703 ギルドマスターはデンデンと激ヤバな友情を結びます
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イベント初日である昨日は、午後から参戦していたゆりこさんとパパしゃん。
二日目である今日も、ゆりこさんは午前中のうちに家事を済ませてしまいたいからと午後から参戦。
パパしゃんは、やはり午前中のうちに家事を、午後からは奥様と買い物に出掛けるらしく、今日はいつもどおり夜からの参戦予定となっている。
だったら班分けは、昨日の午前中と同じでいいかしら?
『わたし、マコちゃんとギルマス班ー?』
「ええ」
美沙さんとマコト君は他の学生組と一緒に、装備の耐久修理のためりりか様のお店にいるらしい。
昨日……正確には今朝方まで遊んでいたから、最後は眠くて修理もせずにログアウトしたから。
インカムの向こうからは、りりか様を含めてワイワイしている学生組の声が聞こえてくる。
わたしとクロウはカニやんたちと 【ナゴヤドーム】 の外にいるから、出入り口付近集合でいい?
修理が終わったらマコト君と一緒に来て。
『わかりました』
『おっけーでーす』
インカムの中で各班、合流場所を相談。
わたしとクロウはハルさんからポーションを購入したり、他の班の合流状況などを確認しつつ二人を待つ。
ところか近くで遊んでいた……ではなくて、Gを退治していたわけでもなくて、えっと、カタツムリを探していたルゥが、不意に顔を上げて 「ぎゅ?」 と嫌そうな鳴き声を上げる。
またタマちゃんに競り負けたのかと思ったら……うん、まぁ競り負けたというか、競り負けっ放しは負けっぱなしなんだけど……
「はぁ~い、グレイちゃん」
ついさっきお別れしたばかりの真田さんが単身で登場です。
他のメンバーはといえば……ノーキーさんはあの時点でもう寝落ちしていたけれど、不破さんとバロームさんは、真田さんに言われるままあのあと本当にログアウト。
だからといって寝てるかどうかはわからないけれど。
一緒に潜る予定だったちゅるんさんはどうしたのかといえば……
「他のメンバーがログインしちゃって、俺だけあぶれたの。
だから入ーれーて」
両手を合わせて可愛らしくお願いされても、そのガチムチは全然可愛くありません。
いい歳したおっさんは可愛くありません!
「それ筋肉差別?」
「年齢差別?」
「おっさんが可愛くてなにが悪い?」
「可愛さに寿命はねぇ!」
………………
えーっと、近くに二人がいることを忘れていたわけじゃない。
二人というのはもちろん柴さんとムーさんのことよ。
【ナゴヤドーム】 の出入り口を少し離れたところで、わたしたちと一緒に茂る草を掻き分けてカタツムリを探しながら、わたしと真田さんの話を聞いてそんなことを言い出した。
類は友を呼ぶというか、筋肉は筋肉を呼ぶ……みたいな?
「呼ばねぇよ」
わたしと同じ魔法使いのカニやんが、真田さんに肩入れする二人にヤキモチを焼いてわたしに肩入れしてくる。
いや、肩入れとはちょっと違うか。
だって否定されたもの。
むしろ柴さんたちの味方よね。
「しねぇよ、脳筋の味方なんて。
真田さん入るのはいいけど、四人班はグレイさんのところとクロエのとこしかないけど?」
『僕は嫌だよ』
はい、速攻で断ってきました。
さすが我が儘な腹黒美少年だわ。
クロエの冠詞が幾つか抜けた気がするけれど、今はクロエではなく真田さんのことだから。
もちろんクロエの返事はギルドチャットだから真田さんには聞こえていない。
けれどカニやんやわたしの反応を見て、クロエがなにか言ったことは……もっと具体的に、断ってきたということを察したらしい真田さん。
真田さんとクロエも付き合いは長いからね、クロエの自分に正直な我が儘はよくご存じだから。
「じゃあグレイちゃんの班ね、よろしくぅ~」
うん、まぁいいけどね。
マコト君と美沙さんには悪いけど、仲良くしてあげてね。
『はぁ~い』
『怒られないように頑張ります』
美沙さんは通常運転。
ある意味、マコト君も通常運転です。
一方の真田さんは、マコト君は以前からの顔見知り。
まぁ個人的に話したことは一度もなく、以前 【特許庁】 パーティと組んだ時のくるくるみたいにひどく恐縮していた。
ノギさんやノーキーさんとは違い、強いけど怖い人ではないんだけどね。
もう一人の美沙さんとは……
「噂のJKでしょ、静流から聞いてるわ。
まんまとしてやられたって、あの静流が苦笑いしてたもの」
マコト君と一緒に合流した美沙さん。
その顔を見て真田さんは 「この子がそうなのね」 と笑う。
他の学生組と一緒にやってきたトール君がノギさんのことを説明してあげると、美沙さんは 「あの人の友だち?」 と驚いた表情を見せる。
「だったらこの人も激ヤバ? ……には見えないけど」
激ヤバってほどではないけれど、ほどほどヤバイ人であることは間違いないので本人を前に 「激ヤバ」 発言は否定しないけれど、指は指しちゃ駄目よ。
はいはい、手は下ろしてね。
「ほどほどヤバイ人って、ちょっとグレイちゃん?」
真田さんはちょっと苦笑いをしていたけれど、実際イベントエリアに入ったら、真田さんは 【特許庁】 の本領を存分に発揮してくれる。
あ、真田さんが参加する時点でルゥはお休みです。
だってほら、近づいただけで機嫌が悪くなったじゃない。
とてもじゃないけれど、一緒に行動は出来ないというか、しないほうがよさそうだから。
ルゥにはちょっと嫌がられつつも、パーティを組む前に格納しました。
その直後、真田さんがホッとした顔をしたのも確認済みです。
たぶんご本人無自覚だと思うから、なにかあった時はルゥを呼び出してバックリしてもらおうと思います。
肝心のイベントエリア内は、時間的にもプレイヤーのログイン人口が増える頃。
カニやんの予想通り 【鷹の目】 はなりを潜め、それらしいアバターは見当たらない……と思う。
これもカニやんが言っていたけれど、【鷹の目】 は複垢が多すぎて正確なユーザー数もわからないし、ギルドに所属していないアバターも所持しているらしい。
おかげでいろんな意味で正体が不明。
個人でそういう遊び方をしているユーザーもいるし、それはわたしも知っているけれど 【鷹の目】 はギルド単位だから、ちょっと違和感というか、異質な感じがする。
だから実際のところはわからないけれど、少なくとも紫陽花の壁越しの狙撃は減った。
身内同士のおふざけや射撃能力を誇示したい銃士もいるから全くないというわけではないけれど、迷路内にいるパーティの数も多いし、巨大カタツムリに遭遇するたびに邪魔が入るということはなかった。
その中を快進撃する真田さん。
それについていく美沙さんと、その美沙さんをフォローするために慌てて追いかけていくマコト君。
さらにそのあとをわたしとクロウがついていくというか、眺めているというか。
することがない
ま、まぁね、真田さんもランカーだから。
それこそ同じギルドのノーキーさんとかお友だちのノギさんとか、同じランカークラスのプレイヤーでもなければ快進撃を止めることは難しい。
巨大カタツムリの殻は転送出口として固定されていて、そこからプレイヤーが出てくることはすでに情報が知れ渡っている。
その転送直後を狙って待ち伏せているプレイヤーもいるけれど、真田さんはお構いなしに突っ込んでいく。
パーティの最大人数は五人と決まっているから多勢に無勢となることはないし、こういうことを考えるパーティに銃士はいない。
逆の立場ならともかく、攻撃対象との距離を必要とする銃士に、この状況での待ち伏せ作戦では仕事がないからね。
けれど中距離から狙ってくる魔法使いが相手の時は、さすがの真田さんも分が悪い。
そんな真田さんを追いかける美沙さんが、最初の一撃を食らって動けなくなっている真田さんを盾にするように、少し位置をずらして後方から相手の魔法使いを 【スパーク】 で吹っ飛ばす。
もちろんすぐに相手の剣士が美沙さんを狙おうとするけれど、そこはマコト君が上手くカバー。
刃を刃で受け止めたところで、VITの高さで魔法スキルの効果時間を短縮した真田さんが解放される。
幸いにして相手パーティの魔法使いは美沙さんが吹っ飛ばした一人だけだったみたい。
残る四人の装備を見て判断した……というわけではなさそうだけど、美沙さんはマコト君に言われるまでもなく自己判断ですかさず後退。
自由を取り戻した真田さんは、マコト君と剣を斬り結んだ状態で力比べをしている剣士を蹴り飛ばしたと思ったら、残る三人に斬り掛かる。
もちろんマコト君は、真田さんに蹴られて尻餅をつく剣士にとどめを刺すのを忘れない。
真田さんはあっというまに三人の剣士を、首の切断でそれぞれ一撃で落とすけれど、その三人よりさらにうしろに控える魔法使い。
当然 【スパーク】 で吹っ飛ばされた状態からすでに復帰。
斬り掛かろうと迫る真田さんに、明らかにその気迫に飲まれつつも 【スパーク】 で応戦してくる。
想定内
だってほら、の~りんが言っていたじゃない。
美沙さんとキンキーが 【スパーク】 を取得しようとしたら、他にも同じことを考えているプレイヤーが多くいたって。
だから今回のイベントでは、ほとんどの魔法使いが 【スパーク】 を所持しているとわたしたちは考えている。
もちろんレベルの都合でまだ取得出来ないプレイヤーもいるけれど、所持しているものと考えておいたほうがいい。
詠唱スキルではないから発動は突然だしね。
その情報は真田さんと共有していないけれど、そこはほら、真田さんだから。
必要なし
実際 【スパーク】 を食らっても転倒しないし。
ただ 【幻獣】 ではないからノックバックは避けられない。
でも転倒しないから反撃に転じやすく、しかもわざわざ体勢を立て直すなんて面倒なこともしない。
堪えた……と思ったら次の瞬間には、不安定な体勢のまま改めて間合いを詰めるべく魔法使いに向かって踏み込もうとする。
この無鉄砲さはやっぱり 【特許庁】 よね。
でも魔法使いだって黙って反撃を待ったりはしない。
そもそも 【スパーク】 は、相手との距離と時間を稼ぐための手段だもの。
「起動…………」
「起動……」
ほら、詠唱してきた。
でもまだ距離が近すぎる。
相手がランカーでなければもっと吹っ飛ばせていたかもしれないけれど、まだまだ剣士の間合い。
普通の剣士……それこそマコト君でも頑張れば踏み込める距離よ。
剣士は、詠唱を始めた魔法使いを前に躊躇すれば自分が落とされるもの。
だから間に合わなくても相打ち狙いで踏み込むと思う。
しかも真田さんなら一瞬で詰められる。
躊躇せず、詠唱速度にチキンレースを仕掛ける。
勝つのはどっち?
「焔獄」
もちろんわたしの詠唱はとっくに終わっているからね。
ふふふ……横殴り万歳よ!!
「ちょ……グレイちゃんっ?!」
なにかしら?
ここで【焔獄】を食らわないところはさすが真田というべきか?
このまま蜂の巣に突入・・・?
アールグレイ班
アールグレイ / 魔法使い
クロウ / 剣士
マコト / 剣士
サミー / 魔法使い
真田 / 剣士
カニやん班
カニやん / 魔法使い
しば漬け / 剣士
ミンムー / 剣士
ぽぽ / 銃士
キンキー / 魔法使い
タマ / 妖獣
クロエ班
クロエ / 銃士
の~りん / 魔法使い
ジャック・バウアー / 剣士
ジャック / 剣士
恭平班
恭平 / 剣士
くるくる / 銃士
ベリンダ / 短剣使い
トール / 剣士
アキヒト / 魔法使い