表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/806

44 ギルドマスターは既視感を覚えます

pv&ブクマ&評価、ありがとうございます!


今回も末尾に資料整理の 「おまけ」 がございます。

よろしければそちらもお楽しみください。

「というわけで、これが銀シャチです!」

「でーす!」


 マメと一緒にナゴヤドームレベル銀ダンジョンのラスボス、通称銀シャチを紹介してあげる。

 うん、これもデジャヴ?

 凄い既視感を覚えるんだけど、たぶん気のせいじゃないと思う。

 全身ギラッギラッとした銀シャチは銅シャチより少し大きくて、当然HPも高い。

 わたしとクロウが手を出すとあっという間に終わってしまうから見物を決め込んでいたんだけれど、必死に銀シャチを叩くトール君とマメを見ていると、どうしても銅シャチを思い出すのよ。


 なに、この既視感!


 銀シャチと銅シャチの違いは大きさ以外にもあって、その一つが攻撃の仕方。

 銅シャチはびちびちと跳ねて横移動をするけれど、銀シャチは、横移動の他に二つに分身する。

 その分身の仕方がちょっと目の錯覚を引き起こすような微妙な感じで、こう……びちびちと跳ねながら二つに分かれていくっていうね。

 説明が難しいんだけど、そんな感じで分身するんだけど、注意すべきことは、フチョウのピエロと違ってどっちも実体ってこと。

 つまり両方から攻撃を仕掛けてくる。

 さすがに初銀のトール君とマメじゃ大変ってことで、銀シャチが分身してからはわたしたちもちょっとだけお手伝い。

 限られた屋内(スペース)に、二匹もでっかいシャチがびちびちしてたら邪魔で仕方がないのよ。

 一匹に気をとられたら、もう一匹の尻尾に叩かれるかバクリと食い千切られるか。

 とりあえずクロウと二人で……やっちゃうとあっという間なんだけど、銀シャチを一匹だけ先に溶かしておく。

 で、広々としたスペースで、もう一匹をトール君とマメに頑張って叩いてもらおうという趣旨。

 レベル30近くになると一人でも二匹を倒せるようになるけれど、さすがにまだレベル20になったばかりだし、初見だしね。

 初のシャチ銀で落ちて、トラウマになっても困るし……うん、これが一番困る!

 楽しく遊べなくなる原因はなるべく作りたくないもの。

 無事に一周目をクリアして楽しく二周目を回っていた時、ふと気づいたようにトール君が、少し後ろを歩いていたわたしを振り返った。


「あの、気になったんですけど、鯉がいませんか?」


 はい、います。

 ダンジョン・ナゴヤジョーでは金銀銅全てでシャチが出るんだけれど、ボス以外もシャチ。

 床から、だいたい一メートルくらいの高さまでで、大きさの違うシャチが、まるで水の中を泳ぐようにやってきて、プレイヤーに群れてくる。

 もちろんただ突かれるだけじゃなくて、きっちりHPを持って行かれるんだけどね。

 金銀銅共通で出てくるのが標準サイズの銅シャチと金魚。

 金魚は口をパクパクして装備をついばむ感じで群れてくるんだけれど、一度のパクで持って行かれるHPはたいした量じゃないんだけれど、回数がね……多いのよ。

 群れ始めると、ずーーーーーーーーーーっと、それこそパクパクパクパクパクパクパクパク……本当に際限なくついばまれて、気がつくと結構な量のHPを削られているっていう地味で恐ろしい物量作戦。

 なので金魚は見つけたら即潰す。

 割とサイズが小さめなので、見逃すとうしろから食いつかれて、それがあっという間に増えて……以下同文。

 どの敵も腹が床に着かない高さを泳いでいるため、比較的サイズが大きなシャチはそこそこ上を泳いでいて見逃すことはまずないんだけれど……見逃せるサイズでもないし……金魚は小さいので、本当に床上一〇㎝くらいのところを泳いでいることも。

 気がつくと片足にだけ群れられてることもあって、本当に油断が出来ない。

 面倒臭い時は足で踏み潰すこともあるけれど、STRを持たないわたしでも踏み潰せる程度の柔らかさ。

 ほんと、質より量って感じ。

 で、このダンジョンの通称にもなっているシャチは、ご存じ名古屋城の金のシャチホコ。

 あれがたぶんモデルだとは思うんだけれど、そこにこのダンジョンの着想があると思うんだけれど……だから江戸城や大坂城じゃダメだったのね、きっと。

 結構なサイズで、金魚のようにパクパクなんて可愛いもんじゃない。

 シャコーン、シャコーン……って感じで、ノコギリ刃のような歯で噛みついてくる。

 そんでもってシャコーン、シャコーンとHPを削っていくのよ。


 ガッツリ持って行かれます


 レベル制限のない銅でも、このシャチは容赦がないのよ。

 ただ銀に比べれば沸く数が少ないから、一匹ずつ確実に潰していくのが肝心。

 でも銀からは結構な数が、結構な速さで泳いでくる。

 サイズも大きくなるしね。

 シャチ金になるとさらに攻撃手段が増えるんだけれど、それはまたのお楽しみ。

 そんなシャチに混じって泳いでくるのが鯉。

 以前、カニやんが 「たまに魔法攻撃が効きにくいのがいる」 って言っていたあれ。

 いっつもマメが食われるあれ。

 一見金魚のでっかい版みたいなんだけど、金魚が赤一色なのに対して白と黒と赤の三色まだら。

 どこからどう見ても鯉でしょ?

 なのに誰も気づかないって、どういうこと?

 そもそもどうして鯉なの?


『あれ、鯉かっ!』


 本当の本当に気づいていなかったらしいカニやんの、衝撃的事実を初めて知ったような驚きの声がインカムから聞こえてくる。


「知らなかったのか、カニやーん。

 マメは知ってたぞー」


 うん、マメ、偉そうにいうのはいいんだけれど、とりあえず鯉の口から出てきなさい。

 どうして話しながらもバックリやられてるわけ?

 鯉はね、本当に大きな口をしていて、ほぼ開けたまま迫ってくる。

 金魚のパクパクに対して、バクバクって感じ。

 あ、池で餌に群がってくる鯉の勢いを想像してもらったらいいと思う。


 まさにあの恐怖!


 手がないくせに、他の鯉を押しのける勢いで出てくるあの感じ。

 エラ呼吸のくせに、今にも陸に上がってきそうなあの感じ。

 あの勢いでプレイヤーをバックリやっちゃうの。

 で、咥えられたままバクバクやられているあいだにHPをごっそり削られるっていうね。

 それを一回潜るあいだに何度もやられて死亡状態にならないマメって、ほんと、どんだけ硬いのよ?


『鯉の産地ってどこだっけ?』


 カニやんと同じパーティーで潜っているクロエが割り込んできた。

 鯉の産地……郡山?

 なんか、そういう地名が出てきたけど、どこだっけ?

 さすがのカニやんも予備知識はなかったみたい。


『東北? 北陸?』

『あれじゃない?

 運営の誰かがシャチに対抗したくてこっそり鯉混ぜたってやつ』

『そいつはシャチより鯉派ってか?』

『隠れた鯉の産地出身とか』

『魔法が効きにくいって設定はいらなかったんだけど』

『おまけでしょ?

 あ、自己主張かも』

『鯉混ぜたって気づいて欲しくて?』

『そそ』

『いらんわー』


 わたしもいらんわー。

 だってSTRのないわたしだと、火力無しの杖で五回とか六回とか殴らないと落ちないんだもん。

 しかも……あ? マメ、持って行かれてるー!!


「ファイアボール」


 ……あ、魔法は効きにくいんだった……ちょっとー!!

 慌てて、逃げるようにマメを咥えたまま通路を逆走する鯉を追いかける。

 なんかこれ、ちょっと前にカニやんとの~りんがやっていた気がする……ちょっとマメぇ~!


「やっと出られました」

「やっと追いつきました」

『マメ、懲りろよ』

「楽しーでーす!」


 ……うん、楽しそうでなにより……ちょっと息が……苦し……。

 もう……おかげで二周目は一周目より時間が掛かったじゃない。

 しかもまた落石で頭割られてるし……何回割られれば気が済むのよ?

 そのうち頭の形が変わっても知らないわよ。

 こんな調子で三周目を終えたところで、ちょっとトール君と話してみた。


「大斧ってどんな感じ?」

「そうですね……まだ斧に振り回されてる感じです。

 俺が斧を使ってるっていうより、俺が斧に使われてる感じです」


 なるほど。

 大斧は両手剣と同じジャンルだから片手では装備できないんだけど、一撃に重さがある分、使い手にも相応の負荷が掛かるってことかな?

 だとすれば慣れるのには少し時間が掛かりそうだけど、これ、両手剣だとどうなるんだろう?

 そう思ってクロウを見た。


「……斧と剣は重心が違う」


 あら、珍しくレクチャーしてくれるんだ。

 面白いからそのまま話を聞いてみたところ、両手剣は確かに重量はあるけれど、重さに慣れればそれほど扱いは難しくはない。

 けれど剣と違い、斧は重心が刃の部分に集中する。

 あのごつい刃の部分ね。

 あのごつい部分に重心が集中する分、斧はバランスの扱いが難しいという。

 なるほど、重さじゃなくてバランスか。

 クロウの話にトール君も少しはコツを掴んでくれればいいけれど、どうかな?

 何か考えてる感じだったけど、そういえば装備とかも考えてるのよね。


「そうなんです。

 このあいだもらった引換券を使おうかとも思ったんですけど、どうでしょう?」


 別の日のギルドルームでのこと。

 外に出ていたわたしとクロウはトール君に呼ばれて戻ってきたんだけれど、相談されたのはやはり装備のことだった。

 堅苦しいミーティングってわけでもないからソファに、思い思いに掛けて、ついでにウィンドウを使って下の食堂に飲み物を注文してみた。

 わたしはアイスティー、クロウは珈琲、トール君はコーラを。

 そうしたらすぐに下の店員らしいNPCが配達してくれるっていう……ちょっと面白いわ、これ。

 もちろんただじゃないけどね。


「使ってもいいけど、でもレベル20じゃ制限アイテムが多いんじゃない?」


 第一回公式イベントの賞品であるアイテム引換券。

 公式サイトで見られる引き替えアイテムの中にはもちろん剣士(アタッカー)用の装備も沢山あるんだけど、装備によってはレベル制限が設けられているものがあって……これ、課金アイテムに多いのよね。

 それなりにステータス補正値も高いし、装備としての耐久も高い。

 でもレベル制限が設けられている物も多くて……これ、運営的には、装備に見合うスキルやレベルを揃えてくださいって注文のつもりなのかしら?

 クロエには、運営への注文を出しすぎってよく言われるけれど、運営だってわたしたちプレイヤーに結構な注文を出してるのよね、ほとんど誰も気づいていないだけで。

 まぁ当然低レベルで防御能力の高い防具を簡単に手に入れられちゃ、ちょっとゲームバランスに問題が出てきちゃうもんね。

 理屈はわかるんだけど、一方的なのは面白くないじゃない。

 だからわたしたちプレイヤーも、どんどん運営に要望を出していくべきだと思うわけ。


 クレームとは違うから!


 以前から大斧装備を考えていたトール君は、レベル20を前に、その大斧を使い始めたんだけどなかなか慣れなくて苦戦してるのよね。

 クロウのレクチャーで理屈はわかっても、実際に体でその感覚を掴むのは別物。

 VRとはいえ一朝一夕にはいかなくて。

 VRの利点としては、変な使い方をしたり、多少無理に頑張っても体を痛めずにすむってことかな。

 もちろんそれがわかってるから好きにさせてるんだけどね。

 ついでにいえば、まだ大斧を使いこなせないトール君が、急ぐように防具の相談をしてきた理由もわかってる。

 第二回公式イベントの開催が発表されたから。

 第一回公式イベント終了後に行われたアンケート結果一位だった、プレイヤー同士のバトルロワイヤルの開催が決定したのよ。


メモ / 素敵なお茶会(第一回イベント時)


アールグレイ / 女性型・魔法使い / LV48

クロウ    / 男性型・剣士   / LV48

クロエ    / 男性型・銃士   / LV48

カニやん   / 男性型・魔法使い / LV37

パパしゃん  / 男性型・剣士   / LV34

の~りん   / 男性型・魔法使い / LV25

しば漬け   / 男性型・剣士   / LV31

ミンムー   / 男性型・剣士   / LV33

ベリンダ   / 女性型・短剣使い / LV21

りりか様   / 女性型・鍛冶士  / LV28

ゆりこ    / 女性型・魔法使い / LV?

ココちゃん  / 女性型・魔法使い / LV23

マコト    / 男性型・剣士   / LV25

ぽぽ     / 男性型・銃士   / LV23

くるくる   / 男性型・銃士   / LV27

豆の木    / 女性型・ニート  / LV21

トール    / 男性型・剣士   / LV19

ジャック   / 男性型・銃士(?)/ LV12

キンキー   / 男性型・     / LV4

ラウラ    / 女性型・     / LV4


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
豆の木の設定のニートで笑ってしもたw ひどすww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ