717 ギルドマスターはデンデンとブンブンの闇に目を覚まします
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information これより分蜂タイムが始まります
イベント最終日。
今回のイベント内容なら、日付が変わるギリギリの23:59:59まで行なわれるかと思っていた。
でも実際は21:59:59まで。
これはなにかあるのでは……と途中で一度は疑った。
ほんとよ、ちゃんと疑ったんだから。
ただそれどころではなくてすっかり忘れていたというか、うっかりしていたというか。
その最終日はわたしたちの目論見通り、早朝こそ徹夜組の寝落ち&寝坊で平穏無事を通り越し、淋しくさえ感じられたほどの状態でスタート。
でも昼前には前日の賑わいというか、激しい対人戦が復活。
嫌な予感を思い出すことはもちろん、激戦に巻き込まれたおかげで考える余裕もなかった。
超多忙
わたしたちの第一目標は、当然ながら 【怪しい壺】 の回収です。
あくまでも対人戦は受け身。
他のパーティを見掛けても、向こうが仕掛けてこない限りこちらから仕掛けるようなことはしなかった。
まぁでもそんなことを言っている余裕すらなかったけど。
たいがいのパーティは仕掛けてくるから。
99.999999……まぁほぼほぼ100%の確率で仕掛けてくるから。
邪魔よっ!!
ついつい本音が口から飛び出してしまうほどの鬱陶しさで仕掛けられました。
途中で休憩を挟みながら迎えたイベント終了三時間前。
やっぱりというか、いつもながらこの終了二、三時間前が曲者だった。
information これより分蜂タイムが始まります
いや、待って。
ちょーっと待ってくれる?
その、ね、分蜂タイムってなによ?
女王蜂が旅立つってこと?
カニやんがそんなことを言っていたのは確かに覚えているんだけど、このイベントの状況で女王蜂が巣立つって……どういうこと?
『それを俺に訊かれても……』
うん、大丈夫。
さすがに雑学好きなカニやんでも、こればっかりはわからないわよね。
とりあえず何が起こるかわからないから各班用心してね……なんてことはわざわざ言うまでもないから、掲示板を巡回しているマメにお願いしておく。
「関連スレッドが立ったらすぐに教えて」
『あいさー!』
いつものように、ちょっとうるさいくらいの声でマメの返事が聞こえてくる。
同じことを考えるプレイヤーは多いから、すぐにスレッドが立てられたという報告はあった。
でもみんなそれぞれに忙しく、なかなか書き込みは増えない。
増えるのは、書き込みを待つ冷やかしばかり。
まともにプレイしているプレイヤーは忙しいから仕方がないわよ。
現にイベントエリアにいるわたしたちも大忙しだからね。
『の~りんが落ちたから、僕らは一回離脱するよ』
クロエ班で範囲攻撃を持っているのはの~りんだけ。
そのの~りんが落とされると、この状況はさすがに厳しくなる。
メンバーの回収タイミングも各班の班長に任せているから、班長のクロエがそう判断するならもちろんわたしの返事は 「OK」です。
このあとクロエ班のメンバーが、それぞれにイベントエリアを中途離脱していくわけだけど……の~りんは中途離脱ではなく落とされての強制退去なので、行き先は 【ナゴヤドーム】 の地下にある教会の、さらに地下にある死体置き場。
だからみんなより先に一般エリアに戻っていながらもまだ状況を知らなかった。
転送終了直後に 『ごめん!』 という少し焦ったような声が聞こえてきて、すぐに 【ナゴヤドーム】 の出入り口に向かうとのこと。
そのあとでマコト君、ジャック君を先に一般エリアに逃してからクロエも中途離脱を選んで転送。
けれど近くにいるはずのマコト君とジャック君が見当たらなかった……? ん? どういうこと?
『わからない。
でもいない』
『イベントエリアに入る時は近くにいたから……え? なに……これ?』
死亡による強制退去ではなくプレイヤーの任意で中途離脱を選んだ場合、だいたいは転送前の位置に戻される。
もちろん絶対ではない。
そのタイミングで同じ座標に別のプレイヤーがいることもあるから、多少ずらされることもある。
だからといって 【ナゴヤドーム】 の反対側に飛ばされるみたいな、極端に遠くにずらされることはない……はず。
でも二人の姿が見えないらしい。
クロエとほぼ同じタイミングで一般エリアに戻ったベリンダも、見たらない二人の姿を探しているのか?
随分と声が戸惑っている。
しかもなにかあるらしい。
その意味をベリンダより一瞬早く理解したクロエが声を上げる。
『走れ、ベリンダ!』
直後、クロエと同じく意味を理解したらしいベリンダが 『ちょっと、なにこれっ?!』 という声を上げるけれど、クロエに促されて走りだしたらしい。
何を見たのか、なににそんなに驚いているのか、教えてくれない。
代わりに行方がわからなくなっていた二人の声が聞こえてくる。
『うわっ? 暗っ!!』
まずはジャック君の驚いた声。
続いてマコト君の 『ここって……』 と、周囲を見回しているような感じのする声が聞こえてくる。
さすがにジャック君より冷静です。
「どこにいるか訊いてもいい?」
わたしの問い掛けに、ジャック君は 『どこって……』 と言い掛けてマコト君と顔でも見合わせたのか、バトンタッチ。
マコト君は 『たぶん』 と戸惑いながらも答えてくれる。
『死体置き場です、教会の下の』
えーっと、死体置き場に強制転送ということは落とされたという事よね?
しかも二人とも転送に心当たりがないというか、どうしてそうなったのかあまりよくわかっていないようですが、一応訊いてもいい?
なにがあったの?
『なにって……よくわからないんだけど、急にマコッちゃんに押されて……』
『クロエさんたちはっ?!』
まだまだジャック君は状況を理解出来ていない様子。
でも自分たちがいる場所を死体置き場と理解したマコト君は、一瞬でその経緯を思い出したらしく急に声を上げる。
これはわたしではなくクロエ本人に返事をしてもらったほうがいいのかな? ……と思ったら、珍しく意志が通じたらしい。
タイミングよくクロエが答えてくれる。
『ベリンダも無事!
ドーム入り口で合流しよう!
の~りんも』
マコト君とジャック君、二人が転送されるより一足早く教会をあとにしたの~りんは、予定どおり 【ナゴヤドーム】 の外でクロエたち回収組と合流するつもりでドーム内を走っている真っ最中。
ちょっと間の抜けた返事が返ってくる。
『え? あ、そうなの? わかった、もうすぐ着くよ』
『絶対外には出るな!』
珍しくクロエの語気が荒い。
これはひょっとして、わたしたちも戻ったほうがいい?
いや、なにが起こっているかを確認してからのほうがいいか。
マコト君、わかる範囲でいいから話してくれる?
『その……転送されてすぐ、たぶん女王蜂に……』
は? ……え? 待って。
一般エリアに女王蜂が出たの?
『はい』
つまり何? ジャック君が記憶している、急にマコト君に押されたというのは、ひょっとしてだけどマコト君なりにジャック君を庇おうとしてのことだったとか?
『さすがに 【幻獣】 相手では勝てませんでしたけど』
そんなことを申し訳なさそう、あるいは情けなさそうに話すマコト君の説明によると、一般エリアに転送された直後、働き蜂の群れを引き連れた女王蜂に背後から襲われたらしい。
いや、ひょっとしたら逆かもしれない。
つまりね、女王蜂たちの群れの進路にマコト君とジャック君が転送されてしまったため、気がついた時にはすぐそこにまで、群れの先頭を飛ぶ女王蜂が迫っていた。
しかもその距離があまりにも近すぎて全体像を把握出来なかったため、マコト君の返事が 「たぶん女王蜂に……」 になってしまったのだと思う。
反射的にジャック君を庇おうとしたけれど間に合わず。
次の瞬間視覚が暗転した。
普段ならば死亡状態に陥ったプレイヤーはアバターが半透明になり、行動制限を受ける。
その状態からインフォメーションが、幾つかある復活の方法を尋ねてくる。
なにかしら復活アイテムを所持しているならそれを使うか、あるいは教会の地下墓地に転送されるか。
運良く回復系魔法使いが通りかかり、死亡状態からの回復魔法 【リカーム】 を使用してくれた場合、それを受け入れるかどうかを訊いてくる、などなど。
でも衝撃の直後に視覚が暗転したということは、死亡状態による強制転送。
本来ならば一般エリアでは起こらないはずの現象の連続に、さすがのマコト君も処理能力が追いつかなかったらしい。
十分凄いけどね。
まずわたしなら、ジャック君を庇おうとすることすら出来ません。
とっさに体が動くのはさすが剣士です。
とりあえず壺集めは諦めて、わたしたちも一般エリアに戻ったほうがいい?
それとも迷路の探索班と、一般エリアに戻る班と分ける?
丁度今回は四班あるから二班ずつにして、カニやん班と恭平さん班はこのまま迷路を探索。
壺集めを継続して……と話していたら、銃声が聞こえた直後にトール君が横に吹っ飛ぶ。
「ゆりこさん!」
インフォメーションによる 【分蜂タイム】 が知らされてからも、イベントエリアは変わらず対人戦によるカオス状態が続いている。
だから銃声が聞こえても今さらだけど、直後にトール君が吹っ飛んだということは狙撃されたわけで、わたしは有無を言わさずクロウに押し倒され、ゆりこさんは、声を掛けるパパしゃんに一瞬遅れて紫陽花の壁の陰に隠れる。
「今の銃声……ひょっとして……」
ちょっと変わった銃声だったと思う。
着弾は一発だったように見えたけれど、実際に撃たれたのは一発じゃない。
だってこのあいだクロエが撃った時、トール君は一発では落ちなかった。
そもそも銃士の単体攻撃に一撃必殺のスキルはない。
そりゃ中堅レベル以上の銃士が初心者、あるいは初心者に近いレベルのプレイヤーを撃てば一発で落ちるけれど、もうトール君はそのレベルじゃないからね。
クロエですら一発では落とせない。
そのトール君が被弾した直後、クロエに狙撃された時以上に大量のHPを流出させながら吹っ飛ばされた。
直前に聞こえた銃声は、ほぼほぼ同時だったけれどわずかにぶれて複数発。
偶然タイミングが被ったにしては標的まで同じなんてことはあり得ない。
故意に同じ標的を、ほぼほぼ同時に複数の銃士が狙撃した……うん、いるわよね、そういう集団。
そういう戦い方をするギルドが……
『すいません!
……なんか……凄い、人が……』
賑わう教会地下墓地に、無事転送を終えたトール君の声がインカムから聞こえてくる。
大盛況の地下墓地はプレイヤーで混雑し、抜け出るのに手間取っていたジャック君とマコト君は少し前に、ようやくのことで 【ナゴヤドーム】 内を地上階まで脱出出来たところらしい。
トール君とすれ違っちゃったわね。
とりあえずトール君は謝らなくていいから。
『はい、すいません!』
だーかーらー!
『篠崎の性格じゃ~無理ですよぉ~』
『塚原、おま……っ』
美沙さんのいる恭平さん班も、とりあえずメンバー全員が無事とはいえそれほど余裕があるわけではないらしい。
さっきからずっとアキヒトさんの文句というか、悲鳴……ではないけれど、まぁそんな感じのものが聞こえているけれど、うるさいので無視です。
とりあえずトール君はマコト君たちを追いかけて 【ナゴヤドーム】 の出入り口に向かってくれる?
わたしたちも回収に向かうわ。
……というわけで、わたしたちの班がイベントエリア離脱ということで。
『仕方ないね』
『了解した』
『状況次第じゃ、全員合流したほうがいいかも』
『僕一人じゃそこまでは判断しかねるから、とりあえずグレイさんと合流するよ』
一応わたしの決定を他の班長三人が了承。
じゃあすぐに中途離脱……と思ったら、クロエに言われる。
『ちょっとだけ待って。
の~りんが合流したら、ドームの出入り口から支援するよ』
これはひょっとして、一般エリアも結構カオス?
うん、マコト君とジャック君が転送直後に落とされてるもんね。
用心するに越したことはないか。
念のため低い姿勢で転送してもらおうかな?
あ、そうそう。
カニやんたちも低姿勢でいたほうがいいかも。
【鷹の目】 がいるわ
あ、あれ? サクッと終わるはずなのに進まない?
しかもまたトールが落とされてるし・・・
アールグレイ班
アールグレイ /魔法使い
クロウ / 剣士
ゆりこ / 魔法使い
パパしゃん / 盾剣士
トール / 剣士
カニやん班
カニやん / 魔法使い
しば漬け / 剣士
ミンムー / 剣士
ぽぽ / 銃士
キンキー / 魔法使い
タマ / 妖獣
クロエ班
クロエ / 銃士
の~りん / 魔法使い
ベリンダ / 短剣使い
マコト / 剣士
ジャック / 剣士
恭平班
恭平 / 剣士
くるくる / 銃士
ジャック・バウアー / 剣士
アキヒト / 魔法使い
サミー / 魔法使い