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744 ギルドマスターは頭を隠して尻を隠し忘れます

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告&いいね、ありがとうございます!!

「つまりなに?

 あんたは不破が、あの短剣使い(スプリンター)一人に手こずってたと思ってたわけ?」

「違うのっ?」


 連続してクロエに撃たれた直後、ムーさんに首をサックリ斬られて落とされた真凛(まりん)さん。

 そのアバターが電子分解してゆくのを見送りながら、おおいに呆れ顔の真田さん。

 本当に知らなかったらしい真凛さんの驚いた声に、「違うわよ!」 と返すけれど真凛さんに聞こえたかどうか。

 ヤシマが近づくにつれて増える紅軍(こうぐん)と、進軍を進める白軍(はくぐん)が激しく火力を交える中、真凛さんは一般エリアに転送されていった。


 まぁその、なに?

 真田さん的には、真凛さんに不破さん(可愛い後輩)が弱っちいと思われたことが面白くなかったのだと思う。

 そこは理解出来るんだけど、短剣使い(ベリンダ)が弱いと言われたような気がするの。

 短剣使い(スプリンター)一人を相手に手こずるわけがない(イコール)不破さんはそんなに弱くない(イコール)短剣使い(スプリンター)はそんなに強くない という図式が、わたしの頭の中で自動的に展開されておりました。

 そんなわけでちょっと面白くなかったんだけど、それをここで口にするのは大人げない。

 でも表情には出ていたらしい。


 わたしの馬鹿!


 どうしてこう、決めきれないのかしら?

 言わないと決めたなら、顔に出すのも駄目よね。

 でもバッチリ出ていたらしく、真田さんには 「どうかした?」 と訊かれたので、今度こそにっこりと笑って答えます。


「なんでもないの」

「あるて顔に書いてあるで」


 しまった!!


 すぐそこに柴さんがいるのを忘れておりました。

 だだ漏れの不満が……いえ、柴さんに指摘されなくても、真田さんもなにかしらあるということには気づいていたから 「どうかした?」 と訊いてきたわけで、まぁ手遅れといえば手遅れだったんだけど、頑張ったわたしの笑顔を返してよ!


「ほなこれでえぇか?」


 またしてもカニやんの専売特許を奪う如く、わたしに向けてにひっと笑う柴さん。

 うん、男ぶりが上がるイケメンです。

 もちろん返却にはならないけどね。

 受け取り自体拒否らせていただきます。


「まさかここまで旦那連れて来いとか言わんといてや」


 言いたいところですが、我慢します。


「我慢て……まぁえぇわ。

 ものは相談やねんけど、このまま見逃してくれん?」


 つまりなに?

 このまま無傷で自軍に戻ろうとしてるわけ?


「戻りたいというか、戻ってこいて厳命されとるから」

「誰に?」


 この時のわたしは、てっきりクロエか恭平さんあたりだと思って訊いたんだけど……


「せやから旦那に」

「クロウ?

 どうしてクロウが?」

「どうしてってあんた、俺らを使い捨てやと思とんのかい」

「そうじゃないけど……」


 さすが柴さん。

 クロウや恭平さんがなにか企んでいるのは当然だけど、その作戦的なものを聞き出せないかと話を振ってみたのに、見事にフラれました。

 まぁ状況的に、カニやんが落ちて、クロエはベリンダと組んで単独行動中。

 恭平さんのサポートをクロウがせざるを得ない…………ん? ひょっとして、反対?

 クロウのサポートを恭平さんがしてる?


「大正解!」


 あ、それは教えてくれるんだ。


「旦那が珍しいことしとるわ」


 それで厳命が出てるのね。


「ここで旦那が迷惑をかけて……とか思わへんのやな」


 ひょっとして世の彼女はそう思うのが普通なの?


「普通かどうかはわからへんけどな。

 とりあえず退散させてもらうわ」

「起動……業火」


 誰がいつOKを出したのよ?

 誰が無傷で帰っていいと言ったのよ?

 そんなの許すわけないでしょ? ……というわけで、再び海に潜ろうとする柴さんを 【業火】 で燃やしてみます。

 まぁもちろん一撃では落ちてはくれないけれど、全くの無傷ではないだろうから数発撃ち込めば落ちるわよね。


「ちょ! やっぱかいっ!!」


 わかっていたのに逃げないんだもの。

 落としていいって事でしょ?

 どうして焦ってるの?


「ちゃうわ!!」


 ちなみにムーさんは、大絶賛真田さんと斬り合っています。

 それを見て、不破さんじゃないのね……と思ったのはわたしだけではないはず。

 だってほら、ムーさんは真凛さんを斬りに行ったじゃない。

 で、真凛さんの近くには不破さんがいたはず。

 だったらムーさんの相手は不破さんがしていると思うじゃない。

 でも真田さんなのね。

 ムーさんもやはりノーダメージではなく……真田さんもそのはずだけど、撤退したいムーさんは防戦一方。

 この場合、攻撃は最大の防御っていうもんね。

 攻撃一択の真田さんが圧倒的な優位にある。

 そもそも真田さんの場合、白軍(攻め手)だから防戦の意志は全くないわけだけど。


 そして一度は海中に潜った柴さんは、【業火】 でダメージを受けつつムーさんの支援に向かおうとしたのか。

 場所を確かめるべく水から顔を出したところを、まるで待ち構えるようにすぐそばの小船にスタンバっていた不破さんの一撃を食らう。

 頭頂から屍鬼でぶっ刺されるっていうね。


「あ! 不破、てめ!

 便秘になったらどうしてくれんねん!!」

「どうと言われても……」


 うん、不破さんだって困るわよね。

 しかもその話、まだ引っ張るんだ。

 まぁ便秘か下○か、結論が出ていないから無理もないか。

 困り顔の不破さんだけど、容赦なく何度も柴さんの頭を屍鬼でぶっ刺して落とす。

 元々首から上は、欠損しない代わりに他の部位よりダメージが大きい。

 でも流出していたHPの量から推測して、それほど残量はなかったのかもしれない。

 それでも無理をしてベリンダの回収に来るなんて、ほんと、人が好いんだから。

 一方のムーさんも


「あばよ、ムー」


 そんな言葉で真田さんにとどめを刺された。


「旦那、悪い!

 柴も落ちた!」


 そしてムーさんは、おそらくクロウに状況を報告。

 落ちながら報告するだけならともかく、最後の最後まで真田さんに斬り掛かろうとして往生際の悪さを見せる。

 但しアバターが電子分解を始めた時点でムーさんのHPは「0」。

 つまり死亡状態が確定しているため、真田さんにダメージを与えることは出来なかったけれど。

 その真田さんってば、とっくに柴さんは落ちて一般エリアに転送されたあとだというのに……


「柴の奴、便秘がどうとか言ってやがったが、だったら次はケツに刺してやりゃいいだろう。

 さぞかしお通じがよくなるだろうさ」

「起動……スパイラルウィンド」


 ……そ……ういうものっ?

 今まで聞いたことのないほど斬新過ぎる真田さんの意見にわたしはなにも言えなくなったんだけど……あ、詠唱は再開しました。

 遠く離れたクロエの動きはわからないけれど、さっきから狙撃が止まっている。

 新たな動きがあるか、あるいはクロエ自身になにかあったのか。

 とにかく狙撃されることはなかったけれど、イベント終了までそれほど時間は残っていない。

 なので火力任せに紅軍プレイヤーを落とします。

 ちなみに真田さんの斬新すぎる意見をいただいた不破さんは


「なるほど」


 そんなことを言って納得をしていたから、さすがにお友だち……ではなくて、先輩後輩の仲だわ。

 結局類が友を呼んで 【特許庁】 が出来たというわけで、そこはわたしも勝手に納得しました。

 その 【特許庁】 メンバーの一人、銃士(ガンナー)……といったら駄目だっけ?

 えーっと……ガンマン! そう、ガンマンの真凛(まりん)さん。

 乱射魔(アッパーシューター)という呼び名で、以前から聞いて在籍は知っていたけれど、ようやくお会いできたと思ったらあっさり退場。

 あっさりというか、あっけないほど簡単に。


 イベントのたびに、【特許庁】 とはかなりの高確率で遭遇していたのに、それこそギルド戦だとほぼ毎回遭遇していたはずなのに、なかなか彼女とはお会いできなかった。

 おかげで今日遭遇する瞬間まで、顔はもちろん名前も知らなかったわけだけど、よくよく考えてみたら、あんな風にあっさりサックリ落ちるから、おそらく遭遇時にはすでに落ちていたってことよね。

 いや、逆か。

 あんなにあっさりサックリ落ちるから、遭遇時まで生存していなかった。

 たぶんこれが正解だと思う。

 VITが低いのに接近しないと射程が足りないとか、銃士の利点が皆無というか、真逆だし仕方ないか。

 一応インベントリに普通のライフル銃も持っているという話だけど、それもDEXが低いから命中率は推して知るべし。

 結果として乱射魔(アッパーシューター)なんて不名誉な二つ名が付いたと……なるほど、なるほど。


 で、そろそろその銃士(ガンナー)のお出番です。

 イベントの残り時間や白軍の進軍位置から推測して、もう少し前線を南下させれば紅軍の銃士(ガンナー)が撃ってくる。

 となれば白軍も銃士(ガンナー)を前進させるわけだけど、そういえば白軍の銃士(ガンナー)って何人くらいいるんだろう?


 ヤバイ……


 そのへんを全然把握してなかった。

 うん、でもまぁ何人だろうとその数から減らされることはあっても増やせるわけじゃないしね。

 なるようにしかならないか。

 じゃあ前進しましょう。


「さらに南下するわ。

 ここからは狙撃に注意で」

「言われずとも」

「わかりました」

「しゃらくせぇ!」


 近くにいた真田さんと不破さんはともかく、どこからともなくノーキーさんが戻ってくる。

 このワンコっぽさ、ちょっとルゥっぽいわね。

 あ、駄目だわ。

 思い出したらモフりたくなってきた。

 早くイベントを終わらせて……は出来ないのか。

 制限時間いっぱいまでは終わらせられないけれど、じゃあ勝って祝杯代わりにルゥを目一杯モフってあげましょう。

 だってほら、わたしは下戸だから。


 ふふふ……


 あら、目的が出来ると俄然楽しくなってきちゃった。


「起動……業火」


 わたしが放つ 【業火】 の爆焔を合図に、真田さんと不破さんが先導する形で飛び出すと、わたしを抱えるノーキーさんがそれに続く。

 こ、これもなんとかしないとね。

 このままだとクロウに見られる!


 ……ヤバイ……

楽しくなってきちゃった・・・・・・なんて言った直後、現実を思い出して慌てるところはいかにもグレイらしいのですが、この問題の解決策はあるのかっ?!

脳筋コンビが今話で落ちておりますが、いよいよ紅軍側 【素敵なお茶会】 と再戦?

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― 新着の感想 ―
[一言] グレイ……………… 思うんだが、目撃者を全員、落とせてないから、移動手段は、既に、バレてると思う…………(笑) クロエは見えてるだろうし←スコープ覗いてるんだから
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