723 ギルドマスターは不機嫌なサブマスと臭います
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information 臨時政府代表 よりメッセージが届いています
公式イベント 【紫陽花の迷宮】 終了直後、NPC長官名義で届いたメッセージには、わたしたちがせっせと納品した 【怪しい壺】 について、まだ研究所で解析中だからもう少し待っててね! ……と書かれていた。
本当はもっとゴテゴテとした装飾がなされた文章で、もっとずっと長くお堅い。
肩が凝るくらいの堅さ。
それをカニやんに要約してもらいました。
頭のいいイケメンは、面倒見のいいイケメンでもあるからね。
しかも嘘は教えないし。
ここが肝心
冗談は沢山言うけれど、嘘は言わないのよね。
あまりに堅い文章を読んだからか、左右の肩を交互に、ほぐすような仕草をしていました。
ご苦労様です。
でもだからといって、ご褒美にルゥをモフらせることはしないけど。
「ちょっとくらいえぇやん」
そんなことを言っていましたが、お断りです。
絶対にお断りです。
どうあってもお断りです。
カニやんが実力行使に出ても、ルゥ本人が 「断る」 を体現するけどね。
容赦なくバックリよ、バックリ。
ルゥ自身が嫌がっているものを、飼い主にどうこうすることは出来ません。
だってこのゲーム最強のNPC 【幻獣】 だからね。
どこをどう頑張ってもSTRで勝てるわけがない。
可愛さだって天下一品だし。
カニやんだって、女の人はもちろん、男の人にもモテモテの優しく気遣いの出来るイケメンで、わたしなんて足下にも及ばない獣の下僕。
どんなにルゥに嫌がられても、それこそバックリやられても全然めげない執拗さ……はちょっと違うか。
「俺、どんな変態やねん?」
そう言っていつものようににひっと笑う。
どこまで行ってもイケメンすぎる……。
ヤバイ、正視したらちょっと顔が熱くなってきた。
えっ?
「えっ?」
ちょっとカニやん、真似しないで。
「真似もなにも……」
その、言い掛けて、口を押さえて笑わないで!
「彼氏出来ても全然喪女卒業出来ないでやんの」
そ……卒倒しそうなので、そんなに優しい顔で笑わないでください!
「はいはい、俺もクロウさんに切り刻まれたないんで、この辺で勘弁したるわ」
その 「勘弁してやる」 という上から目線がムカつきます。
「実際俺のほうが身長高いし、上からやし?」
まぁ~たそこに戻りますか?
話を身長に戻すなら、10㎝下さい!
恵んで!!
「俺が上から目線に出んでも下から来るんやな」
だってぇ~!
ちなみにクロウはすぐうしろにいます。
イベント終了後はそんな感じに雑談をして……周囲にいるメンバーもそれぞれに雑談中。
あ、美沙さんを中心に、学生組は修理代の後払いをりりか様と交渉中だけどね。
ちょっと時間が遅めなので、ゆりこさんとパパしゃんはログアウト済み。
脳筋コンビはカニやんを放置してなにをしているのかと思えば、あなぐまさんと、その後のロクローさんのことを話していたらしい。
ここでマメが掲示板に、ロクローさんの名前を晒して書き込みしていたことを知ったわけだけど……イベント中は忙しくてそれどころではなかったからね。
でもインカムで本人を呼んでも返事はなし。
ギルドルーム隣にある作業部屋で、忙しくしているハルさんを呼んでみれば……
『マメさん? ちょっと待っ……あれ? いませんね』
わざわざ隣の部屋を見に行ってくれました。
いないのね……というか、逃亡したわね、これ。
【アタッカーズ】 も結構大きなギルドだし、主催者のロクローさんも有名な人。
【アタッカーズ】 から抗議が来ることはすぐ予想出来るもんね。
マメめ……
翌日には何食わぬ顔……は見えないけれど、いつもの調子でログインしていたから、一応 【アタッカーズ】 から抗議があったことを伝えておいた。
書き込みを削除するようにとも言っておいたけれど、その後も掲示板の書き込みを削除する様子はなかった。
たぶんわざとだと思うけど。
結構な数のレスもついて賑わっていたしね。
そんな掲示板の騒ぎも、週半ばに行なわれる定期メンテナンスで、終了した公式イベントの結果発表のようなものがあってプレイヤーたちの関心も移動。
もちろんわたしたちの話題もね。
定期メンテナンスは、ログイン人口の少ない時間帯……を狙っているかどうかはわからないけれど、どこの運営もそうだから、やっぱり狙ってるのかしら?
平日の昼間に行なわれるため、わたしたち社会人組はもちろんだけど、学生組もメンテナンス後すぐにログインすることは出来ない。
お仕事中だし、授業中だからね。
でも公式サイトを覗くことは出来る。
次のイベントの予告は最後のほうにちょこっとあっただけで、大半は今回のイベントの結末的な?
とりあえずなにか色々わんさと書いてあったので、カニやんよろしく!
「……ってあんた、今日は平日じゃねぇか。
自分で読めよ」
夜になっていつもの時間帯にログインしてみれば、やっぱりいつもの時間帯にログインしてきたカニやんとギルドルームで遭遇。
早速お願いしたら断られました。
いや、明確なお断りではないな、これは。
だったら……
「終業時間過ぎてるから無理」
「なにが無理やねんっ?」
だって今日も散々読んだもの。
文字だって数字だって表だって。
ついでに計算だってしたわ、Ex○elが。
「自分でしてねぇじゃん」
「入力はしました」
「当たり前じゃ!」
……手強い。
いや、まぁそれがわたしのお仕事だから、当たり前と言われれば当たり前なんだけど、珍しくカニやんが反抗的です。
いつもならもっと押しに弱いはずなのに、なにかあったのかしら?
「どうせ妹と喧嘩でもしたんやろ」
「理由なんて、しょうもないって」
つまり何?
機嫌が悪いだけ?
「せやろ」
「せやせや」
教えてくれてありがとう……と言いたいところだけれど、とりあえず柴さんとムーさんはもう少し離れてください。
筋肉がむさ苦しいです。
よろしければカニやんの両サイドにくっついてください……というか、どうしてわたしのほうにいるのよ?
「せやから言うてるやん」
「カニの機嫌が悪いて」
だからってこっちに避難してこなくてもいいじゃない。
むっさ……ゲフゲフ……なんでもありません。
そういえば会社で小耳に挟んだんだけど、男の人の加齢臭って、何歳ぐらいから気になるものなの? ……と訊いてみたら、なぜか後ろに立っているクロウが一瞬咽せた。
どうかした?
「……いや、なんでも……」
「旦那、なんか悩みあるんやったら聞こか?」
「専門外やけど、相談に乗るで」
この二人のノリはなにかしら?
ムッキムキの筋肉に囲まれて、珍しくクロウが困ってる。
いや、クロウの筋肉も負けてないけど、ちょっと困った顔が珍しすぎてそっちに目がいくわ。
とりあえずカニやん、さっさと機嫌を直して要約して。
「うわー強引に来た」
そうやって誤魔化そうとしないで、さっさと要約して。
「はいはい」
というわけで、押して押して押しまくって勝利を収めたので、カニやんに要約してもらったところによると……まずあのカタツムリと蜂だけど、この世界での突然変異ではなく、異空間からの侵略生物ではないか……というのが、臨時政府の見解らしい。
密かに捕らえた巨大カタツムリや女王蜂&働き蜂を研究所で解剖した結果……といってももちろん台本の話よ。
【the edge of twilighto nline】 自体近未来という舞台設定で、その近未来では、解剖結果であのカタツムリに次元、あるいは空間をつなげる能力というものを解明する科学技術があるという設定になっている。
そうして別空間からこちらの世界に渡り、残った人類の居住空間を脅かしに来たのではないか……という推測がなされた。
もちろんNPC長官を代表とする臨時政府によってね。
ただこのカタツムリにも蜂にも、明確な悪意? いや、殺意かしら?
そういったものがあったわけではなく、何者かの意図により別空間に送り込まれたことで、種としての防衛本能によりこちらの世界の人間に攻撃を仕掛けてきたのではないか? ……という推測も同時になされた。
つまりなに?
意図した何者かが、ある日突然起こったこの世界の文明崩壊の理由を知っている、あるいは引き起こした張本人の可能性がある……ということ?
『ゲーム台本の進行を期間限定イベントでするのもどうかとは思うけど、以前から異空間みたいな存在はあるとされてるし』
「そうそう。
その調査をして来いって趣旨やったしな」
わたしたちより少し早い時間にログインしていた恭平さんが、ギルドルームで交わされるわたしたちの話を聞いて、インカムの向こうから話に参加してくる。
同じように少し早くログインしてきたJBやアキヒトさんと一緒に、学生組と 【ナゴヤジョー】 に潜っているらしい。
相変わらずアキヒトさんはうるさいし、美沙さんの笑いが止まらない。
楽しそうね
確かにプレイヤーはこの世界の崩壊原因の究明、及び生存者の救助が仕事というか、目的というか。
さらにカニやんと恭平さんは、台本を推し進めようとする運営の意図が他の部分でも見受けられるという。
なんとケチで有め……ゲフゲフ……なんでもありません、失礼しました。
えっと、その、ね、め……そう、珍しく! 珍しく運営が出血大サービスをしてきたの!
【中級】 解毒ポーションの大盤振る舞い!!
今話はちょっと短めですが、次話でもう少し詳細を語ろうと思います。
そして夏はもうすぐ!!