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754 ギルドマスターは通せんぼをします

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告&いいね、ありがとうございます!!





どうしてもこのメンバーが揃うと脱線が多い 【素敵なお茶会】。

なかなか状況の把握から脱却に進まないが・・・

 んー……これは……


 【素敵なお茶会】 が誇る二つの頭脳が状況を解析したところによると……というか、クロエとぽぽの体験談とでもいうべきかしら?

 残念ながらくるくるは落ちてしまったからね。

 その二人の話によると、紅軍(こうぐん)は初戦の敗退から余計なことを学び、この初日第二戦では開戦直後の混乱に乗じて、とにかく白軍(はくぐん)銃士(ガンナー)を狙い撃ちしてきた。

 それこそ紅軍は南下してヤシマに辿り着くのが目的なのに、北上して退避する白軍銃士(ガンナー)を本土まで追いかけて落としにかかるとか、こう……ちょっとストーカーじみているというか、執念じみているというか。


 なんなの?


 あのクロエさえ追いかけ回されて、よりによってわたしに助けを求めてくるなんて。

 だって自力では移動出来ないのよ、わたし。

 どうやって助けに行くのよ?

 それこそはじめからクロウとか柴さんに連絡すればよかった、の……に……あら? そういえば柴さんは?


「さぁ、どっかにおるやろ?」


 もう、カニやんったら。

 心配じゃないの?


「なんであの脳筋の心配せなあかんねん?

 俺らと違ってガチムチやねんから、一人でもどないでもなるやん」


 むしろ一人のほうが安全とか言っちゃって。

 カニやんったら、本当にどんな強がりよ?

 こういうのを拗らせてるって言うんでしょ?


「喪女拗らせてるあんたに言われたないわ」


 クロウがムーさんを落としたからって、わたしに八つ当たりしないでよ。


「…………とにかく、後半で銃士(ガンナー)の援護は期待出来ないと思ったほうがいい」

「せやな」

「ところでグレイさん、カニやん、ちょっと仕事してもらっていい?」

「悪い」


 ごめんなさい


 ついうっかり話に夢中になって、すっかり忘れてたわ。


「起動……」

「起動……」

「業火」


 恭平さんに言われ、わたしとほぼ同時に詠唱を始めるカニやん。

 でもわたしのほうが早いからね。

 タイミングを上手くずらして、なるべく隙を作らないようにする。

 それにしても、どうしようかしら?

 ねぇ誰か、どうしたらいいと思う?


「……ダイヤモンドダスト」

「それを考えるのがグレイさんの仕事でしょ」


 スキル発動のタイミングで突っ込めなかったカニやんに代わり、よりによってクロエが毒を吐いてくる。

 相変わらず隣の小船でぽぽと並んで銃を構え、この混乱を抜け出そうとする紅軍の銃士(ガンナー)を狙い撃ちにしているらしい。

 でも撃ち返してこないということは、紅軍側の銃士(ガンナー)はあくまで逃げに徹してるってことかしら。

 距離が遠ければ遠いほど、揺れる舟の上からは狙いがつけにくいということもあるんだろうけど。

 そういう意味では、クロエはもちろんだけど、ぽぽも優秀よね。

 もちろんくるくるも。


 落とされたけど


 そうねぇ……ちょっとクロエたちには悪いけれど、そのままヤシマに向かう紅軍側銃士(ガンナー)を狙い続けてくれる?


「どうするつもり?

 ぽぽ、すぐ隣の奴」

「うん、見つけた、あれだね。

 先攻するよ」

「了解」


 わたしと話しながらもお願いどおり狙撃を続けるクロエは、並行してぽぽと標的(ターゲット)を打ち合わせる。

 二人が覗く照準器(サイト)にどんな状況が見えているかはわからないけれど、一人でも多く紅軍銃士(ガンナー)を撃ち落としてもらうわ。


「起動……百花繚乱」


 わたしたち魔法使いはともかく、剣士(アタッカー)銃士(ガンナー)は武器を格納しない。

 その理由は至極簡単でシンプル。

 武装を解除すると攻撃力を失うから。

 まぁ剣士(アタッカー)は、最悪素手で殴るとか蹴るという攻撃方法も無きにしも非ずだけど、その場合、急所である首を切断するという必殺技が使えなくなる。


 銃士(ガンナー)にいたっては、撃てません。

 文字通り丸腰になり、完全に攻撃力を失う。

 それこそ射程が~とか、そういうレベルではなく攻撃力皆無です。


 (ゼロ)です!


 だから武装解除をすることがほとんどない。

 移動する時は銃を肩から背に負っていることがほとんどというか、ほぼほぼ背負った状態だから後ろ姿でも職種(クラス)がすぐにわかる。

 つまり二人は逃げる後ろ姿に銃を見て、狙い撃ちにしてるってことだと思う。

 まぁ少し前に例外的な銃士(ガンナー)を知ったけど。


 真凛(まりん)さん


「起動…………スパイラルウィンド」


 彼女は、一応インベントリに普通の狙撃(ライフル)銃も入っているらしいけれど、基本装備は射程の短い拳銃。

 西部劇のガンマンみたいに、左右の腰に、ちょっと厳つめのホルスターをつけていたから、拳銃装備の銃士(ガンナー)がいると知っていなければ見落とすかもしれない。

 そもそも拳銃装備って、銃士(ガンナー)的には同じ職種(クラス)として認識しているのかしら?

 それとも真凛さんの主張みたいに、ガンマンとして別(クラス)にしているのかしら?

 ちなみに剣士(アタッカー)は、盾剣士(ガード)短剣使い(スプリンター)を別(クラス)として分けている。


「真凛? 誰、それ?」

「俺も、聞いたことないと思うけど……」


 あえて尋ねたわけではないけれど、すぐそこにいるからね。

 自動的に聞こえるわけだけど、存在を認識すらされていないことが判明しました。

 まぁクロエはともかく、ぽぽまで聞いたこともないというから、その程度の認識というか、その程度にも認識されていないというか。

 ここで恭平さんが面白いことを教えてくれる。


「武器屋に、初期装備の一つ上の拳銃が売ってることも知らない人、多いと思う」


 しかもそれより上の等級(ランク)の拳銃となると、生産職のお手製しかないっていうから……いや、それ以前に、そもそも銃士(ガンナー)の優位である射程を捨てる意味がわからないわ。

 優位を捨てて、さらにわざわざ鍛治士に依頼して作ってもらうとか、どんな無理ゲー……いや、この場合はなに?


「わざわざ名称付けんでえぇし」

「起動……スパイラルウィンド」

「僕に言わせれば、どんな馬鹿? だけどね」


 そ、そうね、クロエに言わせればそうなるかも。

 でもそれは正式採用しないでおきます。

 ついでに 「会ってみたい」 とか 「顔見てみたい」 とかも言わないのよね。


「興味ないよ、そんな馬鹿」


 クロエはどこまで行ってもクロエね。

 ほんっと、口が悪いんだから……とは、口が裂けても声に出しては言えないけれど。

 だってほら、どうなるかわかってるじゃない。


 ちなみにわたしたち魔法使いは、攻撃型魔法使い(ソーサラー)回復系魔法使い(ヒーラー)に分かれている。

 それはもうくっきりはっきりね。

 一応スキルは取得すれば使えるけれど、威力が全然違うのよ。

 攻撃型魔法使い(ソーサラー)が使う回復魔法(ヒール)なんて微々たる回復量だし、回復系魔法使い(ヒーラー)の使う攻撃魔法は火力がもう、ね。


 もう一つ言えば、美沙さんのレベルではステータスを底上げする必要があるため杖の装備は必須だけれど、わたしやカニやんくらいになると、杖を解除することでどれくらい火力が下がるかを把握していれば、まぁなくてもなんとかなります。

 カニやんは今もいつもの大杖を持っているけれど、わたしはね、ほら、しがみつく必要があるので解除してます。

 だって仕方ないじゃない!

 両手でしっかりしがみついていないと怖いんだもの!!


「それで? どうする?」

「起動…………氷雪乱舞」


 タイミング悪く、カニやんの詠唱と恭平さんの声が被る。

 ごめんなさい恭平さん、もう一回言ってもらえる?


「だから、どうする?」

「なにを?」

「クロエ!」


 別にボケたつもりはなかったのに……。

 本当に 「なにを?」 と思ったから訊いただけなのに、直後、ぽぽがひどく驚いたというか、慌てたというか、声を上げたと思ったら銃声が轟く。

 でもね、わたしは撃たれなかったの。

 代わりにカニやんが……


「いってぇ……撃つなよ!」


 うん、まぁここで短気を起こして撃つクロエもクロエだけど、さっきの、ムーさんの襲撃の時といい、どうしてカニやんがわたしを庇うのよ?

 言っておきますけど、カニやんよりわたしのほうがレベルは上だし、当然HPだって高いのよ?

 今は同じ白軍同士だからダメージすら出ないけど……


 ごめん


「あんたも、ここは俺に謝るんじゃなくてクロエを怒れ!」


 よほど痛かったらしいカニやんはクロエを怒鳴りつけ、続けてわたしを怒鳴りつける。

 でもまぁ反省しないのがクロエよね。


「寝ぼけてるみたいだったから、目を覚してあげようと思ったんじゃない。

 カニやんも、邪魔しないでよね」

「んだとっ?!」


 珍しくカニやんが食ってかかってる。

 いつもならそれがクロエの性格だからって諦めてるのに。

 そんなにムーさんが落ちたことや、柴さんがいないことが淋しいのかしら?


「柴さんは、落ちてなければそのうち来るだろうから、クロエの相手はカニやんに任せて、グレイさんは考えてくれる?

 この状況をどうするか」


 柴さんが合流するかどうかとクロエの相手がどう関係するかがわからないけれど、とりあえず恭平さんに言われたとおり、この状況の打開策を考えることにします。


 初戦では、紅軍プレイヤーの……ちょっと数を予測するのは難しいけれど、紅軍はヤシマに向かうプレイヤーと乱戦の場に留まるプレイヤーに分かれた。

 わたしたち白軍は乱戦の場に留まるプレイヤーを落としつつ、ヤシマに向かうプレイヤーを追う形で南下。

 紅軍は二手に分かれているから当然白軍が優位にあり、必然的に戦場は南へとゆっくり動き、本土まで退避していた白軍側銃士(ガンナー)がそれを追う形で遅れて南下。

 紅軍銃士(ガンナー)の射程より手前で仕掛けることで優位を維持した……というのが初戦のあらまし。


 今回はそれを阻止すべく、ほとんどの紅軍プレイヤーがヤシマに向かわず、この場に留まり混乱状態を維持。

 それが退避しようとする白軍銃士(ガンナー)の北上を邪魔した。


 今、ここ


 つまり……まぁわたしたちの感覚だけれど、この戦場は紅軍の支配下にあるってことよね。

 少なくともわかっている紅軍のプレイヤーはそう思っているはず。

 そうね、だったらこうしましょう。


「南側に移動するわ。

 紅軍を北側に追い込んで南下を阻止する。

 起動……百花繚乱」

小船の上という限られた空間の都合上、グレイの側を離れざるを得ないクロウに代わり奮闘するカニやん。

味方(クロエ)の攻撃はダメージが出ないけれど、すでにムーの一撃を食らっており、どれだけHPが残っているのか?

そして戦況は、グレイの仕掛けるチキンレースで動くのかっ?

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― 新着の感想 ―
[一言] 海中でも息ができるのなら、海中に沈めとくのも手?←グレイは沈むと信じている
[一言] 海中に沈んだ場合、呼吸はどうなるんだろう………………(゜_゜ ) さて、俵代わりに担がれてグレイの移動が開始? さすがに、クロウなら、船底にポイッは、しないよね ]_・)多…
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