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667 ギルドマスターはデンデンの前後を改めます

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告&いいね、ありがとうございます!!

『親愛なるお兄様へ

 とっておきの情報を教えちゃいま~す。

 実はあの巨大カタツムリ、バックからは攻められないんです。

 前からですよ、前から。

 ちなみにお兄様は攻めと受け、どっちがお好きですか?

 ミッキーには内緒にしますから、こっそり教えてくれませんか~?

 あとしば漬けさんとミンムーさん、どっちが本命ですか~?』


 ……………………


 えーっと、どんなに短い文章でも休日のわたしは読みません。

 だからいつもどおりクロウに読んでもらおうとしたけれど、なぜか眉間に皺を寄せられてしまったので、代わりに美沙さんに読んでもらいました。

 しかも音読してもらったので、インカムを介してギルド全員で共有してしまった。

 いや、まぁいいんだけどね。

 なかなかに貴重な情報なのでこれは共有すべきでしょう……と思ったら 『それはどうかな?』 と恭平さんに水を差される。


 どうとは?


『個人的な意見だけど、信憑性がイマイチの相手だから』


 なるほど、そういう意味か。

 情報源であるギルド 【3年B組ドンパチ戦線】 の主催者ホリーさんは……というか、ホリーさん個人ではなく 【3年B組ドンパチ戦線(ギルド)】 そのものが信用出来ないというか、信頼度が低いというか。

 まぁそこはあれよ、自業自得。

 あんなことをしておいて、よくもまぁ平然としていられるものね……と呆れるくらいのことをしでかしてくれたからね。

 でもそうなると提供された情報の信憑性は無いにも等しい。

 恭平さんの言うとおり要検証かな。


『俺も恭平に一票』


 そういうのは、つい先程怒りに満ち満ちた声で 『あいつ、ぶっ殺す!!』 なんて物騒なことを叫んだカニやん。

 例の騒動の被害者というか、当事者というか。

 これにクロエが賛同し、要検証が確定する。

 一応うちのギルドは合議制なので。

 主催者(わたし)を無視し、副主催者四人で決められます。

 理由はわかりませんが、たいていわたしの意見は無視です。

 あ、クロウは必要な時しか意見しないから、なにも言わないというのは無言の同意です。


 そもそもホリーさんの情報なんて無視してしまってもいい。

 だってそこまで信憑性がないわけだし。

 でもあの巨大カタツムリも、意味なく迷路内を歩いているとは思えない。

 今のところアラートが出ることもなければ攻撃が通らないこともわかっているけれど、カタツムリにも何かしら意味があると考えれば色々と試してみる価値はある。

 そういう意味で、ホリーさん情報も検証してみましょうということになった。

 もちろんアラートが出なければその時点で検証終了です。

 だってそこで嘘が発覚するわけだし。

 嘘を吐いたお仕置きはカニやんにお任せします。


『おう、任せろ』

『一つ気がついたんですが、いいですか?』


 いつも穏やかなくるくるが、カニやんの返事を聞いて話が一段落ついたと思ったのか。

 話を切り出そうとした矢先、同じ恭平さん班にいるアキヒトさんがこんな言葉で遮ってくる。


『なんか空、暗くなってきてない?』


 ホリーさんへの返事もカニやんにお任せしたわたしはとっくにウィンドウを閉じており、歩きながら、アキヒトさんの言葉に釣られるように空を見上げる。

 うん、まぁ同じイベントエリアにいるとは限らない……というか、たぶん違うエリアだと思う。

 わたしが見上げた空は、晴天というには薄暗いけれど、曇りというほど暗くもない。

 せいぜい薄雲がかかっているくらいかな?

 実際季節は六月で、地域によっては梅雨入りしているところもある。

 イベント題名(タイトル)だって 【紫陽花の迷路】 だしね。

 晴天は似合いません。

 それこそしとしとと雨が降っていてもおかしくはないかもしれない。

 ただわたしたちの班がいるエリアは、まだ降るにはほど遠いくらいの空模様だけど、恭平さん班がいるエリアは降り出しそう?


『降るか、これ?』


 懐疑的な恭平さんの返事があったと思ったら、ベリンダも 『大丈夫じゃない?』 と続き、トール君やくるくるも大丈夫そうな感じだという。

 今にも降り出しそうなら傘を持っていくけれど、荷物に余裕があれば折り畳みを入れていくのもいいかもしれない。

 そのくらいの感じらしい。

 随分とわかりやすい例えをありがとう。


『アッキーは恐がりだから仕方ないっすよ』


 ここでなぜか謎のマウントを取るJB。

 そんなに恭平さん班に入れなかったことが悔しかったのかしら?

 でもいうことには一理ある。

 だって実際にアキヒトさんは怪談とかホラーとかが大の苦手だから。

 だからといって空が暗くなってきたくらいで怖がられても……。

 おかげでベリンダには 『まさかと思うけど、雷もダメとか?』 とからかわれ、喚くように 『悪いかー!!』 と叫んでいたのは聞かなかったことにします。

 しかもその声の大きさが、金髪の我が儘美少年の気に障ったらしい。


『うるさいんだけど?』


 睨みのきいた渋めの声に、ヤバいと思ったアキヒトさんは小さな声で 『ごめん』 と謝罪。

 でもクロエはそれを無視するように話を戻してくる。


『ところでくるくる、どうかした?』


 その引き戻し方が少々強引だったこともあって、指名を受けたくるくるもすぐには言葉が出てこない。

 何かを話し掛けていたことも忘れていたのか、『あ……』 と呟いてから数秒後に、ようやく思い出したように話し始める。


『その、どうでもいいことだと思うんですが、僕らは、イベントエリアに入るためのカタツムリを探す時、這った痕が残ることをヒントにして、今もあの大きなカタツムリを探してるじゃないですか』


 同意を求めてくるくるくるに、みんなを代表してクロエが 『うん』 と素直な合いの手を入れる。


『でもそれだと、絶対にうしろからしか追いつけないと思うんです』


 ……………………


 ちょっと待って、くるくる。

 もしホリーさんの情報通りあの巨大カタツムリが前面からしか攻撃出来ないとしたら、後ろから追いかけている限り絶対に攻撃出来ない。

 後方からの攻撃が通らないことはすでに確認済みだからね、物理も魔法も。

 下手をするとクロエ班のように、逃げ道をカタツムリのお尻に塞がれてしまうこともある……というか、十中八九塞がれる。

 つまりイベントエリア内外に現われる、サイズの違う二種類のカタツムリにある共通点、あの這った跡は、運営が用意したミスリードのためのブラフということ?


『……そう、かもしれません』


 くるくるもそこまでは気づいていなかったのか。

 わたしの指摘をきいて驚いたらしく、返事をするまでに少しの間があった。

 おそらくくるくるは検証が難しいのではないかと言いたかったのだと思う。

 でも実際はそういうことではなく、このままではずっとあの巨大カタツムリを攻撃することが出来ない。

 そして運営がミスリードをしてまであの巨大カタツムリを守ろうとしたのなら、あの巨大カタツムリには何かしら役割がある。

 それが後方からの攻撃は通らないことと関係があるとしたら……


『攻めるしかないんじゃね?』

『やっぱ正面突破やな』

『当たって玉砕か?』


 いやいやいや、待ってムーさん。

 どうしてそこで玉砕?

 いや、まぁ今回のイベントは緩いから、落ちても何度でも入り直せるけれど、砕け散らなくてもよくない?

 一応撃破するつもりくらいの意気込みで行かない?


『グレイさんにしては前向きだな』


 そういうカニやんは、巨大カタツムリに遭遇したら玉砕なの?


『え? 壁あるし。

 二枚も頑丈なのあるから』


 それを盾にして逃げるって……その二枚、ムーさんと柴さんよね?

 二人はぽぽとキンキーの安全確保が最優先事項だから、カニやんは自力でよろしく。


『マジかよ』

「マジですが、なにか?」


 班分けした時からそう言ってるじゃない!

 それともなに? いざとなれば守ってもらえるとでも思ってたわけ?

 そんなわけないでしょ。

 言っておきますが、ぽぽが落ちたらクロエが怒るし、キンキーが落ちたらゆりこさんが怒るから。


『ゆりこさん、昼から来るんだっけ?』

「来ます」

『やべ。

 今の話なしで』

『ゆりこさんにはチクらないであげてもいいけど、僕はガッツリきかせてもらったから。

 頭は低くしておいたほうがいいよ』

(こえ)ー!!』


 ここでカニやんが怯えるのはわかるけど、なぜかアキヒトさんまでが 『なんか俺も怖くなってきたー!』 と叫び、恭平さんから 『カニやんの代わりにお前が撃たれてこい』 だって。

 静かになっていい……とまで言われて少し可愛そうになる。

 まぁアキヒトさんの場合は半分くらい自業自得だけどね。

 とりあえずカニやんとアキヒトさんは、頭を低くしておいて下さい。

 なんだったら這って歩いてもいいけど、二人ともそれなりにいい歳なのであまり無理のない程度にね。

 いっそ一、二発、おとなしく撃たれておいたら?

 それでクロエの気が済むのなら安いものだと思うけど。


『他人事だと思って……』

「他人事です」


 くるくるの指摘で俄にホリーさんの情報が重大性を帯びてきた。

 もちろん検証の結果次第ではある。

 でも検証そのものに重要性が出て来たっていうね。

 そのこともカニやんには面白くないと思うけど、クロエは謝って済ませてくれる相手じゃないし。

 どう考えても喧嘩を売った相手が悪いのよ。

 まぁそういう意味では、ホリーさんたちも喧嘩を売った相手が悪かったけど。

 この迷路内では、二度と会わないようにしたほうがいいと思う。


『でも跡を辿れないとなると、どうやって探すかだな』

「そうねぇ……」


 考える振りをして周囲を見回せば、紫陽花の壁を隔てた二枚ほど向こうに巨大カタツムリがのっそりのっそりと歩いている姿が見える。

 そしてそれを追いかけているプレイヤーの姿も。

 でも後ろから追ってきているから、ほどなく追いつくものの攻略出来ずに悪戦苦闘。

 挙げ句に横殴りを恐れたのか、わたしたちを見て何か言い合っている。

 距離的に10mは離れていない。

 幅1mほどの紫陽花の壁が二枚あって、道幅は3mくらいだからね。

 でもなにか言っているのはわかるけれどその声がはっきり聞こえないのは、エリアチャットに制限がかかっているのかもしれない。

 通常エリアなら十分に会話が出来る距離だもの。

 幸いなことに向こうのパーティにも銃士(ガンナー)はいないらしく狙撃の心配は無かったけれど、魔法使いはそれなりにいるからね。


「ホットポット!」


 最近はポピュラーになった 【ホットポット】 で狙ってきました。

 わたしやクロウの顔は知られているということもあるし、装備から推測して美沙さんのレベルが一番低いことは一目瞭然。

 当然狙われたけれど、そこはマコト君が上手くフォロー。

 壁になるという消耗戦ではなく、若さと反射神経を活かして躱しました。

 当然お礼はするけど。


「起動……業火」


 ……あら、一撃。

 え? ねぇ、ちょっとあっけなさ過ぎない?


「さすがギルマス~」

「グレイさん、火力上がってません?」


 気のせいです


 とりあえず邪魔なパーティは片付けたけれど、残念なことに目的の巨大カタツムリは遠すぎます。

 ここからでも攻撃は出来るけれど正面とは言えないし、どうしようか……と考えていたら、俄に恭平さん班が騒がしくなった。


 どうしたの?


『雨……ってこれ!』

『ちょ、痛っ!』

『アラートが出ました!』

『くるくる冷静すぎ!』


 雨が降ってアラートが出た? ……え? どういうこと?

カニやんがホリーに返事をしたかどうかは不明のため、どちらを選んだかも不明です。

そして梅雨空に雨はつきものですが、痛いとはこれ如何に???



アールグレイ班

 アールグレイ / 魔法使い

 クロウ / 剣士

 マコト / 剣士

 サミー / 魔法使い

 ルゥ  / 幻獣


カニやん班

 カニやん / 魔法使い

 しば漬け / 剣士

 ミンムー / 剣士

 ぽぽ   / 銃士

 キンキー / 魔法使い

 タマ   / 妖獣


クロエ班

 クロエ  / 銃士

 の~りん / 魔法使い

 ジャック・バウアー / 剣士

 ジャック / 剣士


恭平班

 恭平   / 剣士

 くるくる / 銃士

 ベリンダ / 短剣使い

 トール  / 剣士

 アキヒト / 魔法使い

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― 新着の感想 ―
[一言] あとがきがあたかもカニやんがどちらかを選択したかの様ですけど、カニやんは怒るだけ怒って、選ばないと思います。 グレイの反撃のところで、一撃で落としたことより、魔法名で酷いと思ってしまいまし…
[一言] ( ̄□ ̄;)!!まさか、この前県内で大量の怪我人を出した雹だか、霰だか?が降ってきた?
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