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796 ギルドマスターは海坊主と不本意な再会をします

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告&いいね、ありがとうございます!!

「ちょ!

 ま、おま!」


 待てと言われても止まれないのが詠唱速度(スピード)勝負。

 一瞬でも躊躇したら負けるんだから当然よね。

 一瞬出遅れたのは忘れてください。

 そもそも待つ必要なんてないし、そんな義理だってないし。

 バロームさんには今まで散々ドブスとか言われたし、むしろ恨んでもいいくらいだと思う。

 でもほら、わたしは心が広いから。


 寛大に許します


 でも待ってあげなかったけどね。


「それは心が広いとは言わないんじゃない?」


 いつもならここでその科白を言うのはカニやんだけど、全然声が違うんだけど? ……と思ったら別人だから当然だった。

 でもよぉ~く知ってる人物で、なぜかノーキーさんの肩越しにその顔が見えてるっていうね。


 どういう状況?


「てめぇ……」

「動くなよ、徳貴(のりたか)君」


 徳貴というのはノーキーさんの本名野木(のぎ)徳貴(のりたか)

 それを知っているプレイヤーはそれほど少なくはないけれど、口に出して呼ぶのはせいぜい幼なじみの不破さんと先輩の真田さんくらいで、ノーキーさんの肩越しに顔を覗かせているのは後者でした。


 真田(さなだ)(かおる)


 わたしの個人的な感覚だけど、古風というか、風流というか。

 うん、まぁノーキーさんの本名も真田さんの本名もわたしにはどうでもいいことなので明後日の方向にでも放り投げておいて、改めてお聞きします。


 どういう状況?


「けっ! こいつが風流なんて柄かよ」

「確かに、柄じゃぁないなぁ」


 このゲーム最大の弱点である首を押さえられてもこの強気はさすがノーキーさん。

 でも首を押さえているのが真田さんなので、油断も隙もないというか、状況次第では問答無用で切られます。

 それこそ容赦なしよ。


 胴を断たれても一撃で終わるけれど、そもそも硬くて一撃では断てません。

 でもクロウなら……と考えたら、同じトップクラスの剣士(アタツカー)なら断てそうだから、ノーキーさんも真田さんも出来るかもしれない。


 くわばらくわばら


 で、改めて訊きますが、これはどういう状況でしょう?


「どうって、折角助太刀に来てあげたのにそれはないんじゃない?」

「ということは、真田さんは白軍(はくぐん)ということでよろしいでしょうか?」

「よろしいんじゃない?」


 その持って回った言い方をされると凄く気になるんだけど、とても立派な上腕二頭に巻かれた白い鉢巻きがそよいでいるので良しとします。

 素直にありがとうと言えないのは、まぁほら、真田さんとも色々あるから。

 たぶん今も、わざとバロームさんが落ちるのを待っていたと思う。


「別に待ってたわけじゃないけど、あいつ、うるさいから」


 でもいつから見ていたのかは疑問なわけで。

 一応味方だから忠告はしておくわ。

 うん、味方だしね。


「近くにフレデリカさんがいると思うから気をつけて」

「フレデリカって 【グリーン・ガーデン】 のフレデリカ?」

「そのフレデリカさんです」

「あのカマ野郎」

「お前が言うな!!」


 面倒臭そうに真田さんが言ったと思ったら、なぜかノーキーさんが怒鳴り返すっていうね。

 今の真田さんの言葉のどこにスイッチがあったのかちょっとわからないんだけど、迂闊にもポチッと押してしまってノーキーさんの怒りを買ったというか、なにかに触れたというか。


 琴線?


「この場合は逆鱗じゃない?

 怒ってるわけじゃないけど」

「怒ってねぇよ!

 斬るならさっさと斬れや!」


 たぶんその真田さんの勿体ぶった行動のほうにキレてるんじゃない?

 今のノーキーさんは完全に晒し者状態なわけだし。

 うん、さっさと斬れって言ってるし。


 斬れば?


 ここでノーキーさんが落ちてくれればわたしとしては大いに助かるわけで、是が非でも斬って欲しいところ。

 でも正直にお願いすると、そこはほら、真田さんも天邪鬼だから。

 今ノーキーさんにしているように、勿体ぶられそうな気がするのよね。

 ここでノーキーさんが落ちてくれれば、美沙さんだけでなくわたしも生き残れる。


 まぁね


 わたしだって落ちたいわけじゃないの。

 でもノーキーさんが相手だと落ちざるを得ないというか、確実に落とされるというか、せめて相打ち狙いがギリというか。

 確実に美沙さんを逃すには他に方法がなかっただけで、真田さんがノーキーさんを仕留めてくれるならわたしは落とされずに済む。

 美沙さんだって、この場を逃げ切ってもまだまだ先があるわけだし。

 偶然他のメンバーと会えるとは限らないし。

 もちろんそれは美沙さんだって承知の上で参加してるわけだけど。


「ギルマス、過保護過ぎっすよ」

「面倒見の良さはグレイちゃんのいいところよね」


 ありがと


 …………うん、まぁお礼を言うところよね、ここは。

 でも、真田さんが斬らないのならわたしが焼いてもいい? ……というか焼くわ。

 それこそ真田さんが気まぐれを起こしたら困るもの。

 では早速……と思ったところで機先を制される。


information これよりミニゲーム 『那須与一タイム』 が始まります。

      あなたが射手(いて)に選ばれました。


 このインフォメーションは見覚えがあります。

 見れば美沙さんはもちろん、真田さんやノーキーさんの手元にもウィンドウが出ている。

 おそらく表示されているのは最初の一文だけ。

 射手は一人しかいないからね。


「またこれかよ」

「そういやあったな、こんなの」


 ノーキーさんは 「うぜぇ」 とか言いながら、真田さんに 「どけよ、てめぇ」 とか言って腕を払いのけようとしている。

 でもなぜか放さないのよね、真田さん。

 楽しそうに 「おとなしくしてろよ」 とか言ってるの。


 夜時間にしか発生しないと思われる 【落ち武者タイム】 と同じ、突発的に発生するミニゲーム 【那須与一タイム】。

 この 【那須与一タイム】 が始まると射手より本州側は休戦になるから、剣を首に当てても脅しにはならないのよね。

 それでも真田さんがノーキーさんを捕まえているのは、おそらくヤシマ側に逃がさないため。

 【那須与一タイム】 が終わるまでは、白軍の真田さんは射手(わたし)が立っている位置よりヤシマ側にはいけないから、ここでノーキーさんを逃すと厄介というか。


 ノーキーさんの性格的に逃げないと思う……いや、本州(こっち)側にいたら休戦だから、【那須与一タイム】 が終わるまではヤシマ(向こう)側に移動しそうね。

 それをさせまいと、真田さんはノーキーさんの首に腕を回して確保。

 その腕が邪魔で払いのけようとするノーキーさんと、小さく罵り合いながらもSTR(腕力)で小競り合いをしている。


 わかってる、ゆっくりしている時間はないってね。

 このあいだもどんどん紅軍(こうぐん)プレイヤーはヤシマ側に移動しているはず。

 最終目的地であるヤシマまでは行かないとしても、射手(わたし)よりヤシマ側に移動して、援軍が見込めない状態の白軍を落とすためにね。

 ついでにもう一つわかってる。


「言っておくが俺は敵だからな。

 今回は教えてやらねぇよ」

「わかってます!」


 ムカつくほどのイケメンがにやっと笑う。

 あれがどんな気まぐれだったのかわからないけれど、前回はノーキーさんが弓の引き方を教えてくれた。

 でも今回は敵同士。

 わたしだってそんな甘えたことは考えません。


 やってやろうじゃない!


 奮起したわたしが足場にしている小舟に現われた三本の矢と弓を拾うと、タイミングを合わせるように、前方10mくらいのところに海坊主が現われる。

 これからわたしが射る()を持った女房3人、小舟に乗ってゆっくりと海中から浮上してきた。

バロームが落ちたところで真田が登場。

フレデリカの行方も気になるところですが、そんなことにはお構いなしにミニゲーム【那須与一タイム】がスタート!

またしても射手に選ばれたグレイは的を射抜けるのかっ?!

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― 新着の感想 ―
射手の条件がよくわからないけど、これ公表されないと他のプレイヤーからクレームごつきそうですね。二度目は下手しなくても贔屓と取られる気がします。 グレイが当てられると思わないのですが、何故か当たったら…
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