表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルドマスターは今日もギルドを運営します! ~今日のお仕事はなんですか?  作者: 藤瀬京祥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

529/810

529 ギルドマスターは申請を攻防します

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告、ありがとうございます!



例によってサブタイトルはあれですね。

意味は本文にて・・・(大汗

information ギルド加入申請が届いています


 ログインしてすぐ、わたしの手元に表示されるインフォメーション。

 やだ、久しぶりじゃない! ……とうっきうきで開いてみたら、ちょっと考えることになった。

 そしてうっかりインフォメーションに気をとられてしまったため、ルゥの頭突きを食らった。


 ぁ……あぁぁぁぁぁぁぁーっ!!


『なにやってんの?』


 痛すぎて 「顎」 と言うことも出来ず、両手で顎を押さえながらギルドルームの床を転がりまわるわたしに、いつものように一緒に転がって遊びだすルゥ。

 そ、その楽しそうな、超絶可愛い姿も見たいんだけれど今は無理。

 だって痛すぎて、呼びかけてくるカニやんの声に答えることも出来ないほど。

 そのカニやんも、すぐに余計なことを言ってしまった……とばかりに呼び掛けを撤回してきた。


『やっぱいい。

 なにやってるかわかった』


 うん、ごめん。

 ちょっと返事をする余裕がありません。

 今日もログイン早々、まだ挨拶もしていないのにこの様です。

 ギルドルームの床を、スカートの裾を蹴り上げて転がっています。

 しかも一緒に転げ回っていたルゥが、途中でスカートの裾に気がついて巻き付いて遊びだし、結果、わたしの足にルゥとスカートの裾が巻き付くという複雑怪奇な現象が起こりました。


 解けません


 スカートの裾がねじれ上がって紐状になって、ルゥとわたしの足に絡みついているというか、ルゥをわたしの足に縛り付けているというか。

 しかもルゥが無理矢理に動こうとしてことさら締め上げてくるのが、痛いじゃすまない。


 折れるっ!!


 これ、アバターじゃなかったら絶対に足が折れてる。

 だってルゥってば、【幻獣】 の怪力でわたしのゴボウみたいな足をガンガン殴……フッ……らないで、痛いってば!

 抜け出すのに邪魔だからって、そのへんの木の枝じゃないんだから折ろうとしないで頂戴!

 絶対にルゥってば、わたしの足をそのへんの破壊可能(・・)置物(オブジェ)と思ってる。

 だって容赦なく……あぁぁぁっ!


 囓らないで!!


「ルゥに食べられるっ!!」

『身を粉にして食べられろ』

「使い方が違う!」

『いや、ある意味合ってね?』

『合ってる』

『そういう使い方もあり』


 このクソ脳筋どもめ!


 ほんと、どんだけカニやんが好きなのよ、この二人は!

 なんだかんだ言ってカニやんがピンチの時は助けてあげるんだから。

 と、とりあえずクロウ、そこで黙って見てないで助けてよぉぉぉぉ~!


 本当に痛いんだってば!!


 わたしがルゥの頭突きを食らってからログインしてきたと思われるクロウは……まぁ床をルゥと一緒にのたうち回っているのを見れば、だいたい何が起こったのかは想像がつくはず。

 なのにその場に直立したまま眺めていたっていうね。


 助けてよ!


 ルゥに 「ぎゅ~ぎゅ~」 と文句を言われながらもようやくのことで助けてくれるんだけれど、足とかがっつり掴んで扱いが雑。

 挙げ句に……


「折れそうだな」

「……折らないでね」


 本当に折られそうなので、念のために言っておく。

 でもそのタイミングで新たなインフォメーションが表示される。


information ギルド加入申請を拒否しました


 え? ちょ、ちょっとっ?

 ま、待ってよちょっと、誰の仕業っ?

 わたしの足を握ったまま……ちょっとクロウまでわたしの足を、そのへんの棒きれみたいに扱わないでくれる?

 そのクロウの手元にも同じインフォメーションが出ているのは、副主催者の権限を持っているから。

 さっきのと今のインフォメーションは各ギルドの主催者と副主催者にしか出ず、権限を持たないメンバーが見ることはない。

 でもわたしは何も操作していない……ということは、残る四人の副主催者の誰かということになるんだけれど、クロウはインフォメーションが出る直前までわたしの足を……いや、今も握ってる。

 うん、まぁわたしの足を握っていてウィンドウの操作はしていなかった。

 ということは他の三人ということになる。

 可能性としてクロエは低くて……あまり副主催者としてのお仕事をしないというか、関心が無いというか。

 残りはカニやんと恭平さんの頭脳派(インテリ)コンビ。

 消去法で絞らなくてもこの二人の可能性は高いんだけど……


「どういうこと?」

『なにが?』

「なにがじゃないでしょ?

 今のインフォメーション」

『いつも通りクロウさんじゃないの?』

「クロウのせいにしないでよ!

 どっち? ……というか、この流れだとカニやんね」

『他の容疑者は?』

「恭平さん」

『うん、俺』


 意外にもあっさりと自白されました。


「どういうことか訊いてもいい?」

『どうもこうもない。

 このあいだイベントのあとで話したじゃないか、ア子はダメだって。

 だから何度申請されても拒否で対応』


 そうなの。

 どんな心境の変化があったのか?

 これまでずっと……といってもア子さんがいつからゲームをしているのか知らないけれど、でもずっとソリストとして活動していたはずのア子さんがプレイ嗜好を急転換。

 【素敵なお茶会】 に加入申請をしてきたの。

 わたしがログインした時に表示されたインフォメーションが知らせた加入申請が、そのア子さんからのものだったのに、相談もなく恭平さんが拒否したっていう……ん?

 んん? 何度申請されても拒否って、何度も申請があったの?

 今日の申請が初めてじゃないの?


 どういうことっ?


「誰か説明して……の前にクロウ、いい加減足を放して」


 いつまで握ってるのよ?

 そろそろ放してくれないとルゥをけしかけるわよ! ……とわたしが怒った振りをしたらようやく放してくれるんだけれと、もちろんルゥが怖いってわけじゃない。

 さっきも、せっかくクロウが解こうとしてくれているのに、不機嫌にわざと余計に絡めようとしたルゥに拳骨を落として一触即発になってたくらい余裕です。

 そのルゥを抱えたまま、とりあえず話を聞こうと思って床から椅子に移動。

 改めてカニやんと恭平さんに尋ねる。


「で、どういうこと?」

『どうって、さっき説明したとおり』

『あいつは絶対あかん』

『納得しない女王に補足しておくとだな、迷宮での騒ぎを覚えてるか?』


 カニやん擁護派の一人、柴さんが言い出すのは、東京砂漠の地下にある巨大迷宮で悪戯騒ぎがあったあれね。

 落とし穴の落下地点でわざと蟻地獄を孵化させておき、東京砂漠から落ちてきたプレイヤーを蟻地獄の餌食にしようとした騒ぎ。


「覚えてるわよ」


 だってあの騒ぎにはラウラも関わっていたし。

 忘れようとしても忘れられないというか、最近のラウラの様子が全然伝わってこないから、ひょっとしたら引退したのかもしれない。

 気にはなるけれど、かといって双子の兄弟、キンキーに聞くのも気が引けるし。

 それでわからないままなんだけど、その騒ぎがどうかした?


『ア子はあれをやった一人』

『それがなにを思って今さらギルドに入ろうとしてるのかは知らんが、ろくなことはない』

『あんなのを入れたらギルドの評判が落ちる』


 まぁね、柴さんやムーさんのいいたいこともわかる。

 でもこの中で、直接ア子さんと会ったことのある人はいる?

 やっぱり一度本人と会って直接話を聞いてみるべきだとわたしは思うんだけれど、インカムの向こうにいる四人は、反対どころかその必要すらないって。


『いや、直接会ったことあるって』

『女子高生っつっただろ』

『あいつ、地下闘技場(フェイト)でもノギとか真田とか怒らせてて』

『今回のイベントは呪いの布教で大荒れだったから、あのランキングはまぐれ。

 あいつ、不破の眼中に全く入らないような奴だから』


 つまり、実際はあまり強くないってことよね。

 でもそこはあまり問題じゃないでしょ。

 一緒に楽しく遊べるかってことだから。


 協調性とか?


『それもないから』


 うん、ノギさんどころかあの真田さんまで怒らせてるって話だっけ?

 うーん、そうね、それはちょっと困るかも。


『おい待てや』

『俺らの話より、真田の怒りのボルテージが基準ってなんやねん?』

『あいつ、女王が思てるより短気やぞ』


 そうなの?


 わりといつも冷静だと思うけど。

 じゃあこうしましょう。


「もし、またア子さんから申請が来たら会って話を聞いてみる。

 でもさっきの拒否で向こうが諦めたら、この話は終わりってことでどう?」


 もちろんインカムの向こうの四人は全然納得してくれなかったんだけれど、ア子さんのほうから押しかけて来ちゃったら仕方がないわよね。

 まさか追い返すわけにも行かないし。

 でも現在 【素敵なお茶会】 は、公式サイトでのギルドメンバーの募集を行なっておらず、メンバー情報の公開はもちろん、ギルドルームの位置情報も公開していない。

 公式サイトでの募集を行なっていなくても、最大人数である50人に達しているか、あるいはギルド側が申請機能を停止していなければ手入力(マニュアル)で申請出来るし、ギルドルームに入れるのはギルドメンバーだけだから公開しても問題ないといえばない気もするけれど、念のために今は非公開にしてある。

 なのにア子さんがギルドルームの場所を知っていた理由がトール君って、どういうこと?

 よくわからないんだけれど……まぁとにかくギルドの情報は公開していないはずなのに、わたしとクロウが、ルゥの散歩をしながらギルドルームを出ると、下の階にある居酒屋というか、宿屋の食堂?

 まぁそんな感じの場所でア子さんが待ち受けていた。


「はっじめまして、ア子でっす」


 こちらが認識するよりも先に声を掛けてきたア子さん。

 わたしは彼女の顔を知らないから当然といえば当然なんだけれど、食堂感を演出するNPCたちのガヤよりも大きな声で挨拶をしてきたというか、有無をいわせぬ自己紹介をされた。

 この感じは、どう見ても偶然会ったというわけではなさそう。

 つまり彼女はこの場所を知っていて、あらかじめ待ち伏せしていたってことかな。


 内通者がトール君って、どういうこと?

ア子の登場です。

トールが内通者というのは嘘か事実か?

そもそもなぜこうなったのか・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ