753 ギルドマスターは裏をかかれてどんぶらこっこです
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あなぐまに続きクロウも合流!
ムーを斬り落としてカニやんを助けるが、なぜかグレイはモヤモヤ。
相変わらず焦点のずれたグレイだが、そうもしていられない事態が進行中で・・・
「またクロエの野郎か!」
そんなことを言っているあいだに、二発、三発と撃ち込まれてようやく落ちてくれたノーキーさん。
ほんっと信じられないほどHPが高くて手を焼かせてくれました。
わたしや美沙さんの背後で、カニやんを切り刻んでいたムーさんも駆け付けてくれたクロウが落としてくれて、残るは真田さん一人。
もちろん周囲にはまだまだ紅軍プレイヤーが沢山いるけれど、目に付いた厄介どころはとりあえず真田さん一人。
その真田さんの相手を、ロクローさんを探し回っていたあなぐまさんがしてくれるらしい。
うん、もちろんそれはいいの。
全然かまいません……というか、むしろ助かります。
ありがとうございます
あなぐまさんが近くを通りかかったのは偶然……だと思うけれど、うん、まぁわたしは偶然だと思いたいです。
だってこれだけランカーばかり集まってくると、他のプレイヤーたちが、まるで化け物でも見るようにわたしたちを避けるのよね。
失礼しちゃうわ。
わたしのどこが化け物なの?
しかもみんなイケメンだらけで……ん? ひょっとしてひょっとするんだけど、これが噂に聞くハーレムとかいうやつ?
え? そうなの?
「そうなんです。
いや、まぁあんたのイケメンの基準がようわからんけど」
大丈夫、カニやんは間違いなくイケメンです。
それこそ百人に聞いても百人がイケメンって答えるわよ。
「そりゃどうも」
きっとそのにひっと笑いは照れ隠しね。
いつもと同じはずなのに、ちょっと違う気がします。
そういえばムーさんを落としちゃったこと、クロウに代わって謝っておくわね。
ごめんね
「それ、必要ないし。
ってかなんで俺に謝んねん?
ようわからんわ」
そう?
まぁカニやんがいいのなら別にいいけれど。
そのうち柴さんも来るかしら?
「あー……どうやろ?
それよかクロエは?
クロウさん来たんやったら連れてってもらえんで」
そうでした!
ついうっかり今の今まで忘れていたなんてバレたら、どんな毒を吐かれるか?
猛毒中というか、劇薬で即死案件です。
すぐ隣の小船では、それはそれは派手な剣戟を響かせながら真田さんと斬り結ぶあなぐまさんがいて、ちょーっとわたしとカニやんが詠唱をサボっているあいだ、周囲の紅軍プレイヤーの相手をしてくれていたクロウとトール君。
もちろん美沙さんも頑張ってくれてるわ。
ありがとう
「クロウ、お願いがあるんだけど」
「クロエのことか?」
あら、知ってるの?
「心配ない」
装備から推測して、おそらく今回のイベントに参加出来るレベルぎりぎり……つまりレベル20周辺とおぼしきプレイヤーを容赦なく大剣の錆にしたクロウは、視線でカニやんの後方を示す。
それにつられるようにわたしとカニやんが見ると、少し離れた小船にクロエとぽぽ、それに恭平さんが乗っていた。
もちろんその舟を漕いで移動することも出来るけれど、その時のぽぽの姿勢から推測して、さらにうしろの小船から乗り移ってきた感じがする。
たぶんノーキーさんを撃ったのはもっと後方から。
だって今の距離だと十分すぎるほど目視出来るもの。
ノーキーさんがダメージによる硬直から抜け出せなくても、きっと真田さんがクロエを斬りに行ったはず。
そうしなかったのは、あの時点ではもっと離れていたから。
居場所がわからなければどうしようもないのは、どの職種も同じだからね。
あ、でも攻撃型魔法使いは範囲魔法を持っているから、厳密な位置はわからなくても大丈夫というか、大雑把な狙いでも射程にさえ入っていれば攻撃出来るけど。
まぁなんにしてもよかったわ、クロエが無事で。
ぽぽも恭平さんも、ありがとう。
「くるくるは落ちたけど」
さすがにわたしたちと同じ舟には乗りきれないから、乗っている小船を漕いで近づけてきたクロエ。
もちろん漕ぐのは恭平さんよ。
だってクロエもぽぽもSTRがないからね。
そのクロエが不機嫌そうに話すところでは、偶然魔法使い三人の転送位置が近かったように、銃士三人の転送位置も近かったらしい。
本来はランダムのはずだけど、たまにあるわよね、そういうこと。
しかもそういう時に限って、集まっちゃいけないメンバーばかり集まっちゃうのよ。
「別にあかんことないけどな」
駄目に決まってるでしょ?
よりによって魔法使い三人だなんて。
しかもそんな時に限ってとんでもない人たちにばかり見つかるし。
「見つかるもなにもないでしょ?
あんな派手に視覚効果出してたんだから。
集まってくださいって言ってるようなものじゃない」
そんなつもりはありません。
「グレイさんとカニやんにそんなつもりはなくても、二人が揃って詠唱しまくったら嫌でも派手になるに決まってるじゃない」
「俺まで一緒にすんの、やめて」
「そりゃグレイさんと比べればアレだけど、カニやん一人でも十分目立つから」
カニやんが一人だけクロエの毒舌から逃げようとするので、させるものかと思ったけど、ぽぽに先を越されました。
まぁでもその派手な視覚効果のおかげでわたしたちの居場所がわかり、こうして合流出来たわけだし。
「たちって、俺まで入れんといてや。
クロエが探しとったんはグレイさんやろ?
俺は偶然おっただけ」
「カニやんも見苦しいよね」
「ちょ、ぽぉ~ぽぉ~」
くるくるやぽぽの照準器ではそれでも難しかったらしいけれど、クロエはね。
伊達にトップ銃士やってませんって感じ?
わたしとの会話でこちらの様子はだいたいわかったし、視覚効果を見つけて居場所もわかった。
じゃあ自分たちから移動しようと思ったところでくるくるが落とされて、入れ替わりにクロウと合流。
「どうせだったらもうちょっと早く来てよね」
そんなことを言ってクロエは口を尖らせていたけれど、気にするクロウじゃないもの。
一緒に移動を始めたのはいいけれど、途中で、やっぱり視覚効果を目指して移動していた恭平さんとも遭遇したら、クロエとぽぽを恭平さんに任せてムーさんをぶった斬りに行っちゃったらしい。
そこまでしてムーさんを斬りたかったのか?
あるいはカニやんを助けたかったのか?
どちらにしてもわたしにはちょっとショックというか、モヤるというか、その、なんというか……。
い、一応ね、自分でもわかってるの。
面倒臭いことを言ってるって。
こういうのを独占欲って言うのよね。
うん、それもわかってる。
嫌われる原因にもなるってこともわかってる。
そもそもここは仮想現実で、わたしたちは遊んでるわけだし、クロウの自由を尊重しなきゃいけないってこともわかってる。
わかってるんだけどモヤるのよね。
「なんで俺やムーやん狙いやねん?
んなわけあるかい」
「たまたま手前に二人がいただけでしょ?」
そうなの?
「そこ、疑う余地ある?」
「まぁグレイさんだからあるんじゃない?」
ぽぽはどっちの味方なの?
「俺? 強いて言えばクロエ?」
そもそもぽぽってば、どうしてそんなことを聞くのかわからない……といわんばかりの顔をしてるし。
どうしてって、さっきからカニやんに味方したり、わたし……の味方はしてないわね、少なくとも。
そうか、なるほど。
確かにぽぽとくるくるはクロエの味方よね。
妙にしっくりくるわ。
「しっくりこられてもちょっと困るけど」
その苦笑いは照れ笑いってことでいいのよね?
「苦笑いは苦笑いでしょ。
どこまでボケてるのさ?」
ここでクロエがさりげなくぽぽを助けに入ってくるし。
クロエはクロエで、ぽぽやくるくるの味方なのよね。
別にいいけど。
「それより気づいてる?」
「なに?」
「初戦とは展開が違うって」
あ~……
やっぱり気のせいじゃないのね。
うん、何か様子がおかしいと思っていたところにクロエからのSOSが来たのよね。
初戦でも開戦直後の混乱時は、紅軍も白軍も銃士が主な標的にされていたからその点はあまり気にしていなかったけれど、やっぱり何かおかしいわよね。
「さっきの反省会で恭平が言っていたあれか」
わたしより先に気がついたカニやんが言うと、クロエは大きく頷きながら応える。
「たぶんね」
恭平さんの話というと、わたしを落とすタイミング?
「別にグレイさん一人ってわけじゃないけど……」
タイミング悪く紅軍剣士と斬り結んでいた恭平さんは、刃を打ち合わせたタイミングで言葉を切る。
ちょっとお行儀悪く相手のお腹を蹴り飛ばして強引に剣を振り切ると、すぐに切り返し、相手が態勢を整える前にその首を落とす。
鮮やかなお手並みです。
相手のアバターが電子分解を始めるのを確認して、続ける。
「なるべくこの混乱時に白軍を落として追っ手を減らす狙いだと思う」
「……ううん、落とす必要はないかもしれない」
落とす必要はないけれど、落とされるわけにはいかない。
もちろん紅軍としては、ね。
あくまで白軍は紅軍の落とした数が重要で、自軍がいくら落とされてもかまわない。
逆にいえば、紅軍も白軍を落とす必要はないわけで……。
「ちょい待ち、どういう意味?」
ちょっと待ってね。
わたしもまだ考えがまとまっているわけではないというか、考えながら話しているというか。
でもカニやんも恭平さんも頭の回転が速い。
さすが 【素敵なお茶会】 が誇る二つの頭脳です。
「紅軍はこの場に留まりたいだけ?」
「それはわかるけど……あぁ、ラストで銃士に狙撃させへんためか」
「ギリギリまでここに留まって、一気にヤシマに逃げ込もうって魂胆か」
狙撃のタイミングを作らせないってこと?
「移動中は足場が悪すぎて、ほとんどの銃士が撃てへんからな」
ということは、この最中でも紅軍の銃士はヤシマに向かっているということ?
「それはそうでしょ」
当たり前のことを言うなとクロエに怒られました。
もちろんわかってるわよ、そんなこと。
でも今は、意思の疎通をはかるためにもちゃんと言葉に出して伝えないと思って言っているわけで、怒らなくてもいいじゃない。
クロウと恭平さん、トール君、それにカニやんのおかげで一定の距離以上に紅軍プレイヤーはわたしたちに近づけない。
だから安心しているというわけでもないだろうけれど、同じ小船に乗るクロエとぽぽは船底に片膝を着き、銃口をヤシマに向けて銃を構え、撃つ。
一発……二発……
二人でコソコソと何か話しているのは、おそらく標的を一人に絞り、二人で集中して攻めているから。
【素敵なお茶会】 に銃士は三人しかおらず、【鷹の目】 のような集中砲火は出来ない。
今はくるくるが落ちてしまい、二人しかいないしね。
でも少ないなりに創意工夫を懲らして効率的に攻める。
しかも指揮を執るのがクロエだからね。
容赦なし!!
来る者拒まず去る者追わずとは言うけれど、むしろ来る者拒んで去る者許さずみたいな感じ?
特に紅軍銃士がこの混乱を抜けてヤシマに向かおうとしている……という話をしているタイミングもあって、狙いはその紅軍銃士と思われる。
その、逃げる背中を撃ってるのよ。
まぁそこもクロエだから。
容赦なし!!
つまりクロエやぽぽの照準器では、そんな紅軍の動きも見えているとも言える。
でも逆に、これはクロエとぽぽがSOSを出した時の状況だけど、紅軍はそれだけでなく、白軍側の銃士が北上……つまりこの混乱を抜けて本土まで退避するのを読んで、本土近くまで追撃してたらしい。
直通通話でクロエが言っていた 『後退出来ない』 っていうのはそういう意味だったらしい。
あの時点ではまだクロウと合流出来ていなくて、くるくると三人、追撃してくる剣士を相手に追い詰められていた状況だったらしい。
隠れる場所のない今回のイベントエリア 【セトウチ】 は、剣士との距離が取れなければ銃士や魔法使いに為す術はないからね。
範囲魔法を持つ攻撃型魔法使いは火力次第で凌げる可能性も少しはあるけれど、銃士に範囲魔法はないし、足場の舟は常に揺れて狙いを定めるのが難しい。
この分では、白軍銃士はあまり残らないかもしれない。
んー……これは……
完全に詠唱が止まっているカニやんとグレイ。
これでは柴が合流出来ないような・・・
戦況が紅軍ペースで進んでいると気づいたグレイたち。
ここから白軍の反撃なるかっ?
とりあえずお仕事しませんかね?