589 ギルドマスターは不義○通をします
PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告、ありがとうございます!!
ちょっと年始早々不穏なサブタイルですが、いつものアレです。
気になさらず本文へお進み下さい。
久々に軽く糖分補給です。
グレイ(藍月)はいつもどおり、安定の喪女ですから・・・(笑
女雛の浮気というか、もし男雛と夫婦なら既婚だから不○よね。
そんなよろしくない疑惑を残したまま終了したひな祭りイベント。
諸説あるとはいえ、ひな祭りにはそぐわない疑惑を残してね。
女雛がただの内親王なら問題はないわけで、そこはちょっと応援したい気持ちもある。
あ、内親王でも既婚はダメよ。
未婚限定
その漂着者にしても、どこから来たのか? ……という疑惑を残している。
新たに追加されるエピソードクエストは、その漂着者の正体について。
あるいは正体の解明あたりではないかというのが大方の見方。
わたしもそこに一票を投じている。
次の定期メンテナンス終了後に発表された公式告知によると、一〇八回の鐘撞きに成功したので予定どおり四月に新エピソードの追加を行なう。
日程などの詳細までは発表がなかったけれど、これは実施日から逆算して順次公表されると予想。
「でもそうすると、四月は公式イベントはなさそうだな」
そうね、花見でもするかと思ったけど。
そんな話をカニやんとしていると、今回のイベント奈良公園にちなんでか、奈良の千本桜の綺麗さを脳筋コンビが語ってくれる。
ちなみに奈良公園のID 【南大門】 はすでに消滅しているけれど、イベント終了後も公園内にたむろしていた鹿はそのまま。
動く破壊不可の置物として今後も在り続けるらしい。
仮想現実が全体的に殺伐とした世界観だから、ちょっとした癒やしというか、視覚効果というか。
もちろん薄闇もすっかり晴れ、ただ青々とした芝を鹿がのんびりと草を食むだけというもの。
カニやんは 「そのうち鹿の糞が素材になるんじゃね?」 とか言っていたけれど、ハルさんには 「なんの?」 と嫌そうに突っ込まれていた。
作業部屋で鹿の糞を発酵させるとか、確かに嫌よね。
わたしも嫌
絶対にルゥは近づけさせません。
ちなみにわたしは、もし素材として追加されたとしても採取には行きません。
だって絶対にドナドナされるじゃない。
わかりきっているから、近くを通りかかっても絶対に寄り道しません。
そもそも癒やしならルゥがいるから。
それこそタマちゃんを見るだけでもルゥはいじけてしまうから、あんな沢山の鹿に会いに行ったりしたら家出されてしまいそう。
絶対に嫌!!
運営の公式発表によるとあの鹿は 【奈良公園】 からは出ないらしいから、近づかなければドナドナされる心配も無いと思う。
新エピソードの内容はまだまだ不明。
順次発表される内容で対策を取っていくとして、当面はなにをするか? ……ということで、【素敵なお茶会】としては、まずはエピソードクエストの進行。
それに必要なレベル上げやスキルの取得といった感じかしら?
わたしとクロウはすでにレベル上限だから美沙さんのお手伝いね。
でもこれも、年度末が近づくにつれてクロウが忙しくなってくる。
決算ではないけれど、色々と報告とか上げないといけなくなるから。
それも通常の月末報告に加え、一年の総決算みたいな報告が重なって。
あと次年度関係の会議とか増えたり。
課長代理は大変
そんな関係で残業が増えて、美沙さんのお手伝いはわたし一人……かと思ったら、そういう時はだいたいカニやんが付き合ってくれるのよね。
今回は脳筋コンビや恭平さんも。
代わりに四人のクエストのお手伝いをして、そのあいだ美沙さんはトール君やマコト君がフォローしてくれたり。
美沙さんのレベルで、脳筋あたりのクエストを付き合ってもらうのは厳しいからね。
下手に落ちると、折角頑張って稼いでいる経験値を溶かされてしまう。
だからそのあいだはトール君たちが彼女についていてくれる。
まぁそんな感じでギルド自体は回っている。
いい感じ
特に昼間は、学生組は春休みだけど、社会人組は普通に出勤だからね。
短い時間だけど、家事の合間合間にゆりこさんも様子を見ていてくれたみたい。
トール君たちも回復系魔法使いが必要になりそうなクエストは、事前にゆりこさんにお願いしたり。
そんな感じだったから特にトラブルも無くて、社会人組も昼間は安心してお仕事に集中していた。
欲をいえば、課長代理が残業続きで一緒に帰れないこと……かな?
もちろんこれは内緒。
絶対に内緒よ!
こんな恥ずかしいこと絶対に誰にも言えないし、相談も出来ないし。
当然国分先輩にもね。
ただ会社から駅までの、会社が出している求人では徒歩5分の距離(要検証)を一緒に歩くだけなんだけど。
でもでもほら、二人きりになれるのがそのぐらいしかなくて。
は、恥ずかしいけど、でもやっぱりちょっと嬉しいというか、その……嬉しい……。
はい、正直にいいます。
嬉しいです
もう絶対に課長代理にも内緒。
そりゃ仮想現実ではいつも一緒にいるけど……。
最近になって、ちょっとだけ……ちょっとだけ、課長代理が現実世界にこだわる理由がわかってきたような気がする。
その、アバターじゃダメな理由とか?
ほんと、ちょっとだけなんだけどね。
我が儘だってわかってるけど……
だから課長代理が残業の時は……最近はほぼ毎日残業なんだけど、一緒に帰れない、その未練みたいなものを見せないように努めて明るく 「お疲れ様でした、お先に失礼します」 と挨拶をして、絶対に振り返らずに部署を出る。
本心をいえば、このあとこっそり覗き込んで課長代理の様子を見たいけれど、それをするとちょっと変態だから止めておきます。
嫌われたくないもの!!
一緒に残業をしようにも、営業事務の残業なんてしれてるから。
年度末の作業増量だって、営業や課長代理たちに比べたら微々たるもの。
しかもわたしったら事前に備えていたから、残業なんて通常業務程度っていうね。
国分先輩のお手伝いをして頑張って残業したけれど、二人で片付けた分早く終わるだけ。
いっそ代わりに残業します! ……というのは即時却下されてしまった。
国分先輩は自分の仕事を他人に任せきりにして、用事も無いのに早く帰るような人じゃないから。
ほら例の、歳下二股最低野郎彼氏と別れたばかりだから。
いっそ合コンにでも行って来られてはどうでしょうか?
いや、アイデアとしてはいいと思ったけれど、怖くて提案出来ませんでした。
そんなこんなで課長代理とは一緒に帰れない日が続いた年度末。
その日は珍しく課長代理が定時で上がると聞き……他の営業さんたちとそんな話をしているのを、偶然聞いてしまったわたしは心の中で万歳三唱。
でもすぐに、ひょっとして何か用事があって急いで帰るのでは? ……と考えて意気消沈しました。
チーン……
一瞬でも喜んでしまうと落胆の落差も半端なくて、落ち込んだまま終業時間を迎えました。
「安積? 今日はまだ帰らないのか?」
終業時間を告げるチャイムが鳴ったのは知っていた。
知っていたけど気分が浮上しないまま終業時間を迎えてしまい、特に何をするわけでもなくパソコンの電源を入れたまま。
叩くわけでもないキーボードに手を乗せてぼんやりとしていると、課長代理から声が掛かる。
すでに終業時間を10分も過ぎていたのにはちょっと驚いたけどね。
いつの間にっ?!
「あ、いえ、帰ります。
お疲れ様でした」
乗らない気分で挨拶をしながらパソコンの電源を落とし、のっそりと腰を上げる。
それからのたのたと帰り支度をしていると、なぜか帰らない課長代理の視線が痛い。
えーっと、何か御用でしょうか?
「あの、課長代理?」
「支度は? 帰るんだろう?」
ん? それはひょっとしてひょっとするんですが、一緒に帰ってもいいんですかっ?
あの、お急ぎじゃないんですか? ……と思いつつも、なんか嬉しくてちょっとヤバい。
落ち着け、わたし!
いい? 落ち着くのよ、藍月。
落ち着けぇ~落ち着けぇ~落ち着けぇ~……と何度も自分に言い聞かせるんだけど、もうね、帰り支度をする手が震えてる。
マジやばいです。
薬とかがキレた何かの中毒患者みたいになってる、わたし!
ヤバすぎる!!
ど、どどどどど、ど、ど……しよ?
じ、じじじぶ、じぶ、んん、じ、ぶんでもね、たった5分の距離を……といってもわたしの速さに合わせてくれるから、その、実際には15分から20分くらい?
それでも全然短い時間をただ一緒に歩くだけなのに、それでこんなに嬉しいとか。
絶対にわたし、変な人よねっ?
こんなことが課長代理にバレたら、変な奴と思われて捨てられるパターン?
それこそ課長代理の性格だもの、ある日突然無視される感じ。
それで交際終了……みたいな?
いーやーっ!!
待って、待って待って待って。
そんなの嫌、悲しすぎる。
だって最初で最後の彼氏なのよっ?
そんな惨めな終わり方は絶対に嫌。
こここここ、こ、は頑張って平静に、平静に……と思うけれど手の震えが止まらない。
おかげで鞄に入れようとした携帯電話を落としてしまった。
拾ってくれた課長代理は、ついでとばかりに鞄にまで入れてくれて 「これだけか?」 と訊くから、「はい」 と答える。
あとは上着を着て帰り支度は終わり……と思ったら、鞄を人質に取られた。
お、お待ちください。
えっと、まさか上司様を荷物持ちにするわけには……と慌てて上着を着ると、先に歩き出してしまう課長代理。
もちろん出入り口にね。
だから待ってってば!!
「課長代理、お疲れ様です。
安積も」
慌てて課長代理を追いかける背後から、会川さんの挨拶が聞こえてくる。
それを皮切りに他の営業さんや事務員さんたちの挨拶が続き、足を止めた課長代理も 「お先に」 と挨拶を返し、わたしが追いつくのを待たずに歩き出す。
だから待ってくださいってば!
足の長さが違うのをお忘れですかっ?
30㎝の身長差は、そのまま足の長さの違いだと思う。
「階段でいいか?」
終業時間を過ぎてまだそれほど経っていないからね。
今頃エレベーターは超満員。
重量超過を報せるブザーは鳴らしたくないので、階段で結構です。
ちなみに朝とこの時間は、我が社のエレベーターは各階で重量超過を報せるブザーを鳴らせます。
みんないい歳した大人のはずなのに、根性で乗り込もうとするから。
ひょっとしたらどこの会社でもあるある?
それともうちの社員が大人げなさ過ぎ?
普通は上司が乗っていたら遠慮すると思うから、大人げ以前の問題かもしれない。
そんなわけで階段を使って無事一階に到着。
そのまま社屋を出て駅へ向かう途中……それこそ会社を出てすぐに、課長代理がこんなことを言い出した。
「俺になにか用があったんじゃないのか?」
「用ですか?」
課長代理が妙に帰宅を急かすと思ったら、どうやら話があったらしい。
それもわたしに訊きたいことが。
でも心当たりがないわたしが首を傾げると、課長代理はコートの裾をめくるようにズボンのポケットをごそごそし始める。
「用ではなく、訊きたいことだな」
そう言いながらポケットから携帯電話を取り出すと、立ち止まって画面をポチポチと。
綺麗な長い指で手早く操作。
そしてとある文字列を映した画面をわたしに見せる。
【兄たちとの口裏合わせは不可です】
…………あ……あぁぁぁぁぁぁぁーっ!!
覚えておられましたでしょうか、あの件を。
作者は途中まですっかり忘れておりました。
なのでどこにねじ込むかを考えた結果、イベント終了後に置くことにしました。
この話は次話で解決(?)
次々話は本編に戻ります(予定




