441 ギルドマスターは大人の余裕もありません
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information ギルド 【鷹の目】 が
鬼神・英胡 / 種族・幻獣
鬼神・軽足 / 種族・幻獣
鬼神・土熊 / 種族・幻獣 と遭遇しました。
インフォメーションは敵NPCとの接触を報せてくれるけれど、ギルド同士の接触は報せない。
それを考えると、【特許庁】 の周辺には 【鷹の目】 以外のギルドも集まってきていると思われ、乱戦が繰り広げられていることも予想出来る。
むしろ比較的早い段階で酒呑童子と遭遇した 【素敵なお茶会】 が、ここまで他のギルドと遭遇しなかったことが幸運なのかもしれない。
でもそんな幸運もここまで。
酒呑童子に続き土蜘蛛との遭遇でこの場に足止めをされている 【素敵なお茶会】 に、後続のギルドが追いついてきた。
報せてきたのはもちろんクロエ。
その目視による情報によれば規模は十人前後で、別途銃士あり。
職はやはり……というか、多くのギルドがそうだと思うんだけれど、剣士が大半を占め、魔法使いとおぼしき装備が一人、二人。
ゲーム全体でも剣士の数は圧倒的多数だしね。
もちろんアキヒトさんのように機動力を重視した装備の魔法使いもいるし、見掛けからは回復系魔法使いと攻撃系魔法使いの違いはわからない。
同じく、生産職が作ったと思われるオリジナル装備が多く、レベルの推測も難しい。
つまりそれ以上はわからないけれど、すでに交戦は始まっていて、わたしたちも抜けてきた森の中で銃声が響き渡っている。
ここで気になるのはベリンダ。
彼女は鬼退治のためにぽぽとくるくるのサポートに付いているだけだから、一人で三人を守るのはちょっと厳しい。
無理
今は、よっぽど新しいギルドとかお友達ギルドとかでない限り、そこそこ高レベルのプレイヤーがどこのギルドにも一人はいるもの。
しかも職別の人口比率に応じて、その高レベルプレイヤーが剣士である確率も高い。
同じ物理攻撃の接近戦職。
人数で囲まれる分には速さで逃げ切れそうだけれど、まともに対峙しても勝ち目はない。
ベリンダの武器は短剣で、速さでカバーしているとはいえ間合いが凄く短い。
しかも軽く、重装甲が相手だとダメージがほとんど通らないという欠点がある。
それこそ大剣が相手、あるいは盾剣士が相手となれば易々と弾かれてしまう。
『大丈夫。
適当にあしらうから』
『そんなに若くないんだから、無理しないでね。
お姉様』
『口の減らないお子様ね』
だから喧嘩しないでってば。
ベリンダとクロエって、仲悪かったっけ?
ちょっと心配になるんだけれど、カニやんには 「放っておけ」 と言われる。
うん、まぁ今のわたしは人の心配なんてしている場合じゃないんだけどね。
今度は反対側の脇腹を斬られて痛い!
しかも一度に削られる量は微々たるものでも、回数を重ねると結構な量になる。
疲労の蓄積……というより、塵も積もれば山となる感じ?
「直撃じゃないとはいえ 【幻獣】 にあれだけ斬られてまだ無事って、どんな魔法使い?」
「全然モヤシじゃねぇよな」
「HP? それともVIT?」
VITには最低限しかポイントは振ってません。
HPを上げるにはSTRかVITにステータスポイントを振る必要があるけれど、どちらも魔法使いには必要ない。
それどころかその二つに振ってしまうと、必要なINTに振れるポイントが減ってしまうから必要最低限だけ。
ただレベルごとの基本パラメーターがあるから、その分だけ三人よりHPは高いと思う。
つまり今のわたしはそれだけで保っているってことかしら。
やばい
このままだと落とされるかも。
ちょっと回復……したいんだけど、させてくれないのよね。
まぁ酒呑童子もわたしを落とすのが目的だし、易々とは回復させてくれない。
でも回復したいから……
「起動……演蛇」
少しのあいだ、大人しくしていてね。
MPが必要な状況だから術ではなくポーションで回復するんだけれど、慌てるあまり間違えてMPポーションを何本か割ってしまった。
ま、まぁいいわよね、MPも回復したかったし。
えっと、HPポーション、ポーション。
『急ぎなよ』
不意にクロエの声がインカムから聞こえてくる。
撃ち合いが終わったってこと?
そういえば森の中の銃声が聞こえなくなっているような気が……と思っていたら、まずはぽぽが。
そしてくるくる、ベリンダと森を出て来て、最後にクロエが走ってくる。
クロエは追いついてきたギルドの銃士を落とすと言ったけれど、足止めするとは言っていないもんね。
だから当初の仕事を終えて撤退してきた。
それでいい
いつものクロエなら自分たちを切り捨てろというところだけれど、むしろ今回は本隊を切り捨てて離脱すべきところ。
でもそれはしないって、どんな男前よ。
美少年なのに。
しかもクロエだからね、尻尾を巻いて負け犬のように逃げたりはしない。
森を抜けて梅林に入ったところで、追いついてきた見知らぬ剣士に向けて超近距離射撃ラピッドマスターの三連射で応戦。
相手がどの程度のレベルかはわからないけれど、三発とももろに食らって大量のHPを流出させる。
別のギルド接近を報せるクロエの声を聞いてすぐ、いつでも森に退避出来るよう陣取っていた回復系魔法使いの位置変更を指示した恭平さん。
それを受け、ゆりこさんのINTの高さを考慮したパパしゃんが、酒呑童子から離れた位置へ誘導する。
万が一にも攻撃型魔法使いが全滅した時に備え、対土蜘蛛戦を挟んだ反対側へ。
かなりの無理があるけれど、万が一の事態には土蜘蛛をクロウ一人に任せ、脳筋コンビ二人で酒呑童子を足止めするって算段ね。
仮に対土蜘蛛戦のメンバーが全滅したとしても、土蜘蛛はSTRに反応していると思われるから、ゆりこさんやキンキーには見向きもしないはずだし。
かといって離れすぎると鬼に襲われるから、学生三人組のフォローが届く範囲内。
そして指示を出した恭平さん自身は剣を構え、クロエのラピッドマスターをもろに食らい、大量のHPを流出させて尚クロエに斬り掛かる見知らぬ剣士を袈裟懸けに斬り捨てる。
直後、おそらく斬られた剣士の援護をしようとしたと思われる魔法攻撃が飛んでくるけれど、残念なことに恭平さんは魔法を反射する一風変わった剣士。
常時発動スキル 【震える鏡】 の所持者であることはそこそこ知られていると思っていたけれど、剣士界隈だけの話なのか、偶然放った魔法使いが知らなかっただけなのか。
自分が放った魔法を返され、やっぱりHPを流出させたところを斬られる。
恭平さんは元々魔法使いだったから、詠唱から術の発動タイミングなんかもよくわかっているし、単騎で敵陣に突っ込むような無謀もしない。
いくら恭平さんがランカーとはいえ、多勢に無勢は不利だもの。
下手に突っ込めば、剣士数人に囲まれて袋叩きに遭うことぐらい当たり前のようにわかっているから、そのへんは全く心配していない。
森から退避してきた銃士の援護が受けられる範囲で、自由にしてくれて大丈夫よ。
ただ、森から銃士の援護がなくなった分、学生組はちょっと負担が増えるけれど、もうちょっとだけ頑張ってね。
わたしも顔を斬られながらも頑張ってるから。
ねぇ、酒呑童子ってばわたしの顔狙ってるの?
わざとっ?!
「それ、顔じゃなくて首狙ってね?」
「俺もそう思った」
「さっきからずっとそうだと思ってたけど」
あまりにも執拗に顔ばかり斬られるから、てっきりわたしの顔が酒呑童子の嫌いなタイプかと思ってたんだけど違うのね。
しかもカニやんやの~りんはともかく、アキヒトさんまで気がついていたことに、今の今までわたしだけ気づいていないなんて。
不覚!
「ちょっとちょっとギルマス、俺のことなんだと思ってるわけ?」
お巫山戯が過ぎて、恭平さんに叱られてばかりの人?
そうやって恭平さんの気を引いて、JBに勝とうとしてるんだと思っていたけれど、違うの?
「違う!
ってか、マジで俺のことなんだと思ってるわけっ?
俺とキョウちゃんのこと、そんな邪な目で見てるわけっ?」
だって自業自得じゃない。
さっきも言ったけれど、八つ当たりは酒呑童子にしてね。
ついでに落としてくれると助かるけど……ん? 邪って何?
どういう意味?
「これ、俺らもさっき言ったけど」
「アキヒトさんの火力だけじゃ難しいから」
わかりました。
今度こそ本気で酒呑童子を落とします。
「今まで本気じゃなかったのかよ」
「あの火力で手抜きだったんだ」
「でも酒呑童子、落ちないけど」
それは 【幻獣】 だからです。
一つ思いついたんだけど、土蜘蛛も酒呑童子も、新手のギルドの剣士と魔法使いに狙いをとらせて横殴りしない?
そのほうが安全だし、やりやすいと思うの。
どう?
「どうって……この人、なに言ってんの?」
「ちょっとクロウさん、嫁が頭とち狂ってるんだけど?」
「いつもどおりだと思うが?」
わたしなりに名案だと思ったのに、カニやんには 「迷案の間違いだろう」 と否定され、クロウの返事にの~りんと二人、頭を抱える始末。
なに? 何が間違ってるの?
「だから! これもさっき言ったけど、グレイさんよりINTの高いプレイヤーはいないんだよ!」
「ついでに言うと、クロウさんよりSTRの高いプレイヤーもいないんじゃない?」
なるほど
確かにクロウよりSTRの高いプレイヤーとなると、可能性があるのはノーキーさんとかノギさん?
でもソリストのノギさんはこのイベントには参加出来ないから、あと真田さんくらいかな。
そういえば 【特許庁】 が当たった三人組の鬼も、何かの特化型でステータスのいずれかに反応するのかしら?
「その可能性は高いけど、確かめに行きたきゃ、まずはここを片付けないとね」
わかりました。
じゃあ今度こそ本気でいきます……というか、今までだって十分本気だったのよ。
でも落ちないのが 【幻獣】 じゃない。
「起動……焔獄」
わたしが詠唱を始めると、術の発動のタイミングをずらして詠唱を始めるカニやん、の~りん、アキヒトさん。
決して今まで手を抜いていたわけではなく……そもそもなにが楽しくて、散々顔を斬られてまで手を抜くのよ?
手を抜いて時間を稼ぐくらいだったら、さっさと倒しちゃうに決まってるじゃない。
掠る程度とはいえ、斬られれば痛いんだから。
しかも顔って、目のすぐそばを刃物が通るから怖いのよ。
「女の人の顔を斬るっていうのもどうかと思うけど、NPCだしな」
そういうのは、酒呑童子に止めを刺した直後のカニやん。
ほら、魔法使いだって頑張れば出来るのよ。
本気出したとたんにすぐ落とせたじゃない。
前半で剣士に散々削ってもらったことはちゃんと忘れてないわよ、もちろん。
ありがと
「さて、どうする?」
アキヒトさんは嬉々として恭平さんのサポートをしてくるといって駆け出し、心配したの~りんはそれを追いかけていった。
残ったカニやんに言われるまでもなく、わたしだって考えてるわよ。
土蜘蛛を先に叩くか、集まってくるギルドを蹴散らかすか。
さて、どうしよう……
フロントメンバーの影で目立たない恭平ですが、強いんです。
倉庫番が本業だと本人も言っていますが、強いんです・・・というお話でした(嘘
次はいよいよラスト!!(大嘘




