732【番外】side紅軍
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「へっぶしょいっ!!」
俺のくしゃみに、すぐそこで剣を振っていたムーやんが身を逸らせる。
気持ち的には飛び退きたいところだったけれど、囲む白軍の多さに出来なかった感じか?
しゃぁないやろ、くしゃみなんていきなり出てくるんやから。
「誰か俺の噂してる?」
とりあえずここはお決まりの科白を言っておく。
俺は定石にしたがって言うただけやのに、なんや知らんけど、汚いものでも見るような目を向けてきやがったぞ、こいつ。
「お前、ここんとこ女王にイケメンイケメンて持て囃されていい気になっとんな!
さっさと詠唱せぇや!
ここ、敵陣真っ只中やぞ!」
「わかってるって。
起動……」
『合流までもうちょっと待ってくれ』
「……氷雪乱舞!
起動……」
インカムから聞こえてくる恭平の声は、申し訳なさそうだけれど忙しそうでもある。
まぁどっちも白軍の真っ只中に陣取ってるからな。
とりあえず、なるたけはよ合流してくれ。
『クロエ、現在地は?』
『ヤシマまでもう少し。
射程ギリギリで援護しようか?』
詠唱で忙しい俺に代わって恭平が、別行動を取っているクロエに呼びかける。
『とりあえず途中にいる白軍始末しながら、ヤシマまで退路を確保して欲しい。
【鷹の目】 がどっちの陣営にいるかわからないし、用心したい』
『わかった』
『ちょっといいですか?』
今度はクロエと一緒に行動していると思われるくるくる。
お伺いを立てながらも、誰の返事もないうちに続きを話し出す。
『白軍の一部が北上。
これ、たぶん白軍の銃士だと思います。
本州に陣取る……というより、退避してる感じかな?』
「……雪月花!
それ、【鷹の目】 の可能性は?」
さすがにちょっとヤバさを感じて詠唱の合間に確認したんやけど、すぐそばでムーやんが 「サボんな、カニ!」 と切羽詰まった声でうるさい。
いや、わかてるて。
ここ、敵陣真っ只中やもんな。
よぉわかてるて、俺もヤバいんやから。
『さすがにそこまでは……』
『どうせグレイさんでしょ?』
申し訳なさそうなくるくるの返事に、クロエが面倒臭そうに被せてくる。
『読まれてると思うよ、カニやんが銃士をヤシマに先行させて退路を確保しようとしてるの。
だから対抗措置に自陣にも銃士が必要だと思って、とりあえず前線から後退させて後半戦に備えようとしてるんじゃない?
戦場が南下するのはわかってることだし』
「あ~……やってくれるな、あの美人。
起動……」
『それ、下がらせた銃士の分、火力が……』
いっそがしいわ、マジで。
恭平が嫌そうなっていうか、不安そうな声を出すんはわかる。
よぉわかるで。
だって見当がつくやん、俺やなくても。
案の定、クロエもな。
『いるでしょ、グレイさん。
あの人が後方で休憩なんてするわけないし。
たぶん白軍は、グレイさんの位置に攻撃ライン置くんじゃない?
僕らが気づくより早く白軍の銃士が後退していた可能性もあるから、先手を打たれてる可能性も視野に入れたほうがいいかもね』
それだけでも面倒臭いのに、さらに面倒なことを指摘してきやがる。
『それと指示伝達が早いと思う。
どこか、仲のいいギルドがいるんじゃない?』
「……百花繚乱!
可能性が高いのは 【特許庁】」
『さっき、ローズだっけ?
いつもグレイさんを狙ってる、大剣使いのビキニアーマー女子が落ちるのは見たけど、紅軍だった』
ビキニアーマー女子って恭平……いや、まぁそうやねんけど。
言うてること間違ってへんし、わかるけど、ビキニアーマー女子って……まぁビキニ女子って略されるよりはえぇわ。
しかももう落とされてるんやったらどうでもいいし。
けど俺が言いたいんはそこやなくて、ノーキーさんとかさ、わざわざ探さんでも見つかる人やん。
なんやったら向こうから来る人やん。
それがやな、イベント始まってまだ数分やけど、気配すらないんがおかしいねん。
参加してへんってことはあらへんからどっかにおるはずやねんけど、見当たらへんやろ?
あの人が自分の意志でなり潜めるなんてことはあらへんやろうから、誰かの指示で動いてて目立つ自由がない。
そんな感じか?
そうなるとやな、問題は誰があの人を動かせるか?
間違っても不破さんはないやろうけど、真田さんかグレイさんぐらいちゃうかって話になってやな、そうなると白軍に残りの 【特許庁】 メンバーがおるって考えたほうがよさそうや。
全然よぉないけどな
全くもってよくないねん!
【鷹の目】 もどこおるかわからんし。
しかもあの美人、絶対下がらんと最前線おるし。
『あの、カニやん?
マップでさ……』
なんや、ぽぽまで?
なんかマップに動きでもあったんか?
『ある……と思う。
その、凄い速さで紅い点が消えてる場所があるんだよね』
おるやん!
絶対そこにあの美人おるて。
考えるまでもあらへん、絶対におる。
しかもいくら火力強ぉても非力やし、側に剣士おるはず。
まさか思うけど、【特許庁】 ちゃうやろな?
「足止め組に通達!
グレイさん見掛けたら即時退散で!」
まともに遣り合っても火力の無駄や。
MP無制限状態で、どうやってあの人に勝つねん?
いっそあの人見つけたら撤退で!
せやな、紅軍全員救出なんて出来るわけないんやし、丁度えぇわ。
グレイさん見つけたら南下開始にする。
聞いてるやろな、クロウさん!!
『……聞こえている』
頼むからその不機嫌な声やめてくれへん?
別に俺が悪いわけちゃうやん?
俺だけやなくて、誰も悪ないねん。
今回はこういうゲームやねん。
強いて誰かを悪者にしたいんやったら、あんたとグレイさんのくじ運が悪いだけやん。
『指示には従う、心配するな』
せやからその声やめてってっ!!
前話で予告しました番外です。
後書きに【休閑小話】として置くには長かったのですが、一話とするにはちょっと短くて申し訳ありません。
だいたいグレイの予想通りであり、逆も然りでございます。
ただクロウの名誉(?)のために申し上げておきますと、別に不機嫌なわけではありません。
カニやんが勝手にそう思っているだけなのですw
次話はまたグレイside(本編)に戻ります。