697 ギルドマスターはデンデンとブンブンを抱きしめます
PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告&いいね、ありがとうございます!!
夕方近くにはご飯の準備で、ゆりこさんとパパしゃんがログアウトする予定。
わたしたちはそれまでにもう一回挑戦してみようということになった。
『だってぽぽとかゆりこさんのもいるんじゃないの?』
その数を購入するには懐具合が心許ないというアキヒトさんの文句を無視し、そのアキヒトさんを含めた 【素敵なお茶会】 に所属する魔法使い七人の対策を練ったわたしたちは、揃ってギルドルームをあとにする。
恭平さん班は、今度こそアキヒトさんを拾いにNPC武器屋へ向かい、わたしたちはそのまま 【ナゴヤドーム】 の外へ向かう。
結論として、わたしとゆりこさんは盾を装備出来ないということがわかった。
キンキーと違い、わたしとゆりこさんは普通の杖を使っているからね。
ちなみに同じ理由でカニやんとの~りんも駄目と判明。
でもこの四人は火力もある。
まぁゆりこさんは攻撃型魔法使いではなく回復系魔法使いだけど、レベルが高いからね。
攻撃用のスキルをほとんど所持していないのと、回復係を担当すると攻撃にまで手が回らないという攻撃型魔法使いとは反対の理由があるだけで、INTは高いので 【ファイアーボール】 でも同じレベルの剣士より火力は高い。
だから女王蜂との直接対決は難しいけれど、働き蜂の群れを焼き払うくらいなら問題はない。
ゆりこさんで問題がないのなら、カニやんやの~りんなんていうまでもないわよね。
でも美沙さんとアキヒトさんは装備可能ということがわかった。
どうやら杖も長さで、剣のように片手杖や両手杖みたいな分類でもあるみたい。
表記にはなにもないけれど、先にNPC武器屋に到着したアキヒトさんが試しに装備してみたらエラーが出なかったというから間違いない。
あの二人は揃って、スティックみたいな短い杖を愛用して機動力を持っているからね。
二人とも他の装備も軽装で……といっても見た目だけの話だけどね。
それぞれの部位にステータスを付け、防御力や攻撃力を上げている。
でも見た目は見るからに軽装で、美沙さんに至ってはショーパンよ、ショーパン。
わたしには無防備な生足が眩しすぎる。
くぅ~
『どこの親父やねん』
『羨ましかったら自分も出したらえぇやんけ』
そうか、この眩しさは自分の足を出せないことが理由か。
いや、納得出来るような出来ないような……。
だってわたしのゴボウのような足なんて出しても仕方がないというか、みっともないじゃない。
盾をインベントリに入れていなかったこの二人の分も、NPC武器屋に向かった恭平さん班から送ってもらうことになっている。
一緒にキンキーと、物理攻撃反射だった場合用にぽぽの分もね。
面倒だったら誰か一人にまとめて送って、カニやん班のほうで分けてもらってもいいけど……なんて話していたら、いつものようにの~りんが弱気な泣き言を漏らす。
『えっと、さぁ……その、俺をカニやんやグレイさんと同じ火力で考えるの、やめてもらっていい?』
わたしも色々言われるけれど、の~りんも自覚がないだけで、実際は結構な重火力じゃない。
謙虚よね……と思っていたらカニやんまでが言い出した。
『俺もグレイさんとは一緒にされたくない』
『え? でもカニやんは……』
どうやらの~りんにはカニやんもわたしと同類らし……ん? ちょっと待って。
その、ね、わたしの勘違いでなければ二人とも、わたしのことというか、わたしの火力をそんなにへなちょこだと思ってるわけ?
え? そういうことっ?!
わたしの火力、へなちょこなのっ?!
『ちょっとグレイさんは黙ってなよ。
恭平さん、くるくるとキンキーにも送るの忘れないで』
『クロエは?』
『僕はいいよ』
『わかった』
どうやら恭平さんがまとめて盾を購入し、まとめてカニやん班に送るらしい。
そのカニやん以外にね。
しかもそのカニやん班からイベントエリア0に入ったという報告が上がる。
もちろんイベントエリア0に入れば必ず蜂の巣に入れるというわけではないけれど、すぐさまカニやんから 『ハル』 と声が掛かる。
恭平さん自身は班長だから、いつでもポーションを送れるとは限らない。
実際に少し前までイベントエリア0にいて隔離されていたし。
だからイベントの最中は 【中級】 の解毒ポーション管理をハルさんに一任。
イベントエリア0に入った班長がハルさんに報告することになっている。
ハルさんとカニやんの、インカム内での短いやりとりを聞きながらルゥについて 【ナゴヤドーム】 を出るわたしたち。
もちろんここでルゥを捕獲。
「きゅー! きゅー! きゅー!」
残念なワンコのくせに、格納されることに気づいて猛抗議するルゥを全力でキープしながら右手の腕輪に格納。
それからルゥが嫌がるからと、いつもは外している胸当てを装備する。
これで装備出来ない盾の代わりを……と思ったら突っ込みが入った。
『蜂の群れ、胸で受け止めんのかっ?』
『俺が突っ込みてぇ!』
『おい、ムー!』
『あ……わりぃ、旦那』
待って!!
その謝罪を受けるべきはわたしじゃないのっ?!
どうしてクロウなのっ?
『どうしてって……』
『普通にそうじゃね?』
違うでしょっ?
わたしはルゥの猛抗議に負けないくらいの勢いで抗議しようと思ったら、ここでマメに割り込まれる。
いつのまにかギルドルームからいなくなって、どこに行っていたのかと思ったら……
『グレイさーん!
いいもの見つけまーしたー』
いいもの?
どうやら無人バザーを回っていたらしい。
あるいはアイテムのトレードに出向いていたのか。
そこでなにかいいものを見つけたらしいのだけど、何かしら?
随分嬉しそうというか、楽しそうな感じがする。
『送りまーす!』
まぁそこはマメだから、マメなのよ。
それがなんなのか答えることもなくいきなり送りつけてきた。
information 豆の木 からアイテムが届きました
改めて何かしら? ……と思いながらポストを開いてみれば、これはあれよね?
事務員必須のアイテム。
その名も 【アームカバー】。
「違うわよ、グレイちゃん」
わたしから数秒遅れてゆりこさんの手元にもインフォメーションが出た……ということは、ゆりこさんにも送ってくれたのかな?
でもアームカバーではないというと、何?
「これはグローブよ。
ほら、イブニングドレスとか、袖のないドレスに合わせる袖の長い手袋」
ああ!!
あの二の腕まである手袋ね。
たぶんミニドレスについている腕装備だと思う。
去年のクリスマスイベントで、かなりの数が出回っていたあれじゃないかしら?
数があるから高くは売れないだろうし、セットのままでは引き取り手がないからバラしたのかな。
たぶん今もミニドレスを着ているのは、ギルド 【グリーン・ガーデン】 のアンジェリカさんとフレデリカさんぐらいだと思うし。
まぁあの二人はイベント前から着てたけど。
パ○ツ全開にしてたけど……
「ところでマメ、これがどうかしたの?」
『グレイさんとゆりこさん、盾装備出来ないかーらー代わりー』
『マメ、俺はっ?』
『お前なんか知るかー!!』
わかっていて尋ねるカニやんも、どんだけマメに絡みたいのよ。
脳筋コンビという立派な筋肉がありながら、欲張りなんだから。
それこそ恭平さんみたいに三角錐の立体関係になりたいのかしら?
もちろん止めないけど。
『マメが嫌でーす!』
『俺も嫌や』
二人とも照れちゃって。
でもマメには感謝して、折角だからグローブは借りるわね。
お礼を言ったわたしとゆりこさんは、早速袖をまくって……ちょっとクロウ、なにしてるの?
インベントリから取り出したグローブを手に、まずは左袖をまくろうとしたら、代わりにクロウがまくってくれるんだけど。
ちなみにわたしの腕は、足と同じゴボウです。
まぁ装備にサイズはないから大丈夫だけど、隠したいから早く着けるわ。
足に比べればまだ恥ずかしさもましだけど、でもあまり晒したいものでもないし。
マメが送ってくれたグローブは、わたしには黒。
ゆりこさんは灰色。
指がないタイプで、中指にリングを引っ掛けて止めるようになっていて、手の甲にはビジューで飾りが付いていて綺麗。
これでちょっとVITが上がるのは確かに助かるわ。
『……あ、ハズレ引いた』
不意に聞こえてきたカニやんの声。
ハズレの意味を聞いてみれば、イベントエリア0で巨大カタツムリを倒したもののくぐってみれば他のイベントエリアに転送されたらしい。
やっぱりそのパターンもあったか。
それは確かにハズレね。
とりあえずこの時点で 【中級】 の解毒ポーションはハルさんに戻される。
結局この日は、わたしたちと恭平さん班だけが蜂の巣に入ることが出来た。
どちらも一回ずつ。
それもたいした収穫もなかったけど。
でも一度も入れなかったカニやん班とクロエ班に比べればいいかな?
クロエ班はイベントエリア0にすら入れなかったし。
『気持ち悪いなら見なくてもいいけど』
夜になって解散する時、ログアウト前のクロエがそんな強がりを言っていたけど。
翌朝になってログインしてからマメに訊いてみたところ、公式サイトの掲示板に新たな書き込みはなかったらしい。
もちろん他にも蜂の巣に入ったパーティはあったし、書き込み自体はあった。
でもすでに知っている以外の情報は無かった。
「ほぼ即死案件だらけやな」
「みんな特攻好きやなぁ~」
「剣士、いっつも特攻してるやんけ」
「黙れ、非力」
「うるさい変態やな」
「玉砕は男のマロンや」
「このメロンがわからんとは」
いつもの三人は朝から賑やかですこと。
とりあえずメロンは美味しそうね。
マロンはまだ季節が早いけど。
日曜日の朝は、【特許庁】 ほどではないけれどメンバーの集まりが遅い。
今日は特に遅くて、いつもの時間にログインしてみればギルドルームにはこの三人……じゃなくて四人だけ。
もちろん四人目はクロウよ。
三人と同じように、ウィンドウを開いて公式サイトの掲示板を見ている。
その足下を、フンフンフンフン……と、いつものように匂いを嗅ぎながらギルドルーム探索をしていたルゥが通りかかる。
「……チビ助、噛むな」
不意にそんなことを言うから、ついうっかりそのいい声に聞き惚れてしまって反応が遅れました。
ついうっかりね、朝から幸せ……とかうっとりしてしまって。
ヤバイ!
慌ててテーブルの下を覗きこんでみたら、ルゥがクロウの足を、ズボンの上から噛んでいたっていうね。
どうやらフンフン探索しているうちにクロウの足に行き当たったらしい。
どういうコースで辿り着いたのかわからないけれど。
いや、ちょっとわかるかも。
ほら、ルゥってちょっと方向音痴っぽいというか、迷子になりやすいところがあるから。
ギルドルーム内で迷子はないけれど、どこをどうしてそこに行き着いたのかわからなくてもおかしくはない。
ルゥだから
タマちゃんはいつものようにテーブルの上で悠然と寝そべり、その艶々の背をカニやんの大きな手で撫でられて満足そうにしている。
イケメンって、顔だけでなく指も長くて綺麗なのね。
「そりゃどうも。
ここでたむろっていても仕方ないし、丁度五人いるから潜ってみる?」
「お、いいね」
「行くベ、行くベ」
カニやんのお誘いに、当然乗る二人。
それこそまだ行くとも決まっていないのにもう立ち上がっているし。
さすが脳筋だわ、考えるより早く体が動く。
続いてカニやんが立ち上がろうとすると、顔を上げたタマちゃんが 「にゃ~ん」 と可愛らしい鳴き声を上げる。
「タマ、来い」
そう声を掛けてカニやんが腕を伸ばすと、起き上がったタマちゃんが、一本橋を渡るようにカニやんの腕をよじ登って肩に鎮座する。
まぁここで断る理由もないか……と立ち上がってみると、すでにギルドルームの扉の前にルゥがスタンバイ。
扉を開けてくれと催促するように、カリカリと爪で引っ掻いていた。
サブタイトル→ 実際に女王蜂を抱きしめたら、またお腹ぶっすりですよねw
今話から本格的な攻略に入るつもりだったのですが、どう対策をしたか先に書いておいたほうがわかりやすいかと思い変更しました。
いよいよ重火力でゴリゴリ押します!!
アールグレイ班
アールグレイ / ソーサラー
クロウ / 剣士
ゆりこ / ヒーラー
パパしゃん / 盾剣士
トール / 剣士
カニやん班
カニやん / ソーサラー
しば漬け / 剣士
ミンムー / 剣士
ぽぽ / 銃士
キンキー / ヒーラー
タマ / 妖獣
クロエ班
クロエ / 銃士
の~りん / ソーサラー
ベリンダ / 短剣使い
マコト / 剣士
ジャック / 剣士
恭平班
恭平 / 剣士
くるくる / 銃士
ジャック・バウアー / 剣士
アキヒト / ソーサラー
サミー / ソーサラー