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695 ギルドマスターはデンデンと用途の可能性を探ります

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告&いいね、ありがとうございます!!

 恭平さん班がイベントエリア(ゼロ)に入ったのは、わたしたちが蜂の巣に入って間もなくのこと。

 しかもその正面に巨大カタツムリが登場!

 その様子は、蜂の巣の中に隔離されていたわたしたち以外のメンバーは知っていた。

 そして倒した巨大カタツムリの中に入ったあとから恭平さん班までインカムが途切れたため、残るカニやんとクロエは、わたしたちと恭平さん班が蜂の巣に入ったこと。

 蜂の巣に入るとインカムが遮断されることを予想したという。


『あ、やっぱ蜂の巣入ったんだ』


 それがカニやんのこの科白(セリフ)につながっていた、と……。

 なるほど。

 でもアキヒトさんが即行で落ちてしまい、回収のために恭平さん班は蜂の巣からダイレクトに中途離脱(リタイア)

 美沙さんを連れている恭平さん班は、全員が揃っていればともかく、美沙さん以外の誰か一人でも欠けると火力的な問題が出てしまうから。

 それに恭平さんも自分たちのインカムが通じなくなった時点で、わたしたちの声が途切れた理由に気づいた。

 つまりわたしたちも蜂の巣に入っていると考え、攻略を任せて離脱を選んだらしい。

 まだ初日だから蜂の巣攻略を急ぐ必要もないし、中途離脱(リタイア)の判断は各班班長に一任しているから、同じ班のJBやくるくるが反対しなかったのなら別にかまわない。


 それにしても 『早い者勝ち!』 とか言っていきなり仕掛けたらしいアキヒトさん。

 ちょっとキャラが違うんじゃない?

 いつもならお仕事なんてせず、安全圏(うしろ)で傍観決め込んでるくせに。

 なにを思って張り切って先陣を切ったのかは不明ですが、その本人は今も走ってます。


『だっていきなり場所変えるからー』


 不測の事態はいつどこで起こるかわからないから 「不測」 なの。

 諦めて走って頂戴。

 不測と言えば、珍しく頑張ろうとしたら女王蜂が魔法攻撃反射だったなんて、日頃の行いの悪さじゃない?


『そこは不測じゃないのっ?』

「ちげーよ。

 お前は日頃の行い」


 わたしがなにか言う先に恭平さんにぴしゃりと言われ、再び 『ひどい!』 と喚くアキヒトさんだったけど、やっぱりクロエに 『撃たれたい?』 と言われて黙った。

 今回のイベントは、いつどこから銃士(ガンナー)に撃たれるかわからないからね。

 そういう仕様だからね。


 銃士(ガンナー)最強!


 …………というかクロエ最凶かな。

 もちろん大きな声では言えないけどね。

 だってそんなことをしたら次こそ本当にうしろから撃たれそうだし。

 そういえばくるくるはどんな感じだった?


「どんな……とは?」


 わたしの質問が抽象的すぎてくるくるは戸惑う。

 ほら、わたしたちの班には銃士(ガンナー)がいないから。


「女王蜂が物理有効だったので狙撃出来ましたけど、働き蜂の群れが襲って来るから。

 攻撃より防戦一方ですね」


 銃士(ガンナー)も 【魔弾】 を使う都合上INTを持っている。

 極々わずかだけどね。

 だから剣士(アタッカー)より火力の強い 【ファイアーボール】 を持っている。

 でも盾はない……というか、装備出来ない。

 だって銃は両手装備だからね。

 持つことは片手でも出来るけれど撃つことは出来ない。

 剣士(アタッカー)の両手剣と違い抜け穴すらないくらい装備出来ない。

 それこそ課金装備であってもそんな抜け穴はない。


 完璧


 おまけに魔法攻撃に対し、その射程から女王蜂を守るために邪魔をしてきた働き蜂の群れ。

 あれが狙撃さえも阻むらしい。

 もちろんその際に数匹の働き蜂が落ち、代わりに周囲の巣から羽化したばかりの若い働き蜂が合流して群れを維持。

 そのまま女王蜂の周囲を飛び回る。

 働き蜂については無限湧きであることがわかっている。

 相手をしても無駄だということもわかっているけれど、向こうからかまって欲しがるというか、じゃれてくるのよね。

 迷惑すぎるほどのかまってちゃんだわ。


 ついでにあれが女王蜂を守るための盾であることもね。

 ハロウィンでのコウモリやカラスのことは、みんな散々な目に遭わされたから覚えていて、口頭での説明でもわりと簡単に伝わった。

 でもカラスやコウモリのようにただ通過してくれるだけではなく、数十匹の仲間を犠牲にして器用にかわし、即座に反撃に反転してくるという厄介さ。


『バラさないのがコツだな』

『正面で受けない……結構ムズくね?』

『俺、【ファイアーボール】 まだ持ってたっけ?』

『カニの運動神経じゃムズいんじゃね?』

『お前にゃ出来ねんじゃね?』

『うるせぇよ!』


 大丈夫よ、【ファイアーボール】 は消せない初期スキルの一つだから。

 スキルがあってもMPポーションを持っていないと致命的だけど。

 というわけで、ハルさんにはMPポーションのことも相談しておかないとね。


「MPとHPはそこそこ在庫を持ってるよ。

 素材も今のところ十分あるし」

「今日明日と今の在庫で切り回して、来週末までに解毒ポーション用の素材と、手分けして採取しよう」


 今回のイベントは週末の二日のみ、二週間に渡って行なわれ、すでに初日も半分近い時間を消化。

 参加しているプレイヤーたちも通常のイベントエリアには慣れてきて、MP及びHPポーションの販売も少し落ち着いてきているらしい。

 イベントエリアに入る前ならNPC雑貨屋でポーションを入手することも出来るし、数少ない調合士も生産数を間に合わせてきているらしい。

 それでも一度イベントエリアに入ってしまえば、NPCは個別対応しないというか、インカムで話し掛けることが出来ず、ポストに送ってもらうとなればどうしても調合士を頼らざるを得ない。

 運良くギルドメンバーが一般エリアに残っていれば、NPC雑貨屋で購入した物を送ってもらってもいいけれど、そんなにタイミングが合うこともないのがイベント期間中というものです。

 そんなわけでハルさんのお仕事はイベントが終了するまで繁盛しそうです。


 そこで恭平さんの提案。

 これについてはもちろん強制ではない。

 わたしとかクロウとか、手の空いているメンバーが主体となって採取。

 他のメンバーはレベル上げやクエスト進行などそれぞれの予定で進めてくれていいし、手が空いた時や気分転換に採取してくれると助かります。


『地下迷宮、経験値旨いから行く』

『死ぬと溶けるけどな』


 そういうリスキーなところが大好きな脳筋コンビには、是非とも東京砂漠地下に広がる巨大迷宮で毒素の採取をお願いします。

 この時点で、固定された巨大カタツムリの殻から時々働き蜂の群れが出てくること。

 そしてエリア内に散った働き蜂は単独行動をとり、ひっそりとプレイヤーに近づいてチクッと刺す。

 そして被毒状態にしてこっそりとHPを削っていた。

 まさにサイレントキラーね。

 この情報が掲示板の書き込みによって広がり、通常の解毒ポーションの需要が高まった。

 おそらく蜂の巣内で中級の解毒ポーションが必要という情報が掲示板から広がれば、また熾烈な争奪戦が始まるから二人が適任よね。

 だってそんじょそこらのプレイヤーには負けないもの。

 先の予定はともかく、まずは現状をどうするか、よね?


「それについてなんだけど、ギルド倉庫の在庫を出そうと思う」


 でもメンバー全員に一つずつ配るには数が足りない。

 基本的にポーションはメンバー全員をカバー出来る数を……というのが倉庫番である恭平さんの希望で、HPポーションとMPポーションについては大丈夫。

 通常の解毒ポーションもね。

 でもどうして素材の都合上、中級の解毒ポーションだけは常に在庫不足になっている。

 調合の成功率もあまり高くないし。

 そこで恭平さんは一つの提案をする。


「イベントエリア(ゼロ)に入ったメンバーで、中級解毒ポーションを持っていないメンバーに渡す。

 使用しなかった場合はエリアを出たら即時返却。

 使用した場合は相場で買い取り。

 その通貨でハルから新たに購入してギルド倉庫の在庫を補充する」


 そして通常にしろ中級にしろ、素材はいつもどおりハルさんが買い取る形にする。

 今回のイベントでは死亡すると強制的に地下墓地送りだから、お小遣い稼ぎが必要になるんで丁度いいかもね。

 まぁそのへんは個々の判断にお任せします。

 パーティを組める最大人数五名なら、現状のギルド倉庫の在庫でも余裕だと恭平さんが請け負ったのでこの意見を採用しましょう。


「ついでにHP、MPポーションの素材も買い取るからよろしく」


 あら、なかなかにハルさんも抜け目がない。

 ここでそんなことまで言い出すなんて。

 そこも個々の判断にお任せします。

 それじゃあ次は装備……と話を進めようとした矢先、キンキーが 『俺、抜けたほうがいいですか?』 なんてとんでもないことを言い出した。

 えーっと、ちょっと待って。

 まずはここまで来る途中のどこにそんな話があったのか、訊いてもいい?

 なかったわよね?

 どこをどう振り返ってもそんな話、微塵もなかったわよね?

 たぶん明後日の方向にも出てこないわよ。


「あら、どうして?」


 わたしがなにか言うより……いや、色々言った。

 言ったけれど肝心要の本題を切り出す前に、ゆりこさんがストレートの超剛速球を投げ込んできた。

 さすがです。

 まぁでもそれを問い質すゆりこさんの気持ちというか、立場は理解出来る。

 だって同じ回復系魔法使い(ヒーラー)だもの。

 キンキーが今回のイベントから 『抜けたほうがいい』 と思った理由次第では、ゆりこさんも抜けたほうがいいということにつながる。

 だからちゃんと訊いておきたかったんだと思う。


 ただ誤解されないように言っておくと、いつもどおり参加は自由だから。

 バトルロワイヤルだって、斬られても撃たれても溶かされても泣かないのなら参加OKが 【素敵なお茶会】 の方針です。


『でも火力ないと厳しいですよね?』


 うん、まぁそういう理由だとは思った。

 でもちゃんとキンキーの口から聞いて確かめないと、勝手に決めつけるわけにはいかないからね。

 そんなキンキーの悩みについてのお返事としては、今日はとりあえず様子見かな?

 イベントエリア内では今の火力でもやれそうだし、蜂の巣はまだ二班が一回ずつ入っただけ。

 しかも両班ともたいしたデータは得られなかったから、メンバーチェンジをしようにもどう編成すればいいのかわからない。

 それどころかメンバーチェンジが必要かどうかも判断出来ないくらいデータがない。

 つまり現状維持です。

 だからキンキーが 『火力ないと厳しい』 という理由だけでイベントを下りようとしているのなら必要ありません。

 さらにここにアキヒトさんが割り込んでくる。


『そんなキンキーに朗報があるぞ。

 なぁ美沙っち!』

「ねぇアッキー」


 美沙っち?


 いつからそんな風に呼び合うほど仲良くなったの? ……と思ったけれど、恭平さんの苛ついた様子を見て察しました。

 わたしにしては珍しいくらい敏感に察したわよ。

 つまりこうやって調子に乗って、アキヒトさんは女王蜂にぶっ放したのね。

 いや、まぁクロウも気前よく吹っ飛ばされたけど、落ちなかったし。

 アキヒトさんのなにが悪いかと言えば始末が悪い。

 ん? 自分で自分の始末を付けたから逆かしら?

 まぁ今はアキヒトさんのことなんてどうでもいいわ。


『ちょ、ギルマス!』

「それで? 美沙さん、朗報ってなに?」


 どこで道草を食っているのか?

 まだギルドルームに辿り着かないアキヒトさんの抗議は無視(スルー)し、美沙さんに先を促してみる。


「あの小さな蜂、【スパーク】 でぶっ(コロ)せまーす!」


 え? そうなの……?


 ちょっと意外すぎてわたしは気が抜けてしまったけれど、偶然テーブルを挟んで向かいにすわるゆりこさんは 「そういう手もあったわね」 と頷いている。

 そうか、落ち着いて考えてみれば、働き蜂単体ならゆりこさんでも叩きつぶせた。

 あれが集合しても烏合の衆というか、一体一体のVITの低さは変わらないわけで、ほぼほぼ攻撃力の無い 【スパーク】 でも十分対処出来る。


 わたしは全然思いつかなかったけれど、美沙さんは、今回のイベントに向けてわざわざ 【スパーク】 を取得。

 しかもイベント開始早々その 【スパーク】 でなかなかの手柄を上げていて、面白くて色々試してみたらしい。

 うん、そうやって楽しんでいた美沙さんにアキヒトさんは便乗して調子に乗ったわけね。

 そう考えたら恭平さんの苛立ちも理解出来るかも。


 自業自得


 でもここで美沙さんが、あえてキンキーに朗報と言ったということは……


『の~りんさんに誘われて俺も取得しましたけど……』


 の~りん、ナイス!!

なんだかんだ今回はの~りんもいい仕事をしてます。

ちなみにアキヒトはまだギルドルームには到着していませんが、次話でも到着しない予定ですw

(ひょっとしたらギリギリで到着出来るかもしれませんが・・・



アールグレイ班

 アールグレイ / ソーサラー

 クロウ   / 剣士

 ゆりこ   / ヒーラー

 パパしゃん / 盾剣士

 トール   / 剣士


カニやん班

 カニやん / ソーサラー

 しば漬け / 剣士

 ミンムー / 剣士

 ぽぽ   / 銃士

 キンキー / ヒーラー

 タマ   / 妖獣


クロエ班

 クロエ  / 銃士

 の~りん / ソーサラー

 ベリンダ / 短剣使い

 マコト  / 剣士

 ジャック / 剣士


恭平班

 恭平   / 剣士

 くるくる / 銃士

 ジャック・バウアー / 剣士

 アキヒト / ソーサラー

 サミー  / ソーサラー

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― 新着の感想 ―
[一言] 負担(後々のポイント不足とか)にならないなら、使える手は、増やせるときに増やす の~りん、ない~す(//∇//)
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