721 ギルドマスターはブンブンとお尻あいです
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またお尻に戻るの?
折角やる気を出して前向きにイベントを進めようと思ったのに、脳筋コンビに出鼻を挫かれました。
「いや、挫いてへんし」
「ケツに戻したん、あんたやし」
失礼ね、わたしじゃないわよ!
「戻るように仕向けたんちゃうん?」
ちょっとカニやんまで。
ほんと、失礼しちゃうわ。
わたし、お尻にはそんな興味ないわよ。
脳筋コンビじゃないんだから……
「自分のケツには興味ねぇよ」
「大臀筋な」
わざと難しい言葉を使って誤魔化そうとしてもダメだからね、ムーさん。
わたしだってその程度は知ってるんだから。
それ、お尻の筋肉でしょ。
お尻のことを臀部っていうことも知ってるからね。
「先回りされた」
なにが 「Oh my Godーっ!!」 よ。
大袈裟に振りまで付けて。
ご自慢のお尻を、偶然すぐそこにいたタマちゃんの尻尾で鞭打ちされたのも自業自得です。
PK出来ないから思いっ切り叩いていいからね、タマちゃん……と話し掛けたら、タマちゃんは可愛らしく 「にゃ~ん」 と鳴いて、改めて、今度は柴さんのお尻をピシリと一撃。
いい音
「なんで俺ーっ?!」
丁度いいところにいたからじゃない?
あるいはタマちゃんの認識は、柴さんもムーさんも 「ただの筋肉」 なのかもしれない。
もしそうだとしたら見分けるのは難しいんじゃない?
「ちょいカニ!
ちゃんと躾けんかい!」
「いや、ワンコもタマも、躾とか出来ひんし。
お前らわかってて言うてるやろ」
「出来る、出来ひんやのうて、飼い主の責任を問うとるんじゃ」
タマちゃんが二人を尻尾で鞭打ちしたのは偶然だけれど……いや、偶然じゃないか。
だってカニやんがわたしの隣に付けてるんだもの。
タマちゃんは戦闘状態にあると、絶対に飼い主のそばにいる。
ちょっとやり方は手荒いこともあるけれど、ちゃんと非力な飼い主を守るのよ。
ルゥも飼い主を守ってくれるけれど、自分が楽しいことが一番だから。
たまに途中で目的を見失うというか、変更してしまうというか。
そこがちょーっとだけタマちゃんとは違うのよね、同じNPCだけど。
だからタマちゃんが近くにいるのは偶然ではなくて、カニやんに飛び火したのも偶然ではない、と。
「起動……」
ではそれぞれ、自己責任でお楽しみください。
三人とも、お仕事さえちゃんとしてくれれば他は自由です。
だから脳筋コンビは、遠慮なくカニやんに口撃を続行する。
お仕事さえしていれば、タマちゃんも三人を鞭打ちしないし。
でもカニやんは魔法使いだからね。
「……氷雪乱舞。
ちょ待って。
普通に二対一で俺不利やのに、仕事しろ言われたら自由に喋られへんやんけ」
まぁ魔法使いだからね、詠唱は命です。
芸能人は歯が命で、民主主義は数が命。
そして魔法使いは詠唱が命。
負けを覚悟で詠唱をしてください。
ほら、肉を斬らせて骨を断つ、みたいな?
ただし魔法使いは防御力が霞だから、肉を斬らせたらそのまま骨も斬られるけどね。
落ちます
まぁこの二人が、本気でカニやんを斬ることはないだろうけど。
ちょーっと面白……ゲフゲフ……えっと、なんでもありません。
「面白ないとか、言い掛けたやろ!
起動……」
「気のせいです。
起動……業火」
「……雪月花」
もうカニやんったら、どんな被害妄想よ?
わたし、ぜーったいそんなこと言おうなんてしてないから。
考えてもいないわよ、本当の本当に。
微塵もね
「そのしつこさがむっちゃ怪しいねん。
ってか考えたやろ? 言い掛けたやろ?
起動……」
カニやんの、このしつこい追撃をどうかわせばいいのか。
悩むわたしに手を差し伸べてくれた救世主。
よりによってあの人が、この場面の救世主になるなんて思いもしませんでした。
たぶん向こうも思っていなかったというか、救世するつもりなんてなかったと思う。
だってロクローさんだもの。
そんなこと考えてると思う?
脳筋コンビよりも脳筋のロクローさんよ?
ノーキーさんといい勝負をするような脳筋よ。
絶対考えてないわよね。
そのロクローさんがなにをしたのかといえば……いや、ロクローさんがしたのではなく、ロクローさんはされたほうの立場。
まぁその、不幸な偶然の重なりとでもいうべきかしら?
いえ、違うわ。
悪いことを考えたロクローさんが悪いのよ!!
そもそもロクローさんがそこにいたのは本当の偶然らしい。
直前までイベントエリアにいたロクローさんは、例によって迷子になってギルドパーティからはぐれてしまった。
迷子になってはぐれたのか、はぐれて迷子になったのか。
まぁそこは追及しないでおいてあげます。
だってロクローさんの場合、どちらでも変わらないし。
同じよ
元々イベントエリア内は迷路。
崩壊し始めているといっても、まだギリギリ迷路の形を保っている。
しかも迷子になるとわかっていても、副主催者のあなぐまさんを筆頭に、どんなにギルドメンバーが目を光らせていても迷子になるというか、はぐれるのがロクローさん。
対人戦が激化しているという状況もあって、ロクローさんと回収側、合流を目指して双方向から走り回ったらしい。
わたしたちと遭遇した時みたいにね。
ただ今回は、不幸なことにニアミスがあった。
紫陽花の壁一枚隔ててすれ違うっていうね。
まぁロクローさんの本当の不幸は一般エリアに戻ってから。
つまりこれから襲って来るわけだけど、まるでそのための布石のようにニアミスが起り、ノーキーさんに匹敵する脳筋のロクローさんが、その状況でなにをするかなんてわかりきっている。
もちろんここで、通り抜けることが出来る枯れている株を探すという機転が利けばよかったけれど、そこはロクローさんだから。
それこそ 「助かった!」 とかいって、張り切って紫陽花の壁を乗り越えようとしたらしい。
あらら……
まぁあとは言わずもがな。
一瞬で空高く飛び上がり、キラーンと輝くお星様になりました。
それでまぁ一般エリアに戻ってきたというわけです。
うん、ここまではOKです。
いかにもロクローさんらしいというか、ロクローさんよね。
ただ慌てたロクローさんったら、急いでキーアイテムを探してイベントエリアに戻ろうとしたらしい。
もちろん出来ません。
いえ、キーアイテムを見つけられればイベントエリアには戻れるけれど、パーティメンバーのところには戻れないどころか、0をのぞいた1から9までのどのエリアに飛ばされるかわからず、おそらくパーティメンバーとは同じエリアにすら戻れない。
だからわたしたちは、残ったメンバーは中途離脱を選んで一般エリアに戻ってきていたのにね。
「まぁそこはロッ君だしな」
あなぐまさんの話を聞いた柴さんは、そんなことを言って呆れていた。
そうね、ロクローさんらしいわ。
ちなみにわたしたちがロクローさんと遭遇したのは、このキーアイテムを一般エリアで探している時。
わたしたちも、銃士の援護が届く範囲ということで、それなりに 【ナゴヤドーム】 近くで女王蜂を燃やしたり、蜂の巣を燃やしたり。
もちろん時々反射もされたけどね。
でもほら、魔法反射に限ってはわたしは関係ないから。
アキヒトさんの大ポカも、の~りんのうっかりも全然平気です。
カニやんの大ぼけはちょっと冷たいけどね。
「なんで俺だけそういう扱いやねん」
そんなカニやんのしつこい追撃を、ロクローさんの登場で躱すことにしました。
登場もなにも、イベントエリアを強制退場させられただけなんだけどね。
主催者としての謎矜持なのか、一刻も早くイベントエリアに戻るべくキーアイテムを探していたロクローさんを、一番最初に見つけたのはぽぽ。
『え……っと、グレイさん』
いつものように遠慮がちに呼びかけてくる。
ぽぽはクロエと一緒に、【ナゴヤドーム】 の出入り口に陣取っているからね。
「なに?」
『あ、すいません、グレイさんじゃないかも』
「じゃあ誰に用?」
『柴さんとか、ムーさん?』
「と言うことは脳筋絡みね」
『まぁそんなところです』
「なんやねん、それ?」
「ちょい待てや」
指名を受けた二人が会話に入り込んだところで、ぽぽのすぐそばで銃を構えるクロエも気がついたらしい。
『ああ、あれね』
『ちょっとクロエ、あれって呼び方は……』
『でもあの人、やっぱりグレイさんでいいと思うよ』
くるくるまで。
ん? わたしでいいの? ……というか三人揃って随分勿体ぶってるけれど、そろそろ教えてくれる?
構えた照準器の向こうに誰を見てるのよ?
『それは……』
最初に見つけたぽぽが答えてくれようとしたタイミングで、茂みをかき分けるようにロクローさんが登場しました。
えーっと、【分蜂タイム】 の開始は、イベントエリアでもアナウンスされたはず。
しかも一般エリアに戻ってこの状況を見ているにもかかわらず、それでもまだキーアイテムを探そうとしているロクローさんのマイペースもなかなかのものね。
対人戦が出来ない分、イベントエリアよりましかもしれないけれど……と思っていたら、目が合ったロクローさんがいきなりスライディング土下座を決めてきました、
はいっ?!
えーっと、いきなりなに?
うん、まぁ行動が唐突すぎるのはロクローさんよね。
でもあまりにも唐突すぎて、しかも土下座ってなに?
審判も真っ青になりそうな勢いで滑り込んできたわよ。
なんなのっ?!
「先日は女王陛下にご無礼を働きましたこと、平にお詫び申し上げます!」
……思い出した。
紫陽花の迷路で遭遇した時に斬り掛かってきたことね。
実際に狙われたのは美沙さんで、それを阻止したマコト君に指南までしてくれたけれど。
たぶんその時のことを言ってるんだと思う。
とりあえず、わたしのことを女王陛下と呼ばないで頂戴!
それと、そんな殊勝な態度を取っても無駄だからね。
いい加減わたしだって学習したんだから。
案の定よ
スライディング土下座を決めて地面に擦りつけていた額。
あまりに勢いが良すぎて、地面に頭突きをしているようにすら見えた叩頭。
でもその額が地面を離れた……と思ったら、上目遣いにわたしを見上げてくる。
もちろんその右手には最初から抜き身の剣が握られていて、目と目が合った瞬間、腰を上げて斬り掛かってくる……と思ったその時だった。
わたしはロクローさんが仕掛けてくると思っていたから、その動きを注視するあまり気づいていなかったけれど、いつのまにかロクローさんの背後に女王蜂が迫っていた。
そしてわずかに浮かした腰に、うしろからブッスリとその太い毒針を刺す。
「い……ってーーーーー!!!!!!」
待って
その、ちょっと待って欲しい。
だってその、女王蜂が刺したのはロクローさんの腰じゃないの。
えっと、その、ね、もう少し下……なの。
しかもたぶんど真ん中。
「まさかの浣腸でお仕置きたぁいかすねぇ~」
「さすがロッ君、普通じゃねぇな。
ノーキー越えたんじゃね?」
「つむじばっか話してたけど、ケツもあんだな」
痛みというより、たぶん驚きのほうが大きかったと思う。
持っていた剣を放り投げ、悲鳴を上げながら刺されたお尻を両手で押さえながらのたうち回るロクローさんを見て、いつもの三人がしみじみと呟く。
ちなみにいつも言っていることだけれど、ここは仮想現実で、手で押さえてもHPの流出は止められません。
きっちりダメージ分の流出があります。
そうしてロクローさんは刺されたお尻の○から、キラキラとHPを流出させながらのたうち回る。
もちろん被毒状態でね
お尻から離れなかったのはこの前振りだったわけですが、どうしてもロクローの登場タイミングが計れず遠回りに。
余計な話数を稼いでしまいました、申し訳ございません。
でもこれで便秘も解消してすっきり・・・ではなくて!!
本イベントも終了。
報酬や、今回のイベントの背景などが少し語られます(たぶん
そして夏イベント開催ですよ!
今年も海に行きますよ!
相変わらずグレイは泳げませんがw