一緒にレベル上げのための様々な事をしていたり、夜遅くまでテレパシー機能で話し込んでいたりしたのだ。

この、異常なまでの現象の渦の真っ只中だ。


もし、この事を知ったヴァインが助けに走り出し、目の前でアンネが…


私は、一人で回らない自分の思考回路に苛立ちを覚える事すら出来ずに、立ちすくんでしまったのだった…






10分程経ったのだろうか?

それともたった数秒だったのだろうか?

そんな時間の感覚さえもおかしくなるような不安と焦燥感、恐怖を感じていた。

そして、私はやっともう一度まともに動き始めた脳をこれでもかとフル回転させる。

アンネを一人で助けに行けるのならば、助けに行きたい。

しかし、その情報が漏れると、シストラスティー村の悪徳プレイヤーにアンネが何を仕掛けられるか分からない。

だから、なるべく隠密に裏で事を進めたい。

勿論、事が終われば報告する気では居る。

しかし…


私は此処、unstable・storyのギルドマスターだ。


そして、同時にこの状況に置かれた仲間達を安心させなければ成らない人間だ。

そんな人間がこんな状況に陥った当日から急に消えたら、仲間はどう感じる?

不安、恐怖、何に襲われる?

分からない。

分からない。

分からない事こそが一番怖い。


すると、急に耳元に音がする。


声。


落ち着く声。


慣れ親しんだ声。


囁くような声。



『どうかしたのか?…何か有れば、手伝う…』



それは、飛竜だった。


『ひ…飛竜…』


私は後ろからする囁くような、飛竜の声に、後ろを振り返れない。

こんな、こんな顔…見せられない。

今、振り返れば、皆に…こんな、泣きそうな顔が見られてしまう。

リーダーがこんな顔をしていたら、皆不安に成る。

分かっていてもこの顔は変わらない。

表情は、最後の意地で泣く事を知らない瞳以外、全てが不安を物語っていると、私は、鏡を見なくとも分かった。

あぁ、彼はそれすら見抜いているのだろうか?

ざわつくリビングから、私の顔が誰にも見えないように、私の手を引いて何処かに行こうとしている。

この方向は…


私の部屋だった。


『ガチャリ…』

彼は私の部屋のドアを開け、そっと閉める。

そして、彼はほかに誰も居ない事を確認するように回りを見渡した後に、ゆっくりと口を開いてこう言った。

『何を隠している?…

状況を説明されないと、助けるに助けられない…

だから、説明しろ…』

彼のこんな不器用な優しさに、何度触れ、何度助けられただろうか。


そして、又助けられるのだ。


彼の言葉に促されるように、私は状況を説明した。

二人で思い出しながら、ここ、アキバ周辺の地図と、シストラスティー村周辺の地図を作り上げた。

そう、アンネ帰還作戦会議が始まったのだった…

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