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802 ギルドマスターは先読みに足下をすくわれそうです

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告&いいね、ありがとうございます!!

 頭は低く生きていけ


 えーっとなんの科白(セリフ)だったかしら?

 なんのというか、誰の科白(セリフ)

 うっすらとした記憶をたどってみると結構な迫力のある女性が言っていたような気がするんだけど、あまりにも記憶が遠すぎてはっきりしない。

 しかもそういう時に限って、落ち着いて記憶を掘り起こしていられる状況でもないっていうね。


 でもその慌ただしい状況のせいで思い出した科白(セリフ)でもあるわけで、気になる。

 凄く気になる。

 たぶんこの 「頭は低く」 っていうのは平身低頭の意味よね。

 つまり人間社会を生きていくためには謙虚さが大事っていう教訓だったと思うんだけど、今わたしたちが置かれているのは物理的……いえ、現実的に 「頭を低く」 しないと生きていけないというか、仮想現実(ゲームの世界)だから現実的という言葉表現もおかしなわけで、結局記憶を掘り起こしている余裕はないってことです。


「そこに帰結するんやな」

「しますがなにか?」

「ごめんやから突っかからんといて。

 起動……」


 余計なことを言って失敗したカニやんは、誤魔化すように詠唱を始める。

 そう、わたしたちは今戦場にいます。

 なぞの現象で、本来ならば味方というか仲間(?)であるはずのプレイヤーたちが、強制的に紅白に分かれて戦わされるという古戦場にいます。

 名目はこの謎現象の解明というか、調査?


 このゲーム 【the edge of twilight online】 を進めるためのエピソードクエストだと、だいたい安全地帯である 【ナゴヤドーム】 にある長官室でNPC長官からクエストを受諾するシステムで、前のエピソードをクリアすることで次のクエストを受諾することが出来る。

 でもこの古戦場 【ヤシマの眩惑】 は期間限定イベントだからね。

 前後のエピソードなんてなくて、以前のイベント参加も不問。

 条件である本体(アバター)のレベルが20以上なら誰でも参加出来るのでわたしも参加してるけど、カニやんも参加しております。


「なんか、参加しててごめん。

 起動……」


 どうやらカニやんは謝りたい年頃らしい。

 さっきから 「ごめん」 ばっかりだけど、なにか悪いことしたの?


「悪いことしてこの状況やったらいくらでも謝るけど、これ、謝ってもどないもならへんやん。

 マジ勘弁してや」


 うん、結局謝るのね。

 でもカニやんも自分で言っているけれど、謝っても状況は絶対に改善しないのよ。

 どんなに謝ってもね。

 仮想現実(ここ)は土下座が意味を為さない世界だから。


「それな。

 起動……」


 ……えっ?


 ひょっとして土下座で状況の改善とか狙ってたっ?


「絶対無駄やん。

 ってか誰に向かって土下座すんの?

 そっから教えてもらえる?」


 あー……なるほど、そこね。

 間違っても白軍(はくぐん)ではないと思うから、やっぱりあの人たち?


 運営?


「絶対嫌や」


 そうね、わたしも運営には土下座したくないわ。

 というか、もはやこの状況は白軍に土下座してる感じ?


「認めたないけどそんな感じやな。

 起動……」

「起動……業火」


 もちろん白軍の一部……というか、主に魔法使い?

 ほら、剣士(アタッカー)魔法使い(わたしたち)とは反対で、近づかないとなにも出来ないから頭を低くなんて言っていられない。

 もちろん舞台(ステージ)次第では匍匐前進もありかもしれないけど、今回は海戦なので。

 でも魔法使いは伏せていても攻撃は出来るからね。

 結果として、白軍の魔法使いも紅軍(こうぐん)に土下座をしている感じになっている。


 物は言い様


 そもそもどうしてこんな状況になっているのかといえば、この最終戦が夜の部だから。

 夜の部と言えば、やっぱり 【落ち武者タイム】 よね。

 海中から甲冑を纏ったNPC(落ち武者)たちが無限に湧いてくる、文字通り無間地獄。


「それムゲン違いな。

 起動……」


 さすがカニやん、そこは聞き逃してくれないのね。


「突っ込んで欲しいんかと思ったけど」


 思ってません


 いつ終わるともしれないミニゲーム 【落ち武者タイム】 が始まると、無限に湧いてくるNPC(落ち武者)に多くのプレイヤーが落とされる。

 おそらくあれを生き残れるのは中堅以上の剣士(アタッカー)と火力のある攻撃型魔法使い(ソーサラー)だけ。

 遠距離攻撃(ロングレンジ)に特化した銃士(ガンナー)に至っては、ほぼほぼ生き残れない。


 クロエは別だけど


 どうしてあの状況を生き残れるのか、本当に不思議。

 でもたぶん、クロエが生き残ってるんだからセブン君も生き残ってるわよね。


 参加していたら


 【鷹の目】 はなにを考えているかよくわからないし、サブ垢も持ってるらしいから参加しているかどうかもわからないのよね。

 まぁそんな生存率の低さだからこれまでの二戦はDRAW(引分け)

 そこで最終戦こそは! ……と意気込んで対策を練ってみたわけ。

 参加登録(エントリー)をして、ポストに届いた鉢巻きで紅軍だとわかってからだからそんなに凝った作戦は練れないけれど、幸いにしてカニやんも紅軍だったから一緒に考えてもらいました。


 その作戦というのが……


 そもそも 【落ち武者タイム】 が始まると、白軍はともかく、紅軍は目的地(ゴール)である 【ヤシマ】 に辿り着くことが難しい……というか、ほぼほぼ辿り着けない。

 本州から 【ヤシマ】 までの海全域で落ち武者が湧くから、そこを白軍と落ち武者を薙ぎ払いながら前進するのは至難の業。

 それこそクロウとかノギさんとか、あとノーキーさんもへっちゃらよね。

 たぶん不破さんも真田さんも。

 言うまでもないけど、脳筋コンビなんかもね。


 つまり剣士(アタッカー)でもランカークラスでなければたぶん辿り着けない。

 たまたま転送位置が 【ヤシマ】 近辺だったら逃げ切れるかもしれないけど、数としては少ないと思う。

 結局落ち武者と切り結べる技量(うで)がないと道を開けないからね。


 【ヤシマ】 までの道


 だから考えたのよ。

 この最終戦に限っては、開戦直後から 【ヤシマ】 に向かうことを。

 でも紅軍が移動速度を速めれば当然白軍だって追ってくる。

 もちろんそれは想定内。

 想定外だったのは銃士(ガンナー)の対応が早かったこと。


 開戦後、一度本州まで後退して戦場と射程を調整するかと思ったけど……たぶん一度後退はしていると思う。

 開戦直後の混乱は、銃士(ガンナー)にとって魔法使い以上に脅威のはずだから。

 むしろあの混乱を楽しめるのは剣士(アタッカー)だけです。

 その剣士(アタッカー)の接近を避けるためにも白軍の銃士(ガンナー)は一度本州まで下がる。

 だからこの最終戦でも開戦直後には一度本州まで後退しているはず。

 想定外だったのはそのあとの対応の早さ。

 紅軍(わたしたち)の動きにいち早く気づいて前進を始め、紅軍の殿(しんがり)を射程に捉えて仕掛けてきた。

 おかげで紅軍(わたしたち)は頭を低くしていないと撃たれてしまう状況に陥ったというわけ。


 まぁ考えてみれば戦場を少し離れて見ているわけだから、銃士(ガンナー)は異変に気づきやすい位置取り(ポジション)なのよね。

 もちろん作戦を考えるにあたって銃士(ガンナー)のことを失念していたわけじゃないけれど、この対応の速さは想定外。

 【鷹の目】 の存在とセブン君を疑ったわ。


 いると思う


 最終戦だし、参加していてもおかしくはないか。

 たぶんこの最終戦は一番参加人数が多いんじゃないかな。

 だからセブン君率いる 【鷹の目】 が参加していてもおかしくはない。

 おかげで小舟の上で立てなくても大丈夫っていうね。

 むしろ立ったら危険です。


 撃たれます


 さすがに今回のイベントもこれで9戦目。

 わたしだって小舟の上で立つくらいは出来るようになったけれど、こうも小舟やプレイヤーが密集していると揺れが凄くて、ただ立っていることも難しいというか無理。

 そんなわたしの運動神経が役に立つ日が来るなんて思いもしなかったわ……。


 終戦まで伏せて過ごします

グレイの特技(?)がこんな形で活かされるとは本人も予想外。

さらにこのあともっと予想外な出来事が・・・

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