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724 ギルドマスターはブンブンの蜜に忖度します

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告&いいね、ありがとうございます!!

ゲーム台本(シナリオ)の進行を期間限定イベントでするのもどうかとは思うけど、以前から異空間みたいな存在はあるとされてるし』


 インカムの向こうから恭平さんが言うのは、終了したばかりのイベント 【紫陽花の迷宮】 の結末について。

 集計を終えた運営が、定期メンテナンス後に行なった公式発表……といっても、もちろん形式としてはNPC長官からの通達という体裁でね。

 それを読んでの感想というか、解析みたいな?


 あの巨大カタツムリに、空間を移動させる能力がある理由みたいなものはあやふやのままだけど、それを言ったらプレイヤー(わたしたち)に魔法が使える理由もわからないもんね。

 無理矢理に理屈を捏ねるなら 「仮想現実(ゲームの世界)だから」 としか言い様がなく、それを言ってしまえばなんでもありになるわけで、巨大カタツムリの転送能力も解決します。


 まぁ紫陽花が枯れたのは演出……というか、いつもの過剰演出で説明が付くというか、なんとなく納得出来るというか。

 カタツムリ狩りだけでなくPK戦を加えて、こう……プレイヤーの意識を散らしたというか、目的を散らしたというか。

 むしろPK戦に傾いた感じ?

 みんな、大好きだもんね。


 特に剣士(アタッカー)


 このゲームの戦闘三(クラス)の中では最大勢力の職種(クラス)剣士(アタッカー)

 圧倒的な大多数を占めるこの連中は、とにかくPKが好きというか、斬るのが好きというか。

 いや、斬るのが好きなんて言ったら語弊があるけれど、あの爽快感を存分に楽しんでいて、イベント開始時にその楽しみを半分以上封じられたためか、紫陽花の変化に伴う解放感に酔いしれ、完全に運営の思惑にはまったと言っても過言ではないと思う。

 紫陽花はその演出に上手く作用していた。

 まぁ元々そのつもりで設定された舞台だと思うけど。


 つまり肝心だったのは、舞台設定というより要素みたいなもの。

 別の空間の存在をプレイヤーに再認識させることと、なにかしらの意思がこの世界を崩壊させたということ。

 そしてもう一つ。


 【中級】 解毒ポーションの大盤振る舞い!!


 あ、そうじゃなくて……いや、大盤振る舞いがあったのは確かなの。

 うん、そこは間違っていません。

 間違っていないんだけど、大盤振る舞いという表現は語弊がある。

 じゃあなんなの? ……と考えて悩んでいると、カニやんに言われた。


「いや、大盤振る舞いで合ってね?」

「大盤振る舞いそのものやな」

「ここの運営にしては珍しいことするよな」


 もちろんカニやんを肯定するのはいつもの二人です。

 そろそろカニやんの機嫌も治ってきたみたいだし、あっちに行ってくれない?

 いつまでもわたしのうしろにいられると、こう……落ち着かない感じ?

 わたしの背後霊はクロウ一人で十分だから。


「背後霊って、あんた……」

『ストーカーに比べたら進化じゃない?』


 忘れて欲しい黒歴史? ……いや、黒い記憶?

 まぁその、そんなことを言っていた時期もあったわねぇ~……と誤魔化されて欲しい過去を蒸し返してくれるのはもちろんクロエ。

 イベントが終わったところで、今日も 【富士・樹海】 で鳥撃ちをしてるらしい。

 今日はくるくるがお休みだから、ぽぽと二人でね。

 今回のイベントは、週末のみ二週間に渡って行なわれ、ウィークデーは通常運転だったはずなのに、ぽぽったら……


『ちょっと感覚忘れちゃったみたい』


 なんて言っていた。

 まぁ今回のイベントでは、銃士(ガンナー)には射程距離が表示されないというペナルティがあったからね。

 ちょーっとだけ仕方ないかな。

 うん、とりあえず報酬の話よ、報酬!


 【中級】 解毒ポーションの大振る舞い!!


 もちろんタダでもらえたわけじゃない。

 あくまでも報酬です。

 つまり女王蜂の撃破報酬(ドロップ) 【怪しい壺】、あれの成分解析が終わり、なんと超が付く貴重アイテム 【中級】 解毒ポーションが出来ましたとさ。

 なに、それ?


 どういうことっ?!


 ちょっと意味がわからないんだけど、ゲームってそういうものよね。

 それでもまさか、【中級】 解毒ポーションが報酬でくるとは思っていなかったから、正直驚きました。

 もちろん納品数そのままではなく。

 この点もNPC長官の報告に書いてあったけど、解析で余計な物を取り除くと、【中級】 解毒ポーションを一つ作るのに壺一つでは全然足りなかったらしい。

 確かに蜂蜜って、採取時はいろんなものが混ざってるからね。

 不純物っていうんだっけ?

 あれを取り除くとどうしても量が少なくなる。

 それで壺一つでポーション一本は出来なかったという。

 どうしてそういうところだけ現実的なのかは突っ込みどころだけれど、ある程度放出量の調整も必要だからかもしれない。


 ただ必要数に足りていなくても、最低一つ納品していれば、参加賞として一本だけはもらえるらしい。

 まぁそこはわかるかな。

 これも放出量を抑えた理由かもしれない。

 でも放出量を抑えた一番の理由……というもはもちろんわたしの考えだけど、こういう貴重なアイテムを報酬にする場合、だいたいある条件が付く。


 譲渡不可


 この条件が付いたアイテムは、受け取った本人(プレイヤー)にしか使えない。

 文字通り、他者に譲ることが出来ないというもの。

 あ、でもポーションの場合は、直接接触すれば他者にも使用することが出来る。

 ほら、いつもみんなが、わたしにポーション瓶を投げつけて回復してくれるみたいにね。

 あれ、気持ちはありがたいんだけど、うっかり回復を忘れるわたしが一番悪いんだけど、それもわかってるんだけど、痛いからいい加減やめて欲しい……という複雑な乙女心ならぬ本音はおいといて、ああいう形なら他のプレイヤーに対しても使用することは出来る。


 でも譲渡出来ないため、ポスト機能を使って他のプレイヤーに送ることはもちろん、無人バザーなどで売ることも出来ない。

 使い方こそ自由だけど、あくまでも使えるのは受け取った本人のみ。

 それが 【譲渡不可】。


「マジびっくり驚き桃の木山椒の木」


 そう言ったのはムーさんだけど、マジびっくり驚き桃の木山椒の木よ。

 だってあのケチな運営が……ゲフゲフ……なんでもございません、失礼しました。

 えーっと、セコい……ではなくて、その、財布の紐が固い……もちょっと違うかな?


「いや、もうそこ、別に忖度せんでえぇんちゃう?」

「なんでそんなとこで律儀に忖度すんねん?」

『闇堕ち銭ゲバ聖女ってさ、運営の化身だよね』


 ちょっと順番は違うけれど、ムーさんのあとにカニやん、柴さんと来たのはともかく、ちょっとクロエ、それは……いや、わたしもそう思うことはしばしばあるけどさ。

 そんなはっきり言っちゃってもいいもの?


『言っちゃ駄目な理由ってなに?』


 クロエ節が炸裂しました。

 いや、うん、まぁ理由なんてないわよ。

 うん、ありません。

 ないけど、やっぱりちょっとあまり悪く言いたくないというか、そこまで小林さんのことも嫌いになれないというか。


「初カレに振られんうちに浮気心捨てとけや」


 ちょっ?!


 待って、カニやん!

 なに? 急にイケメンをマジ顔にして、恐ろしいこと言わないでよ!!

 一番怖いのは、イケメンはマジ顔になってもイケメンってこと。

 しかもすぐ、いつものようににひっと笑ってみせるとか。

 もちろんにひっと笑ってもイケメンで、このギャップにわたしはちょっと弱いかもしれない。

 か……顔が熱く……ヤバイ!!


 ひぃぃぃぃ~~~


『グレイさん、うるさいんだけど?』


 誘導した張本人がなに言ってますか?

 だって今、最初に運営を持ちだしたのはクロエよね?

 クロエのせいよね?


『僕がなにしたって言うのさ?』


 うん、どこまで行ってもクロエはクロエです。

 とりあえず赤くなっていると思われる……いえ、これは絶対に赤くなっています。

 恥ずかしすぎて隠そうと思うんだけど、丁度いい毛皮が帰ってきません。

 ちょっとルゥ、戻ってきてよ。


「きゅ~♪」


 返事はいいんだけどね。

 返事をするということは、飼い主(わたし)が呼んでいることはわかっている。

 わかっているけれど、まだ満足出来ないらしくちょっとわたしを振り返って可愛らしく返事をすると、またフンフンフンフン……と、ギルドルームの探索を続ける。

 毎日毎日、飽きないものね。

 とりあえず顔を隠したいから戻ってきてよぉ~~~~!!


『カニやん、どうかした?

 珍しいこと言ってるけど』


 クロエの乱入で黙っていた恭平さんが復帰。

 ひょっとしたら潜っている 【ナゴヤジョー】 のボス戦だったのかもしれない。

 しばらく黙っていた恭平さんがインカムを通して会話に再戦してきた。


「いや、だからこいつ、機嫌悪いねんって」

「最初に話したと思うけど」

『ごめん、そのへん聞いてなかったかも』


 わたしもすっかり忘れてました。

 うっかり忘れてガッツリ八つ当たりされました。


「いや、女王のは八つ当たりちゃうやろ」

「マジな話、カニ見て顔赤なってんで」


 言わないで!

 しかも張本人がとどめを刺しに来た。


「ただの情緒不安定やろ?

 で、なんの話やっけ?」


 サラッと話を戻しに掛かったくせに、肝心な話がどこまで進んだか忘れるところは、わたしに負けず劣らずのうっかりです。

 しかもまだカニやんの機嫌悪いからと、わたしの後ろから離れない脳筋コンビがサラッとカバーするのがさらに面白くない。


「せやから驚き桃の木山椒の木」

「マジびっくりで運営忖度や」


 ………………


 これでわかるカニやんも凄いと思うわ。

 恭平さんも、インカムの向こうから 『それで通じるところが凄いな』 と、三人の絆に感心半分、呆れ半分。

 実際カニやんは 「あ、そこな」 とか応えてるし。


「譲渡不可外して 【中級】 の解毒ポーション増量。

 たぶんもう、無人バザーから市場に流れとるやろな」

「それを運営が意図してやっている?」


 ルゥが帰ってきてくれないので、仕方なく横座りをし、うしろにいるクロウにしがみついておく。

 その両脇に立っている脳筋コンビに邪魔されたけど、そこはほら、そういう時はちゃんとルゥが飛んでくるからね。

 短い足で二人を蹴り飛ばすと、またご機嫌にフンフンフンフン……とギルドルーム内の散策を再開。


 ほんっと飽きないわね!


「そりゃそうやろ」


 顔を半分くらい隠して尋ねるわたしに、カニやんはちょっと考えるように、テーブルに頬杖をつく。

 その言葉が、わたしの 「飽きないわね」 に対する返事かと思ったら、すかさずクロエに突っ込まれる。


『グレイさん、邪魔するなら黙っててくれる?』


 すいません


 えーっと、つまり違うのね。

 はい、訂正しました。

 たぶんその前の、わたしの問い掛けに対する返事ね。

 うん、まぁ普通に考えればそうよね。

 運営がわざわざ 【譲渡不可】 を外すのには、なにかしら狙いがある。

 じゃあその狙いはなにか? ……といえば……


「そりゃエピの進行やろ」


 カニやんは短く略しているけれど、エピとはエピソードクエストのことね。

 まぁ確かに、二つくらい前のイベント 【海の向こうより来たりし者】 終了後、新たなエピソードクエスト実装の予告が出ている。

 でもそこに辿り着くには、現時点で最新クエストである 【ゴショ】 をクリアしなければならず、【ゴショ】 クリアには 【中級】 の解毒ポーションが必須。

 どう頑張っても女御たちの毒気は避けられないというか、普通に 【ゴショ】 自体、現時点でこのゲーム最凶のI(インスタンス)D(ダンジョン)富士・火口(スザク)】 の次に難関ダンジョンだからね。

 ただでさえクリアが難しい上に 【中級】 解毒ポーショ(稀少アイテム)ンが必須とあって、進行の妨げになっていると言っても過言ではない。


 まぁでもそうよね、新エピソードを実装しても、そこまで辿り着いているプレイヤーが少なければ盛り上がらない。

 たぶん実装された月はイベントはないだろうし。


「それもあるやろうけど、運営の視野にはサービス終了も入ってるやろうし」


 …………………………はっ?!

まさかまさかのゲーム終了っ?!

800話に遠く及ばずいよいよ最終回!! ・・・・・・とはなりませんw

不機嫌なカニやんがなにを言い出すのかといえば・・・・・・?

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― 新着の感想 ―
[一言] サービスだもん(//∇//) 本来のサービスになります 実は、今までのはチュートリアルでした~とか ( ̄□ ̄;)!!ガーン って感じ?
[一言] サービス終了 サービス(客への奉仕) つまり、容赦ない御所レベルがノーマルな場所が←え?
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