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722 ギルドマスターはブンブンとデンデンの噂を広げます

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告&いいね、ありがとうございます!!



以前に予告しておりましたとおり、後書きに【休閑小話】を置いておきます。

忘れていたわけではございません。

今回の副主催者はあの人です。

本編での不審な行動の理由が明かされます。

どうぞ、よろしくお付き合いくださいませ。

「い……ってーーーーー!!!!!!」


 女王蜂の毒針攻撃を、よりによってお尻の○に受けたロクローさん。

 悲鳴を上げながら、まるで○○○みたいにお尻からキラキラと光るHPを流出させながらのたうち回るのを、わたしはなにも出来ずに見守りました。

 あとになって思えば助けるべき場面だったんだけど、あまりにも思わぬ事態というか、想像を超える状況に呆気にとられたというか……そもそもロクローさんったら、また仕掛けようとしたのよね。

 だから助けなかったのは正解かもしれない。


 落ちました


 うん、落ちたんだけどね、でも結構壮絶なラストになりました。

 すでに女王蜂に刺されて 【中級】 の被毒状態。

 そこに、女王蜂に付き従って飛んできた働き蜂に襲われるという……イベント最初の頃、ポールさんたちがカタツムリの殻から出て来た、働き蜂の群れに襲われた時のことを思い出した。

 まさにあのシーンの再来です。

 女王蜂のきっつい一撃に比べれば、全然痛くはなかったかもしれない。

 でも数が凄いから。


 パーティを組んだ時、真田さんのことは助けたわたしだけど、ロクローさんとは組んでいないし、おまけにいつ斬りかかってくるかわからない。

 今だって斬り掛かろうとして、うっかりお尻を浮かしたところでぶっすりだもの。

 いつ寝首を掻かれるかわからない相手を、なにが楽しくて【中級】 解毒ポーショ(貴重なアイテム)ンで助けるのよ?

 いくら優柔不断なわたしだって、さすがにね。

 ……というわけで電子分解するロクローさんを、合掌で見送りました。


 成仏してね


 せめてもの情けとして、ムーさんと柴さんがあなぐまさんに回収の連絡をしてあげたらしい。

 あのあなぐまさんのことだから、すぐにでも回収に向かったかもしれない。

 ただ 【ナゴヤドーム】 の出入り口はもう一つあって、そちら側付近からイベントエリアに入ったのなら、中途離脱(リタイア)をして戻ってくる時もそちら側に転送されるからわからない。

 まぁこの混乱の中だから、わたしたちがいる側に転送されてきてもわからないと思う。

 出入り口に陣取っているクロエたちは気づくかもしれないけれど、少なくともクロエは興味ないから気にしないと思う。

 わたしたちも報告をもらっても仕方ないし。


 しかも今回はわたしたちが落としたわけじゃないから!

 そうよ、ここが肝心なところだけど、落としたのは女王蜂とその下僕(ゲボク)たちだから!


下僕(ゲボク)ってあんた……」

「違うっ?」

「当たらずとも遠からず?」

「カニやんも結構優柔不断よね?」

「今の会話の流れのどこに優柔不断要素あった?」


 それこそ 「俺、全然気づけへんかったわ」 なんて言われたけれど、そう思ったんだから仕方ないじゃない。

 わたしが思ったから……で、よくない?


「よくねぇわ!」


 カニやんがなにに怒っているのかわからないけど、たぶんこれはわからなくていいことだと思う。

 ねぇタマちゃん……と同意を求めたら、さすがだわ。

 可愛らしく 「にゃ~ん」 と鳴いて応えてくれました。

 どこがどうショックだったかはわからないけれど、カニやんは顎がカコーンと落ちるんじゃないかと思うほどあんぐりと口を開けて呆然。


 甘いわね


 タマちゃんだって女の子なの。

 こういう時は女の子同士でわかり合えるものなの。

 飼い主とはいえ、男のカニやんに入り込む余地はありません。


「性転換はちょっと考えさせて」


 …………考える余地があるのね。

 これには正直驚きました。

 ところでもしカニやんが女の子になった場合、柴さんとムーさんは、その、こ……こ、こ……こ、こ、こ……こ……


「なにニワトリになっとんねん?」

「交際を申し込むかって?」

「いや、これは告白の()やろ?」

「どっちでもえぇけどお断りやから」

「お前に選ぶ権利はないんじゃ!」

「なんでお前が返事しとんねん!」

「え? いや、そういう話やろ?」


 ……わたしが恥ずかしさのあまりどもっていると、勝手に進んでしまいましたが、おおよそ希望通りの進路です。

 ただ、カニやんがどちらもお断りというのは意外だったけれど。


 ちなみに 【分蜂タイム】 によるカオス状態は現在進行形。

 そのためちょーっと悪ふざけをしていたわたしたちは、後方からクロエに銃口を向けられました。


『仕事しないなら撃つよ』


 はい、申し訳ございません。

 そんなわけでお仕事を再開するわたしたちの前で、少し状況に変化があった。

 NPCはプログラム通り動くからそう簡単には変わらないけれど、プレイヤーの動きにね。

 その理由が、ロクローさんの不幸を見たから。

 つまりね、あれを見て、再度イベントエリアに戻ろうとしていたプレイヤーが諦めたわけ。

 そして通常エリアで女王蜂との決戦を決めたみたい。


 ただ、実際にあの現場を見ていたプレイヤーはそんなに多くはないはず。

 それなのになぜ? ……と思ったら、マメの仕業だった。

 インカムでわたしたちの話を聞いて、公式サイトの掲示板に不幸な出来事として書き込んだっていうね。

 しかもイベントが終わってから確かめてみれば、ロクローさんの名前がガッツリ出ていました。

 さすがにわたしたちもまずいのでは? ……と思った矢先、案の定あなぐまさんから抗議が来たけれど、あれ、書き込んだ本人にしか消せないのよね。

 それをわかっていてやっているのか、マメはイベントが終了するのとほぼ同時に姿を消した。


 狙ってるわよね?


 本人でなければ、あとは運営に消してもらうしかない。

 けれど運営が動くのは、運営倫理に反する場合のみ。

 ユーザー同士でアバター名の晒し合いなんて日常茶飯事だし、いちいち対応していられません! ……ということなのか、よほど大事にでもならなければ重い腰を上げることはない。

 というわけでロクローさんは、イベントが終了した後も恥を晒され続けることとなりました。

 よかったわね、ロクローさん。


 一躍有名人よ


 今回のイベント終了を知らせるサイレンが全エリアで鳴り響く。

 おそらくイベントエリアでも聞こえたと思う。

 イベント終了による強制転送は中途離脱(リタイア)と同じ扱いになるから、当然転送前の位置に戻される。

 サイレンの音が消えてから、一体、また一体とイベントエリアから通常エリアに戻ってくるプレイヤーたちを、幸いにしてわたしは生存状態で迎えることが出来た。


 でも終了直後、ギリギリで落ちてしまった美沙さん。

 いつもならこういう貧乏くじを引くのはの~りんあたりだけど、なぜか今回は美沙さんです。

 以前、イベントが終了しているにもかかわらずトール君が落ちた時は抗議したけれど、今回は、落ちるには落ちたけれど、イベントが終了しているということで、死亡状態も通常通り。

 アバターが半透明になった美沙さんは、その場から動けなくなってしまう。

 無理に動こうとするとインフォメーションが出るみたいね。


information 死亡状態のため移動出来ません

     回復をしてください


 そんなことを言われるらしい。

 もちろんこの回復にはポーションではなく、【復活の灰】 あるいは 【聖女の涙】 を使用する。

 またあるいは回復系魔法使い(ヒーラー)に助けてもらう。

 最悪の場合、【ナゴヤドーム】 の地下にある教会のさらに地下墓地に転送されることを選び、極悪銭ゲバ闇堕ち聖女に大枚をはたいて復活させてもらうしかない。


 ただ、まだまだ地下墓地はラッシュアワー状態。

 いや、ちょっと違うか。

 やっぱり芋洗いが適切かな?

 とにかくプレイヤーが多すぎて転送する場所(スペース)がなく、イベントが終了しても


information 大変混雑しているため転送に時間が掛かっております

      しばらくお待ちください


 そんなアナウンスが出て、通常の死亡状態のように、落ちた場所でアバターが半透明になって動けなくなるらしい。

 でもアイテムを使うなどの通常の回復が出来ず、なにかしようとすると上のインフォメーションがエラー代わりに出る。

 そしてなにも出来ないまま、その場でただ待たされるだけ。


 待機状態


 これ、いつになったら解消されるのかしらね?

 とりあえず美沙さんはイベント中の死亡ではないため、通常の回復が可能。

 それを知ってホッと胸をなで下ろしていた。


「もうお小遣いないもぉ~ん」


 お小遣い……なるほど、高校生の感覚だとそうなるのかも知れない。

 なんだか可愛いわ。

 しかもそう思ったのはわたしだけではなかったらしく、なぜかキンキーにしか見せなかった親戚のおじさんがまたもや出現。


「もう高校生やし」

「バイト出来るし思てたけど」

「よう考えたら美沙っちまだレベル低いもんな」

「しゃーない、おいちゃんが小遣いやろ」


 このキャラ、固定化するつもりかしら?

 まぁちょっとあれだけど、美沙さんのレベルを考慮して手助けしてくれようとしていることは評価します。

 でもこの場は最強の聖女様がいらっしゃるからね。

 回復自体にはゲーム内通貨は問題ない。

 ただこのイベントで散々に削られた装備の耐久。

 その修理の費用が足りないということで、りりか様に後払いの交渉をしたらしい。

 費用を稼ごうにも、装備の耐久が足りなければどこかのダンジョンに潜ることはもちろん、適当なところで雑魚を狩って稼ぐのも難しいからね。

 わたしからもお願いしようかと思ったけれど、学生組でなかなかに上手い交渉をしていたから見守ることにしました。


「で、例の壺のことだけど……」


 ほら、イベントも終わったし、NPC長官に納品したあの 【怪しい壺】。

 あれの正体というか、解析は終わったのかしら? ……と尋ねてみると、カニやんには 「またか」 という顔をされた。

 なにが 「また」 なのよ?


「運営からメッセージ来てるだろ?

 また読んでないのかと思ったの」


 そういえば、イベントが終わった数分後にインフォメーションが出ていたような気がする。

 色々と喋っていたから邪魔で、つい反射的にウィンドウを消してしまったから用件も確認していない。

 うん、いつものことね。

 カニやんは 「運営から」 と言っていたけれど、体裁はNPC長官からという形になっているらしい。


information 臨時政府代表 よりメッセージが届いています


 そうか、そう言えばそういう名称だったっけ。

 いつもNPC長官なんて呼んでいるからすっかり忘れていたわ。

 ちなみに内容は自分で読みません。

 だって今日は日曜日だもの。

 絶対に読みません。


「そこで意固地になる理由がわからん」


 カニやんにはしみじみと首を傾げられてしまったけれど、なんだかんだいっても面倒見のいいお人好しイケメンだもの。

 いつものように教えてくれたところによると、まだ解析中だからちょっと待ってね! ……という感じのことが堅苦しく書かれているらしい。

 ほら、カニやんに聞いたほうが早いじゃない。

 そんなダラダラと余計なことを書いて文字数を稼いでいるような文章を、なにが楽しくて休みの日に読まなきゃならないのよ?


「余計なこと満載の文章を、余さず隅々まで読み切った俺の立場は?」


 そのへんに立っていればいいんじゃない?

 イベントが終わって数分経っても、まだまだ混雑状態が解消されない地下墓地と違って空間(スペース)はいくらでもあるから、お好きな場所にどうぞ。


「なんかさ、廊下に立たされる小学生の気分やねんけど?」


 そんなデッカイ小学生いないわよ。

 なんだったらその身長、10㎝くらいわたしに頂戴よ。

 そうしたら小さくなってちょっとは可愛くなるかも。


「欲しいんは2㎝だけちゃうんかい?

 どんどん強欲になりよんな」


 だって課長代理の背が高すぎるんだもの。

 2㎝じゃ全然足りません!


「やったら旦那からもらえやっ!」

【休閑小話】~サブマスの独り言


「おい」


 インカムから聞こえてくるギルドメンバーの会話があまりに賑やかすぎて、ついうっかりそのすぐ隣を素通りしかけた真田は、掛けられる声にビクリと体を強ばらせる。

 慌てて見れば、見慣れた顔がいつもの仏頂面を浮かべている。


「あ? ……ああ、静流(しずる)、いたのっ?」

「なにが静流だ。

 シカト決め込みやがって」

「やだ、そんなつもりじゃないわよ」


 ギルドに入っていないノギには、ギルドチャットの賑やかさがわからない。

 もちろん他のゲームで経験はあるし、そもそも彼はそんな煩わしさを嫌って、このゲーム 【the edge of twilighto nline】 ではギルドに所属しないと決めているのである。


「それより徳貴(のりたか)は?」

「センサー引っぺがして蒲団に投げ込んできた」


 少し前、直通会話を使って寝落ちしたノギの弟ノーキーの回収を依頼したのだが、あまりにも早い再ログインに少し心配になって尋ねてみれば、変わらぬぶっきらぼうな返事が返ってくる。


「またまたそんな言い方しちゃって。

 本当は徳貴のことが可愛くて仕方がないくせに」

「お前な、いい歳したおっさんがなに言ってやがる」

「ろくでなし子ちゃんとか言って、不破のことだって可愛いと思ってるじゃない」

「不破? ……ああ、司のことか。

 あのろくでなし野郎め」

「またまたそんな言い方をしてぇ~」


 ふふふ……と口を押さえて笑う真田に、ノギは口元を引き攣らせる。


「それよりお前、その話し方をやめろ。

 だいたいこっちのアバターは違うだろう」


 どうやら真田の様子がいつもと違うから、直接アバターを見に来たらしい。

 勘違いを指摘しに来たのか、あるいはアバターの乗っ取りなどを心配したのか。

 だが実際に会って話してみて、本人とわかると 「気持ち悪い」 と罵ってくる。

 だが罵られた真田は、楽しむように 「ふふふ……」 と妖艶に笑ってみせ、余計にノギを気味悪がらせる。


「もちろんわかってるわよ。

 わざとよ、わ、ざ、と。

 あたしがアバターを間違えるわけないでしょ」

「なんのために?」


 まったく意味がわからない……と、露骨に怪訝な顔をするノギに、真田は変わらない妖艶な笑みを浮かべながら返す。


「グレイちゃんよ、グレイちゃん」

「グレイ? 灰色の魔女がどうした?

 また徳貴が面倒を掛けたのか?」

「面倒というほどのことはないわよ。

 いつもどおりよ、徳貴はね。

 そうじゃなくて、あの子、なぜかは知らないんだけど、蝶々があたしのサブ垢だって覚えてないのよ」

「お前、作った時に話してやらなかったのか?」

「そんなわけないでしょ、ちゃんと話したわよ。

 だからお茶会のメンバーだって知ってるわけだし。

 でもどうしてかグレイちゃんだけ覚えてなくて」


 しかもまったく思い出さないと来た。

 そこで本垢である真田のアバターで蝶々夫人を演じてみたら思い出すかと思い、あえて、少し強調するぐらいで演じてみたという。


「でも面白いのよぉ~。

 あの子、全然思い出さないの」


 それどころか真田とマダム・バタフライ、二体のアバターを 「似てる」 などと言いだしたのである。


「似てるもなにも、同一人物なのにねぇ~」


 そう言って、やはり口元に手を当てて 「うふふ……」 と笑う真田を、ノギは不気味なものでも見るように顔をしかめる。


「……話はわかったが、まだ続けているのはなぜだ?」


 ここにアールグレイはいないのだから、演じ続けることに意味はないはず。

 誰に向けてこの演技を続けているのかと疑問に思えば……


「あらやだ、あたしったら……ついうっかりよ、うっかり。

 ちょーっと面白くなっちゃって」

「悪い夢を見そうだ、今すぐやめろ」

「なんなの? マジになっちゃって。

 俺がそっちの趣味にでも走ったと思ったわけ?」

「走るなら走ってくれてかまないが、俺とは縁を切ってからにしてくれ」

「相変わらずひどいわね。

 お前と俺の友情って、そんなに薄かったっけ?」

「薄いに決まってるだろ、この変態」

「そんなこと言ったらみんなにバラしちゃうわよ、あたしたちの関係」

「ちょっと待て、バラすってなにをっ?!

 俺とお前が、友だち以上になにがあるか言ってみろっ!!」

「ふふふ……どうかしらねぇ~」

「馨っ!!」



※念のために置いておきます

真田馨  → 真田 & 蝶々夫人マダム・バタフライ

野木静流 → ノギ

野木徳貴 → ノーキー

不破司  → 不破

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― 新着の感想 ―
[一言] こう……………並べてみると ノーキーさん、素早さの差で、『ノギ』を、奪われて、伸ばしてノーキーにした感がひしひしと…………… だって、真田、不破、野木だもん(笑) 俺、サナダ…
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