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708/806

708 ギルドマスターはデンデンとブンブンの目を覗きこみます

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告&いいね、ありがとうございます!!

「グレイちゃん、あの二人を借りていいかしら?

 クロウはグレイちゃんと組んで」


 なにかいい作戦でも思いついたのか、そんなことを言い出す真田さん。

 もちろんあの二人とは美沙さんとマコト君のこと。

 そしてクロウをわたしと組ませる。

 しかも真田さんの言わんとしていることが分かったらしいクロウは、素直に 「わかった」 とか答えちゃうし。


 わたしにも教えてよ!!


「簡単なことよぉ~、そんなに怒らないで頂戴。

 可愛い顔が台無しよ」


 そんな言葉には騙されません。

 久しぶりに言うけれど、この程度の顔なら世に五万といるんだから。

 そんな言葉でわたしが有頂天になると思わないでね。


「相変わらずガードが堅いな。

 まぁいい。

 話は簡単。

 たぶんプレイヤーの攻撃が続くと、女王蜂の攻撃パターンが変わる」


 つまり今の結構な速さ(蝶のように舞)での移動(っているの)が、変わった攻撃パターン?


「そう。

 今回のイベントは時間制限があるから時間稼ぎの可能性もあるけど、正直、そこはどうでもいい」


 うん、そうね。

 真面目に話している振りをしても、やっぱり真田さんも 【特許庁】 だから。

 さりげなく本音がダダに漏れ漏れしてます。

 そもそも隠す気なんてまるでない人たちだし。


「しばらく防戦で、またパターンが変わるのを待つ。

 あの状態で下手に攻め込んでも消耗戦だからな」


 もちろん新たな攻撃パターンがあるかもしれない。

 そうなったらなったで、それを見てから考えるということらしい。


 まぁね、実際にパターンが変化してみないことにはあれこれ考えても仕方がない。

 でも今闇雲に攻め込んでも、あの速さについていけなければ消耗戦どころではない。

 全滅まっしぐらよ。

 それはわかっているから、残り時間が許す限りはこちらが攻めやすいパターンに変わるのを待つ……というのが真田さんの作戦らしい。

 本当に凄くまともでちょっとビックリするわ。

 もちろん……


「他に作戦があれば早めに提案して。

 ちなみに俺、【ファイアーボール】 は持ってるけど、MPポーションは向こう(・・・)しか持たせてない」


 ん? 向こう?

 向こうとはどちらのことでしょうか?


「あー……っと、こっちの話」


 なぜか急に慌てる男前はチラリとクロウを見る。

 ま、反応はないけど。

 いつものようにポーカーフェイスを決め込んでおりますよ、うちの上司様は。

 とりあえず、真田さんはMPポーションを持っていない。

 だからギリギリまで 【ファイアーボール】 は撃てるけれど、MP残量は自然回復待ち。

 しかも剣士(アタッカー)だから、MPの自然回復速度を早める常時発動(パッシブ)スキルを持っているわけでもない……ということね。


 了解しました


 まぁ真田さんなら、いざとなれば剣を格納して素手で働き蜂を一匹一匹叩き潰しそうだけどね。

 もちろんそれでもいいわよ。

 いずれにしたって貴重な火力だからまだ楽にはさせてあげないもの。

 だから美沙さんとマコト君は、頑張って真田さんに恩を売って頂戴。


「え? 恩って、それは……」


 マコト君は真田さんのすぐ脇に立って、迫り来る働き蜂の群れを装備した盾で払った……と思ったところに、反対側に立つ美沙さんが 【ファイアーボール】 で焼き払い、すかさず 「はーい!」 と元気に返事をする。

 さすが怖いものなしのJKね。

 それを見た真田さんもさすがに苦笑い。


「これは高くつきそうね」

「そりゃもう高いっすよー!

 スパーク」


 調子に乗った振りをする美沙さんだけど、乗り切れず照れ笑いを浮かべるのが可愛い。

 ごめんねトール君、見せてあげられなくて。

 ちょっとわたしも忙しくて、SSを撮る余裕もありませんでした。


「じゃあ代わりに俺でも撮っとく?」


 需要がありません。


「ちょっとひどーい!

 この男前を捕まえて……ファイアーボール!」


 なにか言い掛けた真田さんは、連続して襲い来る働き蜂の群れに堪えきれず 【ファイアーボール】 を発動。

 直後、少し苛立たしげに 「こいつは……」 と呟くと、本当に剣を格納して素手で叩き潰し始めた。

 もちろんこれはSTRとVITのある剣士(アタッカー)だからこそ出来る荒技。

 魔法使い(わたしたち)がやるには、働き蜂のVITやHPは低そうだけれど、こちらもSTRやVITが低いからね。

 数の優位をとられている以上、それ以外の優位がなければ対等で遣り合うことは難しい。

 ましてや持久戦となると、無限湧きが相手では勝ち目がない。

 勝ち目がないんだけど……


 ちょっと美沙さん!


 働き蜂の群れも、ただ女王蜂の移動を助けるだけでなく毒針で刺してくる。

 被毒状態に陥って尚、その高いHPとVITである程度()たせられる真田さんを見てなにを思ったのか。

 なにというか、自分も出来るんじゃないかと思ったのね、きっと。

 美沙さんまでが、アキヒトさんと同じスティック状の杖を腰に差して両手を空けると、真田さんを真似て働き蜂を叩き潰し始めた。


「え? ちょ、まっっ?!

 なにこれ、早っ!」


 無理に決まってるでしょ?

 職種(クラス)が違うからステータスポイントの振り方も違うのは大前提だけど、それ以前にレベルが段違いなのよ。

 文字通りレベチよ、レベチ。

 HPやSTR、VIT以外にAGIも全然違うから。

 ここが仮想現実(ゲームの世界)である以上、若さだけでどうにかなるものではありません。

 決して年増の僻みじゃないからね。

 違うからね!


 数値(データ)が全て!!


 まぁそれを若さで押し切ろうとした美沙さんは……本人にその気はなかったかもしれないけれど、全身を刺されまくり青あざのようなものを作っている。

 もう、解毒解毒! ……と思ったらまだまだ余裕があるのか、美沙さんが面白いことを言い出す。


「これって、一杯刺されたら毒レベルアップとかないですよねっ?」


 ありません


 あくまで働き蜂の毒は 【通常】 で、女王蜂の毒は 【中級】 です。

 これも数値(データ)の世界だから。

 毒レベルがアップすることはないけれど、刺された数だけダメージを受けます。

 これも数値(デ-タ)の世界だから。

 しかも被毒状態は継続ダメージだから、刺された数だけダメージも計上されます。

 その結果として 【中級】 の被毒状態以上の速さでHPが減少することもあります。


「それは早く言ってぇー!」


 まだ誰も教えてなかったのね。

 それは知らなかったわ、ごめんなさい。


「でもでもポーション一本で解毒出来ますかっ?」

「出来ます」


 わたしの返事半ばでポーションを取り出した美沙さんは、早速解毒。

 一瞬にして全身の……といっても、もちろん見えている部分だけよ。

 ただ美沙さんの装備は露出が高いから。

 足とか腕とか剥き出しよ。

 わたしなんて、あのショーパンを穿けと言われるだけで卒倒しそうだもの。


 若さが羨ましい


 【通常】 のポーションを使って解毒すると、一瞬にして見えている部分の青あざが全て消える。

 それこそ刺された数だけ解毒にポーションを必要としたら、今回のイベントなんて一体何本必要になるか。

 調合士はウハウハだけど、プレイヤーは泣きっ面に蜂よ。


 マジで


 折角だから解毒ルールを説明しておくと……これは 【中級】 の解毒ポーションの解説にも書いてあることだけど、【中級】 の解毒ポーションは 【通常】 の毒も解毒します。

 だから 【中級】 の毒と 【通常】 の毒に冒された状態で 【中級】 の解毒ポーションを使えば、一本で両方とも解毒出来るけれど、やっぱりダメージはそれぞれから受けるので注意が必要。


 逆に 【通常】 の解毒ポーションでは、両方の毒は解毒出来ません。

 解毒出来るのはあくまで 【通常】 の毒だけ。

 なので 【中級】 の毒によるダメージは継続します……というわたしの説明に、美沙さんは 「Oh、Noー!」 とか絶望的な声を上げていたけれど、こればっかりは気合いとか若さではどうにも出来ません。

 どこまで行ってもここは仮想現実(ゲームの世界)数値(データ)が全てなのよ。

 HPやVITの高さは、あくまでも持久力というか、耐久力というか。

 もちろんダメージの継続時間を持ちこたえられたら別だけど。


「さすがにこの数のダメージは無理よぉ~」


 ポーションを節約するため、HP残量ギリギリまで堪えて一気に解毒。

 HPの回復をする真田さんも苦笑い。

 つまり、いつものように表情を変えないクロウだけど、無理ということね。


「その強がりがどこまで()つか、見てみたい気もするけどぉ~」


 なんてにっこりと笑う余裕があるのはさすがです。

 どうしてこの人……に限らずだけど、上位剣士(アタッカー)たちは、こうもクロウに敵対心のようなものを燃やすのかしら?

 しかも対戦とかしてないのに。

 今のなんて我慢比べというか、強がりがどこまで保つかなんて……。


 はぁ~


 ちょっとクロウも大変ね。

 そんなことを思っていたら、視界を塞ぐように働き蜂の群れが眼前を通過する。

 まずは右から来る群れを一歩下がってかわし、少し遅れて左から来る群れを、やっぱり一歩下がって躱す。

 わたしだって一応火力はあるし、MPポーションも多めに準備して備えている。

 でもアラサー予備軍でもこの程度には体を動かせます……と頑張ってみた。

 群れが接近してくるタイミングに合わせてね。

 言っておきますけど、別に美沙さんと張り合ったわけじゃないから。

 若さで張り合ったわけじゃないから!


 違うからね!!


 左から来た群れがぶ~~~~~~んと、眼前を右に通過してゆくのを見送りながら、上手くかわせたと思って心の中でガッツポーズをしようとしたその時、ひらけた視界の向こう側に女王蜂の大きな目が迫る。


 近い!!


 ちょっと待って!

 この女王蜂、距離感を掴むのが下手なのっ?!

 なによ、この近さはっ?

 ここが現実世界(リアル)なら、息が掛かるほどの超至近距離。

 一見大きいだけの黒い目は間近で見ると幾つもの小さな目の複合体で、その一つ一つにわたしの姿を小さく映し出す。

 わたしは喉から出掛かる悲鳴を押し(とど)め、女王蜂の目に映る自分に向かって言い放つ。


「スパーク!」


 もちろん女王蜂が 【幻獣】 だということはわかっている。

 当然吹っ飛ぶのはわたしです。

 むしろ吹っ飛ばしてもらうための 【スパーク】 です。

 そもそもこの女王蜂は魔法攻撃反射のため、わたしの攻撃は通じない。

 せいぜいクロウたちが動くための空間を確保することがお仕事なので、邪魔者はさっさと退場というか、後退します。

 そのための 【スパーク】 です。


 可能であるならばこの場所を空けて、クロウか真田さんに突っ込んでもらいたいところ。

 あ、でも真田さんは手ぶらだっけ?


 無理ね


 じゃあクロウ、お願い……するまでもなく、寸前までわたしの隣にいたクロウは抜き身の屍鬼を手に、女王蜂との間合いを一瞬で詰める。

 次に働き蜂の群れが女王蜂とプレイヤーとのあいだを飛来すれば、また女王蜂は移動してしまう。

 これは一瞬のチャンス。

 そしてお仕事の出来る上司様がそんなチャンスを逃すわけがない。

 でも残念ながらそんな上司様の格好いいお姿を、わたしは床を転がりながら見逃しました。


 悔しすぎる……

前話の後書きで書きました異変についてはもう少し先で。

とりあえず、やっと一勝・・・したかもしれませんw



アールグレイ班

 アールグレイ / 魔法使い

 クロウ / 剣士

 マコト / 剣士

 サミー / 魔法使い

 真田  / 剣士


カニやん班

 カニやん / 魔法使い

 しば漬け / 剣士

 ミンムー / 剣士

 ぽぽ   / 銃士

 キンキー / 魔法使い

 タマ   / 妖獣


クロエ班

 クロエ  / 銃士

 の~りん / 魔法使い

 ジャック・バウアー / 剣士

 ジャック / 剣士


恭平班

 恭平   / 剣士

 くるくる / 銃士

 ベリンダ / 短剣使い

 トール  / 剣士

 アキヒト / 魔法使い

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― 新着の感想 ―
[一言] スパーク で、後退するのは同じでも、転がるのが魔法使いで、立ったまま、体が後ろに下がるのが剣士 起き上がる早さは本人の素の体幹と、運動神経 魔法使いでも、素で運動神経が避けれ…
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