794 ギルドマスターは卑怯な隠しごとをします
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「そういえばこのゲーム、裸になれないんですよね。
じゃあポロリもなしだよね」
まぁ現実世界ならね、背中から火球を食らったらビキニくらいいともあっさり、こともなげに焼け落ちるわよね。
前もそうだけど、うしろなんてもっと布面積少ないし。
下手したら紐一本だし、レンチンよりも簡単に焼け落ちる。
そんでもってその……ね。
うん、まぁはい、ぽ……しますね。
ぽ…………………………
どう頑張っても言えない。
その一言が言えない。
どうしてもその一言が言えない。
でもね!
話を戻しますが、現実世界で背中に火球を食らえばまず背中に大やけどを負うわけですが、仮想現実でもビキニなんていう布面積の少ないぺらぺら装備はVITが極めて低い。
もちろん同じ水着でも、課金装備とゲーム内通過で購入出来る廉価版装備とでは全然ステータスも違うわけですが、それでもやっぱり水着は水着なんです。
正直、恥ずかしい以外になにもない、装備するだけ無駄。
「ギルマスって装備ガチ勢ですよね。
火力ゴリラだし」
違うから
あの二人にも言ったけど、ゴリラからは離れてくれる?
同じ霊長類だけど、ゴリラじゃないの。
哺乳類霊長目ヒト亜科までは同じだけど、ゴリラはゴリラ属。
わたしはヒト属です!
ホモ・サピエンスです。
ゴリラじゃないの!
「水着なんてコスプレですよ、コスプレ!」
ちょっとカニやんや恭平さんを真似て、真面目ぶって蘊蓄を披露してみたのはいいけれど、人類最強……ではないかもしれないけれど、日本国内ではかなり強豪勢力であるJKには無意味だったっていうね。
「真面目に考えすぎですよー!」
そんなことを言ってケラケラと笑っている。
でも美沙さんも水着、着たいのよね?
「もちです!」
迷わないんだ。
折角始めたゲームだし、存分に楽しみたいという気持ちが随所で溢れまくってるわね。
「だって夏ですよ!
折角海に来てるんだから、やっぱ水着っしょ!」
なるほど
わたし自身が着なくていいのなら、その考えに納得出来ます。
しかも同じように考えるプレイヤーは他にもいて……というか結構な人数がいて、このイベントにも水着装備で参戦していたりする。
わたしが今まで気づかなかったのか……と思ったけど、イベントが進むにつれて増えていったらしい。
なんなのよ、それ?
イベントに慣れてきたからか、それとも夏を満喫したいのか?
ひょっとしたら海を満喫したいのか?
あるいはそれら全部か。
欲張りね
でも余裕があれば、わたしのインベントリに入っている、去年着なかった水着を貸してあげてもいいんだけど、そうもいかないのが現状なのよね。
「グレイちゃ~ん」
アンジェリカさんとフレデリカさんがいるからね、余裕なんてありません。
ただ攻撃型魔法使いのアンジェリカさんはわたしの敵じゃないというか、物理的な攻撃手段を持っていないのなら暖簾に腕押しです。
だってほら、わたしには常時発動スキルの 【愚者の籠】 があるからね。
無属性、闇属性、光属性以外の攻撃魔法は通じない。
かといってその三属性のスキルはそもそもの数が少なくて、所持しているプレイヤーは少ない。
取得するのも難しいしね。
でもだからといって油断はしません。
アンジェリカさんはともかく、フレデリカさんは剣士だからね。
アンジェリカさんの 【ホットポット】 で背中を撃たれて落水したフレデリカさんは、海面から顔を出したかと思ったらすぐにアンジェリカさんと口喧嘩を開始。
でも油断がならないのは、この二人、喧嘩をしながらもこちらに仕掛けてくるのよね。
水に落ちたから上がります……なんてなんでもない風に装いながら、わたしが足場にしている小舟に上がろうとするんだもの。
させるか!!
「スパーク」
「ぶふっ!」
タイミングが良かったのか悪かったのか。
なにか言い掛けていたらしいフレデリカさんは変な声を上げながら再び落水。
すると邪魔がいなくなったとばかりにアンジェリカさんが狙ってくる。
「起動…………」
「起動……焔獄」
攻撃型魔法使い同士の詠唱勝負なら負けません! ……一瞬出遅れたけど。
もちろん負けたところで落とされることはないけれど、どうせすぐにフレデリカさんが水から上がってくる。
それに、わたしに魔法攻撃が効かなくても美沙さんには効くからね。
それならフレデリカさんが浮上してくるまでにアンジェリカさんを落としておきたい。
「起動……………………ホットポット」
うん、美沙さんナイスタイミング。
わたしの 【焔獄】 を食らって硬直しているアンジェリカさんに、美沙さんが 【ホットポット】 で追い打ちを掛ける。
でもまぁアンジェリカさんもレベルは低くないからね。
そのへんはほら、伊達に主催者やってませんって感じ?
「起動……」
油断せず、確実にとどめを刺す! ……と思ったら、別の主催者が登場。
当然呼んでないけどね。
「へぇ~い、グレ~イ!」
「あ、てめぇ!
邪魔すんじゃねぇよ!」
………………
えっと、どういうこと?
急に現われたノーキーさんを見て、アンジェリカさんの声が野太いおっさんみたいになったんだけど?
野太いおっさん声でノーキーさんを罵りだしたんだけど?
言葉も乱暴というか、男の人っぽくなったんだけど?
どういうことっ?
「どうもこうもねぇよ。
さっさとこのヘボ、落とせや」
「うるせぇんだよ、このチンピラ!」
アンジェリカさんとノーキーさんって、仲悪かったっけ?
ちなみに、どうしてノーキーさんが自分でアンジェリカさんを落とさないのかと言えば、ノーキーさんも紅軍だからです。
今回のイベントでは同士討ちは出来ない仕様だから。
「起動……………………百花繚乱」
あら、美沙さんったら 【百花繚乱】 を取得したのね。
うん、でもまだ詠唱に時間が掛かるから、火力のあるスキルだけど使うタイミングが難しいかも。
今回のイベントではMP無制限だけど、通常エリアではMPも消費もちょっと辛いかもね。
「そうなんですよねぇ~」
幸か不幸か、わたしにだけ狙いを定めていたアンジェリカさんは思わぬ伏兵……というのも失礼だけど、でもここで美沙さんが仕掛けるとは思っていなかったはず。
想定外の方向から放たれた 【百花繚乱】 をまともに食らって落ちた。
次はフレデリカさん! ……と思ったら、どこかのタイミングから見ていたらしい。
海中を移動して美沙さんのほうに接近。
そのまま一気に舟に乗り込もうとしたけれど……
「スパーク!」
突然現われたフレデリカさんに驚きながらも、美沙さん渾身の 【スパーク】 で吹っ飛ばす。
ナイス!
「やるじゃねぇか」
しかもノーキーさんにも褒められるなんて、なかなかないわよ。
でもまたフレデリカさんを海中に逃がしてしまった。
面倒臭いわね。
これじゃ不毛なモグラ叩きだわ。
もちろんフレデリカさんも全くの無傷ではないけれど、【スパーク】 ではたいしたダメージは与えられない。
それこそ 【スパーク】 だけで落とすのは至難ってくらいダメージが出ない。
「ギルマスに褒められたからっていい気になるなよぉ~~~~」
……バロームさんもいたのね。
正直、よくない状況だわ。
まぁ見当はついてるんだけど、ほら、ノーキーさんと一緒にいるしね。
だから見当はついてるんだけど、バロームさんの鉢巻きの色がわからないんだけど?
隠すとか、どんな卑怯よっ?!
最終日にして登場したギルド 【グリーン・ガーデン】 の主催者&副主催者コンビ。
そこに現われたノーキーとバロームのギルド 【特許庁】 コンビ。
そして【素敵なお茶会】 コンビのグレイと美沙。
この三つ巴の勝敗は・・・