679 ギルドマスターはデンデンを全開にします
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濡れ衣を着せたばかりか、自爆したノーキーさんの仇討ちとばかりに美沙さんに仕掛けようとしたバロームさん。
でも美沙さんの 【スパーク】 に逆襲され、無残にもパ○ツを全開にした。
もちろんビキニアーマーのパ○ツです。
バロームさんったらちゅるんさんにそそのかされて、魔法使いなのになぜかビキニアーマー装備なのよね。
美沙さんも、レベル的に見れば 【スパーク】 の取得はまだ難しい。
だから持っているとは思っていなかったのかもしれない、バロームさんも。
おかげで見事に引っ掛かってくれたわけだけど、思ったほどは吹っ飛んでくれなかった。
パ○ツ全開
まぁそこはVITの低さに定評のある魔法使いだし、バロームさんも運動神経はあまりよくなさそうだし。
でも魔法使いにとって杖はステータスを上げるための小道具に過ぎず、なくても詠唱出来る。
人によっては威力に差が出ることもあるけれど、誤差の範囲です。
その杖を先に拾ってしまったため、美沙さんの 【ホットポット】 を食らってしまった……のは、とっさに庇ってくれた不破さんだった。
「格下にやられてんじゃねぇ、このドブス」
矜持の高い不破さんらしい言葉だと思う。
バロームさんの前に立ちはだかる形で割り込んだ不破さんは、そう呟きながら左半身あたりからHPを流出させる。
量としてはさほど多くはない。
その視覚効果を例えるなら、装備の表面を撫でる感じ。
もちろんサラッとなんていう程度ではなかったけれど、たぶん、以前にダメージを食らっていなければ、HP残量は問題の無い安全領域のはず。
だってそこは不破さんだもの。
ただでさえ戦闘三職の中で一番HPが高く、高VITの職種。
そんな剣士の中でも高レベルのランカーよ。
伊達に美沙さんを格下呼ばわりしたわけじゃないもの。
まぁそもそもの切っ掛けを作ったのはバロームさんとはいえ、そっちは不破さんが片を付けた。
じゃあわたしもお仕事するわ。
「そこまで!」
すでにバロームさんの詠唱は終わっていて、お得意技の 【ホットポット】 はいつでも発動出来る状態でスタンバイしている。
おそらくこれを放とうとすれば不破さんは飛び退くと思う。
美沙さんとバロームさんはレベチだからね。
同じ 【ホットポット】 でも全然威力が違います。
本来なら魔法使いは、さっきみたいな事態でもなければ前衛の真後ろに立つことはない。
視界を確保しなければ攻撃参加出来ないし、PKエリアでは同士討ちになってしまうこともあるからね。
だから美沙さんも 【ホットポット】 を撃つ時はマコト君の背後から出ていたけれど、今は、バロームさんの反撃を警戒したマコト君が壁になっている。
マコト君と美沙さん、そして不破さんとバロームさん。
わたしはこの二組にあいだに割って入る。
もちろんルゥも一緒にね。
だって自由にさせると絶対にどこかに行ってしまうもの。
「きゅ~♪」
状況の緊迫を全く理解しない残念なAIはご機嫌です。
そして同じく状況を理解しないというか、したくないバロームさんは臨戦態勢のまま。
詠唱を続けようと口を開いたところ、「馬鹿か」 と罵られつつ不破さんに口を押さえられる。
手が大きいからね、一掴みというか、掴み方が結構雑。
わざとそんな掴み方をしているのではないかと思うくらい、バロームさんが変顔になっている。
「グレイさんに、お前のへぼい攻撃が効くと思ってるのか?」
顔を近づけて凄む不破さんに、口を押さえられていながらもなにか言い返すバロームさんはふごふご言っている。
そしてわたしのすぐうしろではマコト君が美沙さんに囁いている。
「グレイさんには効かないから、向こうの魔法使いが仕掛けても返しちゃ駄目だよ」
「え? ギルマスって不死身とか?」
そんなわけありません。
でもわたしが言い返す前にクロエったら……
『似たようなものじゃない?』
ちょっと、嘘を教えないで!
しかもクロエの嘘を信じたのか、あるいは冗談で話に乗っているだけなのか?
美沙さんは美沙さんで 「マジっすか~」 なんて言って笑っているし。
とりあえず事態の収拾として不破さんにお詫びします。
「ヒール」
「大丈夫ですよ、ありがとうございます」
いま気がついたんだけど、背中を向けていてくれたほうがよかった。
バロームさんの口を押さえ付けるために向こうを向いてくれたのに、自分で振り向かせてしまうなんてわたしの馬鹿。
しかもさっき以上に妖しいホスト感を倍増させてくれるんだもの。
どこ? どこを見ればいいの?
その、この状況でわたしを攻撃出来るのはマコト君かクロウしかいないとはいえ、目が、その、泳ぐ……。
どこを見たらいいっ?
「なにがありがとうございますだ!
うちのギルマスに色目使うな、この露出狂!」
あぁーっ!!
待って美沙さん。
お願いだから待って。
その人は喧嘩を売っていい相手じゃないの。
見た目ホストな優男だけど、実はとんでもなく強いランカーだから。
マコト君も美沙さんを止めようとするけれど、さすがに不破さんのように口を押さえるというか鷲づかみにするなんて乱暴なことは出来なくて、目に見えてオロオロ。
こう、首筋に助けを求めるような視線を感じます。
無理です
インカムの向こうからはトール君も 『塚原、ちょっと!』 と声を荒らげるけれど、言葉で止まってくれる美沙さんじゃない。
勢いづいた女子高生は怖いのよ。
本人は怖いものなしで猪突猛進してくれるけど……いや、だから待ってってば!
「しかもあんた、さっき人のこと格下とか言ってくれたしー!」
「格下に言い返されて、ざまぁ!」
「服を着ろってのー!
そのキモいの、見せんなー!」
「キモいだってぇ、ざまぁ!」
だから待ってってば!
バロームさんまで参加してカオスというか、ますます勢いづくというか。
いや、まぁバロームさんは別にいいんだけどね。
バロームさんと不破さんが喧嘩しても、それは 【特許庁】 内の話だからわたしは関係ないし。
それどころかこの二人の罵り合い合いはいつものことのような気もする。
そんなこんなで結果として不破さんが、バロームさんと美沙さんの二人に罵倒されるという図式が出来上がったと思ったら、美沙さんがさらに相関図を複雑にしてきた。
ほんと、JKは怖い物知らずです。
そして過激でした。
「あんたも、オ○タおっぴろげてんじゃなーい!」
………………
ごめんなさい、意識が飛びました。
なにか今、パ○ツ全開より遥かに破壊力のあるNGワードが飛び出したような気がする。
わたしの聞き間違いかしら?
『パワーワードじゃねぇところがミソ』
『倒れんじゃねぇかと焦ったわ』
『さすがJK、天井知らずやなぁ』
水も滴るいい男三人組は、ようやくのことで雨雲の下を脱出したらしい。
ちょっと余裕がなくてわたしからは訊けなかったけれど、自己申告でキンキーとぽぽも無事とわかりました。
その、それはいいんだけど、わたしが意識を飛ばしているあいだにも美沙さんの過激発言は続いていて……
「汚いパ○ツを見せんな!」
とか……
「パ○ツにシミ付いてんじゃないっ?」
などと言った強烈な爆弾を炸裂させてくれる。
もちろんバロームさんも負けずに声を張り上げて言い返しているけれど、ちょーっと劣勢というか、勢いが足りないというか……うん、完全に言い負けてます。
『アンとデリカの会話を一人でやってる感じだな』
『それなー』
『ああ、【グリーン・ガーデン】 の二人か』
『そそ』
ギルド 【グリーン・ガーデン】 のアンジェリカさんとフレデリカさんね。
言われてみれば、確かにあの二人も似たようなことを言って互いに罵り合っていたというか、相手サゲをしていた気がする。
でもパ○ツ全開を越えるワードはなかったと思うわ。
『そこはJKだから』
『ヤツら、世界に怖いものなしのつもりだからな』
久々に脳筋コンビのアンチJK発言を聞いた気がする。
とりあえずインカムの向こうの会話は、実害がないから放っておくとする。
問題は美沙さんもバロームさんもわたしより背が高いから、あいだに立つわたしのことなんてまるで見えていないかのようにやり取りしていて立場がないこと。
そしてそれでもこの会話を止めなければならないということよ!
助けて!!
もちろんクロウは助けてくれません。
当然ルゥも。
チラッと見たら飼い主の苦境なんて露知らず、「きゅ~♪ きゅ~♪」 と一人でご機嫌モード全開でした。
そもそも人の言葉を話せないし、【幻獣】 に平和的解決方法なんて持ち合わせていないだろうしね。
仕方がない……と覚悟を決めたところで、一瞬早く不破さんが口を開く。
「その口を閉じろ、ドブス」
さっきからドブスドブスって、不破さんってばバロームさんにきついことを。
まぁバロームさんも、なぜか不破さんには当たりがきついけど。
……いや、バロームさんが不破さんに当たりがきついのはノーキーさん絡みか。
だってほら、不破さんはノーキーさんの幼なじみで……確か幼稚園からだっけ?
可愛い可愛い……と思われるこども時代からノーキーさんを知っていることに焼餅を焼いているのよね。
ちょっとだけ気持ちはわかるけど。
わたしも都実課長代理のこども時代とか、見てみたいもの。
今度、アルバムとか見せてくれないかな……という話は置いといて、そもそも不破さんがバロームさんを庇ったのには意味があった。
「落ちてる暇なんてあると思ってるのか?
さっさと戻らないとあのクズ、鉄砲玉と二人で潜るぞ」
えーっとつまり、どういうこと?
クズというのはもちろんノーキーさんのこと。
そして鉄砲玉というのはローズ。
一足先に一般エリアに戻ったあの二人は、落ちて転送されたわけではなく強制退場による中途離脱。
だからすぐにカタツムリ探しを始めることが出来る……というかすでに探し始めているものの、日頃の行いが悪すぎてまだ見つかっていないだけ。
でももしバロームさんが美沙さんの 【ホットポット】 で落とされていたら、【ナゴヤドーム】 地下にある教会の、さらに地下にある通称死体置き場に転送される。
当然ノーキーさんもローズも、バロームさんが戻ってくるのを待つはずがない。
それこそ今だって、見つかり次第すぐイベントエリアに入ってしまうはず。
そういう性格だからね。
「いいのか?」
ホストの妖しい笑みを浮かべながら挑発をする不破さんに、まんまと乗せられるバロームさんのお手軽さ……ではなくて、一途さ。
うん、ノーキーさんに一途よね。
だからわかりやすくて、まんまと不破さんの目論見に嵌められるというか、掌で転がされるというか。
そもそも不破さんはノーキーさんのお守りだからね。
本来ならバロームさんなんてどうでもいいのよ。
ついでに言えば美沙さんはもっとどうでもよくて眼中にすらありません。
今もあれこれ言っている美沙さんを完全に無視しています。
そのへんの徹底ぶりはさすがです。
「さっさと戻るぞ、ヘボ!」
「黙れ、ドブス。
それじゃあグレイさん、また」
はぁ~い
とりあえず美沙さんをクールダウンするためにも、不破さんとバロームにさんには早く消えてもらいたい。
ということで、わたしも大人の対応として中途離脱する二人を笑顔で見送る。
もちろん美沙さんは 「逃げるな、こらー!!」 とか叫んでいたけれど、まぁそのうちに静かになるでしょう。
これで一安心……と思った時、不意に抱えるルゥが 「きゅ?」 と声を上げて首を傾げる。
どうかした?
刹那おでこに、それも眉間に違和感を覚える。
なにかしら?
でもわたしの両手はルゥを抱えていて塞がっている……ということで、代わりにルゥが叩いてくれました。
そう、まるでおでこに止まった蚊を叩き潰すようにね。
いったぁ~い
ちょっとルゥ、なにを潰したの?
しかもよりによってわたしのおでこで叩き潰すなんて……ひどい……。
いつもと変わらない不破とバロームがこれで退場。
まだ登場していない人物もあるので、美沙の頑張りはまだ見られるかも(たぶん
次話から迷路探索に戻るのですが、またルゥが・・・といいたいところですが、ルゥは悪くありません(これもたぶん
アールグレイ班
アールグレイ / 魔法使い
クロウ / 剣士
マコト / 剣士
サミー / 魔法使い
ルゥ / 幻獣
カニやん班
カニやん / 魔法使い
しば漬け / 剣士
ミンムー / 剣士
ぽぽ / 銃士
キンキー / 魔法使い
タマ / 妖獣
クロエ班
クロエ / 銃士
の~りん / 魔法使い
ジャック・バウアー / 剣士
ジャック / 剣士
恭平班
恭平 / 剣士
くるくる / 銃士
ベリンダ / 短剣使い
トール / 剣士
アキヒト / 魔法使い