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53 ギルドマスターは我が儘を晒されます

pv&ブクマ&評価、ありがとうございます!


そして今日も早々に修正を入れます・・・〈涙

第二回イベント 最終順位


 1位 アールグレイ 【素敵なお茶会】 主催者

 2位 ノギ      無所属

 3位 クロウ    【素敵なお茶会】 サブマスター

 4位 ノーキー   【特許庁】    主催者

 5位 カニやん   【素敵なお茶会】 サブマスター

 6位 ラッキーセブン【鷹の目】    主催者

 7位 クロエ    【素敵なお茶会】 サブマスター

 8位 不破     【特許庁】

 9位 ライカ    【暴虐の徒】   主催者

 10位 しば漬け   【素敵なお茶会】

 11位 ミンムー   【素敵なお茶会】

 12位 シシリー   【シシリーの花園】主催者

 13位 串カツ    【特許庁】

 14位 ポール    【暴虐の徒】

 15位 リー      無所属

 16位 ……      …………


 ムーさんがギリギリ10位入賞を逃したのが凄く惜しかったんだけど……見事に覚えのある名前が並んでる。

 三大ギルドっていわれている 【素敵なお茶会】 【特許庁】 【鷹の目】 の主催者(マスター)は全員揃っているし、【暴虐の徒】 っていうのは最近頭角を現わしてきたギルドらしくて、このライカって人は前回のイベントでも名前を見た気がする。

 前回のイベントは団体戦でパーティーリーダーしか名前が出なかったってこともあるから、14位のポールって人もいたのかもしれない。

 ちなみに8位にランクインしている 【特許庁】 の不破さんっていうのは蝶々夫人の片腕みたいな人で、結構硬い剣士(アタッカー)

 主催者(マスター)はノーキーさんなのに、その片腕じゃないところが 【特許庁】 よね。

 装備とか髪型なんかはいかにも 【特許庁】 って感じの派手さなんだけど、話したらごく普通の常識人。

 結構面白い人で、【特許庁】 じゃノーキーさんの次くらいに強い人なんだって。

 その 【特許庁】 からはもう一人13位にランクインしているんだけれど、この人はちょっと覚えがないかな?


「串カツ?」


 わたしの呟きに食いついたのは柴さん。

 運営の音声インフォメーション主導で行われた表彰式などの諸々が終わり、それでもナゴヤドームの中央広場には興奮冷めやらぬ様子のプレイヤーで盛り上がっていたんだけれど、わたしたち 【素敵なお茶会】 はそんな喧噪を避けてギルドルームで反省会という名の休憩中。

 ソファのほうは年少組がくつろいでいて埋まっているから、わたしたち年長組はテーブル席で顔を合わせていた。


「知り合い?」

「たまにパーティーメンバーに空きがある時に混ざってたな」

「そこそこ硬いけど、ちょっと油断が多い」


 そうなんだ。

 ムーさんも知ってるんだ。

 ちなみに15位に入賞しているリーって人はカニやんのフレンドなんだって。


「俺の知り合い(フレンド)、ソロが多いから」


 そうなんだ。

 だったら勧誘してくれてもいいのに。

 さすがにギルドに所属しているってわかっている串カツさんを誘えとはいわないけど、ソロってわかってるならさー、ちょっとは協力してくれてもいいじゃない。

 むすっとして口尖らせたら、カニやんてばいつものようににひって笑うの。


「その件、そのうちちょっと相談があるかも。

 向こう次第だけど」


 これは期待してもいいのかな? って思うんだけど、食いつきすぎたらまた笑われるから、ここは抑えておく。

 でも顔には出ていたのかもしれない。

 食いつかなかったのに、やっぱりカニやんに笑われた。


 くそっ!


「この不破って、前回もノーキーさんと同じパーティーだった人だよね」

「不破、ライカ、死ね」

「ムーさん、逆恨み」

「最近この 【暴虐の徒】 ってよく聞くよね」

「このあいだメンバーが一〇人越えたって話聞いたけど」

「それよりこのシシリーって例の?」

「ああ、スザクの修正原因か」


 第二回公式イベントが終わったばかりなんだけれど、すでに第三回イベントの噂が出ている。

 まぁ開催はされると思うんだけど、気になるのはその内容。

 第一回イベント終了後に運営が採ったアンケートの結果第一位がプレイヤー同士のバトルロワイヤルだったんだけど、第二位がギルド対抗戦。

 第一位だったバトルロワイヤルが第二回イベントで実施されたから、第三回は……って考えてみんな意識してるのかな?

 他のギルドの情報や、最近の傾向とか探ってるみたいな会話が、わたしをそっちのけにしてテーブルの上を飛び交っている。

【暴虐の徒】 っていうのは確かに最近よく聞くギルドなんだけど、もう一つの 【シシリーの花園】 っていうのは初耳のような?

 うん? ……あ、でもシシリーっていう名前には覚えがあるかな。

 それにスザクも気になる。


「さすがにグレイさんも、ちょっと前にスザクが修正されたのは知ってるよね?」


 ちょっとクロエ、わたしのことをどんだけ馬鹿だと思ってるわけ?

 もちろん知ってるわよって噛みついたら、向かいにすわるカニやんが苦笑いを浮かべる。


「ま、グレイさんだから」

「それ、どういう意味?」

「とりあえずグレイさんが食いついたから反省会を始めますってことなんだけど、スザクの話とクロウさん殴るのと、どっちを先にする?」

「クロウを殴る」


 間髪を置かず、迷わず答えるわたしに全員がなぜか大きな溜息を吐く。

 その理由がわたしにはわからないんだけれど、泣いて気分はすっきりしたけど、殴るのは諦めていません!

 どんなに険しい顔をして睨んでもこの垂れ目じゃ迫力がないってことは百も承知なんだけど、ちょっとぐらい主催者(マスター)の威厳みたいなものが欲しいって、こういう時は切実に思う。

 今だって結構真剣に怖い顔をしてみたんだけど、カニやんにはもう一つ溜息を吐かれちゃった。

 そんでもって仕切られる。


「じゃ、そっちの話を先にしてもいいけど……」


 言い掛けたカニやんがちらりと見たのはトール君。

 そういえばクロウの件ですっかり頭に血が上っていたんだけど、トール君にもいわなきゃいけないことがあったっけ。

 トール君もわかってるから、反省会が行われているテーブル席の側にすわってはいるんだけど、一番隅の椅子で小さくなっている。


「すいませんでした」


 先に謝るとかちょっと卑怯だと思うけど、トール君だもんね、どこまでも真面目。

 ここで脳筋コンビが追い打ちでも掛けるかと思ったけど……いや、うん、掛けたんだけど違う方向だった。


「お前も馬鹿だね、わざと落とさせようとするとか。

 バレないとでも思ったわけ?」

「そんなことしたってどうせお前じゃ落とせないんだから、胸借りるつもりで挑めばよかったのに。

 触ったら旦那に殺されるけどな」

「本気で落とすつもりで行けっての」

「別の意味で落とされる覚悟決めてな」


 そうそう、わたしもそれが言いたかった。

 言いたいことは全部……まぁちょっと余計なことも入ってたけど、それはあとでお仕置きするってことにして……凄くわかりやすく二人が言ってくれたから、わたしもカニやんも言うことがなくなっちゃった。

 わたしと顔を見合わせたカニやんは、少し笑うように肩をすくめてみせる。


「それこそクロエみたいにさ、一緒に邪魔なの片付けて、そのあとで堂々とバトらせてもらうとか」

「いや、クロエのあれ、ギルマスに片付けさせてたじゃん。

 むっちゃ利用してたじゃん」


 うーん、さすがにクロエみたいにわたしを……ううん、わたしに限らず、他のプレイヤーをあんなに上手く利用するなんて、そんな簡単にできることじゃないでしょ。

 むしろあれはクロエだから出来たんだと思う。

 頭の回転が速くて、腹黒いクロエだから。

 ものの見事にわたし、利用されちゃったもんね。

 しかも下手をしたら撃たれていたし。


「えーでも僕、あの一撃は本気で撃ったんだけどな」


 うん、やっぱりそうよね!

 しかもそれを堂々とわたしの前で告白しちゃうとか、どんな神経してるのよ、クロエってば。

 もうね、絶対クロエの心臓には毛が生えてるわ。


 剛毛ボーボー


「どのみちあの一撃じゃグレイさん落ちないし、当たってもつまんないんだけどさ」

「おい、クロエ……」

「普通に当たられちゃ、僕の目論見が外れちゃうでしょ。

 だから当たられちゃ困るんだって」


 さすがにわたしを気の毒に思ってくるくるが止めてくれるんだけど、もうクロエの本音は全部出ちゃってるから遅いの。

 気を遣ってくれたくるくるには悪いけど、わたし、全部聞いちゃってるから。

 しかもクロエはその本音をずばずば言っちゃうノリのまま、本題に突き進んできた。


「だいたいさ、グレイさんは我が儘でクロウさんのこと怒ってるわけでしょ?」

「そこは俺も否定しない」


 ……否定してくれないんだ、カニやんも。

 ちょっとショックを受けて呆気にとられるわたしを、カニやんやくるくるとかが気の毒そうに見てくる。

 なんか、みんな凄い憐れみの目でわたしを見るって……えっと……ちょっと意味がわかんないんだけど……わたし、何か変なことしてるの?

 わたし、そんなにひどい我が儘言ってるの?


「変なことっていうかさ、まずグレイさんは自分がギルマスだって自覚はある?」

「あるわよ、もちろん」


 そりゃま、わたしがこの 【素敵なお茶会】 の主催者(マスター)になった理由というか、経緯はちょっとあれなんだけど、でも引き受けたからにはちゃんと自覚してます。

 そんなの当たり前でしょ?

 カニやんはわたしが主催者(マスター)になった経緯は知らない……のよね?

 うん、知らないはずよね。

 でも、カニやんが知らないなら、クロウとクロエ以外は知らないってことになるんだろうけれど、わたし、そんな無責任に見える?


「無責任じゃないけど、無自覚だとは思う」

「クロエ、せっかく俺が遠回しにいってるのに、お前は……」

「そうやってクロウさんやカニやんが甘やかすから」

「悪いな、俺は美人に弱い」


 こういう時のカニやんって強いわよね。

 みんなの前で堂々とにひって笑うの。

 釣られたわけじゃないだろうけれど柴さんやムーさんまでが……


「俺も美人、好き」

「男はみんな美人が好き。

 悪いか?」


 ……悪くはない……と思うんだけど、誰もそんなこと訊いてないから。

 わたしも綺麗な人とか可愛い子って好きよ。

 好きなんだけど……そもそもこれ、なんの話?

 誰が美人で、美人がどうしたっていうのよ?

 ねぇ、話、戻してもいいかしら?

 わたしの首がもげそうなほど傾いでるのを見て、気の毒そうな顔をしたぽぽが、カニやんの肩を突いて話を促す。


「グレイさんに主催者(ギルマス)の自覚が足りないってのもあるんだけど、考えてることが丸わかりなんだよ。

 あそこでクロノスハンマーを使って剣士(アタッカー)三人を足止めして、ノギさんノーキーさんを各個撃破するって、どう考えたってクロウさんを庇った戦略でしょう。

 なんで自分はクロウさん庇って戦ってるくせに、クロウさんが自分を庇うのはダメなわけ?」

「……ダメ、でしょ?」


 どうしてクロウがわたしを庇うの?

 だってあの状況じゃわたしが落ちるのは決まっていたことなんだし、だったら少しでもクロウを無傷で残したいじゃない。


「いや、落ちるの決まってないし。

 だってグレイさん、あの状況でノーキーさんとノギさんに一撃ずつ食らっても落ちない自信あったんでしょ?」


 うん、それはあった。

 でもクロウまで参加されるとさすがに厳しいのも事実。

 だから杖は握り直したけれど、鎌は展開しなかった。

 あれは切り札だから、ギリギリまで隠しておきたかったの。


「あの状況で、あの二人にとってクロウさんとグレイさん、どっちが邪魔かっていえばグレイさんなわけで、当然詠唱の邪魔をしてくる。

 それをクロウさんが邪魔するのは当然じゃないの?

 だってあの二人にとって邪魔なグレイさんを生き残らせるほうが、クロウさんには都合がいいんだから」


 それは……そうかもしれないんだけど……どうなの、クロウ?

 隣にすわるクロウをちらりと見たら……え? ……えっとクロウ、ひょっとして機嫌悪い?

 ちょっとその……不安になるくらい機嫌が悪そうなんだけど、クロエはともかく、カニやんも気がついているみたいで、ちょっと話しにくそうではあるんだけど、わたしが納得しないから話さなきゃならないっていうね。

 カニやんにはとんだ罰ゲームなんだろうけれど……ひょっとして、実はクロウってば、ずっと怒っていた、とか……?


 こ、怖くて訊けない……


「逆にあの二人は、クロウさんがグレイさんを庇うってことぐらい読んでたと思う。

 その読みどおりに動いちゃった時点でクロウさんの負けは確定してる」

「そもそもクロウがわたしを庇う必要がない」


 わたしが怒っているのはそこなのよ、そこ!

 だって今回は個人戦なんだから、それこそあの二人と一緒に邪魔なわたしを落とせばよかったんじゃない。

 でもカニやんは苦笑いを浮かべるのよね。


「だからさ、個人戦個人戦っていうわりに、どうしてグレイさんは自分が生き残る方法を考えないわけ?

 あの瞬間だって二人の間合いから後退するとか、あったでしょ?」


 それは無理。

 後方に飛んで避けたって衝撃波は避けられない。

 どうやってもわたしが無傷であの場を切り抜けることは出来ないのよ。


「女王は完璧を求める主義だからな」

「潔癖じゃないからいんじゃね?」

「っていうか、クロノスハンマーなんてまどろっこしいことせずに、業火で三人まとめて溶かしちゃえばよかったんだよ。

 各個撃破なんて面倒なこと、する必要ないでしょ」


 脳筋オッサンコンビの冷やかしはともかく、クロエってばまた……。

 うん、クロエならやっちゃうかもね。

 銃士(ガンナー)に範囲攻撃がなくて、つくづくよかったわ。

 そう思ったんだけど……ううん、逆ね。

 クロエが、範囲攻撃のない銃士(ガンナー)でよかった……が、正解ね。


「詠唱を始めてしまえばグレイさんは最強火力なんだから、三人が溶けるまで唱え続ければいいわけでしょ。

 動けない剣士(アタッカー)なんて、グレイさんの敵じゃないんだから」


 つまりそれって……わたしにクロウを落とせ、と……?

 クロウを巻き込まない方法ばかりを考えていたわたしには意外すぎてちょっと頭が真っ白になっちゃったんだけど、 「大丈夫?」 とカニやんに声を掛けられて我に返る。

 でも、言われてみれば、確かにそれも出来そうなんだけど、でもそれをする勇気がわたしにはなくて……たぶんね、怖いから。

 怖いついでに恐る恐る隣のクロウを見たら……うん、さっきより怒ってるし……ひぃ~。

 もうね、不機嫌通り越して怒ってる。

 これは絶対に怒ってる。

 ……えっと、つまり、それだけわたしが自分勝手だってこと?

 わたしが自分勝手すぎてクロウが怒ってるってこと?


「……なんでそうなるわけ?」

「なんでって……いや、そこはグレイさんだからそうなるんじゃね?」


 カニやんはすっごく困ったような顔をして頭を掻いてるんだけど、少し苛立ったようなクロエはずばっと斬り込んできた。

 真っ直ぐにクロウを指さして断言したのよ。


「【素敵なお茶会(うちのギルド)】 で一番我が儘なのはこの人でしょ」

「……クロエ、指をさすな」


 クロウの声はいつもどおりいい声なんだけど、怒っているせいか、いつもより少し低いような気もするんだけど、この怒りが、わたしに対して怒ってるんじゃなくて、クロエが指摘した事実をみんなの前で晒されることを予想してたからだったなんて、誰が予想出来るのよ?

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