664 ギルドマスターはデンデンを料理します
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バックン
すでにルゥの特技というか、特徴になっているというか。
時と場合によってはとんでもないことを引き起こしてくれるルゥのバックン。
それこそダメージの出ない安全地帯はもちろん、一般エリアもPKエリアも問わずバックンバックン。
そうして今回もイベントエリアに入る前、キーアイテムであるはずのカタツムリをバックン。
それはそれは美味しそうに食べてしまった。
食後に舌なめずりまでして、とても満足そうな顔をしていた。
かわいい
……えーっと、うん、かわいかったのよ。
ううん、いつだってルゥはかわいいのよ。
今だってわたしたちの先頭に立ち、楽しそうにフンフンフンフン……いつものように散策しながら歩いている。
ご機嫌にしっぽをブンブン、お尻をフリフリしながらね。
でもさすがにあの大きさはダメでしょ。
超巨大カタツムリ
だって殻の大きさだけでも三メートルくらいあったのよ。
その殻を背負った本体を含めたらどんな大きさになることか。
あれをバックン……はさすがに無理よね。
いくらルゥの頑健な顎をもってしても一口で丸呑みはさすがに無理として、だからといって以前に見せたハーピー戦の時のように力任せに引き千切られても……
残虐非道
そもそもあのバックンはルゥのスキルなの?
もうね、あまりにもよく見るものだからそう思えてきた。
近く、例のおかしなインフォメーションが出るような気もしてきたわ。
いらないけど。
information 新しいスキルを取得しました
↑これね、これ。
本当にいらないから。
とりあえず人手不足とか色々な都合上、わたしたちの班はルゥがカタツムリの這った跡を探すお役目を担当。
本人も張り切って立候補してたし。
だからあの短い足がカタツムリを間合いに捕らえる前にルゥを捕獲しなきゃ。
ちょっと反射神経に問題のあるOLには難しいけれど、失敗したらルゥがお腹を壊しかねない。
だってあの大きさよ。
あれを全部ルゥが一人で食べたらどうなるか?
絶対にお腹を壊す。
しかもあのカタツムリ、全然美味しくなさそうだったし。
いや、うしろからしか見てないし、あっというまに消えてしまったからあまりじっくり見てないけど。
そもそもカタツムリなんて食べ……あ、エスカルゴってカタツムリだっけ。
一応食用素材なのね。
そっか、だからルゥはバックンしたのね。
つまりあのカタツムリって美味しいということ?
『間違っても試すなよ。
エスカルゴは元々食用』
『ちょい旦那、目ぇ離すなよ』
「気をつける」
ちょっとクロウ!!
なに平然とした顔で返事してるのよ!
カニやんも柴さんも、わたしをルゥと同じ扱いにしないで頂戴。
わたし、そんなに悪食じゃないから。
とにかくルゥには気をつけます……と宣言したところで、うしろから来るマコト君が遠慮がちに声を掛けてくる。
「グレイさん、ちょっといいですか?」
「なにかしらマコト君?」
「気がついたことがあるんですけど……」
なになに?
この状況だもの、なんでも話して頂戴。
どんな些細な情報でも募集しております。
「たぶん気のせいじゃないと思うんですが、さっきのカタツムリ、アラートが出ませんでしたよね?」
あ……本当だ!
言われてみれば表示が出なかった。
ただあのカタツムリは元々出現しており、そこにわたしたちが通りかかっただけ。
つまりアラートの表示タイミングとずれて遭遇した可能性も無きにしも非ずだけど……ほら、ノブナガも出現後に通りかかるとアラートは出ないからね。
でもこれで動く置物の可能性が高くなってきた。
対置物には表示が出ないというか、そもそもその構図は成り立たないからね、このゲームでは。
動くか動かないの違いはあっても所詮は置物。
攻撃対象ではないし、破壊出来ないものに仕掛けたところでダメージも計上されない。
下手をすればMPを無駄遣いし、装備を不必要に損耗するだけ。
その確認になるかわからないけれど、目下クロエ班が、どこにあるかわからないゴールを探しつつ、クロエが見つけた動かないカタツムリのところに向かっている。
もちろん迷路だから簡単には辿り着けないし、近づく前に消えてしまう可能性もある。
もう一ついえば、同じことを考えているプレイヤーは他にもいると思う。
つまり同じところを目指しているプレイヤーがいるから遭遇率も高くなるので気をつけてね。
争奪戦
そこはクロエ班もわかっているから、途中でカタツムリの這った跡を発見した場合はそちらに進路変更する可能性もあるらしい。
もちろん自由にして。
そのへんの判断は各班の班長にお任せします。
おそらく誰かが行き着ければ情報は公式サイトの掲示板に上がるはず。
だから無理に辿り着く必要はない。
ただ進路変更する時は一言お願い。
ずっと情報を待ってしまうから。
『ワンコは待てが出来ないけど、飼い主はいつまでも待てるタイプなんだな』
『自分から進んでお預け人生歩んでる感じだし』
そんなわけないでしょ!
『いや、どっちかっていうとお預けしてるほうじゃね?』
それも違うわよ!
いったいわたしが誰にどんなお預けをしてるというのよ?
『気づいてないところが極悪非道』
なによ、それ?
ルゥは残虐非道だけど、わたしは極悪非道なの?
どんな濡れ衣?
そんなの勝手に着せないで頂戴。
もう! ……と怒っているあいだにもルゥがどんどん歩いて行くから、慌ててそのお尻を追いかける。
どうやらルゥはまだ痕跡を発見出来ていないらしく、その足取りはとても軽く速い速い。
これはひょっとして、わざとわたしたちを振り切ろうとしてる?
それこそ痕跡の捜索なんてそっちのけで……
待ってよ、ルゥ!
「きゅ♪」
一応呼べば足を止めてくれるけれど、わたしたちを振り返って 「早く来い!」 といわんばかりに可愛らしく鳴くだけで再びずんずん行ってしまうから、まだインカムの向こうでは色々と言われていたけれど放置プレイ。
だって相手なんてしていられないもの。
一所懸命にルゥを追いかけます。
もちろん遭遇するプレイヤーは落とします。
個人的には 「こんにちは」 と挨拶をしてすれ違いたい。
それこそ和やかに、穏やかにね。
道幅だって十分な広さもあるし、それこそ肩がぶつかったとか言い掛かりを付けられることもない……けれど相手がそれを許してくれないというか、ことごとく仕掛けてくるのよね。
もちろん肩はぶつかっていません。
まぁゲームの遊び方は自由だもの。
今回のイベントにPK要素が入っているのは運営が決めたことで、プレイヤーは決められたルールと運営の定める倫理さえ破らなければ遊び方は自由。
だからわたしも仕方なく、ことごとく返り討ちにしてあげる。
だってそうしないとこっちが落とされるじゃない。
あくまでも仕方なくよ、仕方なく。
一応試しに挨拶をしてみようとしたの。
それも何回もね。
でもにっこりと営業スマイルで 「こん……」 と言ったあたりで斬り掛かってこられ、最後まで言わせてもらえません。
一度としてね。
もっと早口で言わないとダメ?
『いやそれ、詠唱と勘違いされてるんじゃね?』
詠唱する間もなく獲物を全て脳筋コンビに横殴りされている暇人は黙っていて下さい。
わたしはそんなに暇ではありません。
美沙さんだって頑張っているのにね。
まだまだぎこちないし、マコト君のフォローがないと危うく単身ではちょっと無理っぽい。
本来は後衛が前衛をフォローするものだから立ち位置が逆だけど、そこはまぁ仕方がない。
まだまだ不慣れだし。
でも学習能力の高い美沙さんはの~りんに言われたとおり、間違ってマコト君に当てても大丈夫なように、初期魔法であるファイアーボールを基本にマコト君を援護。
実際、何度か目標を誤ってあててしまったけれど、そこはわたしがすかさず 「ヒール」 でフォローしておきました。
だってそのために二人はわたしと同じ班にいるわけだし、班長としてお仕事しておかないとね。
もちろん余裕があれば自分で回復してね。
美沙さんも
ただ彼女の場合は後衛だし、マコト君のフォローが上手く入っていて大きなダメージを受けずに済んでいる。
ナイスフォローよ、マコト君。
だからHPの回復はともかく、まだまだレベルが低いためMPの回復に忙しい。
MPの最大値が低いからね。
おそらくレベルのせいだけでなく、攻撃スキルを優先的に取得したため、INTだけでなくSTRやVITの底上げ用の常時発動スキルの取得が後回しになってしまったのだと思う。
もちろんこれは本人もわかっているのか、あるいはあらかじめの~りんに忠告されていたのか、わたしやマコト君に言われるまでもなくこまめに回復している。
うんうん、基本はOKです。
ファイアーボールなら消費MPも低いから、それなりに数も撃てるしね。
ただそうなると、今度はMPポーションの在庫が気になるところ。
でも今回のイベントは回復不可でもなければ外部との連絡も可能。
いざとなれば作業部屋にいるハルさんにポーションを送ってもらえばいいけど、とりあえず様子見かな。
自分で管理するのが基本だしね……とわたしがいうのもなんだけど。
さりげなく自分のインベントリを見て在庫を確認しておきます。
気がついたら最後、確認せずにはいられない小心者だから。
……うん、大丈夫です。
では遠慮なくまとめてぶっ飛ばしましょう。
「起動……業火」
前方から来る五人パーティを 【業火】 で一掃。
わたしたちの前を歩いているルゥは残念なAIを搭載しているはずなのに、わたしの詠唱を聞いて瞬時に回避出来るという超高性能危機管理センサーを持っている。
それこそ脳筋達に張り合えるくらい高性能なセンサーをね。
むしろルゥのほうが性能はいいかもしれないけど。
今もひょいっと軽々 【業火】 をかわし、すぐに何食わぬ顔でわたしたちの前を再び歩き出す。
さすがルゥね。
かわいい
そのフリフリのお尻を見ながらうっとり……していたら、突然出て来たインフォメーションが現実に引き戻す。
information あなぐま からメッセージが届いています
あなぐま?
あなぐまさんと言えばあの人よね?
剣士だけで構成されたギルド 【アタッカーズ】 で、主催者のロクローさんの補佐をしている副主催者。
そんでもってその主催者とはついさっきお会いしました。
お会いしましてガッツリ落としておきました。
向こうから斬り掛かってきたんだから仕方ないじゃない。
落とさなければ自分が落とされる、それがPKエリアの定石です。
だから当然の処置です。
でもそれを知ってあなぐまさんがなにか言ってきた……となると嫌な予感しかない。
クリスマスイベントの時は、迷子のロクローさんと遭遇したのが運の尽き。
さらには自分からロクローさんを落としたことをバラしてしまい、随分と大変なことになった。
そのことを思い出して嫌な予感しか覚えないけれど無視するわけにもいかず、ちょうど遭遇プレイヤーを一掃した直後で手が空いている。
みんなに声を掛けて哨戒してもらい、ウィンドウをポチってメッセージを確認する。
『女王陛下にはご機嫌麗しく、イベントを楽しまれていることと存じます』
なに、これ?
何度も何度も何度も何度も何度も何度も言っているけれど、わたしのことを女王陛下と呼ばないで!
もちろん文章もやめて!!
頑張るルゥと美沙、カタツムリの元に急ぐクロエ班。
そして届いたあなぐまからの手紙とは・・・?
アールグレイ班
アールグレイ / 魔法使い
クロウ / 剣士
マコト / 剣士
サミー / 魔法使い
ルゥ / 幻獣
カニやん班
カニやん / 魔法使い
しば漬け / 剣士
ミンムー / 剣士
ぽぽ / 銃士
キンキー / 魔法使い
タマ / 妖獣
クロエ班
クロエ / 銃士
の~りん / 魔法使い
ジャック・バウアー / 剣士
ジャック / 剣士
恭平班
恭平 / 剣士
くるくる / 銃士
ベリンダ / 短剣使い
トール / 剣士
アキヒト / 魔法使い