表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

648/806

648 ギルドマスターは獣にモフられます

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告&いいね、ありがとうございます!!

 ルゥが落ちてしまったことを逆恨みして家出しなくてよかった。

 だってほら、あれはどう見ても不運な偶然の重なりによる結果で、決してわたしが悪いわけではない……と思う。

 でもそこはルゥだから、ルゥなのよ。

 原因はなんであれ怒る時は怒るし、泣く時は大泣き。

 いじけてシオシオになってしまったり。

 喜怒哀楽がはっきりしているといえば聞こえもいいけれど、どこにそのスイッチがあるのかわからないくて、いつonになるのかもわからない。


 謎すぎる


 そんなルゥはなにがあったのか全く覚えていないのか、いつもと変わらない可愛さでもっふりと甘えてくれる。

 小林さんのところに家出するのではないかというわたしの心配に便乗しようとしたカニやんは、脳筋コンビを引き連れてギルドルームに戻ってみれば、ダンプに轢かれて圧死しました。


 現在ここ


 隙あらばルゥを狙うカニやんはともかく、なんだかんだいってもカニやんを心配しているというか、かまいたくて仕方がない脳筋コンビ。

 今回のイベントは個人戦(ソロ)だけど、運営の陰謀により、いつ増し増しタイムが起こるかわからない戦々恐々……といってもこの三人は火力的に全然平気。

 だって超がつく重火力だもの。

 ちょーっとカニやんはVIT(防御力)に不安があるものの、それをカバーして余りある火力がある。

 タマちゃんも付いてるしね。

 でも、そんな重火力でも油断出来ないのが巨大シャチの増し増しタイム。

 それで二人は、カニやんの近くでそれぞれ狩りをしていたらしい。

 そしてカニやんがギルドルームに向かうと知ると、他のメンバーなんてそっちのけで追いかけてきたっていうね。


 通常運転


 それでも一瞬 「なにやってるの?」 とか思ってしまったけれど、よくよく考えるまでもなくこの二人にとっては通常運転よね。

 今カニやんを押し潰しているのも含めて通常運転です。

 ギルドルームでは絶対にPK出来ないから、それこそ好きにして頂戴。

 もちろんルゥも好きにしてくれていいけれど、飼い主(わたし)としてはもう少しもっふりしていたかった。

 でもそこもルゥだからね、ルゥなのよ。


 蹴られた


 急にルゥが腕の中でモゾモゾし始めたから、てっきりカニやんが来て落ち着かなくなったのかと思ったら全然違いました。

 このゲーム最強のNPC 【幻獣】 のSTRを使って……そもそもわたしは魔法使い(モヤシ)だからそこまで頑張らなくてもいいのに、残念なAIを搭載するルゥは、容赦ない力でわたしの腕を抜け出すと、可愛くもみじ……ゲフゲフ……えっと、可愛い可愛い後ろ足で気前よくわたしの胸を蹴り飛ばす。

 きっとわたしの胸がもう少しあれば、クッション代わりになったかもしれない。

 でもちょっと弾力が足りなくて、ルゥの蹴りを緩衝出来なかった。

 しかもこのあとルゥはカニやんを襲うわけでもなく、床にスタッと着地するといつものようにフンフンフンフンフン……


 えーっとルゥ?


 それほど広くもないギルドルーム。

 これまでにどれほどフンフンフンフン……と探索してきたことか。

 それこそ毎日のようにフンフンしてきたわよね?

 もう探索興味も無くなってもいいはずなのに、未だに毎日フンフンフンフン……と飽きもせず。

 まぁそれがワンコの習性と言われればそれまで。

 正確にはワンコではなく狼だけれど、そこは置いておく。

 同じイヌ科だしね。

 でもその習性、飼い主(わたし)を蹴り飛ばしてまで今する必要があるの?


 ないわよねっ?!


 蹴り飛ばされたわたしが、床に寝転がって天井を仰いでいるのにも目もくれず。

 楽しそうにフンフンフンフン……いつものように探索を開始。

 うん、いいの、別に。

 ルゥが楽しければそれでいいの。

 でも偶然行き当たったカニやんに、なにを思ったのか?

 最初はそれがカニやんどころか、プレイヤーであることにすら気づいていなかったルゥは、体の線に沿ってフンフンフンフンフン……としていたけれど、カニやんの顔に行き着きその目と目が合った瞬間に 「ぎゅ」 という不快そうな鳴き声を上げた……と思ったらその横っ面を張り飛ばし、ダルマ落としよろしく、カニやんを最下段から吹っ飛ばした。


 あら、器用ね


「あ、ヤベ」

「なんちゅー器用さやねん」


 即座に身の危険を感じた脳筋コンビは……ほら、この二人は超高性能な危機管理センサーを搭載しているからね。

 カニやんが吹っ飛ばされた次の瞬間にはシュバッと立ち上がり、ルゥの次なる攻撃を見事にかわした。

 ここでうっかりすると、次に吹っ飛ばされていたのは中段にいた柴さん。

 そして最後はムーさんが吹っ飛ばされる予定だったんだけどね。


 一方避ける余裕もなく吹っ飛ばされたカニやんは、それまでネコの姿をしていたタマちゃんが一瞬にして猫又の姿に変わり、先回りをしたと思ったらそのしなやかな背で飼い主(カニやん)を受け止める。

 さすがタマちゃん、GJです。

 同じ残念なAIを搭載しているはずなのに、どうしてこうもルゥとは違うのかしら?

 いや、まぁ別にいいんだけどね、かわいいから。

 もちろんタマちゃんも可愛いけどね。

 でも愛され女子のタマちゃんは、再びシャチを狩りに行くというカニやんと一緒にギルドルームを出る時には、可愛らしいお猫様のお姿に戻っていた。

 聞けば、さすがに巨大シャチの増し増しタイムにはタマちゃんを格納していたらしい。


『タマは 【妖獣】 だしな。

 はじめから 【幻獣(巨大シャチ)】 が相手じゃ分が悪いっていうか、勝負は決まっているようなもんだし』


 さすが(モフ)下僕(ゲボク)、ご配慮が並々ならぬ心配性です。

 タマちゃんだってそれなりに強いし、そもそもルゥほどうっかりでもないし。

 そのルゥだけど、金魚やシャチの増し増しタイムなら全然平気。

 ステータスが全然違うからね。

 しかも魚類より四つ足のルゥのほうが全然機動力もあるし。

 その機動力の鈍さを大きさでカバーしている巨大シャチ。

 ルゥと同じ 【幻獣】 だからね、ステータスも他のNPCとは段チだし。

 明らかにHPの高さにあぐらをかいている。

 その大活躍の場がまた来ました。


alert これより30分間、巨大シャチの増し増しタイムが始まります


 しかも30分って、長くなってるじゃない!

 なに、その長さはっ?

 いや、時間はこの際どうでもいい。

 わたしたちはなにがなんでもこの時間を凌ぐまで。

 だからそれはいい。

 いいけれどルゥはよくない! ……ということで、わたしは急いでルゥを格納することにした。

 でもね、飼い主のいうことなんて全然聞かないのがルゥなのよね。

 ルゥはわたしのことを好きでいてくれるけれど、飼い主と思っていてくれているかどうかは別問題。

 たぶん、ただ好きでいてくれるだけで飼い主とは思ってくれていないと思う。


 泣ける……


 まぁいつものことだしね……といいたいところだけれど、今回はそうもいかない。

 少し強硬手段をとるべく、物凄い速さで増殖を始める巨大シャチに 「きゅっ?」 と声を上げて驚きに目を見開くけれど、案の定、わたしに捕まるつもりはないらしい。

 すぐさま目つきを変えた……と思ったらあっと言う間にわたしたちを取り囲む巨大シャチを睨みつけ、そのみじ……ゲフゲフ……可愛らしい足で力強く地面を蹴って大ジャンプ。

 少し前、カニやんの横っ面を張って吹っ飛ばした可愛らしいパンチで、今度は巨大シャチの横っ面を張り飛ばす。


 もちろんルゥと巨大シャチは 【幻獣】 同士。

 どちらもノックバックしない。

 しないけれど、ルゥは小っちゃな爪をシャキーンと伸ばしてシャチの横っ面を張ったから、シャチは横っ面から大量のHPを流出させる。

 そしてまたシャチの、バックリと開いた口の前に着地しわたしをヒヤリとさせるけれど、今度は後ろ足でシャチの下あごを蹴り上げて閉じさせる。

 やっぱり 【幻獣】 同士なのでどちらも吹っ飛ばず。

 でもルゥのケリは打撃に相当したらしく、巨大シャチは、勢いよく閉じた口の中からまたしても大量のHPを流出させる。

 そしてとどめを刺すべく、巨大シャチの眉間あたりに蹴りを入れて落とす。


 ひょっとして……


 ルゥは落とされたことをすっかり忘れていたのかと思ったけれど、実はきっちりガッツリ鮮明クリアに覚えていて、しかも怒っていた?

 怒っていて、始まった増し増しタイムに、ここぞとばかりに復讐を始めた?

 え? そういうこと?

 ちょっと待って、復讐に燃えるルゥなんて……


 可愛いわ


 あら? おかしいわね。

 復讐に燃えるなんて可愛いルゥらしくないと思ったけれど、全然可愛かったわ。

 凄く可愛いわ。

 しかも超絶格好いいんだけど?

 超絶可愛いんだけど?


『いや、ワンコは元々強いし』

『さっき俺を吹っ飛ばしたばっかじゃん』

『カニは非力(モヤシ)だろうが』


 うん、カニやんはモヤシだからルゥの相手じゃないわよね。

 思わず納得するわたしに、カニやんから 『おい、そこの喪女』 と突っ込みが入るけれど無視(スルー)

 元々忘れていなかったのか、あるいは巨大シャチの増し増しを見て思い出したのか、落とされた鬱憤を晴らすが如くいつも以上に残虐非道に暴れまくるルゥに見とれ、お仕事をすっかり忘れていたわたしはクロウに小突かれる。

 でもクロウがいて、これ以上はないほどに高い戦闘能力を誇る 【幻獣(ルゥ)】 がいて、非力(モヤシ)に仕事があるとでも?

 もちろんPKが出来ないのをいいことに、範囲魔法で横殴りしまくってもいいけど。


 やっちゃおうかな


 ちょっと悪戯心が芽生えたわたしはうっかり詠唱してしまい、範囲魔法に巻き込んでルゥをこんがりと焼け……るわけないわよね。

 うん、PK出来ないし。

 しかもなぜかルゥには拗らせたかまってちゃんとでも思われたのか、わたしが放った 【業火】 の焔の中から 「きゅー!」 と鳴き声を上げて飛び出したルゥは、いきなりわたしの頭を短い四肢でガッツリホールド。

 乱暴に鼻チューをして鼻を潰してくれる。

 しかもあまりに適当な鼻チューだったから少し狙いがはずれており、おでことおでこも接触。

 さりげなく頭突きまで食らわせられる。


 見事な攻撃力


 HPこそ減らないけれど、痛みに悶えるわたしを捨てるように放り投げると、一目散に巨大シャチに向かっていく。

 えーっと、つまりなに?

 さっきの鼻チューは 「これでしばらく大人しくしていなさい」 的な?

 わたし、ひょっとしてルゥに弄ばれてる?

 しかもルゥってばクロウと張り合うように……いや、クロウの邪魔をするように横殴りを仕掛けるし。

 言っておくけどね、ルゥ、さっきの増し増しタイムでルゥが落とされたのはあくまでルゥの不運だから。

 わたしはもちろんだけれど、クロウも悪くないから。

 それでもどうしても誰かを悪者にしたいのなら巨大金シャチだから。

 恨むなら巨大金シャチだから。


 そうして巨大シャチの増し増しタイム30分を余裕で切り抜けたルゥは、いつものようにわたしの足下に来て可愛らしくおすわりをすると、大きな目をキラキラさせてわたしを見上げてくる。

 ご褒美ね。

 うんうん、一杯頑張ってくれたからね。

 両手に持ったルゥをもっふりと抱き上げた矢先、美沙さんの悲鳴が上がった。


『ぎゃーっ!』

『ちょ、塚原、声』


 え? どうしたのっ?

 美沙さん、トール君、大丈夫っ?!

 わたしの他にもメンバーの声が問い掛ける中、美沙さんから自己申告がある。


『素手でGー触ったー!!』


 ………………


『ご愁傷様』

『あー……そのあたり、出るからな』


 そのあたりというと 【ナゴヤドーム】 周辺ね。

 うん、出るわ。

 出るんだけど、どうして素手???

美沙をどんな不幸が襲ったのかはご想像にお任せいたしますw

さて、そろそろ本イベントも本当にそろそろ終了です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] シャチを避けるために、地面に手をつく ぐしゃ Gは災難 ギャー←ここ こんな感じ?(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ