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ギルドマスターは今日もギルドを運営します! ~今日のお仕事はなんですか?  作者: 藤瀬京祥


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407 ギルドマスターは年賀状に返事をします

PV&ブクマ&評価&感想&誤字報告、ありがとうございます!!

 結局カニやんからの返信はなかった。

 いつまで待っていたかといえば朝までです。

 お陰様で寝不足です。

 もうそんなに若くないのに。

 案の定、洗面台で鏡を見たら目の下にくまが出来ていた。

 それはそれは黒々とした立派なくまがね。


 眠い


 アバターに影響は出ないからいいけれど、見るからに不健康で、朝ご飯の席で顔を突き合わせた兄たちには怒られた。


「あーちゃん、ゲームをするなとはいわないけど、ちゃんと寝なさい」

「次に徹夜したらぶっ壊すからね」


 なにを? ……とは怖くて訊けなかった。

 だって琉輝(りゅうき)はやるといったらやるんだもの。

 それこそアクセスキー諸共機器を破壊すると思う。


「またお父さんが買ってあげるから、あーちゃんは気にしなくていいよ」

「このクソ親父」

「琉輝がいいやつ知ってるってさ。

 今度は一緒に買いに行きなよ。

 俺も行くけど」


 ……これはなんの会話?

 このまま居続けると母まで参戦しそうだったから、早々にダイニングから退散。

 部屋に戻る前にお手洗いに行って、部屋に戻ったら加湿器を確認。

 もう一度スマホをチェックしてみたけれど、やっぱりカニやんからの返信はなく。

 代わりに届いていた国分(こくぶ)先輩のメッセージが気になったけれど、話は会社で直接となっていたため残念賞。

 簡単な返信をしてlet's login! ……したら、ギルドルームでカニやんが待っていた。

 返信がないから、てっきりまだ寝ていると思っていたわたしは少しビックリ。

 思わず素っ頓狂な声を出してしまう。


「カニやんっ?!」

「うぃーっす」


 こちらを見ようともしないカニやんはギルドルームの床に、足を投げ出して座りこみ、猫じゃらしを使ってタマちゃんと遊んでいた。

 それはそれは楽しそうにね。

 じゃあわたしも負けずにルゥと戯れようと思い、腕輪から呼び出そうとした矢先、ようやくその事実に気がついてカニやんとタマちゃんを振り返る。


 猫じゃらしっ?


 え? なに、それ?

 そんなものあったっけ?


『あるわけないじゃない』


 インカムから聞こえてくるのは、眠そうなりりか様の声。

 うん、そうよね。

 その言葉にはわたしも激しく同意する。

 だって猫じゃらしなんてどの(クラス)が使うのよ?

 装備するのよ?

 攻撃対象が猫型に限定される武器って……そもそも今のこのゲームに、犬型のNPCはいるけれど、猫型のNPCはいないはず。

 つまり使い道のない装備じゃない。


「攻撃するんかい。

 むしろこっちが攻撃されてる感じじゃね?」


 わたしとりりか様のやり取りに笑いが止まらない様子のカニやん。

 もちろん猫じゃらしの製作依頼はカニやん自身が出したもので、なんとりりか様の力作。

 レシピなんてなくて、カニやんがカジさんに頼み込んでアドバイスをもらい、そのアドバイスを元に色々と材料を掻き集めて挑戦してもらったらしい。


『おかげでスキルレベルが上がったわ。

 ポイントが欲しいから、そのうちレベル上げに付き合ってよね』


 それこそ何度も失敗を繰り返したというりりか様。

 あまりの失敗の数に、スキルレベルが上がったというのは怪我の功名ってやつよ。

 レベル上げならいつでも言ってね、わたしも付き合うから。

 しかもこんなに凄いものが作れるようになったなんて、りりか様も腕を上げたわね。

 この先もどんどん楽しみだわ。


 あんまりお待たせしちゃいけないと思ったわたしはルゥを腕輪から呼び出し、いつものように鼻チューでご挨拶。

 ここまではご機嫌に 「きゅ~♪」 と鳴いていたルゥだったけれど、わたしが横目にタマちゃんとカニやんの様子を見たら、いきなり短い前肢でわたしの頭を掴んで固定し、鼻を潰すように押しつけてきた。

 もう、ルゥったら。

 ちょっとよそ見しただけなのに。


 いたたたた……


 ルゥの焼餅にわたしが悲鳴を上げているのをよそに、カニやんは猫じゃらしを一際高く振り上げる。

 するとタマちゃんもじゃらしを追って、まるでゴム鞠のようにポーンと高く飛び上がる。

 凄い身体能力ね、タマちゃんも。

 ルゥのジャンプは力強く、シュバッとかスターンっという感じなんだけれど、やっぱりタマちゃんはお猫様。

 特有のしなやかさでスラリと跳ね上がり、ふわりと着地する。

 そこを狙ってすかさずじゃらしを振るカニやん。

 その思惑というか、誘惑に負け、見事に釣られるタマちゃん。


 可愛い


 タマちゃんもすっごく楽しそうで、興奮のあまりいきなり尻尾が割れた……割れた?

 あら、タマちゃんったらお猫様のまま猫又になってるじゃない。

 やだ、これはこれで凄く可愛い。

 飼い主(カニやん)ばかりか、わたしまでが思わずにやけてしまうほど今日も可愛いタマちゃん。

 もちろんルゥだって可愛いわよ……というわたしの腕の中でいじけてしまうルゥ。

 これはこれで超絶可愛い。


 ふふふ


 にやける顔が弛みきって戻せないくらい。


「可愛く笑ってるところを現実に戻して悪いけど、返事は 【自分で訊け】。

 以上!」


 えっ!?


 それ、今ここで言う?

 せっかく楽しい気分だったのに、カニやんのおかげで一瞬にして地に墜落したわ。

 あれだけ待ち焦がれた返事が 「いる」 でもなく 「いない」 でもない、まさかの 「自分で訊け」 で振り出しに戻されるなんて思いもしなかった。

 いや、もちろんわかってる。

 わたしが勝手に、都合のいいことを考えていただけだってことはもちろんわかっている。

 わかってるんだけど……


 はぁ~


 思わず溜息が出る。

 当のカニやんはそんなわたしの様子になんてお構いなしに、楽しくタマちゃんと遊び続けている。

 しかもただ楽しく遊んでいるだけならともかく、さらなる追い打ちをかけてくるってどうなのよ。


「だいたいなに考えてるかはわかってるつもりだけど、そこはみんなが通る道だから。

 練習したいならそこも頑張りなよ」


 わたしもわかっているつもりです。

 相手に彼女、あるいは彼氏がいるんじゃないかって、誰でも考えるわよね。

 もしいたら……って悩むわよね。

 で、実際にいたら諦めるのか、それでも好きでいるのか、やっぱり悩むのよね。


 難しい


 そっかぁ、ここから練習しなきゃダメなんだ。

 わたしの場合……というか今回の場合、クロウに彼女がいたら彼女さんに悪いから頼めないというだけで、現実に比べれば全然問題は軽い……と思われる。

 でも今のわたしにはそれでも一杯一杯。

 なんだか道のりがどんどん遠く長くなっていく感じがして、ますます絶望的な気分になってきた。

 しかもそこにカニやんが留めを刺してくれる。


「ちなみに、気づいてないみたいだけど俺以外にもいるからな、ここ」


 ん? んんっ?!

 カニやん以外にも誰かいるのっ? ……と慌ててギルドルームを見渡したら、クロウがテーブルに頬杖をついてこちらを見ていた。

 目と目が合っても逸らさないし、だからわたしも逸らせなくて、身がすくみ、顔が強ばる。


 き、気まずい……


 話の内容もそうだけれど、ログインしてからこの数分、いることにすら気づいていなかったって。

 しかもその数分のあいだ、完全な無視状態って……気まずいというか、申し訳ないというか。

 別に悪いことをしたわけでもないのに後ろめたさまで感じてきた。


「……おはよう」


 いつも会社で聞く朝の挨拶と同じはずなのに、心なし、何かが含まれているようなクロウの声。

 いい声ではあるんだけどね、なにも含まれていなければ素直に喜べるんだけれど、この……なにかしら、これ?

 と、とりあえずわたしも挨拶しなきゃ。

 うん、挨拶しなきゃね。

 でも 「おは……」 まで言ったところで、インカムから聞こえるJBの声に割り込まれる。


『牛、見つけたっすよ!』


 牛の群れを見つけた喜びに、JBの声はテンションMAX。

 こんな朝から元気ね……と、あきれるというか、びっくりするというか。

 そして同じくらい高いテンションでトール君の声が応える。


『どこですかっ?』

『【関西エリア】!

 俺の位置情報見てよ。

 あ、カニやんたちも来るでしょ!

 牛、マジデカいっすよ!』


 こんな朝っぱらから何をしているのかと思えば、ログインしているメンバーで牛の群れを大捜索。

 探し始めてまだ30分も経っていないところで、JBが巨大牛の群れを見つけたっていう報告でした。


 そういえば、今回のお正月イベントは今日が最終日。

 今日の23時59分59秒が応募締め切りだから、参加者は受付時間内での応募を忘れないでね。

 あと、投票は明日の0時0分0秒から、やっぱり23時59分59秒までだから、こちらも忘れなく投票してください。

 【初日の出部門】【自由部門】 合わせて一人五票まで。

 部門関係なく自分の応募作への投票も可能ですが、同じ作品に二票以上投票することは出来ません。

 たぶんやったらエラーが出ると思うから注意してね。


 ちなみにわたしは明日、買い物に出掛けるので午前中はお休みします。

 投票はログインしなくても、公式サイトからでも出来るから移動途中にでもしようかな。

 どんな応募作品があるか、楽しみね。


「買い物?

 また兄貴に貢いでもらうの?」


 ちょっとカニやん、人聞きの悪いこと言わないでよ!

 自分のお金で買います。

 通勤鞄がヘタレてきたから、新しいのが欲しいと思っていたの。

 持ち手と角がモロモロしてきちゃって。

 明日まで兄さんたちも実家(いえ)にいるっていうし、車も出してくれるっていうから一緒に行くことになったの。


「ふ~ん」


 その返事は一応納得してくれたってことでいいのよね?

 そう思って油断をしていたら、カニやんがいつものようににひっと笑う。


「お年玉、もらった?」


 お年玉? も………………あ、危なかった。

 危うく正直に答えるところだった。

 でも思い留まれたことにホッとしていたら、カニやんがさっき以上のにひっと笑いを見せてくる。


「その顔見ればバレバレ」


 バレてしまったものは仕方がない。

 正直に答えましょう。

 ええ! ええ! 23歳にもなって、両親と兄からお年玉をもらいましたよ!

 総額で○万円もらいましたとも。

 そのお金で、通勤用にスカートとブラウスを買おうと思っていますとも。

 鞄は元々買い換えを考えていたから、年末に出た自分のボーナスで買うけどね。


『正月から豪勢っすね』


 またまたインカムからJBの楽しそうな声が聞こえてくる。


『ところでギルマスたちは、牛、撮らないっすか?』


 えーっと、牛というとやっぱりあの牛よね?

 運営が用意したという動く置物(オブジェ)、群れて移動する牛。

 大中小の(スリー)サイズが用意されていて、捜索中のJBが見つけたのはよりによって巨大サイズ。

 そこに来ないかというお誘いだけど、わたしは遠慮させてもらいます。

 だって、あのドナドナは結構なトラウマなのよ。

 ドナドナされたことだけでもショックだったのに、あんな醜態を色んなプレイヤーに見られちゃって、どんなに恥ずかしかったか!

 というわけで……


 同じ愚は繰り返しません!!

そろそろお正月イベントも終了(予定)。

ヴァレンタインの前に、マメでもまきますかw

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 飼い主カニやんばかりか、わたしまでが思わずにやけてしまうほど今日も可愛いタマちゃん。 もちろんルゥだって可愛いわよ……というわたしの腕の中でいじけてしまうルゥ。 これはこれで超絶可愛い…
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