42 ギルドマスターはギルドルームを有効活用します
pv&ブクマ&評価、ありがとうございます!
ここしばらくネタが親父過ぎて自分でも困っているのですが、末尾には資料整理の 「おまけ」 を付けてみました。
そちらでご勘弁いただければと思います。
「こんな感じになりましたー」
この日ギルドのメンバーに紹介したのは例のギルドルーム。
味気ないテーブルと椅子しかなかった無機質な部屋を、もう少し居心地よくしてみたの。
せっかくマメが三枚も購入券をくれたので、二枚使って二部屋分の広さを購入。
四分の一ほどを区切って小部屋を作り、広いほうの部屋をミーティングルーム兼ちょっとくつろげるリビングみたいにソファを置いてみた。
ミーティングルームは、先に買ったテーブルと椅子を大型モニター前に設置しただけのものなんだけど、L字型のソファにいくつかのスツールを置いてみたんだけれど……。
「グレイさん、趣味だね」
クロエに言われちゃった。
うん、花とか飾ったし、窓には白いレースのカーテンに花柄のカーテンを重ねてみた。
ソファの柄も、驚くくらい種類があって悩んだんだけど、ブルーとピンクの細かい花柄にしてみた。
まさかこんなに色々あるとは本当に思わなかったから本当にビックリしたんだけど、マメにきいたNPC雑貨屋には、本当に色んな物が並んでいて驚かされた。
でも、ギルドルームがあってカスタム出来るなら、家具をどこかで扱っていてもおかしくはないわよね。
あんなに種類があったのは驚いたけれど。
床にも可愛い花柄のラグを敷いたし、自分ではいい出来だと思う。
念のために言っておきますが、現実のわたしの部屋はこんな可愛い感じではありません。
「俺、ここで酒飲んでいい?」
でたな、オッサンめ。
訊いてきたのはムーさんだけど、隣で柴さんも頷いている。
よくもこんなフローラルの中でお酒を飲もうなんて発想になれるわね。
そもそもお酒なんてあるのかと思ったら、ノンアルコールだって。
飲んでもいいけど、空き缶は自分で処分するように!
放置とか、隅に溜め込んだりしたら許さないからね。
「なんか、昼間っから酒浸りになりそうだよ、この二人」
嫌そうな顔のカニやんだけど、それは心配ないと思う。
そもそもこのギルドルームは宿屋の二階っていう設定になってるんだけれど、一階には酒場というか、食堂というか……ま、そんな感じになってて、そこで食事も出来るんだけど、ただで食べさせてもらえるわけじゃない。
そう! お金が要るのよ。
もちろんゲーム内通貨だけどね
つまり缶ビールがあったとしても、購入するにはゲーム内通貨が必要なわけで、二人は飲むために、絶対に稼ぎに行かなきゃならないってわけ。
飲むにはつまみだって必要だしね。
だから日がな一日ここでのんべんだらりとはいかないの。
でも……自分で言っておいてなんだけど……VRでも働かざる者食うべからずだなんて、ほんと、世知辛い世の中よね……。
「お金っていえば、これ、全部グレイさんが個人で購入したんですか?」
トール君が自分も出しますって言い出したんだけど、それは必要ないの。
っていうか、実はわたしも一銭も出してないのよ。
なぜかと言えば……
「全部クロウが出したの」
わたしが隣に立つクロウを指さしたら、みんながクロウを見るんだけど、当のクロウは平然としたまま。
今更クロウがこの程度で動じるわけないわよね、うん、わかってるけど。
でもね、わたしにもわからないのよ、どうしてクロウが全額出してくれたのか。
わたしだってちゃんとお金は持ってるし、自分の財布と相談して買い物していたのよ。
でもいざ購入って段階になって、クロウが支払っちゃった。
「さすが旦那」
「太っ腹」
「いいんじゃない?
クロウさん、フェイトで稼いでるし」
「あー賞金な」
ムーさん、柴さん、クロエ、カニやんの順に言いたい放題。
クロエはともかく、世知辛い世の中に生きてるオッサンばっかりね。
「この大型モニター、イベント観戦用に使えないのかな?」
まだ運営から正式な告知はないんだけれど、第二回イベントの噂はある。
少し前、第一回イベントが終わってから運営がアンケートを採って、その結果が公式サイトで公表されてから余計に盛り上がってるんだけれど、その結果がちょっとね。
運営がアンケート一位を第二回イベントに決めると、また参加できないプレイヤーが結構出ると思う。
【素敵なお茶会】もね。
個人のウィンドウで観るのもいいけれど、確かに、その大きなモニターを使ってみんなで観戦っていうのも面白いわね。
パブリックビューイングみたいで。
「確か、【鷹の目】 もギルドルーム持ってたでしょ?
出来るかどうか訊いてみたら?」
質問したのはベリンダだったけれど、クロエはこっちを向いて言うから、たぶんわたしに、セブン君にでも訊いてこいってことね。
うん、いいわよ。
早速メッセージを送るわ。
もし出来ないのなら運営に要望を出すから。
結果発表とかは、第一回イベントの時みたいに大勢の人と楽しみたいけれど、どうせだったら、広場にも巨大モニターを設置してもらうのもいいわよね。
とりあえず、これは先に要望を出しておこうかしら?
「ベリンダが余計なこと言うから、またグレイさんが運営に要望出しまくってるよ」
わたしが開いたウィンドウを忙しくポチっていたら、クロエってば。
何度もいうけれど、クレームじゃなくてリクエストっていってよね。
「相談とか、あればここで話すっていうのもありね。
飲み会は深夜のみ!」
「せめて夜八時解禁!」
「十時」
そんなやりとりですっかり忘れていたんだけど、気がついたマメが隣に作った小部屋に続く戸を開ける。
そして室内を見て声を上げた。
「うわーベッドがありまーす!」
その声に、真っ先にオッサンどもが食いついた。
マメを押しのけるように部屋をのぞき込んで、わたしを振り返って言うの。
「マジラブホつくってんじゃねーよ!」
「しかもベッド、二つあるじゃん!」
殺す……
「このオッサンどもがぁ~」
……思わず本音が出ちゃったわ……ふふふ……。
わたしがどんな顔をしていたのかはわからないんだけど、思わず呟いたらみんな黙り込んじゃった。
そんな怖い顔してたのかしら?
「ここは休憩室です!
本当はログアウトして休んだ方がいいんだけど、ちょっと仮眠する時とかに使って。
特にマメ!」
そう、わたしがこの部屋を用意した一番の理由はマメなの。
本人には全く自覚がないみたいなんだけど、廃課金の彼女は廃人で、たいがいゲーム内にいるんだけど、眠くなったらそのへんで寝ちゃうのよ。
わたしたちと遊んでいる時は滅多にないんだけれど、深夜とか夜明け頃とか、人が少なくなって暇になると、本当にそこらへんで寝落ちしてるのよね。
あんた、女の子でしょ?
ちょっとは気をつけなさいよ、もう。
休みの日にちょっと早い時間にログインしたら、広場のベンチで寝てるとか、ビックリするからやめてよね。
「いい、マメ?
今後、その辺で寝落ち禁止!
ログアウトするか、ここで仮眠するか、どっちかにしなさい!」
ぴしゃりとマメに言い渡したわたしは、今度は柴さんとムーさんに言い渡す。
もちろん二人も使っていいんだけれど……
「ここはエロ本の持ち込みは禁止です!」
共用なんだから当たり前でしょ!
この二人ならやりかねないと思って先回りしてみたんだけど、先回りしすぎたみたいでカニやんから突っ込み返されちゃった。
「そんなもん、あるの?」
うん、知らない!
……っていうかカニやん、興味あるの?
登場人物:豆の木 / 女性型・職業不詳 /
ギルド 【素敵なお茶会】のメンバーで通称マメ。
もとは廃課金廃人ギルド 【鷹の目】 のメンバーだったが、ギルドマスター・ラッキーセブンの計らいで一時的に 【素敵なお茶会】 に移籍していたが、先日、本人の希望により正式に 【鷹の目】 を脱会。
正式に 【素敵なお茶会】 のメンバーになった。
色んなステータスにポイントを振って万能職を気取っていた残念キャラだったが、この度ステータスの振り直しを決意。
決意はしたけれど、未だ振り直しはしていないらしい。