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711 ギルドマスターはデンデンと紫陽花の花を愛でます

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告&いいね、ありがとうございます!!

 午後からログインしてきたゆりこさん。

 イベントエリアに転送されて早々に彼女が覚えた違和感は、彼女の他にはの~りんだけ……と思ったら、夜になってログインしてきたパパしゃんまでが……


「その、なんていうか……夜だから……というわけでもないのですが……」


 少し戸惑いがちなパパしゃん。

 今日の午前中のうちに最初の女王蜂撃破が出来、その後、ぼちぼち他の班も 【怪しい壺】 の納品が進んだことを、時間がもったいないからと、パーティメンバーが揃ってすぐイベントエリアに移動しながら話した。

 【ナゴヤドーム】 近くでキーアイテム(カタツムリ)を探しながらね。

 そしてイベントエリアに転送早々、そんなことを言い出したの。


「なにか……変じゃない?」


 この時点では、昼間、ゆりこさんが言っていたこの科白(セリフ)のことはわたしもすっかり忘れていた。

 だからパパしゃんには話していなくて、ゆりこさん自身もすっかり忘れていたらしい。

 そんな戸惑いを口にしつつ、イベントエリア内を見回すパパしゃんを見てゆりこさんも思い出す。


「やっぱりそう思うでしょ?」


 ゆりこさんが同意を求めたのはパパしゃんだけど、暗に 「どうして気づかないの?」 とか 「鈍感」 とか言われているような気になってくるのはわたしだけ?

 だってそんなことを言われましても、もっとこう、どこがどう変わったのか具体的に言ってもらわないと困るのよ。


「あらグレイちゃんったら、まるでわたしやパパしゃんがわざと焦らすような言い方をしてるとでも?」


 いえ、決してそんなつもりではございません。

 でもわからないものはわからないのよ。

 それこそ何度言われてもね。

 ただエリアを見回しての違和感ではないけれど……といいかけたところで、腕に止まった働き蜂を叩き潰す。

 この働き蜂、魔法使い(わたしやゆりこさん)のSTRでも易々と叩き潰せるほど脆いけれど、刺されると被毒状態になる。

 もちろん女王蜂のように 【中級】 の解毒ポーションは必要ないけれど、数がいるから面倒臭い。

 【通常】 の解毒ポーションはそれほど在庫に問題はないからいいけれど、インベントリに限りが有るからね。

 そんなこんな面倒を考えれば刺される前に倒す!

 これが最善策だと思う。

 その働き蜂が増えたような気がするの……ということをさっき言い掛けました。

 まるで蚊を叩くような感覚でもう一つ、頬を叩く。


 邪魔!!


『ああ、働きへぶっ』


 たぶんね、カニやんは働き蜂と言いたかったんだと思う。

 インカムの向こうの様子はわからないけれど、まぁなにか不測の事態があったんじゃない?

 それで語尾がおかしなことになったんだと思う。

 でもカニやんが落ちるなんてことはそうそうない。

 そもそもカニやん班は、今回も分割を忘れてそのままにしてしまったけれど、火力を削ぎたくなるくらい過剰火力だからね。

 しかもカニやんになにかあればあの二人が黙っていない。

 いや、今も黙ってはいないけどね。

 その、物凄い笑い声が聞こえてくるわ。

 もちろん脳筋コンビの笑い声よ。


『タマちゃんが、しっぽでカニさんの顔を叩いたんです。

 たぶん蜂が止まったから……』


 そう教えてくれるキンキーの声も笑っていたから、たぶん言葉だけでなく変顔にもなったんじゃないかな?

 きっとその顔が相当面白かったのね。

 今も脳筋コンビの豪快な笑い声が後ろから聞こえてくるもの。

 わたしも見たかったわ。

 誰かSS撮ってない?


『瞬間過ぎて撮れんかったわ』

『マジ不測過ぎて構えんの間に合へんて』


 そうか、この二人でもタマちゃんには勝てないのね。


『なにでヌコに勝つねん?』

『そもそも俺ら、なんでヌコと勝負せなあかんねん?』


 もちろんカニやんを賭けて。


『熨斗付けてやるわ、カニなんぞ』

『なんでカニのために、あんなスペックの高い 【妖獣】 相手にせなあかんねん』

『女王のワンコの次に厄介やねんで、このヌコは』

『可愛さ余って強さ百倍やさかいな』


 残念ね、カニやん。


『……なにが残念かわからへんけど、わからんでえぇ気がする』


 カニやんが納得してるなら話を蜂に戻すわ……といったらすかさず 『納得はしてへんけどな』 と言い返され、なんだかホッとしました。

 やっぱりこのテンポよね、突っ込みは。

 安心したところで話を戻しまして……なんの話だっけ?


『どこまでもボケ続けるんやな』

『これボケちゃうやろ?』

『ただのど忘れやん』

『蜂の話でしょ?』


 あ、いい加減焦れたクロエが割り込んできた。

 はい、働き蜂の話でした。

 決してボケたわけではなく、柴さんのご指摘どおりただのど忘れです。


 でもこの働き蜂が増えたような気がするのはわたしとカニやんだけ。

 同じカニやん班の脳筋コンビはもちろん、キンキーやぽぽもそれほど気にならないらしい。

 恭平さん班やクロエ班は言わずもがな。

 まぁいるエリアが違うから多少の差あるかもしれない。

 うん、エリアが違うならね。

 すっかり忘れていたけれど、こっそり各班の所在エリアを確認するとして、クロエ班はの~りんが、ゆりこさんやパパしゃんと同じくエリア全体に違和感を覚えている。

 それは今も変わらない?


『変わらないっていうか……たぶん、変わらない。

 その、どこがとか具体的な説明は出来ないんだけど、雰囲気が変わったというか……』


 一般エリアはすでに夜時間を迎えているけれど、イベントエリアはどうやら昼時間が続くらしい。

 昼と言っても太陽がギラギラというわけではなく、ちょっと薄曇りの梅雨空。

 いかにも紫陽花の季節といった空模様で、相も変わらず空が暗くなってきたと思ったら雨が降り出す。

 それも普通の雨ならともかく、【酸性雨(アシッドレイン)】 とかやめてよ。

 お気に入りの装備(ふく)が溶け……


 あっ!!


『なに?』


 突っ込み一番はもちろんカニやん。

 うん、まぁそれはいいんだけど、ちょっと閃いたというか、気がついたというか。

 もちろんまだ確証はなにもない。

 それを確かめようと思ってわたしもエリアを見渡してみる。

 視覚に制限が掛かっているのは全プレイヤー同じ。

 だからゆりこさんやパパしゃん、の~りんが気づいたのならわたしにもわかるかと思ったんだけど……少なくともゆりこさんやパパしゃんとは同じ風景を見ているはずだもの。


 わかりません


 うん、全然わかりません。

 悲しいくらいわかりませんでした。


『いや、なに閃いたん?

 そこんとこだけ参考に喋ってくれる?』


 あ、そこね。

 えっとですね、ひょっとしてだけど 【酸性雨(アシッドレイン)】 で紫陽花が枯れてきたんじゃないかと思ったの。

 でも見た感じそういうことはないみたい。


『それ、あるかも』


 インカムの向こうからクロエが、クロエ班のメンバーと相談するような感じに会話に参加してくる。

 最初に気がついたのはベリンダ。

 何気なく見た紫陽花の壁の一部が、花だけでなく葉も枯れているのに気がついたという。

 でもそれは一つの株でほんの一部だけ。

 株ごと枯れているわけではないらしい。

 その話を元に他の班も周囲の紫陽花を見ると、同じように一部だけが枯れている株が点在しているのがわかった。

 えーっと、これはひょっとして本当に 【酸性雨(アシッドレイン)】 の影響?


「どうかしら?」

『どうだろう?』


 頬に手を当てて首を傾げるようなゆりこさんの声と、インカムの向こうから聞こえてくる恭平さんの声が被る。

 そうね、まだ決めつけるのは早いか。

 もし本当に 【酸性雨(アシッドレイン)】 の影響で紫陽花が枯れているとしても、それがイベントに関係するかはわからない。

 だってほら、ここの運営は演出が過剰だから。

 ただ酸に当たって溶けているだけとか、そういう演出の可能性だってある。


『あー……なるほど』

『可能性はまだ五分だね』


 じゃあ探索続行……というか、運がいいのか悪いのか。

 紫陽花の迷路内を、巨大カタツムリを探して歩いていたわたしたちの前に、その巨大カタツムリが出現(ポップアップ)する。

 しかも結構近い距離にね。


 先手必勝!


「起動……」


 NPC相手に情けも容赦も必要なし。

 そもそもAIが、容赦はともかく、情けなんて理解するわけないし……と思ったら、カニやんに 『情けは人のためちゃうし』 と突っ込まれる。

 ええ、知ってますとも。

 巡り巡って自分を助けるんでしょ?

 でもそれ、数値(データ)だけが全ての仮想現実(この世界)でも通用すると思う?


『さぁな』


 インカムの向こうからカニやんの声だけが聞こえてくる。

 でも見えないその顔が、いつものようににひっと笑ったような気がする。


 仮想現実(ゲームの世界)


 そう、ここでは数値(データ)だけが全て。

 数値(データ)化出来ない情けなんて通用しません。

 あるのは絶対的数値で演算される火力のみ。

 特に攻撃型魔法使い(わたしたち)はね。


 しかも相手は 【幻獣】 だもの。

 出現距離が近すぎてアラートの表示が間に合っていない。

 まずは仕掛けて足を止めなければ踏まれるか、あるいは唾を吐かれてネバネバ攻撃に遭うか。

 可能性の議論はちょっと横に置いて、まずはこいつを落とします。


alert 梅雨空のカタツムリ / 種族・幻獣


焔獄(えんごく)


 でもこの議論、実は意味があったのよね。

 というか原因こそはっきりしないけれど、本当に枯れ初めていたのよ、紫陽花の壁が……。

 しかもその枯れた部分が広がり、株そのものが枯れてしまうと壁の意味を為さなくなる。

 でもそれって……


 迷路が崩壊するっ?!

蜂の巣を出て迷路に場所を移したため、サブタイトルからブンブンを取ってみました。

ちょっとすっきりしました。

でもすぐに復活しますけどね。

次話からイベント後半の日程に入り、後書きに休閑小話を置こうかと思ったのですが、一話伸びました。

休閑小話も次話の予定です(あくまでも予定ですが・汗



アールグレイ班

 アールグレイ / ソーサラー

 クロウ   / 剣士

 ゆりこ   / ヒーラー

 パパしゃん / 盾剣士

 トール   / 剣士


カニやん班

 カニやん / ソーサラー

 しば漬け / 剣士

 ミンムー / 剣士

 ぽぽ   / 銃士

 キンキー / ヒーラー

 タマ   / 妖獣


クロエ班

 クロエ  / 銃士

 の~りん / ソーサラー

 ベリンダ / 短剣使い

 マコト  / 剣士

 ジャック / 剣士


恭平班

 恭平   / 剣士

 くるくる / 銃士

 ジャック・バウアー / 剣士

 アキヒト / ソーサラー

 サミー  / ソーサラー

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― 新着の感想 ―
[一言] 迷路の壁が枯れていって、通路に新しい紫陽花が生えてきたりして しかも、はじめは生えたてだから、壁が低くて、気付かずに跨いじゃってプレイヤーが、あちこちでぴょ~ん(//∇//)タノシイ
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