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ギルドマスターは今日もギルドを運営します! ~今日のお仕事はなんですか?  作者: 藤瀬京祥


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594 ギルドマスターは自由恋愛をします

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告、ありがとうございます!!

 う……うぅぅ……ぅぅ……


 課長代理の馬鹿ー!!

 ログアウト前にあんなこと言うから、全然眠れなかったじゃない!

 もう、どうしてくれるのよっ?


 遅刻する!!


「今日はゆっくりだね、あーちゃん」

「違います、寝坊です!」


 文字通り重役のお父さんは重役出勤のご身分で、国家公務員のお母さんはとっくの昔に出勤したあと。

 酷い、お母さん。

 起こすぐらいしてくれたもよかったのに。

 身支度だけを終えたわたしは、朝ご飯を会社近くのコンビニで調達することにして家を出る。

 まだ朝晩は冷えるためコートが必要な三月だというのに、汗を滲ませながらギリギリに駆け込んだ会社では、とっくに出勤していた寝不足の(げん)い……ゲフゲフ……えーっと、お仕事の出来る上司様は、涼しいお顔ですでにお仕事を始めておられました。


 はぁ……はぁ……セーフ……


 ちょっと息が……切れる。

 しんど……ぃ……。


「大丈夫? 安積(あさか)

「お、おは……よ、ござい……ます」


 隣の席にすわる国分(こくぶ)先輩と挨拶を交わしていると、お仕事人間……じゃなくて、お仕事の出来る上司様がノールックで声を掛けてくる。


「安積、息が整ったら来てくれ」

「わか……わかり、ま……た」


 そんな始まり方をした今日のお仕事は、ちょっとビックリするくらいの追加となりました。

 鬼め……。

 でも頑張って終業時間には終わらせたからね。

 あ、もちろん課長代理も頑張っておられましたが残業です。

 そもそものお仕事量が違うので、容赦なく置いて帰ることにしました。

 別に強がってなんていないから。

 なのでこの日は一人でのログイン。

 すると美沙さんに昨日とは逆のことを言われる。


「今日は彼氏さん、いないんですねー」


 ………………


 これは、その……ちょっとね、ちょっとだけ邪推してしまった。

 わかってる、わかってるのよ、美沙さんが気になるのはトール君だって。

 でもわたしの顔を見るたびに、クロウがいるかいないかを気にしているようなことを言われると、つい気になるというか、その……


 だってまだ一ヶ月だもの!!


 そんな、か……としてどっしり構えるとか、出来ないし。

 会社でも、すれ違う女性社員の視線が痛いというか、怖いというか。

 それこそいつお払い箱にされるともしれないし……という色んな不安が全て顔に出ていたらしい。


「あー……わたし、彼氏さんには興味ないんで大丈夫ですよー」


 気を遣われてしまった


「ごめん、そんなつもりじゃないんだけど……」

「大丈夫ですって。

 ギルマスは思ってることが全部顔に出るって、篠崎(しのざき)から聞いてるんでー」

塚原(つかはら)、バラすなよ!』


 美沙さんがいるということは当然トール君もいるわけで、今日も他のメンバーとI(インスタンス)D(ダンジョン) 【ナゴヤジョー】 に潜っているトール君の抗議がインカムから聞こえてくる。

 ちなみに篠崎(しのざき)(とおる)塚原(つかはら)美沙(みさ)は二人のフルネームね。

 トール君のユーザー登録やアカウント取得はそれほど早い時期ではなかったはずなのに、【トール】 というアバター名がまだ残っていたのがちょっと驚き。

 この仮想現実(ゲーム)では同じユーザー名やアカウント、アバター名の使用は出来ず、取得は登録の早い者勝ちだからね。

 美沙さんのほうは、トール君と同じく本名で呼んでいるとはいえ、アバター名は 【サミー】。

 命名方法については以前にも話しているから省くとして、登録する時はよかったものの、実際にログインして自分が呼ばれてみると恥ずかしかったらしい。

 その点はJBと同じ。

 でもこの仮想現実(ゲーム)は、一度登録したユーザー名やアカウント、アバター名の変更は不可。

 だから彼女は本名がバレたのをいいことに、そのまま本名で呼ばれることを選んでいる。

 本人がそれでいいのなら、わたしたちは別にかまわないしね。

 むしろ嫌がる名前で呼ぶ方がイジメだもの。


「トール君はグレイさんの信者だから、洗脳されないように気をつけたほうがいいよ」


 カニやんの言っていることがよくわからないんだけど、すぐに美沙さんが 「はい」 と返事をするのも理解出来ません。

 なに、この子弟関係は?

 そう言えばこの二人、二人きりで話していたこともあったっけ?

 ひょっとしてその時すでに、師弟関係が出来ていたとか?


「なんでやねん」

「カニさんいい人だと思いますけどー……あ、格好いいですよ。

 いいんですけど、彼氏さんも歳がー」


 そうだった


 そういえば前にも、女子高生から見たら 【素敵なお茶会】 のメンバーはほとんどがおじさんおばさんになるという話を……うん、しました。

 つまりクロウも……


「えーもちろんおじさんですよー。

 格好いいですけどねー」


 そういってヘラヘラ笑う美沙さんは 「でも彼氏さん、モテそうですよね」 とわたしを落ち込ませてくれる。

 そうね、モテるわ。

 でもきっとカニやんもモテるだろうし、それこそ脳筋コンビなんてお医者様だもの。

 あの筋肉を理解出来る人なら全然OKだと思う。

 むしろ引く手数多だと思う。


「ですよねー。

 いつもは思わないんですけど、このギルドにいるともう少し美人に生まれたかった! ってすっごく思う!」


 そうなの?

 美沙さん、十分すぎるほど可愛いと思うけど。


「ギルマスがいうとちょっと……」

「落ち込む前に訊いとく。

 今日はなにするんだよ?」


 今日はクロウがまだいないからね。

 わたしのお()りをカニやんがしてくれるらしい。

 自分でお守りとか言ってちょっとムカついてるけど。


「えっと、今日はぁ~」


 昨日と同じように話しながらウィンドウを開く美沙さんの、本日のクエストは大蜘蛛討伐。

 確かそれ、最初は5匹だっけ。

 次が10匹? 15匹だっけ?

 でも終了ごとにいちいち 【ナゴヤドーム】 に戻ってNPC長官に報告しないと、次のクエストを受諾出来ないという面倒さ。


「なんですか、それ?

 一回で全部倒したらダメなんですか?」


 ダメでーす


 クエスト受諾してからの討伐数しか計上(カウント)されないから。

 このあたりのクエストは、内容より手間が掛かるものが多い。

 カニやんや恭平さんの話だと、おそらく何度も同じ道を行き来してマップを覚えてもらうのが目的だと思われる。

 このあたりのエピソードクエストはまだまだ初心者用クエストで、討伐対象も全然レベルが低い。

 むしろ仮想現実(ゲーム)に慣れてもらうのが目的のクエストね。


「そういえば蜘蛛の糸、誰か欲しがってなかったっけ?」

『あの、俺です』


 蜘蛛の糸は大蜘蛛などから撃破報酬(ドロップ)するアイテムで、装備などの製作素材になる。

 誰にともなくカニやんが尋ねると、インカムの向こうからトール君が、いつものように申し訳なさそうに答える。

 でももちろんタダでというわけにはいかないから……と、やっぱり申し訳なさそうにいうとカニやんは 「じゃあこうしよう」 と切り返す。


「無人バザーの相場をマメに訊いて、必要数のメモ付けてゲーム内通貨(かね)送ってよ。

 その数送り返すから。

 マメ、いるんだろ?」

『あ、はい。

 じゃあそれで……』

『いるぞー!』


 カニやんの呼び掛けに、ギルドルームにいるとおぼしきマメがトール君の声に被せてくる。


『ちょっと待てトールー、いーま調べてやるかーらー』

『お願いします』


 インカムの向こうでマメとトール君が話し出すのよそに、わたしたち三人は 【ナゴヤドーム】 を出て 【関西エリア】 へと向かう。

 大蜘蛛は 【関東エリア】 にある 【東京砂漠】 の地下巨大迷宮でも出現するけれど、あっちは危険だからね。

 大蜘蛛以外にも蟻地獄とかサソリとか、【幻獣(ボスクラス)】 のタランチュラまで出るからね。

 しかも解毒出来ない猛毒もあって、到底初心者を連れて行ける場所ではない。

 もちろん解毒出来ない猛毒はわたしもカニやんも同じだけど、被毒状態になっても、HPの最大値が初心者とは全然違うからね。

 VIT(抵抗力)も低いけど、それでも初心者に比べたら全然違うから。

 だから被毒状態から自然回復するまで、ポーション(アイテム)ヒール(スキル)を使って保たせることが出来る。

 それが出来ないのが初心者だから、HPの低さは推して知るべし。

 そんな危険なところに美沙さんを連れて行くわけにもいかないからね。


『蜘蛛の糸?

 おいカニ、どこ向かってんねん』


 不意に割り込んでくる柴さんの声。

 今までの話を聞いていなかったの? ……と思ったら、地下闘技場にいたっていうね。

 あそこは観覧席はともかく、対戦エリアに転送されるとインカムが通じなくなるからね。

 ……ということは対戦してたの?


『してたの。

 丁度終わったとこ。

 で、どこ行くって?』

「だから関西だよ」

『大蜘蛛の森?

 今どこおんねん?』

「まだドーム出たとこ。

 なんか用か?」


 少しうるさそうにカニやんが返すのを聞いて、柴さんは 『すぐ追いつく』 と返事をする。

 ん? 柴さんも来るの?


ノブナガ(チョビ髭)の側に魔型が二体はヤバそうやからな』

「来んな、暑苦しい」

『お前はどうでもえぇねん。

 女王が落ちたら俺の首が落ちる』

「あーそっちね」


 じゃあ勝手にすれば? ……って、ちょっとカニやん。

 そんなに冷たくしなくてもいいじゃない。

 柴さんだってカニやんのことが心配なんだから……と話していたら、美沙さんがなにか言いたそうな顔をしている。


「なに?」

「どういう関係なんですか、柴さんとカニさん」


 わたしにしては珍しく、美沙さんの期待がどこにあるのかわかったから 「そういう関係よ」 と答えておく。

 ほら、女子中高生って恋バナ大好きよね。

 だからこう、にっこりと笑ってね。

 だって本当にそうじゃない……と思ったら、カニやんに大杖で小突かれる。


「なに適当なこと言うとんねん、この喪女は!」

「事実」


 キリッと言い返したら、大杖でポカポカと何回もどつかれました。

 どつかれながら歩いているうちに柴さんが追いつき、【関西エリア】 に入ってほどなく、美沙さんが思い出すように言い出す。


「そういえばギルマス、あこちゃん、覚えてますか?」


 ええ、ええ、覚えてます。

 ここ最近で一番個性的だったのでよく覚えてます。

 彼女がどうかしたの?


「じゃあVRアクターってわかります?」


 うん?


 もちろん知ってるわよ、VRアクターってあれでしょ? ……というか、話が見えないんだけど。

 ア子さんとVRアクターがどうつながるの?


「このあいだ、共通の友だちに聞いたんですけど……」


 そう美沙さんが切り出したア子さんの近況は……

ア子は登場しません。

しませんが、しばしア子のお話にお付き合いください。

ア子の代わりにチョビ髭が登場するかもしれませんが・・・(汗

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